Game of Vampire 作:のみみず@白月
「決勝戦の会場はマホウトコロ。試合日は五月十七日の正午、雨天決行だ。」
ドラコの端的な報告に彼を囲んでいた生徒たちが思い思いの反応をする中、霧雨魔理沙は内心でガッツポーズをかましていた。マホウトコロが会場になったということは、マホウトコロの領内に入れるということだ。リーゼやアリスが話してくれた『逆さ城』を直に見られるぞ。
三月初週の土曜日の昼食時、決勝戦の会場を決めるために朝から連盟本部に行っていたドラコが帰ってきたのだ。彼がマクゴナガルと共に会場の抽選に行っていることは既にホグワーツにあまねく伝わっていたため、生徒たちはドラコが大広間に入ってきた瞬間に勢いよく彼を取り囲んだわけだが……うーむ、キャプテンどのは落ち着いているな。予想済みの反応だったのかもしれない。
何にせよ、これで決めるべきことは決まった。あとは練習あるのみだ。グリフィンドールのテーブルに戻って食べかけのサンドイッチを手に取っていると、同じタイミングで向かいの席に座ったハーマイオニーが話しかけてくる。
「クィディッチの試合だったら当たり前のことなのに、雨天決行ってわざわざ言うのが気になるわね。雨が多い時期なのかしら?」
「五月の半ばとなると、日本は梅雨……雨が多い時期のちょっと前だな。マホウトコロは位置的に梅雨入りが早いだろうから、一応付け加えたんじゃないか? 梅雨とはあんまり関係ないが、台風も多い場所だしさ。」
「もし台風が重なったら不利よね。向こうは慣れてるかもしれないけど、こっちは経験したことのない天候なわけでしょう?」
「ま、確率としては極小だろ。幾ら何でも年がら年中台風が来てるってわけじゃないだろうさ。多少の暴風雨くらいならこっちにだって経験はあるしな。……もちろん晴れるのが一番だが。」
聞くところによれば、マホウトコロの競技場は海の上にあるらしい。墜落しても地面じゃないってのは安心だが、地上の風と海風じゃ勝手が違いそうだな。その辺は考慮しておいた方が良いかもしれないぞ。
環境面でも色々と対策を練る必要があるなと思考していると、未だドラコを囲んでいる生徒たちの方を横目にしつつのリーゼが近付いてきた。怪訝そうな顔付きだ。
「何を盛り上がっているんだい? あの『生徒だまり』は。フィルチでも死んだのか?」
「貴女は事あるごとにフィルチさんを殺したがるわね。そうじゃなくて、リヒテンシュタインに行っていたマルフォイが帰ってきたのよ。試合会場はマホウトコロになるんですって。」
「ああ、決まったのか。マクゴナガルはウキウキだろうね。決勝戦ともなれば凄まじい観客数になるはずだし、ホグワーツが会場にならなくてホッとしてるだろうさ。面倒事を背負う羽目になったシラキは臍を噛んでるかもしれんが。」
「シラキ? ……あー、サクラ・シラキ教授のこと? 一昨年の十一月にダンブルドア先生のお墓参りに来てた、マホウトコロの校長先生よね。『呪文学における十七の原則』を提唱した方。」
なんだそりゃ。習った覚えのない学説に首を傾げる私に、ハーマイオニーはサラダを頬張りつつ解説してくる。
「六年生の後半で習うから、マリサはまだ知らないはずよ。呪文学の基礎原理の一つで、今現在のところ最も説得力がある主流の説なの。呪文学は多様な呪文を内包する複雑な分野だけど、突き詰めていけば十七の法則で全てを説明できるって内容ね。」
「へぇ、面白そうじゃんか。」
「面白いわ。三十年くらい前に提唱されて以来、世界各国の著名な呪文学の専門家たちが研究してるんだけど、結局否定し切れた人はまだ居ないのよ。一見すると単純化しすぎているのに、きちんと考えていくと納得せざるを得ない理論ってわけ。」
「呪文学で有名なヤツなのか? シラキは。」
呪文学はそこそこ興味がある分野ということで聞いてみれば、意外にもリーゼが返答を送ってきた。
