Game of Vampire   作:のみみず@白月

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あゝ、険しきメイド道

 

 

「いいですか? 咲夜ちゃん。要するに『揺れる』のはオーケーで、『流れる』のはアウトなんです。お風呂の水くらいならそこまでひどいことにはなりませんけど、ちょっとピリッとしちゃいますから。だからこう、ゆっくりゆっくり手を動かしてください。」

 

広い湯船の中のリーゼお嬢様の真っ白な肢体。それを何だか艶めかしい動作でマッサージしていく薄い湯着姿のエマさんを見ながら、サクヤ・ヴェイユはゴクリと生唾を飲み込んでいた。

 

クリスマス休暇に突入して人形店に帰ってきたその日の夕方、私はトランクの中の浴室でリーゼお嬢様の入浴の『お手伝い方法』をエマさんから教えてもらっているのだ。今までは朝の身支度すら殆ど手伝わせてもらえなかったのだが……私が『影』を受け取ったから、正式に従者としての仕事を学ばせようということなのだろう。

 

でも、いきなりこれは難易度が高すぎるぞ。私が湯船の外で顔を真っ赤にして見つめているのを他所に、エマさんの大きな胸に頭を預けてお湯の中でリラックスしている様子のリーゼお嬢様は、やや眠そうな表情で口を開く。こんなに油断しきっているお嬢様は初めて見るな。これまではエマさんにしか見せていなかった姿ってことか。

 

「子供じゃあるまいし、普段は一人で入っているんだけどね。たまーにエマに任せる日もあるのさ。あくまでたまにだが。」

 

「そうですね、たまにですね。……ほら、咲夜ちゃんも入ってください。マッサージのやり方を教えますから。」

 

「……はい。」

 

あまりにも非日常的な光景に尻込みしつつ、お湯を大きく動かさないように慎重に湯船の中へと身体を入れた。周りを水に囲まれている浴室は、リーゼお嬢様やエマさんにとって危険な場所であるはずだ。それなのにこれだけ無防備なのは私のことを信頼してくれているからに他ならない。期待に応えなければ。

 

見惚れている場合じゃないぞと気持ちを入れ替えて、広い浴槽を横切ってリーゼお嬢様とエマさんの近くに寄っていくが……あああ、こんなの無理だぞ。お嬢様は裸身を惜しげもなく晒しているし、エマさんだって湯着が身体にぴったり張り付いて何もかもが透けてしまっている。

 

……というか、エマさんと同じ湯着を着ている私の身体のラインも透けているはずだ。マズい、自信がなくなってきたぞ。貧相な身体だと思われていないだろうか?

 

『ヘッドレスト』の任を十全に果たせそうにない自分の薄い胸を見下ろして、何だか急に冷静になってきた私へと、エマさんがマッサージを続けながら指示を出してきた。

 

「じゃあ、咲夜ちゃんはお嬢様の足を揉んでください。滑らせると水が流れちゃいますから、どちらかと言えば揉む感じで。」

 

「はい、了解です。……えっと、失礼しますね。」

 

「ん、いいよ。好きにやってみたまえ。」

 

そう言って左足を私に預けてくるリーゼお嬢様だが……これ、本当に触っちゃっていいんだろうか? こんな綺麗な足を私なんかが触ったら法で裁かれたりしないかな? 我ながらアホみたいな感想を抱きつつ、芸術品のようなお嬢様の足に手を触れる。

 

うーん、ヘンな感じだ。未成熟な美しい肢体をまじまじと見ることへの後ろめたさと、これを見られる数少ない存在の一員になれたという喜び、そして生涯決して見ることが出来ない数多の余人に対する優越感。言葉では表現できない不思議な気分になりながら、先ずはお嬢様の足の裏を揉もうとした瞬間──

 

「くぁ……ふ。眠くなってきたね。身体を洗うところまでやるんだろう? マッサージはサクッとでいいよ。」

 

