Game of Vampire   作:のみみず@白月

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カメと靴

 

 

「んー? ……まあ、悪くないんじゃないか? かなり状況はマシになったわけだろう?」

 

向こうのテーブルで同級生と一緒に宿題をしている咲夜のことを見つめながら、アンネリーゼ・バートリはロンに空返事を返していた。マクゴナガルによれば先日二つ目の記憶を見たらしいが、それ以降少し元気がないような気がするな。思い切って声をかけるべきか? しかし、咲夜から相談してこないのに出しゃばるってのは……うーむ、悩ましい。どうすれば良いのか分からんぞ。

 

月初めに開かれたロンの誕生日パーティーも無事に終わり、イースター休暇が迫る三月も半ばの今日、夕食後の談話室にて毎度のお喋りを楽しんでいるのだ。先日行われたシーズン二戦目の結果についてロンとハリーが議論を交わしているのだが、私はそんなことより咲夜の様子が気になって仕方がないのである。

 

この前とうとう我慢できなくなって魔理沙にそれとなく聞いてみたものの、金髪魔女見習いは頑として口を割ろうとしないし……あーもう、気になるな。ロミルダ・ベインと仲良く言い争いをしている咲夜を眺める私を他所に、ハリーとロンは優勝するための得点計算を再開した。ちなみにハーマイオニーはその隣でジニーに勉強を教えている。フクロウ試験が迫ってきた今、赤毛の末妹どのにハリーといちゃこらする暇などないらしい。

 

「スリザリンがレイブンクローに百七十点差で勝ったんだから、全寮共に一勝一敗なわけでしょ? グリフィンドールが最終戦でスリザリンに勝たなきゃいけないのは当然として、ハッフルパフ対レイブンクローの結果次第で優勝ラインが大きく変わりそうだね。」

 

「出来ればハッフルパフに勝ってもらいたいな。レイブンクローはスリザリンとの差を縮めるためにギリギリまで粘るはずだ。」

 

「そこが問題だよね。……まあでも、最終試合ってだけマシじゃない? ボーダーラインがはっきりした状態で試合が出来るわけだしさ。」

 

勉強する時より数倍真剣な表情で話し合うクィディッチバカ二人へと、ジニーの答案用紙を採点しながらのハーマイオニーが声を放った。生徒どのの顔がどんどん曇っていくのを見るに、あまり良い点数にはならなさそうだ。

 

「アレシアの様子はどうなの? この前の試合でもちょっとぎこちなかったみたいだけど。」

 

「あー……悪化はしてないって感じかな。活躍ってほどじゃないけど、一応ブラッジャーには触れたわけだからさ。ハリーが速決した所為で勝ったっていう実感があんまりないみたいなんだ。」

 

ロンの言う通り、先日の対ハッフルパフ戦は初戦より多少マシ程度の短い試合となったのだ。クィディッチに興味がない私としては長々と続くより良いと思うのだが、他の生徒たちは不完全燃焼気味らしい。二試合続けてというのが響いたのだろう。

 

頰を掻いて苦笑するロンに、ハーマイオニーが答案用紙を返しながら返事を送る。そら、受け取ったジニーの顔色が髪と正反対になってきたぞ。

 

「まあ、最近は前ほどリーゼやマリサにベッタリって感じでもないしね。同級生とも少しは話してるみたいだし、練習も引き続き頑張ってるんでしょう? このまま進めば大丈夫じゃないかしら。……だけどジニー、貴女の場合はこのまま進むと魔法薬学がギリギリ不可になっちゃうわよ。四年生の辺りを重点的に復習することをお勧めするわ。」

 

「うん、思ってたよりもヤバいみたいね。……いっそのこと薬学は捨てちゃおうかしら? 強化薬の九種の調合法なんて一生かけても覚えられる気がしないし。」

 

「そもそも何を目指すつもりなの? 進路指導はイースターなんだから、もう決めておかないとダメよ? 六年生からの授業選択もそれに左右されるんだし。」

 

後輩の指導に熱が入ってきたハーマイオニーへと、ジニーがちょびっとだけ恥ずかしそうな顔で答えを口にした。

 

