Game of Vampire   作:のみみず@白月

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AUROR

 

 

「本当にもう、なんとお礼を申し上げればいいのか。私はてっきり息子が……ロビン! あなたもボーッとしてないでお礼を言ったらどうなの!」

 

ブリックス夫人のマシンガントークに顔を引きつらせつつも、アリス・マーガトロイドは縮こまるロビンに憐憫の視線を送っていた。亡き父親も相当豪快な魔法使いだったが、母親の方もそれに負けず劣らずの性格をしているらしい。

 

あの魔法省の戦いから二日が経った今日、聖マンゴに入院している知り合いたちのお見舞いにやって来たのだ。中には傷の重い者もちらほらと居るのだが……それでも今は生きていることに感謝すべきだな。魔法省とロンドンの戦場では少数の死者も出てしまったのだから。

 

そんなこんなで病室を巡っている途中、こちらもお見舞いに訪れたらしいロビンとその母親にバッタリ出くわしてしまったのである。ロビンはアトリウムの戦いで起こったことの詳細をきちんと母親に報告していたようで、ブリックス夫人は吸魂鬼から一人息子を救ったことに対して怒涛の感謝をしてくれているわけだ。勢いが凄すぎるぞ。

 

「いえ、あの……当然のことをしただけですから。ロビンも頑張って戦ってましたし、単にタイミングが──」

 

「あら、このバカ息子はマーガトロイドさんからそんなことを言っていただけるような子じゃありませんわ! 本当にもう、いつもいつも心配をかけて。……お礼はどうしたの? ロビン!」

 

「当日に何回も言ったよ。……もう行こう、母さん。マーガトロイドさんだって忙しいんだから、いつまでも付き合わせちゃう方が悪いよ。」

 

「ロビン! あなたって子は……礼を失する者は信頼をも失いますよ! それが命を救われた事に対する感謝なんだったら、百回伝えてもまだ足りないくらいなんです! 何度も何度も教えたでしょうが!」

 

いやはや、母は偉大だな。勢い良く息子を叱りつける『肝っ玉母さん』に苦笑しながら、恥ずかしがっているロビンへと助け舟を送った。

 

「とにかく、感謝はありがたく受け取っておきます。だからもう気にしないでください。戦場では助け合うのが当たり前なんですから。」

 

「ほら、マーガトロイドさんもこう言ってくれてるんだし、早く行こうよ。」

 

「ああもう、薄情な子ね。どうしてそう引き離したがるのかしら? ……それじゃあ、失礼させていただきますわ、マーガトロイドさん。不出来な息子ですけれど、これからもどうぞよろし──」

 

「いいから、行くんだってば!」

 

遂に我慢の限界を迎えたのだろう。真っ赤な顔で母親を引っ張って行ったロビンを見送ってから、それとは反対方向へと歩き出す。……まあ、良い母親じゃないか。本当に息子を大事に思っているのが伝わってきたぞ。

 

しかし、あの時のことを思い出すとやっぱり腑に落ちない部分が残るな。……私の守護霊はロビンを助けた後、私に迫っていた大蛇を『殺した』。守護霊は特定の例外を除いて生物には干渉できないはずなのに。

 

となると、思い浮かぶ可能性は二つだ。何らかの魔法生物らしきあの大蛇がその『例外』に含まれる存在だったのか、もしくは……あの日記帳と同じく、大蛇こそが最後に残る分霊箱だったのか。

 

でも、そんなことが有り得るのだろうか? 生きながら分霊箱になっているハリーのケースはあくまで例外中の例外であって、自身の魂を持った生物を他者の魂を保管する器に変えるというのはそう簡単ではないはずだ。蛇の側からも、リドルの側からも、相互に強い感情がなければ分霊箱には出来ない。

 

うーん、難しいな。特殊な魔法生物であるという可能性に関しては、既にハグリッドに向けた手紙で調べて欲しいと頼んである。それが空振りに終わったら本格的に分霊箱の線を疑う必要が出てくるだろう。その時はパチュリーとも議論してみないと確信を持てなさそうだ。

