Game of Vampire   作:のみみず@白月

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選択と代償

 

 

「本当に……その、すまなかった。申し訳ない!」

 

目の前に立つマルフォイに向かって深々と頭を下げながら、霧雨魔理沙は謝罪の言葉を口にしていた。正直なところ、何と言ったらいいのかすら分からないが……とにかく謝るべきだろう。私の提案が契機になったのは間違いないのだから。

 

五月の初週を迎えたホグワーツの校庭には、遠く離れた競技場から微かな歓声と実況の声が響いてきている。今まさにアンジェリーナたちにとっては最後の試合となる、ハッフルパフとの今期最終戦が行われているのだ。やけに他人事に聞こえてしまう歓声を聞く限りでは、どうやらグリフィンドールが僅差でリードしているらしい。

 

そんな中、マルフォイを呼び出した私は彼に謝罪をしているのである。……つまり、彼の父親についての謝罪を。昨日の夜、リーゼとハリーが話しているのを聞いてしまったのだ。ヴォルデモートを裏切って魔法省に協力しようとしていた、彼の父親であるルシウス・マルフォイが殺された、と。

 

信じられない報せだった。私の行動が切っ掛けとなって、一人の人間が死んだ。……どうしようもない大間抜けの私が独善的な考えを振りかざした所為で、目の前の少年は父親を喪ったのだ。

 

真っ青な顔で頭を下げる私に対して、マルフォイは少しだけ沈黙した後……疲れたようなため息を吐きながら返事を寄越してきた。

 

「やはりそのことか。シャフィクといい、お前といい……よく聞け、キリサメ。これはお前の所為じゃない。僕と、父上と、母上が選んだことなんだ。」

 

「でも、私が防衛術クラブであんなことを言ったから──」

 

「思い上がるな。お前の言葉などに大した意味はなかった。父上も、母上も、全てを承知した上で闇の帝王を裏切ったんだ。……だから、父上の死はその覚悟に気付けなかった僕の責任だ。これを誰かに譲ることなど出来ない。これは息子たる僕が、マルフォイ家の当主たる僕が背負うべきものなんだ。」

 

顔を上げた私の視界には、信じられないほどに冷静なマルフォイの顔が映っている。憎しみも、悲しみも、後悔も。感情の一切浮かんでいない、完璧な無表情だ。

 

「……なんで怒らないんだよ、マルフォイ。怒れよ。殴ってくれたっていい。私が余計なことを言ったから、こんなことになっちまったんだぞ。」

 

「しつこいぞ、キリサメ。僕は本当にお前に怒ってはいない。憎んでもいない。……これは僕が引き起こした事態なんだ。無知で、自分が守られていることすら分かっていなかった僕がな。」

 

平坦な声でそう言ったマルフォイは、ほんの僅かだけ顔を歪ませると……そのまま少し俯いて語り始めた。

 

「母上がホグワーツに知らせを持って来た時、父上の遺書を渡された。ほんのひと月前に書かれた遺書を。そこには自分が出来るだけ多くの負債を道連れに死ぬから、お前は新しいマルフォイ家の礎を築けと書かれていたんだ。……父上は、先代は僕のために死んだんだよ。だから僕は、父上の死の責任をお前如きにくれてやるつもりはない。父が、ルシウス・マルフォイが遺したものは余すことなく僕が引き継ぐ。家名も、伝統も、憎しみも、負債も。全ては僕が背負うべきものなんだ。」

 

なんだよ、それは。ひどく成長してしまったような目の前の青年に、私が何を言ったらいいのかと迷っていると、マルフォイはゆっくりと競技場の方に視線を向けながら口を開く。

 

「……気にするなとは言わない。お前は僕がどう言っても責任を感じるだろうからな。だが、一つだけ覚えておけ。もし父上が帝王に付き従ったままだったら、もっと酷い結末になっていたはずだ。……少なくとも、マルフォイ家の命脈は途絶えていただろう。分かるか? キリサメ。これしかなかったんだ。この道が一番『マシ』な道だったんだよ。」

 