「えっとね、その……報道に興味があってさ。つまり、予言者新聞社に入りたいと思ってるんだよね。変かな?」

 

おー、予言者新聞か。意外な進路が飛び出してきたな。ハリーやロンも驚いているし、まだ誰にも明かしていなかった事実のようだ。

 

「変じゃないわよ。報道は社会の仕組みの中でも大切なものだし、それを目指すのは立派なことだと思うわ。……でも、予言者新聞社じゃないとダメなの? 何て言うか、あんまり良いイメージが無いのよね。」

 

「ま、そうだね。スキーターみたいなのが重用される新聞社な上に、今の編集長をやってるドブ・フォックスも中々の曲者だぞ。レミィ経由で色々と『頼もしい』逸話を聞いてるよ。」

 

スキーターが真実よりも本人の社会的名声を重視しているのはお馴染みの事実だし、フォックスにしたって自社の売り上げこそがこの世で一番といったご様子なのだ。困り顔のハーマイオニーと皮肉げな笑みの私の言葉を受けて、ジニーは小さくため息を吐きながら応じてくる。

 

「それでもイギリスの最大手はやっぱりあそこなのよ。……私、リータ・スキーターのことは大っ嫌いだけど、彼女のやってることが凄いってことは認めざるを得ないわ。だって、今やイギリスどころかヨーロッパの誰もが彼女の記事に左右されてるじゃない。そりゃあ対抗試合の頃の記事は本当にムカついたし、根も葉もない捏造ゴシップばっかりだったけど……最近はマグル問題の牽引役とかって高い評価を受けてるでしょ? あれってひょっとしてスカーレットさんと連携を取ってるの?」

 

最後の問いを私に投げかけてきたジニーへと、軽く頷きながら口を開く。少なくとも彼女にはそれに気付ける脳みそがあったらしい。イギリス魔法界の大抵の魔法使いよりも賢いことが証明されたな。

 

「ご明察。予言者新聞社は今やレミィの優秀な部下なのさ。……失望したかい?」

 

「あら、逆よ。むしろ魅力が増したわ。私もそのくらいのことをやってみたいの。世の中を良い方向に進めるために魔法省と連携を取ったり、あるいは敵対したりってことをね。」

 

「ふぅん? 結構な野心があるみたいじゃないか。……何にせよ、悪くない夢だと思うよ。給料もそこそこみたいだしね。」

 

座っていたソファに寝転がりながら賛意を表明した私に続いて、ハーマイオニーも……おや? 栗毛の先輩どのはちょっと苦い表情だ。一概に賛成というわけではないらしい。

 

「ジニーの夢は否定しないわ。応援したいとも思うしね。……だけど、魔法省と繋がってるっていうのは良くないことなんじゃないかしら? 報道と政府は別個のものであるべきよ。」

 

「ハーマイオニーはスカーレットさんのやり方に反対ってこと?」

 

「理解はできるけど、賛成はしないわ。……世の中を変えるのに凄く効率的なやり方だとは思うの。でも、危険よ。スカーレットさんの立ち位置にもし悪意を持った魔法使いが立ってたら? 権力を持った人が必ずしも正しいことをするとは限らないじゃない。」

 

「そうなった時は逆に政府に抵抗する記事を書くのよ。それが報道の役目でしょ?」

 

熱意を持ちながら理念を語るジニーに、ハーマイオニーは冷静な口調で現実を繰り出した。既に『悪意を持った吸血鬼』が支配していることは教えない方が良さそうだな。

 

「でもね、ジニー。ヨーロッパ大戦の時も、第一次魔法戦争の時もそうはならなかったのよ。どちらの有事にも予言者新聞社は政府の方針に追従して事態を過小評価する記事を書いたり、違法な捜査を正当化したりしたわ。今の予言者新聞が『まとも』なのは政権を握っているボーンズ大臣やスカーレットさんがまともだからでしょう? いつの日かそれがひっくり返った時、深い繋がりは良くない方向に作用するんじゃないかしら。」

 

「……ハーマイオニーは私が『そういう記者』になるんじゃないかって思ってるの?」

 

