Game of Vampire   作:のみみず@白月

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演出と批評

 

 

「何よ? そんな顔したって声明は出さないからね。」

 

魔法省地下一階の私の執務室の中、泣きそうな表情を浮かべるブリックスを前に、レミリア・スカーレットは冷たく言い放っていた。どれだけ急かそうと今は動かんぞ。外向きの理由だってちゃんとあるだろうが。

 

「しかし、国際協力部には各国魔法省から山のように手紙が届いています。これ以上こちらで捌くのは……その、限界なんです。部長は酷いノイローゼで、ふくろうが部屋に入ってくると悲鳴を上げるようになっちゃったんですよ?」

 

「楽しそうな職場じゃないの。次からはコウモリを使うようにしなさいな。……とにかく、どこの誰から催促されようが、イギリスは戦後処理でそれどころじゃないの一点張りで返しなさい。紛うことなき事実でしょう?」

 

「でも、もう無理なんです。……だってそうでしょう? グリンデルバルドに対抗できるのはスカーレット女史だけなんですから。遠く離れた僕の世代でも常識ですよ。誰に聞いたってそう答えます。」

 

「知らないわよ、そんなもん。人を頼る前に自分で何とかしなさいよね。」

 

すげなく返してやると、ブリックスは困り果てたという表情で額を押さえ始める。言いたいことは山ほどあるが、私相手だとどう言ったら良いのかが分からないのだろう。哀れな下っ端の苦悩だな。

 

つまりはグリンデルバルドの一件について、毎度の如くロビン・ブリックスが国際魔法協力部から派遣されてきたのだ。私がひらりひらりと世界中からの手紙をあしらっている所為で、その皺寄せが国際協力部にいってしまったらしい。

 

あそこの部長には悪いが、ノイローゼが悪化してふくろうを撃ち殺し始めたところでこの姿勢を変えるつもりはないぞ。今は他国が混乱を深めている隙にフランスとマクーザを引き込む時期なのだ。先ずは自陣を固める。盤面に大きく介入するのはその後になるだろう。

 

幸いというか何というか、イギリス魔法界は自国内の戦争が一段落した直後だ。戦後処理で忙しいというのも嘘ではないし、他国への言い訳には事欠くまい。知らんぷりして淡々と書類を片付け始めた私に、ブリックスは弱々しい説得を続けてきた。

 

「じゃあ、せめてそう書いて送り返してくださいよ。『こっちは忙しいからグリンデルバルドなんか知ったこっちゃない』って。僕たちがいくら言い訳を並べても、倍の手紙が返ってくるだけなんです。」

 

「ならそれにも言い訳を書いて送り返しなさい。そしたらいつかは諦めるでしょ、きっと。」

 

「もう自動筆記羽ペンがおかしくなるまでそうしました。……知ってますか? 今の国際協力部にまともな文章を書ける羽ペンは存在しないんですよ? 大抵の羽ペンはひどい暴言しか書かなくなっちゃいましたし、僕が使ってたやつなんて自分から暖炉に飛び込んでいったんです。」

 

「あら、『羽ペン』なら魔法ゲーム・スポーツ部にまだ沢山残ってるじゃないの。クィディッチの薀蓄を披露し始めるのが鬱陶しいけど、機能としては充分でしょ。あれを使いなさいな。」

 

肩を竦めて言ってやると、ようやくブリックスは諦めたようだ。疲れたような表情で大きなため息を吐いた彼は、小さく頷いてから口を開く。

 

「……分かりました、いつもと同じ返事を書いておきます。でも、部長はもう限界だと思いますよ? 一週間でこれなんですから、来月までは絶対に持ちません。」

 

「これが終わったらいくらでも休んでいいから、今だけは何とか耐え凌ぐようにと伝えておきなさい。」

 

「部長は泣いて喜びますよ。ただまあ、最近はよく泣いてますからね。もう別に珍しくもないですけど。」

 