 

だけど、そうであって欲しいな。もしあの守護霊の動きが私の無意識が命じたものではないのだとすれば、それはきっと杖に残された彼女の意思が動かしてくれたものなのだから。だったら私は一人じゃないと思えるのだ。

 

弱いなぁ、私は。ホルダーから覗く杖の柄を撫でながら苦笑いを浮かべて、窓から春の光が差し込む廊下をどんどん歩いていくと……ここか。部屋の前のプレートに『ガウェイン・ロバーズ』と書かれた病室が目に入ってきた。まだ半分を越えたばかりなのに、今年だけで二度目の入院。なんとも運の悪い男ではないか。

 

哀れみの思いとともに軽くノックしてみると、中から入室を促す声が聞こえてくる。

 

「どうぞ。」

 

「失礼するわね、ロバーズ。……あら、ムーディ? 貴方もお見舞いに来てたの?」

 

声に従って一人用の病室に入ってみれば、ベッドの上で右腕を固定されているロバーズと、緑のローブに身を包んだ闇祓い局長どのの姿が見えてきた。当然、壁を背にしていつでも杖を抜けるように警戒中だ。病院なんだぞ、ここは。

 

「見舞いではなく、打ち合わせだ。わしらは戦いに勝った。ならば次は残党を狩り出す必要があるだろうが?」

 

「それはまた、頼もしいお言葉ね。衰えてないようで何よりだわ。……それで、調子はどうなの? ロバーズ。」

 

まあ、ムーディの言は正しい。これから先は私たちが先手を取る番になるだろう。ヨーロッパ中を逃げ回る死喰い人の残党たちを、猟犬の如く鼻を利かせながら追い立てるわけだ。わんわんって。

 

病室に似合わぬ物騒な台詞を流しながら放った質問に、ベッドに『固定』されているロバーズは情けない表情で答えてきた。見てるだけでもうんざりしてくる有様だな。一切の身動きを許されていないようだ。

 

「足の傷はすぐにでも治るらしいんですけど、手の方は時間がかかりそうなんです。厄介な呪いを受けちゃった所為で、一度骨を全部溶かしてまた生やす必要があるそうで。……人体の不思議さを実感しますよ。」

 

「ご愁傷様。この前生やした肋骨の分も含めれば、今年何本の骨を『新調』したことになるのかしらね?」

 

「次の骨は大事にしますよ。」

 

そうすべきだな。弱々しいジョークに肩を竦めてから、ベッド横の椅子に座って持ってきたフルーツを人形に剥かせる。曲芸師のようなナイフ捌きでリンゴを剥き始めた人形を眺めながら、ロバーズが恐る恐るという表情で問いかけてきた。

 

「……そのナイフ、まさか例のあの人の杖腕を切り落とした一品じゃないですよね? だとしたら私はそのリンゴを食べたくないんですけど。」

 

「そんなわけないでしょうが。ちょっと物騒な見た目だけど、普段使いのナイフよ。私の家にはこういうナイフが多いの。」

 

何故なら咲夜が好んで蒐集しているからだ。今人形が使っているナイフは紅魔館のキッチンから借りてきたものだが、明らかに戦闘用の見た目をしている。……むしろ普通の果物ナイフが見つからなかったぞ。我が家はどうなってしまったんだ?

 

「それは……その、個性的な家ですね。さすがです。」

 

「無理に言葉を選ばなくても結構よ。自覚はあるから。」

 

その代わり、私の趣味じゃないってことだけは分かってくれ。ジト目で言った後、一応ムーディの方にもリンゴはいるかと目線で問うてみるが、用心深い熟練闇祓いは間髪を容れずに手で断ってきた。そりゃそうか。

 

予想できていた反応に鼻を鳴らしてから、病室に置いてあった皿にリンゴを切り分けていく人形を見守っていると……同じく人形を見ながらのロバーズがポツリポツリと語り出す。疲れたような、自嘲するような笑みを浮かべながらだ。

 

「でも、これでようやく一段落付きそうですね。……また生き残っちゃいましたよ。」

 