「……だけど、そんなのってないぜ。」

 

「とにかく、僕はお前を責めるつもりはないし、この前伝えた感謝を撤回するつもりもない。僕から言えるのはそれだけだ。」

 

視線を合わせないままでそう言うと、マルフォイは身を翻して城の方へと歩き始める。……くそ、何を言えばいいんだ? 伝えたいことは沢山あるのに、全然考えが纏まらない。

 

「これから……その、どうするんだよ!」

 

「決まっているだろう? 僕は次代のマルフォイ家の礎となるんだ。二枚舌と言われようが、裏切り者と罵られようが、スカーレットやボーンズに媚び諂って地位を保つことでな。……今の僕は家を預かる当主なんだ。これまでのように学生では居られない。」

 

私の絞り出した問いとも思えぬ問いに、去り行く背中越しに答えてくれたマルフォイは、そのままゆっくりと城の方へと遠ざかって行った。……分からない。私はどうすれば良かったんだろうか?

 

大きなため息を吐いた後、芝生の上へと座り込む。本当に、本当に情けなくなってくるな。良いことをしたと思っていた頃の私を全力でぶん殴ってやりたい気分だ。何も知らない癖に、どうしてお前は出しゃばったりしたんだよ、霧雨魔理沙。

 

悔しい気分で俯いていると、いきなり視点が変わって澄んだ青空が見えてきた。視界の端には見慣れた銀色が、頭の後ろには柔らかな体温が感じられる。……世話焼きめ。

 

「……よう、咲夜。ビックリするからやめろよな。大体、試合を観に行ったんじゃなかったのか?」

 

時間を止めて勝手に膝枕の体勢へと持っていったのだろう。ぶすっとした顔で頭上の親友へと話しかけてみると、咲夜は困ったような苦笑を浮かべながら返事を返してきた。

 

「朝のあんな顔を見せられたら放っておけるわけないでしょうが。先輩たちも心配してたのよ? ……それで、マルフォイと何の話をしてたの?」

 

「想像付くだろ? お前なら。」

 

「……まあ、ぼんやりとはね。」

 

穏やかな口調で言った咲夜は、私の髪をくるくると指に巻き付けながら問いを放ってくる。子供をあやす時のような、やけに柔らかい声色だ。

 

「失敗しちゃったの?」

 

「ああ、失敗だ。最低で、最悪の、大失敗さ。今の私はイギリス一のクソ女だぜ。叶うならこのまま消えちまいたいくらいだ。」

 

「なら、反省しなさい。そして思いっきり後悔してから、その後きちんと償いなさい。私が全部付き合ってあげるから。……ほら、こんな場所でうじうじしてるよりかはマシでしょう?」

 

「……そうだな。」

 

その通りだ。私が落ち込んでどうする。本当に落ち込みたいのはマルフォイのはずだぞ。こんな校庭の隅っこで悩んでるヒマがあるなら、何か出来ることを考えなくては。

 

気合いを入れ直しながら立ち上がろうとすると……何だよ。咲夜が私の肩を押さえて元の位置に戻してしまった。

 

「おい、咲夜?」

 

「でも、もう少しだけこのままで居なさい。そうね、競技場の試合が終わるまで。……そしたらいつも通りの魔理沙に戻るの。いい?」

 

「……ん、わかった。」

 

敵わんな。どうやら咲夜は私よりも私のことをよく分かっているらしい。……うん、試合が終わるまで。それまでの間だけうじうじと悩んでいよう。そしてそれが終わったのなら、きちんと立ち上がって動き出すのだ。

 

競技場から優勝が決まった歓声が響いてくるまでの間、霧雨魔理沙は悔しい気持ちで目を瞑るのだった。

 

 

─────

 

 

「リーゼ、どうだった? 呪文学は何問間違えてた? 私、問い十三の記述問題を間違えたような気がするのよね。だってほら、最初に縮小呪文を使ってから消失呪文を使うべきでしょう? その方が効率的だし、何より──」

 