「ダンブルドアも認めていたほどの権威だよ。パチェは十七の原則に否定的だったがね。彼女に言わせてみれば、もっと簡略化できるんだそうだ。」
「あら、ノーレッジ先生がそんなことを言ってたの? 興味深いわね。詳しく聞かせて頂戴。」
「詳しく話し始める前に逃げたから知らないよ。というか、そもそもパチェは変身術と呪文学と防衛術というホグワーツにおける分類の仕方にすら懐疑的らしいぞ。彼女とシラキじゃ前提が違うんじゃないかな。マホウトコロではまた違った分け方をしているみたいだしね。」
「それはまあ、分からなくもない話よ。教育上必要な分け方と、学術的なグループ分けは違うってことね。例えばホグワーツと神秘部では同じイギリスでも全然違う分類の仕方をしているでしょう? ノーレッジ先生はそのことを言っているんじゃないかしら。」
ハーマイオニーが議論に乗り気になったのを見て、リーゼはこのままでは『長話』に付き合わされると危惧したようだ。慌てて話題を変え始める。
「それはそうと、マホウトコロへの対策はどうなっているんだい? イルヴァーモーニー戦の情報は入っているんだろう?」
「ん、入ってる。……『単純に強い』ってのが素直な印象だな。高い総合力でゴリ押してくる感じだ。イルヴァーモーニーとの点差は四百二十点だとよ。化け物だぜ。」
「おやまあ、スニッチの百五十点無しでも余裕で勝っていたわけか。注目選手は?」
「ヤバいのはやっぱりキャプテンでエースチェイサーのカスミ・ナカジョウだな。チェイサーの得点の八割がそいつのゴールで、クアッフル保持率もぶっちぎり。一昨年の時点でプロチーム入りが決まってたらしいぜ。トヨハシ・テングがアホみたいな契約金を提示したんだと。」
風に靡く短めのポニーテールに、勝気で整った幼顔。あの見た目であればプロになったら人気が出るだろうな。雑誌に載っていたナカジョウの写真を思い出しながら言ってやると、リーゼは不満げな顔で鼻を鳴らしてきた。
「連盟本部での昼食会で会ったあの無礼な小娘か。気に食わんね。」
「お前が気に食わなかろうが実力は本物だぜ。雑誌曰く、『ホグワーツはナカジョウが飛躍するための踏み台になるだろう』だってよ。」
「どうかしらね、踏み台が高すぎて躓かなきゃいいけど。調子に乗ってると派手に転ぶわよ。」
ツンとした態度でハーマイオニーが呟くのに、リーゼもまたムスッとしながら首肯する。あくまで雑誌の記者が書いた一文であって、本人が言ってたわけじゃないんだけどな。
「まったくだね。無様に転ぶ姿を見物させてもらうとしよう。……そういえば咲夜は?」
「監督生の仕事があるのよ。図書館の『未返却者リスト』を整理してるの。毎年この時期になると監督生が催促に来るでしょ?」
「もうそんな時期か。……監督生としての咲夜はどうなんだい? 私には仕事についてをあまり話してくれないんだ。」
「良くやってるわ。慎重に取り組んでるし、五年生の中じゃ一番ミスが少ないと思うわよ。……でも、その辺がちょっと心配なのよね。あの子ってほら、完璧主義者じゃない? 少しくらい手を抜くことも覚えて欲しいの。」
あー、それは分かるな。リーゼも同感なようで、苦笑しながらハーマイオニーに頷きを放った。
「抱え込みすぎてパンクしないかが心配ってことだろう? よく分かるよ。」
「そういうことね。責任感が強い子だから、処理し切れなくても手放さないでどうにかしようとしちゃうわけよ。私も同じような経験があるから余計心配になっちゃうの。」
「んー、あの子は昔からそんな感じなんだよ。パチェは必要ないものを容赦なくバッサリ切り捨てるし、アリスなんかはああ見えてこっそり手を抜くのが上手いわけだが……咲夜は無理にでも処理しようとするからね。なまじ本人に能力があるから今までパンクしたことがないのさ。」
最後に謎の『娘自慢』を挟んできたリーゼへと、私も然もありなんと首を振りながら同意を口にする。私は適当すぎるかもしれないが、咲夜はちょっと真面目すぎるのだ。そこは確かに危うく見えてしまうぞ。