「もっと喜びなさい。貴方には家族が居るんでしょうが。」

 

「そうかもしれませんけど……それでもやっぱりキツいですよ、私よりずっと若い同僚に死なれるってのは。十五年前とはまた違った辛さがあります。」

 

十五年前は新人に毛が生えた程度だったロバーズも、今や部下を率いる立場の人間なのだ。別の立場だからこそ、別の苦しみがあるのだろう。思わず漏れ出たという感じの弱音にどう声をかけようかと迷っていると、ムーディが天井を見つめながら口を開いた。

 

「弱々しいことを抜かすな、ロバーズ。わしはあくまで臨時だ。だから、来年度からはお前が局長になるんだぞ。……いいか? 部下には決して弱みを見せるな。わしが泣き言を口にしたことがあるか? スクリムジョールの小僧が一度でも弱音を吐いたか? ……ならば、次はお前の番だ。闇祓いを率いる者としての役割を演じろ。それが局長というものだろうが。」

 

ムーディなりの、次代を継ぐ者への喝というわけか。あまりにも不器用な台詞に苦笑していると、ロバーズは呆然とした表情で返事を呟く。

 

「私が、局長? ……しかし、杖捌きで言えばシャックルボルトの方が上でしょう? 私はてっきり、彼が次の局長なのかと思ってました。」

 

「シャックルボルトが死地に赴けと言っても躊躇う者は多かろう。だが、お前が言えば皆が従う。……これにはシャックルボルト本人も同意していたぞ? 部下が命を預けられるかどうか。それこそが闇祓いの局長に最も必要な資質だ。」

 

うーむ、ムーディやスクリムジョールの時代とはまた違った闇祓い局になりそうだな。確固たる意志で強引に引っ張っていった二人と違って、ロバーズの場合は皆が支えるような雰囲気になりそうだ。……うん、悪くない。それもまた一つの在り方だろう。

 

真剣な表情で老練の闇祓いの言葉を噛み砕いているロバーズへと、ムーディはそっぽを向きながら話を締めた。

 

「正式な就任はお前の退院に合わせた八月の中頃になる。そこから先についてはわしは一切口を出さん。お前に教えられることはもう全て教えた。後は勝手にするがいい。」

 

「あの、局長。私は──」

 

「だが、忘れるな。油断大敵! 全てを疑え! 闇祓い局はイギリス魔法界の矛であり盾なのだ。お前はその先頭に立って闇を祓うことになる。誰よりも闇に近い場所でな。……決して闇に呑まれるなよ? ロバーズ。」

 

大声で言い切ったムーディは、そのまま義足を鳴らして病室を出て行ってしまう。歴史上、闇の魔術に近付きすぎたあまり闇に堕ちてしまった闇祓いは多い。あるいは、苛烈すぎる決断で批判を浴びた者もだ。

 

……ただまあ、ロバーズならきっと大丈夫だろう。こうして部下の死に苦しむ彼ならば選ぶ道を間違えたりはしないはずだ。イギリス魔法界の先頭に立って、迫る闇を祓ってくれるはず。

 

ムーディの出て行った病室のドアを無言で見つめるロバーズを横目に、アリス・マーガトロイドは切り分けられたリンゴを一つ口にするのだった。……ちょっと酸っぱいな。

 

 

─────

 

 

「ああ、失敗したわ。大失敗よ! 今年は世界情勢が大きく動いてた年だったんだから、魔法史の出題もそれに沿うものになるって予想すべきだったわ! まさか国際魔法使い連盟の成立が論述問題のテーマになるだなんて……失敗よ! 準備して然るべきテーマだったのに!」

 

談話室のソファで嘆き悲しむハーマイオニーの言葉を聞き流しながら、アンネリーゼ・バートリは小さく肩を竦めていた。どうやら我らがミス・勉強はヤマを外してしまったらしい。珍しいこともあるもんだな。

 