言うようになったじゃないか、下っ端君。軽めの皮肉と共に部屋を出て行ったブリックスに鼻を鳴らしたところで……今日は千客万来だな。入れ替わるように今度はブン屋が入室してきた。ヨーロッパが誇るペン持つ英雄、リータ・スキーターどのだ。

 

ノックも無しに入ってきたスキーターは、いつものワニ革ハンドバッグをソファに置きながら言葉を放つ。相変わらず『無礼』を体現しているような女じゃないか。

 

「どうも、失礼しますよ。……ご機嫌いかがざんすか? スカーレット女史。」

 

「上々よ。他人の混乱ってのは見てて楽しいしね。そっちは?」

 

「同じく、上々ざんす。他の記者は『グリンデルバルド復活』に比重を置いた記事でしたけど、私の記事は就任演説の内容を詳しく書いてましたからね。冷静になった後でこっちが評価されるのは当然ざんしょ?」

 

「事前に連絡を受けてたのはソヴィエト以外じゃ貴女だけでしょうしね。話を持ちかけてあげた私に感謝なさい。……それで、演説の内容に対しての反応はどうなの?」

 

マグルに対する危惧と、魔法界の現状に関する説明。グリンデルバルドは私たちの目標に関しての大演説を長々と行ったはずだが……うーん、スキーターの表情を見るにあまり正面切って受け取られてはいないらしい。そりゃそうか。別に期待してなかったさ。

 

「アジア圏ではそれなりの議論になってるみたいですけど、その他の地域ではお察しですね。グリンデルバルドへの悪感情からまともに聞いてないって感じざんす。」

 

「まあ、そんなところでしょうね。……だけど、アジア圏で議論になってるってのは予想外の成果だわ。上手く利用できないかしら?」

 

ソヴィエトに地盤があるのは認めていたが、まさかアジア全体でそうなるとはな。やっぱり厄介な男だ。余程に説得力のある演説をかましたのだろう。……ふん、私ならもっと上手く出来るさ。多分。

 

内心で演説の勉強をしようと決意した私へと、スキーターは勝手にソファへと座り込みながら言葉を寄越してきた。よし、あそこは後でしもべ妖精に掃除させよう。

 

「内容だけなら私から見ても納得できるレベルの演説だったんですけどね、ヨーロッパ側の新聞社はどこも重要な部分を『省略』しちゃってる所為で上手く伝わってないみたいざんすよ?」

 

「端っからそっちには期待してないわよ。好意的な記事を書くはずないしね。」

 

「ま、私からすればどうでも良い事ざんす。マグルのことなんか知ったこっちゃないしね。……それで、次はどう動けば? 何なら『レミリア・スカーレットとゲラート・グリンデルバルドの隠された繋がり』って記事でも出しましょうか?」

 

「あら、試してみる? 代わりの『専属記者候補』はダースで存在してるわけだけど。」

 

薄く微笑みながら言ってやれば、スキーターは大仰に両手を上げて返事を返してくる。なら聞くなよな。時間の無駄だぞ。

 

「やめときましょ。例のあの人の一件で私の記者としての名声は鰻登りだしね。その上今回の騒動が終わったら貴女が居なくなるってんなら、私としちゃあ後ろ暗い繋がりが清算できて大満足ざんす。だから最後まで付き合わせてもらいますよ。」

 

「こっちとしては貴女をそのままにしとくってのがかなり不安なんだけど……まあ、立つ鳥も偶には跡を濁すってことかしら。貴女程度の小悪党なら許容範囲内でしょ。」

 

「澄み切った川なんて退屈ざんしょ? 私たちみたいなのが少しは居ないとね。」

 

「一緒にしないで頂戴。……せめて貴女が早死にすることを祈っておくわ。」

 

ニヤニヤ笑っているブン屋に首を振ってから、差し当たりのぼんやりした指示を出す。こいつの使い所はもうちょっと後だ。今は適当に勢いをつけてもらおう。

 

「取り敢えずはグリンデルバルドに関しての記事をガンガン出しなさい。民衆の受け入れ易いように適度に叩きつつも、各所で演説の内容を取り上げること。『グリンデルバルドが言ってるから信用できないけど、この部分は確かに正しい』みたいなふんわりした文章でね。貴女は得意でしょう? そういうの。」