私の採点している模擬テストを覗き込みながら言うハーマイオニーに、アンネリーゼ・バートリは空返事を返していた。もう自己採点でいいんじゃないか? 量も量だし、三人分となるとさすがに面倒くさいぞ。

 

「いいから、もう少し待っててくれ。あとちょっとで終わるから。」

 

「そういえば、問い十六も心配なのよ。教科書に載ってないやり方を書いちゃったの。これってダメなのかしら? 論述じゃなく記述ってことは、教科書通りに書くべきよね? でも、フリットウィック先生は授業中に問題ないっておっしゃってたし……でもでも、それを試験で使っていいとも言ってなかったから──」

 

ダメだ、聞こえちゃいないな。五月の末、図書館の一角を確保した五年生三人組の試験勉強に付き合っているのだ。やきもきした表情のハーマイオニーは当然として、向かいの席に座るハリーとロンも真剣な表情で採点が終わるのを待っている。進路指導以降、この二人はフクロウ試験の重要度を一段階上げたらしい。

 

試験自体は六月の二週目から。つまり、もう殆ど日がないわけだ。結果として今の図書館は地獄もかくやとばかりのうめき声に溢れているのだが……いつもは小煩いピンスがそれを注意しないのは同情なのか、はたまた諦めなのか。興味深いところだな。

 

どうでも良いことを考えている間に採点が終わった答案用紙を、不安そうな表情の三人それぞれに返す。結構ヤバいんじゃないか? これは。

 

「ほら、全部終わったよ。……ハーマイオニーは問題ないとして、二人はちょっと危ないかもね。魔法史と薬草学、それに魔法薬学は目標点ギリギリだぞ。」

 

「……まあ、分かってたよ。魔法薬学はこれでもかなり改善してるんだ。筆記はともかく、実技は何とかなるはず。」

 

「その三つはやっぱり厳しいか。もう魔法史はカンでどうにかして、薬草学と魔法薬学に集中した方が良いのかもな。進路に関わってるのはそっちだし。」

 

そういうわけにもいかんだろうに。ハリーに続いて情けない表情で呟いたロンは、クィディッチの勝利の喜びなど見る影も無くなっている。ジョンソンなんかは未だに『ニマニマ』が持続しているのだが、ロンにとっては迫るフクロウ試験でそれどころではないようだ。

 

答案用紙を見ながら顔を曇らせる二人に小さなため息を吐いたところで、私の隣の『ミス・勉強』が猛然とした勢いで間違い箇所をチェックし始めた。うーむ、二人とは違った意味でちょっと不安だな。鬼気迫ってるぞ。

 

「おいおい、ハーマイオニー? キミはどの教科も余裕で『安全圏』なんだぞ。そんなに焦らなくてもいいだろう?」

 

「でも、今回の模擬テストは基本教科の筆記だけよ。実技もあれば、ルーン文字も、飼育学も、数占いもあるし、それに本番では別の問題が出てくるはずだわ。油断大敵!」

 

「頼むからその言葉を使うのはやめてくれ。聞くと頭が痛くなってくるんだ。」

 

イカれ始めたハーマイオニーにやれやれと首を振ってから、手を組んで大きく伸びをする。まあ、ハリーもロンも闇祓いを目標としているからギリギリなのであって、別段点数が低いというわけではない。現時点でも平均よりは間違いなく上だろう。

 

日常的に行なっている訓練の甲斐もあり、防衛術は三人ともトップクラス。呪文学と変身術も問題ないし、やる気を持って望んでいる飼育学あたりも大丈夫なはずだ。苦手教科の穴を埋めさえすれば、ある程度のラインまでは持っていけるだろう。

 

ちなみに、ハリーとロンは二人とも占い学を『切り捨てた』そうだ。……うん、正しい選択だと言えるな。進路に掠りもしない学問に関わっている余裕などもはや無いのだから。他にも同様の選択をしている生徒が多いのを見るに、上級生に占い学を受講している生徒が少なかったのにはこういうカラクリがあったらしい。

 

六年生になれば一気に人数が減るであろう授業について考えていると、答案用紙を睨んでいたハリーが顔を上げて質問を放ってきた。

 