あくびだ。リーゼお嬢様の欠伸。口に手を当てた状態での軽い欠伸くらいなら珍しくないが、ここまで堂々とした大欠伸は初めて見たかもしれないぞ。これもまた『影』を預けた者にしか見せない姿なんだろうなと感心しつつ、何故かお嬢様の大欠伸に今日一番ドキドキしている自分を疑問視していると、エマさんがお嬢様の上半身を……嘘だろう? そんなところまで触っていいのか? 慣れた動作で揉み解し始めた。

 

「そうですか? じゃあ簡単にだけやっちゃいますね。」

 

「ん。」

 

何一つ心配せずに身を委ねきっているリーゼお嬢様と、それに当然のように応えているエマさん。まるでバートリ家のメイドはこう在れと示しているかのような光景だ。……よし、雑念は捨てよう。プロとして行動しろ、私。エマさんのようにプロとして。

 

もう動揺しないぞとメイド道の求道者としての決意を固めた私に、リーゼお嬢様がポツリと新たな指令を寄越してきた。

 

「咲夜、太ももをやってくれ。一昨日ひどく歩き回ったから疲れているんだ。」

 

「分かりました、太ももですね。」

 

こっくり首肯してから太ももへと手を伸ばそうとしたところで、視線を動かした所為でリーゼお嬢様の全身をかなり近い位置から余すところなく視界に収めてしまう。自分でも何がなんだか分からない内に一瞬停止した後、そんな場合じゃないぞという理性の声に従って真っ白な太ももへと指先を触れ──

 

「あれ、咲夜ちゃん? のぼせちゃいました?」

 

「へ? いえ、大丈夫ですけど。」

 

「でも、ほら。鼻血が出ちゃってますよ。」

 

エマさんの慌てたような指摘を受けて、自分の鼻に手をやってみれば……あっ、ヤバい。大急ぎでお湯に血が落ちないように上を向いてから、鼻を押さえて湯船の外へと向かう。何だってこんなタイミングで鼻血が出ちゃうんだ。恥ずかしすぎるじゃないか!

 

「す、すみません。今出ますから。」

 

あまりの不甲斐なさと恥ずかしさで涙目になりつつも、流水だけは決して作らないように気を付けて湯船の外に出ると……続いて出てきたリーゼお嬢様とエマさんが心配そうに私に声をかけてきた。ああ、消えてなくなりたい。心配されればされるほどに情けなくなってくるぞ。泣きそうだ。

 

「上を向いちゃダメですよ、咲夜ちゃん。血が喉の方に行っちゃいますから。」

 

「でも、バスルームが汚れちゃいます。……すみません、お湯も汚しちゃって。」

 

「キミね、私たちは吸血鬼なんだぞ。血をいちいち気にするわけがないだろう? それよりエマの言う通りに安静にしたまえ。」

 

あー、ダメだ。久々にどうしようもなく悲しくなってきた。折角リーゼお嬢様がリラックスしていたのに、エマさんが指導をしてくれていたのに、初めての従者としての入浴補助だったのに。私の所為で全部台無しじゃないか。

 

「……ダメダメですね、私。」

 

ここ数年で一番落ち込みながら呟くと、リーゼお嬢様がクスクス微笑んでそっと頭を撫でてくれる。

 

「まあ、従者としては見所があるってことなんじゃないかな。だろう? エマ。」

 

「……私からは何とも言えませんね。」

 

「咲夜、これは三人だけの秘密だぞ? ……実はね、エマも初めて母上の入浴を手伝った時に鼻血を出しちゃったんだ。その後ひどく落ち込んでいたが、今では立派な従者になった。だからまあ、縁起が良いといえば良いんじゃないかな。エマと同じ道を辿っているってことなんだから。」

 

「……あまり詳しくは話さなくていいですからね、お嬢様。あの時は本当に恥ずかしかったんですから。ツェツィーリア様は笑うし、大旦那様は気まずそうに慰めてくるし、お嬢様はからかってくるし、先輩たちには呆れられるしでもう大変でしたよ。」

 

エマさんも鼻血を? 頬を染めてそっぽを向いているエマさんを見て、ほんのちょびっとだけ気持ちが軽くなったのを自覚した。エマさんと同じか。それはまあ、確かに縁起が良いと言えるのかもしれない。

