Game of Vampire   作:のみみず@白月

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大人と子供

 

 

「ふぅん? 憂いの篩ね。……まあ、良いことだと思うよ。ダンブルドアも粋なことをするじゃないか。」

 

一年生の頃からサイズがピッタリなままの保護手袋を嵌めながら、アンネリーゼ・バートリは保護用ゴーグルをかけているいつもの三人に返事を返していた。両親の記憶か。色々と思うところはあるが、どう転んでも悪影響にはならないだろう。

 

昨晩遅くにモスクワからホグワーツに戻ってきた私は、仮眠を終えて一コマ目の薬草学の授業を受けている最中なのだ。温室の中で作業の準備をしながらの三人の話によれば、私が居ない間にダンブルドアが魔道具を使ってハリーに両親の記憶を見せたらしい。

 

ダンブルドアが何を思ってやっていることなのかは知らんが、ハリーにとって良い機会なのは間違いあるまい。明るい表情で賛意を表明した私へと、当のハリーは困ったような顔で説明を続けてくる。

 

「それでね、ダンブルドア先生が今週末も見せてくれるって言うから、ついついサクヤも誘っちゃったんだけど……ダメだったかな?」

 

「ん? 咲夜も一緒に見られるってことかい?」

 

「うん、アレックスさんとコゼットさんも記憶の中に居たんだ。だからサクヤにも見せてあげたくてさ。ダンブルドア先生にはもう了承をもらってあるよ。」

 

「だったらダメもなにもないよ。咲夜本人がオーケーしたなら私に止める権利はないさ。……いやまあ、別に止めようとも思わないけどね。」

 

ふむ、ちょうど良いタイミングなのかもしれないな。あの子はもう少し『ヴェイユ』を知るべきだと考えていたところだ。レミリアは目を背けて見ないフリをしているようだが、咲夜はまだ人間か人外かを明確に選んでいない。このままなし崩し的に幻想郷に連れて行くわけにはいかないだろう。

 

きちんと両方の世界を見せて、その上で咲夜自身に決めさせるべきだ。……あの親バカを説得するのは億劫だが、この辺は一度レミリアと話し合う必要があるな。タイムリミットもあるわけだし、咲夜がこっちに残るのであれば色々と準備する必要が出てくる。近いうちに紅魔館できちんと話すか。

 

親バカと話し合う苦労を思って額を押さえる私に、ゴーグルが大きすぎて隙間が出来てしまっているロンが口を開く。学校の備品はやっぱりダメだな。見た目がかなり間抜けだし、私はゴーグル無しでいこう。

 

「でも、サクヤはリーゼに口を出して欲しいみたいだったぜ? 止める気がないなら背を押してあげた方がいいんじゃないか?」

 

「あの子が頼ってくるのに応えたいのは山々だが、そろそろ咲夜には自分の判断を大事にしてもらいたいのさ。いつまでも私やレミィから言われるがままに動くのは不健全だろう? たまには反抗するくらいになってくれないとね。」

 

『反抗する咲夜』というのは想像するだけでダメージが大きいが、かといって唯々諾々と私たちに従うのは宜しくない。本人がどう思っているかはさて置き、私にとっての咲夜は使用人ではなく娘に近い存在なのだから。

 

悩ましい表情で答えた私に対して、ハリーにマウスピースを渡しているハーマイオニーが肩を竦めてきた。

 

「私から見ればサクヤは割としっかりしてる方だと思うけどね。判断基準が確立してるっていうか、何を重視すべきかをきちんと定めているっていうか……まあ、そんな感じで。」

 

「おや、そうかい?」

 

「あまりにも迷いがないから、逆に危なっかしく見えちゃうんじゃない? あの子の場合、迷う余地がないんじゃなくて迷わず選択しただけなのよ。選択肢そのものは沢山あったんじゃないかしら。」

 

「……うーん、難しいね。アリスの時も色々と悩んだ覚えがあるが、こればっかりは慣れじゃどうにもならなさそうだ。」

 