六月の二週目。いよいよ試験が始まったホグワーツでは、生徒たちが一喜一憂……というか、一喜九憂くらいの表情で午前のテストについてを話し合っている。毎年お馴染みの光景だが、今年ばかりは重みが違うな。何せ五年生は将来が懸かっているのだから。

 

試験初日の変身術と魔法史の筆記が終わった今、ロングボトムは余命宣告でもされたかのような表情で窓際に突っ立っているし、ブラウンとパチルはとうとうオカルトに縋り始めたようだ。今も談話室の隅っこでどデカい水晶玉に向かってブツブツと何かを呟いてる。鬼気迫る表情が軽い狂気を感じさせるな。

 

そしていつもの三人組はといえば、午後に行われる魔法薬学と呪文学の実技のために教科書を開いて最後の追い込み中だ。……正しい選択だと思うぞ。少なくとも窓絵や水晶玉よりかは役に立つだろうし。

 

黙々と調合のシミュレーションや呪文のおさらいをするハリーとロンを眺めていると、再びハーマイオニーが『呪詛』を口にし始めた。なまじ他が完璧だっただけに、魔法史の論述の失敗は彼女に大打撃を与えてしまったようだ。

 

「そうよ、情勢を鑑みるべきだったのよ。ひょっとして、薬学の課題もそうなるんじゃないかしら? 今年多く使われたのは……そう、記憶修正薬とか!」

 

「問題を考えてるヤツが誰なのかは知らんが、それが誰にせよキミほど深くは考えてないと思うよ。大人しく傾向通りの予防線を張っておきたまえ。」

 

「でも……そうね、奇を衒うのは危険よね。確実に取れる点を取らないと。」

 

「そういうことさ。……ほら、もう午前のことなんか忘れちゃいなよ。今は目の前の実技試験に向き合うべきだろう?」

 

組んだ自分の太ももに頬杖を突きながら言ってやると、一つ頷いたミス・勉強は猛然とした勢いで薬学の教科書を机に広げる。そら、一丁上がりだ。大体、ハーマイオニーが上手く解けなかった論述を他の生徒が解けてるとは思えんぞ。

 

つまりはまあ、試験結果などどうでも良い私はこうして三人の『軌道修正』を繰り返しているわけだ。西に嘆くハーマイオニーが居れば失敗を慰めて、東にボーッとするロンが居れば勉強を促し、北に絶望するハリーが居れば頑張れと応援する。……我ながら何をやっているんだか。

 

ちなみに、試験には一応私も参加する予定だ。フクロウはフランも受けたようだし、ここらで良い成績を取ってお姉さんぶろうという魂胆だったのだが……ちょっとヤバいかもしれないな。変身術はともかく、魔法史は全然分からなかったぞ。

 

グリンゴッツの成立だのマーリンの業績だのはさっぱりだったし、唯一自信を持って書けたのはヨーロッパ大戦の辺りだけだ。ただまあ、あの辺は採点者よりも詳しく書いちゃった可能性があるな。あまりに詳細すぎて、下手すると『捏造』と取られかねんぞ。

 

よし、もし成績が悪かったら受けなかったことにしちゃおう。私がかなり後ろ向きな決意を固めたところで、杖を取り出しながらのハリーが声をかけてきた。

 

「ねえ、リーゼ。邪魔よけ呪文のテストをさせてくれない? 僕に向かって何か投げてくれればいいから。」

 

「もちろん構わないさ。シリアル以外なら何でも投げるよ。シリアル以外ならね。」

 

「あー、シリアルじゃダメなの? それならちょっと待ってて。何かないかな……。」

 

シリアルはもう一生分投げたはずだぞ。言いながらゴソゴソと自分の鞄を漁り始めたハリーを横目に、チラリと少し離れたソファを見やる。咲夜と魔理沙も同級生たちと勉強しているらしい。キャイキャイと騒がしいのが五年生には無い余裕を感じさせるな。

 

「これでいいや。軽めに投げてくれる?」

 

「チェスの駒かい? キミね、何だってこんな物が鞄の中に転がってるんだ? 少しは整理したまえよ。」

 