 

「しかしだね、結果的にはキミがバートリ家に馴染む良い切っ掛けになったじゃないか。母上は自分の魅力の為せる業だと自慢していたぞ。」

 

「私は別にそういう感情から鼻血を出したわけじゃなく、単にのぼせちゃったんですよ。カトリン家ではあんなに長くお風呂に入っていることなんてなかったので、身体がまだ慣れてなかったんです。昔もそう説明しましたよね?」

 

「はいはい、分かっているさ。……ふむ? そうなると咲夜は私の魅力に『やられちゃった』ってことになるな。」

 

「だから咲夜ちゃんも私ものぼせただけなんですってば。ですよね? 咲夜ちゃん。」

 

エマさんの問いかけに対して、こくこく頷いて応答する。実際のところ、私は多分リーゼお嬢様の裸身に『のぼせた』わけだが……ここは黙っておくべきだろう。エマさんが大奥様にのぼせたのかが今となっては謎であるように、私がお嬢様にのぼせたかどうかもきっと不明にしておくべき部分なのだ。

 

「そうです、そうです。私は普段シャワーで済ませるので、お湯に浸かるのはあんまり慣れてなくって。それでのぼせちゃったみたいです。」

 

「ふぅん? 残念だね。……ま、今日はここまでにしておこうか。あとは清めの呪文で適当に済ませればいいさ。」

 

「あの、すみませんでした。私の所為で。」

 

「なぁに、次に期待させてもらうよ。今度からは湯船に慣れておきたまえ。吸血鬼があの忌々しい『流水発生装置』を使わない以上、キミもこっちのやり方に馴染んでおくべきだ。」

 

やっぱり『次』があるのか。そのことに期待と不安を感じつつ、一つ首肯してから鼻血が止まっているかを確かめるために鼻に手を添えた。……だったら次までにどうにかしておかなければ。何たって次にまた鼻血を出したら、もうお湯にのぼせたという言い訳は通用しないのだから。

 

後で鼻血止めの魔法薬についてを教科書で調べておこうと心に決めつつ、サクヤ・ヴェイユは完璧なメイドへの道がまだまだ長いことを実感するのだった。

 

 

─────

 

 

「レイブンクローのサイン? ええ、知ってるわよ。それがどうかしたの?」

 

うーむ、とんとん拍子すぎて逆に不安になってくるぞ。目の前のアリスがノータイムで頷いてきたことに拍子抜けしながら、霧雨魔理沙は質問を続けていた。これなら二つ目のサインもさほど苦労せずに見つけ出せそうだな。

 

クリスマス休暇でダイアゴン横丁に帰ってきた私は、現在夕食前のリビングでアリスを相手に聞き込みを行っているのだ。ノーレッジからサインの話を聞いているかは不明だし、知らないと言われることも覚悟していたわけだが……この通り、あっさりと肯定の返事が返ってきたのである。

 

「どこにあるかも知ってるか?」

 

「知ってるわ。というか、パチュリーから聞いた後で実際に見たわよ。」

 

「やっぱりノーレッジから聞いたのか。……どの辺だ? 正確な位置を教えてくれ。」

 

準備しておいたホグワーツの簡易的な地図をダイニングテーブルに広げてやれば、アリスは迷うことなく天文塔の四階部分を指差す。星見台がある踊り場から螺旋階段を下りていったずっと下だ。ペティグリューから聞いたルートとも重なっているな。

 

「ここよ。螺旋階段の裏側にある大理石のオブジェの内部に刻まれているの。ちょっとした仕掛けがあって、それを解かないと見られないけどね。」

 

「どんな仕掛けなんだ?」

 

「んー、『パズル』って言うのが一番分かり易いかしら。オブジェ自体がこう、一種の立体パズルになっているのよ。正しい順番で正しい部分を動かしていくと、最終的には内部が覗けるようになるわけ。」

 

「からくり箱みたいなもんか。解き方はさすがに覚えてないよな?」

 

期待を込めて問いかけてみるが……むう、ダメそうだな。アリスは困ったように首を振って応答してきた。

 