アリスの場合は……そうだな、親離れのタイミングがいきなりすぎて困った記憶があるぞ。あの子がホグワーツに入学して数年が経った頃、私に対して急に余所余所しく接するようになっちゃったのだ。

 

それまでは時たま無防備に甘えてきてくれたというのに、ある時期を境にそれが無くなったどころか、私が額にキスしようとすると真っ赤になって慌てて離れていくようになってしまった。プライドが邪魔して誰にも相談できなかったが、あの時は物凄く寂しかったぞ。パチュリーやエマに対しては普段通りだったのだから尚更だ。

 

少ししたら大分落ち着いたのだが……今思えば、あれがアリスなりの反抗期だったのかもしれないな。他には反抗らしい反抗もなかったし。子育ての謎について腕を組んで考え込んでいると、三人が何ともいえない表情で私を見つめているのが目に入ってくる。

 

「……何だい?」

 

「いや、そこでマーガトロイド先生の名前が出てくるとは思わなかったから。何かこう、ちょっとビックリしちゃって。」

 

「そういえば、マーガトロイド先生はリーゼの屋敷で育ったんだもんな。それは知ってたんだけど……うん、やっぱり変だ。違和感が凄いよ。」

 

「リーゼとマーガトロイド先生の立場が逆ならしっくりくるのよね。私たちにとって同級生のリーゼが『お母さん』してるのが想像できないし、大人っぽい雰囲気のマーガトロイド先生が『子ども』のイメージも難しいわ。頭がこんがらがっちゃいそうよ。」

 

なんだその理不尽な文句は。口々に意味不明な台詞を寄越してくる三人にジト目を送りつつ、腰に手を当てて反論を言い放った。

 

「キミたちね、アリスこそが私にとっての『娘』なんだぞ。もちろん咲夜も愛しているが、アリスに関しては一人で育てたっていう自負があるからね。」

 

パチュリーや小悪魔、エマなんかはどちらかといえば『妹』に近い感覚で見ている節があるが、私にとってはそうじゃないのだ。そして、私がアリスに向けている感情は咲夜に対するそれともまた違う気がする。

 

二人への愛情に優劣を付ける気は微塵もないが……言うなれば、咲夜が『紅魔館全体で育てている一人娘』なのに対して、アリスは『私個人が庇護すべき存在』ってところか。咲夜に関してはレミリアの親バカっぷりが激しすぎて一歩引いてしまうのだ。咲夜のことは父親の目線で見ていて、アリスは母親の目線で見ているというのが近いかもしれない。

 

形容し難いニュアンスをどう伝えようかと迷っていると、その前にスプラウトの指示が聞こえてきた。どうやら話し込んでいる場合ではなかったようだ。

 

「さあ、ネビルが早くも最初の種を取り出しましたよ! 皆さんも急いで課題に取りかかるように!」

 

スプラウトの指し示す方向に目をやってみれば……やるじゃないか、ロングボトム。顔に擦り傷やら打撲痕やらを作りまくったロングボトムが、誇らしげに高々とグレープフルーツ大の緑色の種を掲げているのが見えてくる。彼はこのところこれまで以上の熱意で薬草学に取り組んでいるのだ。六月の戦いが切っ掛けだったのかは知らないが、何にせよ将来の目標を薬草学に関係することに定めたらしい。

 

「それじゃ、僕たちもそろそろ作業に入ろうか。……最初に僕とロンで触手を押さえ込むから、リーゼとハーマイオニーで種を取ってくれる? ロンもそれでいいよね?」

 

「まあ、そうだな。僕たちの顔がボロボロになっても誰も悲しまないだろうし。」

 

ロングボトムの勇姿を目にして今日の課題……『スナーガラフ』に向き直ったハリーとロンの優しさを受けて、私とハーマイオニーが即座に頷きを返す。一見すると単なる古ぼけた切り株にしか見えないが、スプラウトの説明によれば一度触れると頂点に空いた穴から五、六本の棘だらけの触手が襲いかかってくるらしい。ちなみに目的である種は触手が出てくる穴の中。つまり、忌々しいそれを回収するには触手をどうにかする必要があるわけだ。