「そうじゃなくて、あくまで繋がりは断ち切るべきだって言いたいのよ。それと、ジニーが予言者新聞社の中で『そうじゃない記者』を目指すのであれば、それは難しい道になるかもしれないってことを伝えたいの。」

 

大真面目な顔の先輩を見て、自分の進路に関して真剣に考えてくれていることが分かったのだろう。ジニーは少しだけ照れ臭そうに微笑むと、ハーマイオニーに向けて首肯を返す。

 

「うん、ちゃんと考えることにする。でもまあ、とりあえずはフクロウ試験を突破しないとね。予言者新聞社は一応エリート揃いなわけだし。」

 

「そうね、一歩一歩進んでいかないとね。報道方面となると、魔法史は外せないわ。大抵の職業で軽視されがちな科目だから、試験対策の参考書があんまりないんだけど……明日にでも図書館に行って良さそうなのを探してみましょうか。」

 

「それならルーナも誘っていい? あの子も飼育学の勉強をしないとだから。クィブラーの編集をしながら魔法生物の研究をするつもりなんですって。パパが編集長だから就職は大丈夫でしょうけど、資格をいくつか取るらしいから、そのために飼育学を良以上で突破しないといけないのよ。」

 

「それじゃ、三人で行きましょうか。」

 

笑顔で頷いたハーマイオニーを横目に、アドバイスを挟む暇もなかった彼氏どのと兄バカどのの肩をポンと叩く。実に情けなさそうな表情だな。クィディッチの話をする時みたいな積極性が欲しいもんだ。

 

机に放置していたハンドメイドルアーの雑誌を手に取りながら、アンネリーゼ・バートリは咲夜が同じような相談をしてきた時には醜態を晒すまいと決意するのだった。

 

 

─────

 

 

「んんん……どうしてこうなっちゃうのかしら? ちょっと待っててね、今原因を考えるから。」

 

目の前で起き上がれずにもがいているひっくり返った陸亀を見ながら、アリス・マーガトロイドはかっくり首を傾げていた。さっぱり分からん。何をどうすればカメになっちゃうんだ?

 

イースター休暇を明日に控えた午前最後の授業中、珍しく呪文が成功しない魔理沙への指導を行なっているのだが……革靴の材質を変えるはずなのに、何をどうやっても陸亀になっちゃうのである。杖の振り方は間違っていないし、呪文の発音も正確。なのにカメ。意味が分からん。

 

やはり魔法は奥が深いな。不可解すぎる現象に思考を巡らせている私へと、魔理沙は困ったような半笑いで追加の説明を寄越してきた。

 

「あのよ、さっきまでは小さいミドリガメだったんだ。その時は発音が間違ってるんじゃないかと思ってアクセントの位置を変えてみたんだが、そしたら今度は陸亀になっちまったってわけさ。……ミドリガメの方が正解に近かったか?」

 

「いえ、陸亀の方が近いわ。蛇革の靴に変えたいんだしね。爬虫類って部分も合ってるんだから、完全に失敗しているわけではないはずよ。」

 

「あー……そうなのか? 理屈は欠片も理解できんが、そこまで大きく間違ってないってのだけは何となく分かったぜ。何となくな。」

 

「もしかしたら革靴の方に問題があるのかもしれないわね。こっちの靴で試してみてくれる? レパリファージ(姿よ戻れ)。」

 

哀れな陸亀を解呪して革靴に戻した後、私の差し出したスニーカーに魔理沙が変身呪文をかけると……何でだよ。今度はトゲトゲの甲羅の見覚えのない大型のカメになってしまう。本格的に意味不明だぞ。

 

「貴女、カメが好きなの?」

 

「いやいや、別に好きじゃないぞ。嫌いってほどでもないが。……そもそもだ、カメにしようと思ってカメになってるわけじゃないんだからな。」

 

じゃあ何故カメになるんだ。久々にぶち当たった難題に対して、魔女のプライドを背に何とか解決しようと考えていると、魔理沙が同級生たちと『どの靴がより蛇革か』を議論している咲夜の方を見ながら口を開いた。グリフィンドール生たちは肌触りを、レイブンクロー生たちは模様を重視しているらしい。