「残念ながら、正確な手順は覚えてないわね。でも、かなり苦労したのは記憶に残っているわ。パチュリーから解いてみなさいって言われたから、四年生の時に友人と一緒にチャレンジしてみたの。……三人がかりで空き時間を使って、数ヶ月かけて解いたのよ。パズル自体には魔法的な要素はなかったけど、それだけに難しかったわ。」

 

「……簡単に解けるもんじゃないってのは理解できたぜ。」

 

アリスをして数ヶ月か。四年生の時だから空きコマが少なかっただろうし、今の私たちは当時のアリスよりも上の学年だが、それでもすんなり解くってわけにはいかなさそうだ。サイン自体は見られたところで問題ないから、ジニーやルーナにも協力を要請した方がいいかもしれない。

 

ホグワーツに戻ったらとりあえず見に行ってみようと決めた私へと、アリスが杖を振ってソファの上に置いてあった編み物セットを呼び寄せながら口を開く。マフラーを編んでいるようだ。

 

「まあ、貴女なら多分解けると思うわ。筋道立てて考えれば不可能ってほどではないしね。」

 

「……何でこんな質問をしてるのかは聞かないんだな。」

 

「……だってほら、魅魔さんの課題に関わることなんでしょう?」

 

「にしたっていつものアリスなら聞いてくる気がするぜ。何か変だぞ。」

 

いきなりサインのことを問われて、それに当然の如く答えて話を締めるってのは……変じゃないか? そりゃあ知っていたら答えはするだろうが、どうして尋ねたのかは気にして然るべきだ。すんなり回答して終わりってのは違和感があるぞ。

 

「ひょっとして、何か知ってるのか? オリジナルの逆転時計か、マーリンの隠し部屋か、サインの秘密か……もしくはそれらの関係についてをさ。」

 

何かがおかしい。自分のカンがそう囁いてくるのに従って、アリスにジト目で疑問を送ってみれば、彼女はかっくり首を傾げて苦笑いで応じてきた。

 

「知ってたら教えてるわよ。」

 

「……本当に?」

 

「本当だってば。どうしたの? 貴女。疑いすぎじゃない?」

 

むう、分からん。アリスは嘘を言っているようには見えないし、そもそも何か知っているのであれば隠す必要などないはずだ。……だけど、やっぱり引っかかるな。思い返せばペティグリューとの面会の時もそうだったっけ。普通ならあんなに簡単にアズカバンに連れて行ってくれるか? いつものアリスならもっと理由をきちんと聞いてくるはずだぞ。

 

私にジニーの『妄念』が伝染しているだけなのか、あるいはアリスが上手く誤魔化しているのか。確たる判断が付かなくて迷っていると、やおら部屋に入ってきた黒髪の吸血鬼が声をかけてくる。エマと咲夜も一緒だ。

 

「んふふ、やるじゃないか魔女っ子。その通り、アリスと私はキミたちに隠し事をしていたのさ。」

 

こいつ、聞いてたのか。というか今まで何をしていたんだ? 二人の従者を引き連れたままでソファにぽすんと腰を下ろしたリーゼに、彼女たちの服装がラフなものに変わっているのを認識しつつ問いを飛ばす。風呂に入っていたのか?

 

「どういうことだよ。何を隠してたんだ?」

 

「なぁに、簡単な話だよ。この前私が幻想郷に行った時、ふらりと現れた魅魔から念を押されたのさ。これはキミの課題なんだから、過度な手助けは慎むようにとね。……だろう? アリス。」

 

「……へ? そうですね。そういうことよ、魔理沙。」

 

「魅魔様が? ……まあ、それなら納得かな。咲夜が手助けするのは大丈夫なのか?」

 

つまり、あくまでも自力で達成しろということだろう。納得しながら一応確認してみると、リーゼは予想通りの返答を投げてきた。

 

「咲夜はセーフさ。手紙に『二人で』って書いてあっただろう? 要するにこれはキミと咲夜のゲームなんだよ。私たちは問われれば答えるが、どう問えばいいのかを教えはしないってことだね。」