 

正直言ってそんなもんで私の肌が傷付くとは思えないが、かといって率先して触れたいものでは当然ない。ここは男を見せてくれた二人に任せることにしよう。か弱いリーゼちゃんはここで応援してるからな。

 

緊張した表情のハリーとロンは切り株を囲むように位置取ると、そのまま息を合わせて飛びかかるが……うーむ、これは時間がかかりそうだな。ハリーは素早く伸びてきた触手にアッパーカットを食らい、ロンは手にしていた剪定バサミを奪われてしまった。想像していたよりも棘が多いし、スナーガラフは手に入れたハサミをぐるんぐるん振り回している。なんとも愉快な植物ではないか。

 

慌ててハサミを取り返そうとしている二人を眺めつつ、隣のハーマイオニーへと声をかけた。ハリーたちの戦いは暫く続きそうだし、忘れないうちに十月の予定を伝えておこう。

 

「ところで、十月の序盤あたりも城を空けることになるかもしれないんだ。今回よりも長くなりそうだから、咲夜のことをよろしく頼むよ。」

 

「もちろん構わないけど、またどこかに行くの? 最近は忙しいのね。」

 

「本決まりじゃないんだが、日本に行くかもしれなくてね。キミも国際カンファレンスのことは知っているだろう? レミィが参加する予定だから、付いて行こうと思ってるんだよ。」

 

ハリーが隙を突いて二つの触手を固結びにしたようだが、結び目がハンマーのようにロンへと襲いかかっている。策が裏目に出たみたいだな。そんな奮闘を横目に言ってやると、ハーマイオニーは少し驚いたように返事を寄越してきた。

 

「あら、会場は日本になるの? だったら何かお土産を頼もうかしら。……それとも、そんな余裕なさそう?」

 

「いや、平気だよ。カンファレンスの少し前に現地に着いて、終わった後も何日か観光に残るつもりだからね。アリスも一緒みたいだし、どうせ買い物には行くことになるさ。」

 

「んー、羨ましい日程ね。それなら色々とお願いするわ。日本製の物はこっちで買うと高くって。……さて、そろそろ手伝いましょうか。うちの騎士さんたちは頼りにならなさそうだし。」

 

「んふふ、そのようだね。危なっかしくて任せておけないよ。」

 

まったく、切り株一つに苦戦するとは何事だ。ハーマイオニーと一緒にやれやれと首を振りながら、触手に翻弄されている二人の援護に入るのだった。よしよし、全部引っこ抜いて単なる切り株にしてやろう。

 

───

 

そして薬草学の授業も終わり、城に戻った私は談話室に向かって一人で廊下を歩いていた。ハリーとロンは昼休みまでクィディッチの練習で、ハーマイオニーは数占いの授業。それぞれ別の予定が入っていたわけだ。

 

うーむ、昼食までどうしようか。まだいい感じの趣味は見つけられていないし、パチュリーを見習って本でも読むか? 生まれた暇をどう潰そうかと考えていると、通り過ぎようとした分かれ道の先から微かに……喧嘩? 怒鳴り声のような物音が聞こえてくる。

 

好奇心に従ってピタリと立ち止まって耳を澄ませてみれば……ふむ、面白そうじゃないか。『マグル生まれ』だとか、『穢れた血』って単語が聞こえてきたぞ。これでスリザリン生が関わってるのは確定だな。ついでに言えば、声の主が時勢を理解できてないアホなのも確定だ。

 

一瞬だけ逡巡した後で、くるりと身を翻して声の出所へと歩き出す。どうせ談話室に戻っても暇になるだけなのだ。だったらいっそトラブルに首を突っ込んでみることにしよう。面倒くさくなりそうならマクゴナガルあたりにぶん投げちゃえばいいわけだし。

 

一つ頷きながらも普段はあまり通らない二階北側の廊下を進んで行くと、怒鳴り声が近付くのと同時に現場の状況が目に入ってきた。人気のない廊下に居るのは蹲っているグリフィンドールの女の子が一人と、それを囲むスリザリンの男子生徒が三人。背丈を見るに全員一年生のようだ。なんだよ、ガキの喧嘩か。期待外れだな。