「その懸念は大いに理解できるが、かといって『手を抜け』って言って抜くようなヤツじゃないからな。そもそも手を抜く理由に納得してくれないだろ。それが分からないからこそ手を抜かないわけなんだから。」
「……まあ、そこはキミが見てやってくれたまえ。私たちは今年で卒業だからね。」
「リーゼが私に『適当さ』を教えてくれたように、マリサがサクヤにそれを伝えてあげて頂戴。こういうのは同世代の友達から学ぶのが一番よ。」
「適当さか。……それだったら毎日のように伝えてるつもりなんだがなぁ。」
頭を掻きながら言ったところで、ドラコを囲んでいた人集りがようやく解散したようだ。三々五々に散っていく生徒たちの中から、黒髪の眼鏡君と赤毛のノッポ君がこちらに歩いてきた。
「マリサ、今日は夕食前にミーティングだってさ。ドラコがマホウトコロの競技場の説明をしてくれるから、それを聞きつつフォーメーション案を詰めるらしいよ。」
「マルフォイは海風のことを気にしてるみたいだったぜ。どっかに資料があればいいんだけどな。」
おっと、ドラコも海風の問題には気付いていたのか。ハリーの業務連絡に首肯して答えつつ、ハムサンドに魚の揚げ物を追加で挟んで齧り付く。決勝戦までは残り二ヶ月とちょっと。対策を練るには充分な時間だと言えるだろう。
明確になってきた決勝戦のことを考えながら、霧雨魔理沙はいつものように昼食を楽しむのだった。
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「……ふん。」
ようやく春らしい気温になってきたホグワーツ城の中、大量のふくろうが行き交う大広間で今日の朝刊をキャッチしたアンネリーゼ・バートリは、一面の記事を見て小さく鼻を鳴らしていた。『北アメリカの児童連続誘拐殺人事件に大きな進展』か。恐らくベアトリスが言っていた件だろう。
記事を流し読みしてみれば、どうやらホームズ派だった議員の一人が別件の司法取引のために『ホームズが真犯人の可能性がある』という情報を吐き出し、それを受けたマクーザの闇祓いがマンチェスターにあるホームズの別荘に強制捜査をかけた結果、魔法で保存されていた被害者の子供たちの『一部』を地下の倉庫から発見したらしい。つまり、ベアトリスが書いた『後片付け』の筋書き通りというわけだ。
強硬にアリスを犯人に仕立て上げようとしていたのはホームズこそが真犯人だったからであり、国際魔法使い連盟やマクーザ議会は彼に踊らされた愚か者の集まりで、予言者新聞社は一貫して正義の報道をしていたと紙面は大喜びで主張しているわけだが……ああ、やっぱりスキーターの記事か。今頃あの女は高笑いしているだろうな。これでまた名声を確保できたわけなのだから。
そのことにやれやれと首を振っていると、自分の取っている朝刊を読んでいたハーマイオニーが口を開く。興奮している顔付きでだ。
「リーゼ、これ! 読んだ?」
「読んだよ。キミはどう思った?」
「信じられないわ。もちろんマーガトロイド先生が犯人じゃないってことは信じてたけど……でも、ホームズが? 驚きよ。」
「納得は出来るかい?」
何事かと私の新聞を覗き込んでくる咲夜に朝刊を渡しながら聞いてみれば、ハーマイオニーは悩んでいる様子で自身の考えを語ってきた。ちなみにハリーと魔理沙は毎度お馴染みのクィディッチの朝練中で、ロンとジニーはその手伝いをしているらしい。
「出来る、と思うわ。ホームズが真犯人だったのであれば、あそこまで強引な捜査をしたのにも納得よ。……だけど、それならどうしてここまで騒ぎを大きくしたのかしら? もっと穏便に揉み消せなかったの?」