 

「そりゃまあ、『課題』なんだから当然っちゃ当然のことだが……でもよ、何で秘密にしてたんだ? 普通に言ってくれればいいじゃんか。」

 

「別にいちいち言うようなことじゃないし、魅魔と会ったことを知れば嫉妬されると思ったのさ。」

 

「……お前な、私はそんなにガキじゃないぞ。」

 

話せて羨ましいとは思うが、それだけだ。いつまでも子供じゃないんだぞとリーゼを睨んだところで、アリスがふと何かに気付いたように声を上げる。

 

「……まさかとは思いますけど、三人でお風呂に入ってたんですか?」

 

「ええ、そうですよ。咲夜ちゃんにお嬢様の入浴のお手伝い方法を教えてたんです。ね?」

 

「あの、はい。」

 

リーゼの髪を櫛で梳かしながら楽しそうに言うエマに、咲夜がほんのり上気した顔で首肯しているが……五百歳なんだから風呂くらい一人で入れよ。呆れた気分でやれやれと首を振っていると、私の動作を目敏く発見したリーゼが言い訳を放ってきた。

 

「キミ、今私のことを内心でバカにしただろう。いつもは一人で入っているんだからな。今日は咲夜の教育のために一緒に入っただけなんだぞ。」

 

「でも、練習するってことは実践の機会があるってことだろ?」

 

「ふん、何とでも思いたまえよ。下々の羨望を受けるのも高貴な身分の宿命さ。出来るのにやらないことこそが一番の贅沢だと知らずに死んでいきたまえ。……咲夜、こっちにおいで。下賤で粗野な魔女見習いが私の身分を妬んでイジめてくるんだ。慰めてくれ。」

 

「……お前って、つくづく一殴ったら百殴り返してくるヤツだよな。」

 

質問しただけの私を下賤で粗野扱いした挙句、自分は咲夜を抱き枕にして被害者面か。ここまで来るともはや感心すら覚えるぞ。吸血鬼という生き物の図太さを再確認している私を他所に、何故か驚愕の表情になっているアリスが咲夜に話しかける。

 

「……どうだったの? 咲夜。」

 

「どうだったって……んっと、少し失敗しちゃった。」

 

「そうじゃなくて。」

 

「ええ?」

 

かなり真剣な面持ちで問い質すアリスのことを、リーゼの抱き枕になっている咲夜はきょとんとした顔で見ているが……いやいや、横で聞いている私にも意味が分からんぞ。そうじゃないならどうなんだよ。

 

「だから、つまり……何でもないわ。」

 

勢いよくガタリと席を立って何かを言おうとしたアリスは、自分のことを怪訝そうに見つめている部屋の面々に気付いて座り直した後、今度は別の質問を口にした。さっきとは別ベクトルで変だな。どうしちゃったんだ?

 

「……またやるの? 『お風呂講習』。」

 

「うん、やってくれるんだって。」

 

「そう、またやるの。なるほどね。」

 

咲夜の回答を受けて重々しく頷いたアリスは、テーブルに肘を突いて組んだ手に口を当てながら何かを黙考し始める。そんな意味不明すぎる一連の流れに疑問を持ちつつ、咲夜の頭を胸に抱いているリーゼに向けて問いを送った。アリスも変だが、リーゼもリーゼで銀髪ちゃんとの距離感がおかしいな。『影』とやらを咲夜が受け取ったからなんだろうか?

 

「まあ、リーゼのお風呂講習なんかどうでも良いだろ。それよりクリスマスは今年も隠れ穴に行くのか?」

 

「ん、そうなるね。キミも来るだろう?」

 

「もちろん行くぜ。久々にみんなと会いたいしな。」

 

何にせよ、先ずは休暇を楽しまなくては。レイブンクローのサインのヒントは手に入ったわけだし、スリザリンのサインに関しては現状どうにもならない。だったら今はクリスマスを目一杯楽しむことを目標にすべきだ。

 

六回目のクリスマス休暇が始まったことを実感しつつ、霧雨魔理沙は良い気分で大きく伸びをするのだった。

 


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