 

「なら、マグル学に詳しい著名人への紹介状が欲しいざんす。勿論、実際どう思ってるかはどうでも良いけどね。その辺は私が上手いこと『省略』しときますよ。」

 

「名前だけ使いたいってわけ? ……まあいいわ。何人か見繕っておくから、適当に取材してきて頂戴。ちなみに『本命』の識者は今まさにダンブルドアが探してくれてる最中よ。そっちの意見は省略しないように。」

 

「それは重畳。後々活用させてもらいましょうかね。」

 

言いながら私が手早く書き上げた紹介状を受け取ったスキーターは、ハンドバッグにそれを仕舞い込むと……こうしちゃいられないとばかりにドアへと歩き始めた。こいつのことは大っ嫌いだが、仕事の早さだけは認めてやってもいいかもな。

 

「今はまだ目立ちすぎないようにね? 貴女の出番はもう少し先なんだから。」

 

「はいはい、分かってますよ。どんな脚本なのかを楽しみに待っておくざんす。」

 

私の忠告を受けてひらひらと長すぎる赤い爪を振ったスキーターは、そのまま私の執務室を出て行く。……しかし、アジアか。もし利用するとなれば、グリンデルバルド側から干渉することになりそうだな。

 

私では影響力も薄いし、今はヨーロッパと新大陸への対処で手一杯だ。よし、その辺は一度リーゼを連絡に向かわせて詳細を詰めてみよう。グリンデルバルド側の視点がどうなっているのかも気になるし。

 

脳内で今後の予定を整理しつつ、手元の羊皮紙に確認事項を纏め始めたところで……ふと頭の中に疑問がよぎる。そういえば、新大陸には誰を連れて行こうか? スクリムジョールは決定済みだが、もう一人くらいは動かし易い部下を連れて行くべきかもしれない。

 

表向きの訪問の目的は今回の戦争への援助に対する感謝で、裏向きは当然グリンデルバルドに関しての説明をするためだ。となると……やっぱりアリスかな。人形娘なら両方の目的について詳しいし、外交官としての立ち振る舞いも問題ないだろう。

 

あーもう、面倒くさいな。新大陸に行くのなんぞ考えるだけでも苛々してくるが、マクーザを引き込まないことには世界の意見はバラけたままだ。ならば、せめてアリスにもこの不幸を共有してもらおうではないか。

 

迫る『出張』を思ってうんざりしながらも、レミリア・スカーレットは再びペンを走らせる作業に戻るのだった。

 

 

─────

 

 

「こういうのを一触即発って言うんだろうね。……ふむ、ギリギリまで膨らんでいるものを見ると破裂させたくなっちゃうのは私だけかい?」

 

……残念、返答はなしか。今は冗談に付き合う気分ではないらしい。私の質問を無視するゲラートに鼻を鳴らしながら、アンネリーゼ・バートリはしもべ妖精が用意した紅茶に口を付けていた。薄いな、これ。イギリス人には物足りないと思うぞ。

 

場所はソヴィエト魔法界の頂点たる、中央魔法議会議長室だ。世界を揺るがす大騒動の震源地となっているこの場所へ、レミリアからの報告を伝えに来たのである。しかしまあ、面白い部屋だな。

 

古式ゆかしい豪華な部屋だってのは当然として、一際目を引くのは部屋の奥に置かれた金細工の椅子だ。床より一段高い台の上に置かれたその『玉座』には、ロシアの皇帝のみが座ることを許されているらしい。議長は皇帝の下だってのを表現しているのか?