 

「アリスは咲夜のことが気にならないのか? リーゼはそれとなく聞いてきたぜ? しつこくはなかったけどさ。」

 

「授業中は『マーガトロイド先生』よ。……気になるに決まってるでしょう? 何か話してくれるの?」

 

「悪いが、細かいことを話すのは無理だ。他人の秘密……というか、喧伝すべきじゃないことをペラペラ話すようなヤツにはなりたくないからな。」

 

「賢い選択ね。魔女は語るべきことだけを語るべきよ。言葉は力を持ってるんだから。」

 

獰猛だな、こいつ。杖に噛み付こうとしてくるカメをいくつかの呪文でチェックしながら言った私に、魔理沙は然もありなんという顔で首肯を返してくる。

 

「去年ノーレッジにも同じようなことを言われたぜ。無意味な多弁より価値ある一言を選べってな。本当に賢いヤツは一言で語るんだとさ。口が堅い云々とは少し違うかもしれんが。」

 

「あら、何処かで聞いたような台詞ね。」

 

「何処かでっていうか、アリスもノーレッジから聞いたんだろ?」

 

「マーガトロイド先生だってば。……人伝にもう一人の先生から聞いたのよ。道は違えど、賢者が辿り着く結論は同じみたいね。」

 

パチュリーは長々と説明することが好きなはずだが、実際はそんなことを思っていたのか。クスクス微笑みながら答えてやれば、魔理沙はきょとんという表情になった後……とりあえず流すことにしたのだろう。肩を竦めて話を戻してきた。

 

「ふーん? ……まあ、私が言いたいのはそういうことじゃなくてだな、アリスの方から咲夜に声をかけてやって欲しいってことだよ。黙って見守るのも大切だけどさ、今のあいつはそれを待ってると思うぜ?」

 

「リーゼ様じゃなくて、私なの?」

 

「私が思うに、な。本当に正解なのかは分からんが、私が相談相手になれるような問題でもないんだよ。一番適してるのはアリスだと思うぜ。……私から言えるのはこの辺までだな。これ以上は咲夜本人から聞いてくれ。」

 

「んー、貴女が言うならそうしてみましょうか。今度部屋に呼んで話を聞いてみるわ。」

 

レミリアさんは夏休みの前半でイギリスを去るつもりのようだし、咲夜がその辺に関わる問題で悩んでいるのであれば早めに解決すべきだろう。……ただし、最悪判断を先延ばしにも出来るはず。私とリーゼ様、それにエマさんは残る予定なのだから。

 

深く干渉せずに見守っているあたり、リーゼ様も同じようなことを考えていそうだな。レミリアさんとしてはもちろん早めの答えを欲しているのだろうが。最近顔を合わせていない紅魔館の小さな当主のことを思い浮かべていると、魔理沙は安心したように笑顔で頷いてくる。良い友達じゃないか。

 

「おう、頼むぜ。このままなし崩し的にってよりかは、きちんとした決着を付けた方がスッキリするだろうしな。」

 

「ちなみに、貴女は何か悩んでないの? 例えば将来の悩みとか。ホグワーツを卒業するなら、イギリスで就職するのも不可能じゃないわよ?」

 

保護者である魅魔さんに関しては詳しくないが、魔理沙の話やアメリカでの短い接触を鑑みるに、弟子のことをそれなりに大切に思っているようだ。ならば魔理沙本人が希望すれば一考はしてくれるだろう。向こうで勃発した咲夜とベインの口論を聞き流しつつ問いかけてみれば、魔理沙は少しだけ寂しげな苦笑で返答を口にした。

 

「いや、私は帰るぜ。咲夜がどんな選択をしたとしてもな。」

 

「イギリスより幻想郷が好きってこと?」

 

「そうじゃないんだ。……イギリスも好きになったし、こっちで暮らして死んでいくのも悪くない人生だと思う。だけど、私は魅魔様に借りを返さなくちゃいけないんだよ。義務感じゃないぞ。そうしたいって感じてるんだ。要するにまあ、恩返しってやつだな。」