 

もうこの時点で興味は薄れてしまったが、折角来たんだし一応関わってみるかと足を踏み出そうとしたところで、私とは逆方向からその集団に歩み寄っている人影が視界に映る。おやまあ、こいつも夏休みの間に随分と背が伸びたな。ホワイトブロンドの髪をオールバックに撫で付けた、我らが青白ちゃんのご登場だ。

 

マルフォイの方は私の存在には気付いていないようで、一直線に一年生の集団へと向かって行ったかと思えば……おっと? 意外な展開じゃないか。何故かスリザリンのバカガキどもを叱り始めた。

 

「何をしている、お前たち! 授業はどうした? こんなところで下らないことをしている暇があるのか?」

 

「授業に行く途中で穢れた血を見つけたんです、マルフォイ先輩。だから僕たちで追い出してやろうと思って。こんなヤツ、ホグワーツに相応しくないでしょう?」

 

「内心どう思っているにせよ、時勢を鑑みればそれは大声で喧伝すべき内容ではないな。賢い蛇は寡黙なものだ。お前たちも誇り高きスリザリンの一員ならば、舌は使うべき時に使え。」

 

「でも、でも……こいつはグリフィンドールです! だからどうでも良いじゃないですか。僕たちはちゃんと教師に見られないようにやってます。」

 

なんとまあ、スリザリンは優秀な新人を獲得したようだ。したり顔で言うリーダー格らしきクソガキを見て、マルフォイが疲れたように額を押さえたところで……わざと大きめに靴音を鳴らしながら近寄った私が声を放つ。そら、怖い吸血鬼の登場だぞ。

 

「んふふ、懐かしいね。同じような台詞を私が一年生の頃にも聞いた気がするよ。……久し振りじゃないか、マルフォイ。最近は構ってくれない所為でハリーが悲しんでたよ?」

 

「……これは、バートリ女史。ご無沙汰しております。」

 

「おお、ゾワっとするね。……薄気味悪い敬語はやめたまえ。キミの立場はレミィから聞いているが、あからさま過ぎるとかえって嫌味だぞ。これまで通りで結構だ。」

 

「では、そうさせてもらおう。」

 

うーん、変わったな。父親が死んだからか、当主になったからか、それともリドルが失脚したからか。何にせよマルフォイはプライドよりも建前を優先できるようになったらしい。必要ならば私相手にでも媚びへつらうわけだ。

 

しばらく見ない間に大人になっちゃった青白ちゃんに苦笑していると、リーダー格のクソガキが私に向かって文句を飛ばしてきた。私のことを知らんのか、こいつは。

 

「お前もグリフィンドールか? 下級生の癖してマルフォイ先輩に失礼だぞ。」

 

「これはこれは、驚いたね。キミは今のやり取りを聞いて何か違和感を感じなかったのかい? 一年生にしたって察しが悪すぎると思うよ。……まさか、脳みそを家に忘れてきたとか? それは大変だ。早く両親に手紙を書いて届けてもらいたまえ。空っぽの頭で字が書ければの話だが。」

 

憎ったらしいガキの台詞を受けて、大人気なく十倍くらいの皮肉を返してやると、みるみるうちに顔を真っ赤にしたクソガキは……おや、蛇寮にしては勇敢じゃないか。杖を抜いてこちらに向けてくる。

 

ふふん、とにかくこれで『正当防衛』は成立だな。五百歳と十一歳だろうが法は法。『命の危険』がある以上、杖を向けられたら反撃せねばなるまい。私は順法精神溢れる善良な吸血鬼なのだ。ユースティティアの加護は我にあり。

 

ムーディを見習ってイタチに変えてやろうと最速で呪文を放つと、慌てて間に割り込んできたマルフォイが無言呪文でそれを防ぐ。成長したな、青白ちゃん。

 