 

もちろん本当に皇帝が座るわけではなく、あくまでも議長への戒めとして設置しているのだろうが……エントランスホールといい、ソヴィエト闇祓いの様子といい、ここは形式に拘る国みたいだな。

 

もう座れる者の居なくなってしまった椅子を眺める私へと、羽根ペンを走らせながらのゲラートが注意を放ってきた。

 

「一応言っておくが、座ろうとはするな。かなり強力な魔法がかかっているぞ。……就任時の説明によれば、座った者の血統に反応する魔法らしい。」

 

「ふぅん? そう言われると俄然試したくなってくるな。私はやるなと言われたことは大抵やってきたんだ。だったら今回だってそうすべきだろう?」

 

「余計なことをする天才だな、お前は。……あの椅子にかかっているのは恐らく『本物の』魔法だ。吸血鬼ですら危ういかもしれんぞ?」

 

「……なら、やめておこうか。それはちょっと怖いしね。」

 

イギリスにモルガナやパチュリーが生まれたように、この国にも本物の魔女は居たはずだ。ゲラートがこういう言い方をするということは、きっとそういう存在が作った椅子なのだろう。ちょびっとだけ残念だが、好奇心で座るには危なすぎるな。

 

諦めてソファに座り直した私へと、ゲラートは先程から行なっていた現状確認を続けてくる。

 

「とにかく、『反対派』の急先鋒となっているのはポーランドとギリシャだ。ソヴィエト国内の反対派と協力して、議会への干渉を強めているらしい。……俺が言うのもなんだが、当然の反応だと言えるだろうな。」

 

「実に愉快な状況じゃないか。就任直後に解任決議を起こされた議長だなんて、歴史上キミ以外存在しないだろうね。ここまでくると喜劇として通用するぞ。」

 

「……連中が何をしようが、議会の過半数は確保してある。『強硬手段』以外で崩されることはまず無いだろう。」

 

「だが、民意はどうなんだい? まともな思考回路を持つ魔法使いなら、ゲラート・グリンデルバルドが議長になるのを是とはしないはずだが。」

 

何せかなり強引な手段で議員になって、その直後に数の暴力で議長へと就任しているのだ。昔のイギリス魔法界も大概酷かったが、こちらの魔法界も古くさい政治構造をしているらしい。民意もクソもないじゃないか。

 

呆れる私の疑問に対して、ゲラートは意外な答えを返してきた。

 

「こちらの調べによると、ソヴィエト魔法界の民意は均衡しているようだ。……イギリスの常識を持ち込まないことだな、吸血鬼。この国では誰もがスカーレットに賛成しているわけではない。ヨーロッパ大戦を『敗北』と捉えている魔法使いはお前が思っているよりも多いぞ。」

 

「……なるほどね。同じ色でも見え方は人によって違うわけか。一つ勉強になったよ。」

 

「更に言えば、国内の反対派の半数近くは俺の議長就任そのものに反対しているわけではなく、他国との関係悪化を懸念しているだけだ。本質的には概ね受け容れられていると言って問題ないだろう。」

 

「いやはや、ここがイギリスじゃないってことを改めて実感する気分だね。ヨーロッパの連中が聞いたら驚くぞ。」

 

ヨーロッパとは常識が反転しているな。この国ではレミリアの方が悪者ってわけだ。……うーむ、私もソヴィエトに移り住むべきかもしれない。一緒に悪口を言うお友達が沢山できそうだし。

 

懐の小瓶から薄すぎる紅茶に血を注ぎつつ、今度は私から報告を飛ばす。ゲラートの話でソヴィエトの動きは凡そ理解できた。次はイギリスの目線を共有すべきだろう。

 

「それでだ、イギリス側の状況だが……まあ、こっちも順調と言えば順調に進んでるよ。フランスと新大陸の初動は抑えてあるし、近いうちにレミィが説得に向かうからね。残念ながら『風船』が破裂することはなさそうだ。」

 

「アフリカはどうなっている? あそこの戦士どもは厄介だぞ。……五十年前も幾度となく手痛い被害を被ったからな。」

 

「現時点では静観しているが、戦端が開けば間違いなく介入してくるだろうね。……その辺はレミィの調整に期待かな。」

 

「スカーレットにはアフリカの議会を侮るなと伝えておけ。あの国の魔法は奥が深い。俺たちとはまた違ったものを見ているはずだ。」

 

真剣な表情で言ってくるゲラートに、一つ頷いて同意に代える。そもマグルに対する考え方からしてヨーロッパやアジアとは正反対なのだ。下手に突けば『革命』の大きな障害になるかもしれない。