「そういえばさ、僕たちは呑気に試験勉強なんかしてるけど……その、大丈夫なの? 色々と。」

 

漠然としたハリーの問いかけを聞いて、ハーマイオニーとロンも私に目線を送ってくる。無理もあるまい。今朝の予言者新聞に魔法省からの『お知らせ』が引っ付いていたのだ。細々とした避難先や注意喚起などが長ったらしく書かれた、魔法大臣名義の公文書が。

 

明言こそされていなかったが、あれを読めばイギリス魔法界の誰もが気付くだろう。何か巨大な、『良くない事』が迫っていることに。心配そうな三つの視線に対して、肩を竦めて答えを返す。

 

「大丈夫じゃないが、かといって何か出来るわけでもないさ。心構えだけしておいて、とりあえずは試験に集中したまえ。」

 

我ながら矛盾した言葉だとは思うが、これが今言える真実なのだ。戦いが迫っていることはレミリアから聞いているものの、いつ来るか分からんそれに気を張り続けていては疲弊するだけ。ならば悠々と構えておくべきだろう。

 

とはいえ、不慣れな三人はまだそこまで割り切れないようで、尚も不安そうな表情のままで曖昧な首肯を寄越してきた。うーん、迷惑な話だな。せめて試験が終わってからおっ始めて欲しかったぞ。

 

どこまでも余計なことしかしないトカゲ男に鼻を鳴らしてから、三人に向かって追加の説得を送る。

 

「ほら、見えない不安に惑わされてたら相手の思うツボだぞ。魔法省も、ホグワーツも、私たちも。なにも無策のまま受け入れようってわけじゃないんだ。そう易々とヴォルデモートの思い通りにはならないさ。」

 

「それは……そうかもしれないけど。」

 

「小難しい話は私たちに任せて、キミたちは自分の将来に集中したまえ。フクロウ試験は一度きりなんだ。こんな下らんことで棒に振ったら絶対に後悔するぞ。」

 

あえて強めに断言してやると、ようやく三人は目の前の答案用紙へと集中し始めた。……まあ、多少は本音が入っていたのも事実だ。リドルの問題は後数年で方が付きそうだが、三人の人生はずっと続いていくのだから。

 

これまでうんざりするほど迷惑をかけられたんだ、せめて大事な試験くらいは集中して受けさせてやるべきだろう。十五年間も付き合わされた挙句、この上将来までもを犠牲する必要などあるまい。割りに合わんぞ、そんなもん。

 

だから、ここは私たちが頑張るべきだ。レミリアがロンドン、アリスが魔法省、私とパチュリーがホグワーツ。身内の基本的な配置はこうなっているのだが……うーむ、アリスが若干心配だな。ホグワーツがやや過剰な気もするし、場合によっては私が大きく動くことになるかもしれない。

 

まあ、大丈夫か。いざという時のために、美鈴を隠し球として紅魔館に残しておいてある。もし戦力のバランスが崩れれば、レミリアが判断して動かしてくれるはずだ。さすがに伏せ札の使い時だろうし。

 

……しかし、未発見の分霊箱を一つ残した状態で大規模な戦いを迎えるというのはよろしくないな。それに、ハリーの分霊箱に関しても解決していない。勝敗に関わらず、リドルは間違いなく生き延びることになるのだ。

 

まあいいさ。戦力を失えば取り得る手段も限定されてくるだろう。巨大な軍勢に振り回されるか、小さなネズミを追い回すかの違いになるだけだ。多少面倒ではあるが、危険そのものはずっと少なくなる。

 

それに、この騒動が終われば小さな間隙が生まれるはずだ。その時に例の『話し合い』を実現させられるかもしれない。色々と立て込んでいる所為でレミリアからの反応が鈍いし、パチュリーなんかはそもそも乗り気じゃなかったが……ま、何とかしてみせるさ。これでも吸血鬼。他人を唆すのは得意なのだ。

 