「……正気か? バートリ。相手は一年生だぞ。」

 

「『うちの寮生を苛めていたスリザリンの』一年生だろう? 私がお優しく諭してあげるとでも思ったのかい? 残念ながら私はハーマイオニーとは違うんでね。愛すべき目玉グルグル人間と同じく、身体で覚えさせるタイプなのさ。」

 

ニヤニヤ笑いながら杖を振ってそこを退けと伝えてみると、マルフォイは呆れたような表情で返答を寄越してきた。彼は私よりも大人なようだ。

 

「僕がきちんと言い聞かせておく。苛めのことも、お前のこともな。それで充分だろう?」

 

「どうかな? 私にはそうとは思えないけどね。……ま、いいさ。スリザリンの監督生どのの手腕に期待してあげよう。ただし、次に同じようなことをしたら容赦しないよ?」

 

「分かっている。……行くぞ、お前たち。口は閉じたままでだ。これ以上問題をややこしくしないでくれ。」

 

むう、不完全燃焼だな。今日の私はイタチを振り回したい気分だったんだが。困惑顔のクソガキ三人組を引き連れたマルフォイは、結構な早足で廊下の奥へと消えて行く。一刻も早く悪しき吸血鬼から下級生たちを引き離すべきだと考えたようだ。

 

それに鼻を鳴らした後で、ずっと隅っこで蹲っていたグリフィンドール生へと近付いてみると……あー、誰だっけ、こいつ。アーモンド色の子猫ちゃん。リヴィングストンだったか?

 

「やあ、リヴィングストン。災難だったね。大丈夫かい?」

 

しゃがんで声をかけてみると、リヴィングストンは目尻に涙を浮かべながら小さく頷いてきた。手には母親が縫ったらしい手作りの鞄が握られていて、辺りには教科書が散乱している。破かれちゃったのか?

 

「ほら、泣いてたら可愛い顔が台無しだぞ。鞄を破かれたのかい? 見せてごらん。直してあげるから。」

 

どうやら組み分け帽子は今年も盛大な間違いを犯したようだな。こいつは仲良しこよしのハッフルパフに入れるべきだったと思うぞ。制服の袖で涙を拭いながら問いかけてやると、リヴィングストンは目を瞑ってされるがままになった後、再び頷いて鞄を差し出してくる。なるほど、『だんまりタイプ』か。

 

レパロ(直れ)。……そら、これで元通りだ。他に壊された物は?」

 

修復呪文で手早く鞄を直した後、杖を振って教科書を集めながら質問を送ってみれば、リヴィングストンはふるふると首を振ってからか細い声でお礼を言ってきた。これはまた、昔のパチュリーが『大声』に思えるような声量じゃないか。

 

「……ありがとう、ございます。」

 

「まあ、同じ寮だしね。別に構わないさ。……それより、早く次の教室に行った方がいいと思うよ。授業はもう始まっちゃってる時間だぞ。」

 

肩を竦めて言ってやると、リヴィングストンは……何だ? 私の制服の袖を掴んで何かを訴えかけてくる。いやいや、喋ってくれよ。黙ってたら何も分からんぞ。

 

「何だい?」

 

笑顔の仮面を被ってなるべく優しい声で聞いた私に、リヴィングストンは袖を握ったままの上目遣いでポツリと自身の要求を呟いた。

 

「あの……教室まで、一緒に。呪文学です。」

 

「……いいけどね、暇だし。」

 

面倒くささと上級生としての自覚、呆れと庇護欲。それらを載せてみた結果ギリギリ承諾に傾いた天秤に従って、リヴィングストンと一緒に呪文学の教室に向かって歩き出す。こいつ、こんな調子でこの先大丈夫なんだろうか? ルーナのように割り切っているわけではないようだし、気弱さもロングボトムが一年生の頃より酷いぞ。

 

うーむ、こんなことなら無視して談話室に戻っておくべきだったな。ちょっとだけ嬉しそうな顔で付いてくる子猫ちゃんを尻目に、アンネリーゼ・バートリは小さくため息を吐くのだった。

 

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