「でも、今まさに役に立ったでしょ?」

 

「……言い訳が上手くなったじゃないか。誰の影響なんだか。」

 

私のぼやきを受けて、三人同時に無言で同じ方向を指差した。つまり、私の方を。……これはちょっと反論できんな。静かに目を逸らしながらも、呪文を使ったハリーの方へと仏頂面のポーンを投げつける。チェス以外に使われてご不満のようだ。

 

「んー、出来てるっぽいね。まあ、邪魔よけ呪文が実技に出てくるとは思えないが。」

 

それなりには便利だが、試験に出てくる類の呪文ではあるまい。ハリーの呪文で逸らされていく哀れなポーンやらルークやらを眺めながら言ってやると、融解薬の調合をおさらいしているロンが返事を寄越してきた。

 

「分かんないぜ。パーシーの年には出たらしいんだ。シェーマスはサイクル的に今年も出てくるって予想してた。」

 

「『サイクル論』は既に否定されてるわよ。アンジェリーナがそれで痛い目に遭ったって話をしてくれたでしょう?」

 

「いいや、僕は信じるね。今年は出る。絶対に出るはずだ。……じゃないと心が折れちゃうよ。」

 

何とも哀愁を感じる台詞ではないか。さすがのハーマイオニーも哀れに思ったようで、ロンに対して曖昧に頷くと教科書へと視線を戻してしまう。ロンがハーマイオニーの反論を封じた珍しい例になったな。

 

「どっちにしろ、邪魔よけ呪文は問題なさそうかな。後は薬学を詰め込んでおかないと。」

 

「ま、そっちはスラグホーンの『予想リスト』に従っておけば大丈夫だと思うよ。あの男は合計すれば半世紀以上も教師をやってるんだ。フクロウの出題予測なんぞお手の物だろうさ。」

 

「うん、今年の魔法薬学がスラグホーン先生で本当に助かったよ。もしもスネイプのままだったらと思うと……ゾッとするね。」

 

悪しき想像を打ち消すように首を振って勉強に戻ったハリーを見ながら、ソファに身を預けて思考を回す。スネイプか。ハリーは今なお大嫌いらしいが、未だ潜入中のあの男は私たちにとって大きなピースとなっている。

 

スネイプはつまり、逃亡者となったリドルに繋がる細い糸なのだ。先日レミリア経由で伝わってきたアリスの予想。大蛇が分霊箱だったというあの予想が正しいのであれば、リドルを守るものはもはやハリー自身だけということになる。

 

詰めの瞬間が近付いている今、リドルの動向を探れるスネイプの存在は途轍もなく大きいものになっているわけだ。……まあ、その辺は五日後の話し合いの後に考えればいいか。

 

私、レミリア、パチュリー、そしてゲラートとダンブルドアでの話し合い。場所の選定も難しかったし、タイミングも中々合わなかったが、ようやく五人での会談が実現することに決まったのだ。

 

リドルのこと、魔法界のこと、マグルのこと。これだけの面子であれば、何かしらの結論は出るだろう。あとはそれが吉と出るか凶と出るかだが……そればっかりは私にも予想できんな。

 

そもそもどの結論が吉で、どこに辿り着けば凶なのかすらも分からん。ゲラートとダンブルドアがある程度対立した考え方になるのだけは予想できるが、パチュリーとレミリアの思考に関してはよく分からんし……ええい、やめやめ。今考えていても仕方があるまい。

 

今回、私の役目はホストに徹することだ。悔しいことだが、五人の中で一番視野が狭いのは他ならぬこの私だろう。なればこそ、一歩引いて中立の立場から話し合いを円滑に進める必要がある。

 

もちろん脇役ってのは気に食わんが……ふん、今回ばかりは呑んでやるさ。そも私が望んだ話し合いなわけだし、それを認めさせるだけの面子が揃っているのだから。

 

何にせよ、五日後に全てが決まる。自身の中に渦巻くほんの僅かな不安と期待を自覚しつつも、アンネリーゼ・バートリは小さな微笑みを浮かべるのだった。

 


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