まあ、そこだな。ホームズが事件の揉み消しだけを目的としていた場合、わざわざ『スカーレットの関係者』に罪を着せようとするのはリスクが高すぎる行為だ。ブツブツと自問自答しているハーマイオニーの結論を待っていると、彼女は自分の思考を整理するかのように訥々と話し始める。
「だからつまり、揉み消しのついでにスカーレット派を叩くことを狙ったってことなんじゃない? この記事もそこに言及してるわ。『結局のところ、今回の事件は反スカーレット派による壮大な自作自演の三文芝居だった』って。」
「ま、筋は通るね。」
「……不満そうね。何か引っかかるの?」
私の顔を怪訝そうに見ながら問いかけてくるハーマイオニーに、肩を竦めて否定を送った。ベアトリスの思い通りに終わるのは癪だが、別段こちらに不利益がないから文句を言えないってところかな。
「いいや、私も納得しているさ。……そして今度はホームズを正式に国際指名手配か。どこまでもバカバカしい話だよ。」
無意味だ。兎にも角にも無意味に過ぎる。私からすれば、始まりから終わりまでの全ての事象が無駄にしか思えんぞ。喉元に迫り上がってくるモヤモヤ感に眉根を寄せていると、記事を読み終えたらしい咲夜が朝刊を返してきた。
「リーゼお嬢様、次のページに委員会の記事もありましたよ。ゲラート・グリンデルバルドが賛成多数で議長に就任したらしいです。名称も『非魔法界対策委員会』で確定して、細々とした役職も決まったんだとか。」
「急に動き出したね。さすがはゲラートだよ。無駄なく進めているようで何よりだ。」
「あら、本当ね。……非魔法界を調査する機関の設立と、機密保持法の見直しをするんですって。賛成反対はともかくとして、機密保持に一番敏感だったマクーザが発言力を落としたタイミングでやろうとするのは見事だわ。」
あー、そういうことか。機を見るに敏ってやつだな。私が対策委員会の記事をチェックしながら感心しているのを他所に、朝刊をテーブルに置いたハーマイオニーが朝食を再開する。
「終わってみれば、最も大きな傷を負ったのはマクーザだったわね。次点で連盟ってところかしら。時事についての小論文でテーマになるかもだからおさらいしておかないと。」
「結局進路はどうするんだい? キミの場合、詳細を決めるのはイモリ試験の後からでも間に合いそうだが。」
「第一志望は国際魔法協力部にするわ。……どうかしら?」
「ん、良いと思うよ。今から大きく動くであろう部署だしね。キミが上がっていくための隙は山ほどあるだろうさ。」
外交は国の柱の一つだ。大戦直後の流動的な時期にはチェスター・フォーリーがウィゼンガモットへの『近道』として使っていたらしいし、今は亡きバーテミウス・クラウチ・シニアが左遷された頃ほど軽視されてはいない。充分に出世コースに値する部署だと賛成した私へと、ハーマイオニーは目玉焼きを皿に取りながら頷いてきた。
「規制管理部と最後まで迷ったのよね。でも、職場見学の時の印象で決断できたわ。何て言えばいいか、協力部には活気があったの。」
「レミィがテコ入れした部署の一つだからね。……ちなみに執行部はどうして除外したんだい?」
「まだ早いかなって感じたのよ。つまり、暫くは動かなさそうな雰囲気があったわけ。協力部がこれから騒ぎを始める部署なら、執行部は騒動を終えて後片付けに入ってるって印象ね。」
「なるほどね、言い得て妙だ。」
確かに執行部は大きく動かないだろうな。『スクリムジョール政権』で安定しているイメージだ。ボーンズが大臣を降りたらスクリムジョールがその席に上がるかもしれないが、現職の大臣どのは支持率が高い上にスクリムジョールとの連携も取れている。である以上、あの二人の立場は暫く変わらないだろう。
現在のイギリス魔法省のパワーバランスについてを考えていると、今日もスープで済ませようとしている咲夜が質問を口にした。ちゃんと食べなきゃダメだぞ。
「じゃあ、何年か協力部に勤めたら執行部に移る感じになるんですか?」