私が脳内で今後の展開について整理していると、教科書と答案を見比べていたロンが何かを思い付いたように口を開いた。

 

「……でもさ、戦いが起きたらフクロウ試験も延期になったりするよな? いや、中止とかも有り得るぞ。そしたら勉強も──」

 

「幾ら何でも不謹慎よ、ロン。まさかとは思うけど、そんな事態が起きて欲しいって思ってるわけ?」

 

ジト目のハーマイオニーに割り込まれて、ロンは慌てて首を横に振り始める。かなり焦った表情なのを見るに、よく考える前に口に出してしまったらしい。

 

「違うよ! もちろん違う! ……うん、そんなことになるべきじゃないよな。単に可能性の話をしただけさ。」

 

「……昨日の夜、近代魔法史の復習をしてて気付いたんだけど、今回と前回の戦争じゃ死者の数が段違いなのよ。だから、レミリアさんを信頼する人たちの気持ちが少し分かったわ。これだけ犠牲を抑えられてるのはあの方が居るからでしょう?」

 

んー、そう言われればそうかもしれないな。今回は期間だって短いから単純な比較は出来ないが、起こっている事件の規模に対して死者が少ないってのは確かにありそうだ。あいつの『信者』に前回の戦争の経験者が多いのは、そういった側面も影響しているのかもしれない。

 

己の分析を口にしたハーマイオニーは、次に少し暗い表情になって話を続ける。

 

「でも、正面切っての戦いになったらさすがに犠牲者は出るはずよ。……だから、本当は起こるべきじゃないの、そんなこと。」

 

「そうだな、その通りだ。軽率だったよ。……パパたちは大丈夫なのかな? 魔法省が戦場になる可能性ってどのくらいなんだ?」

 

ハーマイオニーの予想を聞いて徐々に不安になってきたのだろう。心配顔のロンの問いに、腕を組みながら返答を返した。

 

「大きくはないが、少なくもないかな。帝王閣下の行動は今も昔も意味不明だからね。……アーサーたちからの手紙には何も書かれてなかったのかい? この前送ってたじゃないか。」

 

「パパからも、ビルからも、チャーリーからも、『心配するな』って返事が書いてあっただけさ。無茶苦茶だよ。心配しないはずなんてないのに。」

 

「シリウスからの手紙も同じだったよ。……やたら張り切ってるみたいだし、大丈夫だといいんだけど。」

 

参ったな。ハリーにもロンの『心配』が伝染してしまったようだ。暗い表情で呟く二人へと、あえて明るい声で言葉を放つ。

 

「当時を知らないキミたちは実感が薄いかもしれないが、アーサーもブラックも前回の戦争ではもっと不利な状況で戦い抜いてきたんだ。そんじょそこらの闇祓いなんかより、彼らの方がよっぽど実戦経験があるくらいさ。だから、そう易々とやられたりはしないと思うよ。」

 

「そう、だよね?」

 

「そうさ。無事を祈るのは結構だが、もう少し彼らを信じてやりたまえ。元騎士団員ってのは伊達や酔狂で名乗れる称号じゃないんだぞ。」

 

実際のところ、あの組織に属していた魔法使いに未熟者など一人も……いやまあ、一人を除いて誰も居ないはずだ。易々とやられたりはしないって部分は本音だぞ。未だ不安そうなハリーたちに言ってやると、彼らは少しだけ明るい表情になって頷いてきた。

 

「ママもそんな感じのことを手紙に書いてたよ。フレッドやジョージも心配するより信じてやれって言ってたしな。」

 

「うん、きっと大丈夫だよね。……きっと。」

 

自分に言い聞かせるように呟いたハリーを横目に、木組みの椅子に凭れ掛かって考える。配置こそ様々だが、彼らの身内が戦闘に参加するのは間違いあるまい。……上手くやってくれよ、レミリア。私は葬式でハリーたちを慰めるのなど御免だからな。

 

どこか集中しきれない様子で模擬テストの結果に向かう三人を見ながら、アンネリーゼ・バートリは動き始めた盤面を脳裏に浮かべるのだった。

 

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