 

ふむ、アフリカの議会相手に限るなら、もしかしたらレミリアよりもダンブルドアの方が相性が良いかもしれないな。帰ったら提案してみようと心の中のメモ張に記しながら、次に当面の動きについてを口にした。

 

「何にせよ、暫くはドイツに対する働きかけとアジア側への問題の周知を繰り返してくれ。レミィが思ってたよりも反応が良いみたいだし、この段階でここの民意を固められればかなりデカいぞ。」

 

「言うは易し、だな。アジアは香港自治区が纏まらない限りは纏まらないだろう。そして、あの街が『纏まる』などということは未来永劫有り得まい。少なくとも日本魔法省が反対の立場を取っている以上、東西のバランスを調整するために香港は中立を保ち続けるはずだ。」

 

「相変わらずアジア情勢は複雑怪奇だね。あの悪名高き混沌の都が、一種のバランスキーパーになってるわけだ。……香港をどうにかして引き込むのは無理なのかい? キミがダメなんだったら、レミィの方から働きかければ良いじゃないか。」

 

二人揃って無理なんてことが有り得るか? 首を傾げる私へと、ゲラートは即座に否定の言葉を寄越してくる。

 

「無理だろうな。あの街には表も裏も存在していない。今や明確な指導者は歴史の闇に消え、裏側を取り纏める者すら居ない始末だ。」

 

「呆れたね。それでどうやって成立してるんだい?」

 

「アジアにとって必要だからだ。……世界の全てから追われる者でも、あの街だけは受け入れてくれるだろう。香港特別魔法自治区はそういった後ろ暗いものを持つ魔法使いたちが集まり、暗黙の不確かなルールの上で成り立っている場所なんだ。何一つ明確な法など存在しないが、外敵にだけは一致団結する。……香港を引き込めばアジア情勢は一気に進展するだろうが、現状では放っておくのが一番だろうな。不用意に手を出せば痛い目に遭うぞ。」

 

「つまり、香港はアジア魔法界の必要悪ってわけだ。親近感が湧くじゃないか。」

 

聞けば聞くほど面白い場所だな。間違いなく人外も大量に隠れ潜んでいるのだろう。アジア圏の文化を知るのは『移住先』の生活で役立つだろうし、今度行ってみるのも良いかもしれない。

 

まだ見ぬ香港へと思いを巡らせる私に、ゲラートは書き上げた書類を壁から伸びるパイプに入れながら声をかけてきた。何処かへ送ってるのか? ソヴィエトじゃ紙飛行機を使おうなどと言うアホは現れなかったらしい。

 

「スカーレットに確認しておけ。高みの見物を気取るのは結構だが、この混乱を扱いきれなくなる前に対処しろとな。時期を逃せば我々ですら波に飲まれかねんぞ。」

 

「んふふ、『原因』が言うと説得力があるね。……ま、伝えておくよ。他には?」

 

「こちらの現状はここに纏めておいた。スカーレットの計画の問題点も指摘してある。これを見せれば十分だ。」

 

言いながらゲラートが杖なし魔法で飛ばしてきた羊皮紙に目をやると……おお、これは凄いな。理路整然とレミリアの計画への『ダメ出し』が書き連ねてある。隙間なく、ビッシリと、ハーマイオニーのレポートよりも細かい字でだ。

 

「これは絶対に、絶対にこの手で渡してみせるよ。いやぁ、今からレミィの反応が楽しみだ。額に入れて我が家のリビングに飾るべきかもしれないな。」

 

こんなもん渡したら激怒するぞ、あいつ。……よしよし、見せる時は咲夜が近くに居る時にしよう。咲夜に取り乱すところを見せたくはないだろうが、同時に我慢できるはずもない。かなり愉快な表情の変化を楽しめそうだ。

 

呆れた表情で突っ込みを放棄したゲラートを横目に、アンネリーゼ・バートリは手に入れた『悪戯グッズ』を懐へと仕舞うのだった。

 


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