「そこまでは分からないわね。希望通りに行くほど甘くないでしょうし、とりあえずは協力部でしっかり頑張ることだけを考えるわ。……そもそも協力部に入れるかすら不明なわけだけど。」
「ハーマイオニー先輩を蹴る部署があるとは思えませんよ。……私たちもイースターに進路指導があるんですよね。悩みます、授業選択。」
「そういえば五年生はそれがあったわね。何を削るの?」
進路指導か。懐かしいイベントだな。五年生の頃のことを思い出している私を尻目に、咲夜はむむむと懊悩しながら返事を放つ。まだ決めかねているようだ。
「魔理沙は魔法史とマグル学を削るって言ってたんですけど、私は両方続けたいんです。飼育学とルーン文字学をやめることになりそうですね。」
「んー、薬学は? サクヤはあまり興味がないように見えたけど。」
「基礎学科もやめられるんですか?」
「選択する人が少ないってだけで、やめることも可能よ。進路は狭まっちゃうけど、サクヤの場合はリーゼの家でメイドさんになるんでしょう? 魔法薬の調合はそこまで必要ないんじゃない?」
魔法薬学か。ハーマイオニーの言う通り、咲夜の苦手教科の一つだな。成績自体は高い位置をキープしているが、それは他の教科以上に努力しているからだ。レポートを書いている時に一番楽しくなさそうな表情になっている教科なのは間違いないぞ。
「でも、イモリ試験や魔法省の入省試験は受けるつもりなんです。レミリアお嬢様からの指令がありますから。」
「まあ、六年生以降はやめたい時にやめられるし、何も後戻り出来ない決断ってわけじゃないわ。絶対に必要がない教科だけを削ればいいんじゃないかしら。」
「なら、やっぱりルーン文字学と飼育学ですね。……魔理沙はどっちも続けるみたいですから、六年生からは別々の授業が多くなっちゃいそうです。」
ほんの少しだけ不安そうに呟いた咲夜へと、クスクス微笑みながら相槌を打つ。いつも引っ付いていた二人組だし、離れるのが嫌なのだろう。
「レミィの指示なんて気にしなくていいんだよ。キミの好きなように選択したまえ。魔理沙と一緒の授業がいいならそうして構わないんだ。紅魔館への就職に必須科目なんて存在しないんだから。」
「……それは甘え過ぎです。自分に厳しくいかないと。」
「私としては、キミにとって楽しい学生生活になればそれ以上は望まないかな。楽しむことが第一であって、自己研鑽なんてのは二の次でいいんだよ。要するに、この私を見習えってことだね。何だったら授業を全部放棄して遊びまくってもいいくらいだ。」
両手を広げて主張した私に、ハーマイオニーが呆れ果てた表情で突っ込んでくる。いいじゃないか、真っ白な時間割でも。楽しむことが一番だぞ。
「それはさすがにやり過ぎね。……でもまあ、少しは余裕を持つのも大切かも。必要な勉強はすべきだけど、必要ないし苦痛なのであればやらなくて良いのよ。知りたければ知り、やりたければやる。そういうものなんじゃないかしら?」
「『勉強好き』のキミが言うと説得力が出るね。ホグワーツには与える義務があるが、キミにはそれを受け取るか拒否するかを選択する権利があるのさ。欲しいものだけを貰っちゃって、要らないものは無視したまえ。パチェもアリスもフランも私もそうしたんだから、キミだってそうすべきなんだよ。」
私たちの助言を受けた咲夜は、目をパチクリさせて曖昧に首肯すると、未だ思い悩んでいる様子で逃げるようにスープに口を付けた。……うーむ、難しい。いまいち伝わり切らなかったようだ。レミリアのやつ、余計な一言を残していくなよな。
ま、その辺は魔理沙から学べるだろう。あの魔女見習いはホグワーツというシステムを上手く使っているし、その姿を近くで見ていれば気付くことがあるはずだ。来年は色々と余裕が出てくるだろうから、そこで学び取ってくれることを祈っておくか。
眉間に皺を寄せている咲夜を見て微笑みつつ、アンネリーゼ・バートリは自分の皿の上のチーズオムレツに向き直るのだった。