 

「……うん、悪くない考え方だと思うわ。私もリーゼ様に対して同じような感情を持ってるわけだしね。」

 

親孝行、みたいなものだろう。ほうと息を吐きながら言った私に、魔理沙は照れ臭そうな笑みで話を続けてくる。

 

「だから、幻想郷に帰るのは決定事項なのさ。……フクロウ試験は自分の実力を確かめるために受けるが、イモリ試験は受けないつもりだ。上の学年の時間はこっちの世界を満喫するために使おうと思ってるんだよ。休暇でヨーロッパを回ったり、クィディッチを楽しんだりとかな。もちろん魔法の勉強を疎かにする気はないが。」

 

「しっかりしてるわね、貴女。四年生でそこまで考えてる子は珍しいわよ。……今年の夏に大陸の方に連れて行ってあげましょうか? 私がこっちに居られる時間も少ないから、ちょうど馴染みの人形店を巡ろうかと思ってたの。」

 

「マジでか。是非とも行きたいぜ。フランスは寄る予定か?」

 

勢いよく食い付いてきた魔理沙へと、革靴に縄張り争いを仕掛け始めたカメを止めつつ返事を返す。カメというのは穏やかな生き物だと思っていたが、実際はそうでもないらしい。物凄いスピードで噛み付きを繰り返しているぞ。

 

「フランスとドイツ、それにイタリアは行くつもりよ。フランスで何処か行きたい場所があるの?」

 

「行きたいっていうか、観たいものがあるんだよ。アレシアに聞いたんだけどさ、マグルの自転車の大っきなレースがあるんだろ? 毎年家族で応援に行くらしいんだけど、あんまり楽しそうに話すもんだから興味が出てきてな。観れたりするか?」

 

「私も詳しくないけど、多分観れる……はずよ。どうせなら革命記念日に合わせて行ってみましょうか。パレードとかもやるはずだしね。」

 

大昔に見たシャンゼリゼ通りのパレードを思い出しながら提案してやれば、魔理沙はワクワクを抑えきれない様子で何度も頷いてきた。さっきはちょっと大人っぽく見えたのに、もう子供に戻っちゃったな。

 

「楽しみだな。『旅行』ってのは全然やったことないからさ。幻想郷に戻ったら出来ないだろうし、今のうちに満足するまでやっておきたいんだ。」

 

「なら、夏休み前に行きたい場所をリストアップしておきなさい。それを元に計画を立ててあげるから。」

 

「七月の中盤だったら、ヨーロッパリーグの公式戦も観れるかもな。この前ウッドがチーム宛てに公式試合に出られるかもって手紙を送ってきたんだ。上手く日程が噛み合えばいいんだが。」

 

そういえば、ハリーもブラックと一緒に大陸を巡るって言ってたっけ。微妙に時期がズレているが、上手く行けば何処かで会えるかもしれないな。そんなことを考えながら暴れ回るカメをスニーカーに戻して、魔理沙に向かって白旗宣言を放つ。原因不明だ。後でパチュリーに相談の手紙を送っておこう。

 

「旅行の方はともかくとして、カメの方は無理ね。悪いけど私の知識じゃどうにもならなさそうだわ。次の授業まで預からせて頂戴。」

 

「ん? ああ、それはもうどうでも良いぜ。牛革やら合皮やらを蛇革に変えられなくて困ることがあるとは思えんしな。……それより、咲夜の件は忘れないでくれよ? 旅行には咲夜と一緒に行きたいし、その時沈んだ顔ってのは嬉しくない事態だろ?」

 

「ええ、近いうちに話を聞いておくわ。」

 

私の首肯を受け取ると、魔理沙は満足した顔で同級生たちの方へと戻って行く。……本当は一人でささっと行く予定だったけど、こうなったらリーゼ様も誘ってみようかな? パリはロマンチックな場所が多いし。

 

むしろ美味しいレストランとかの方が喜ばれそうだなと苦笑しつつ、アリス・マーガトロイドは行き先の候補を頭に並べ始めるのだった。

 


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