Game of Vampire   作:のみみず@白月

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陽光の友誼

 

 

「だからよ、ここを手前に引かないとこっちが押し込めないわけだろ? そんでもって押し込むためには反対側のロックを外す必要があって、ロックを外すには一番上の段を時計回りに半回転させないとだから……あああ、イライラしてくるぜ。こんがらがってきたぞ。」

 

手順が多すぎるだろうが、こんなもん。天文塔の螺旋階段の裏側で、霧雨魔理沙はわしゃわしゃと金色の頭を掻き毟っていた。真っ白なジグソーパズルでもやっていた方がまだマシかもしれんな。少なくともそれだったら『フェイク』の仕掛けなんて無いわけだし。

 

新しい年に入り、冬の寒さを増しているホグワーツ城の中。現在の私とルーナはクソ寒い城内の廊下で寒さに耐えながら、アリスから教えてもらった『立体パズル』を解いているところだ。ちなみに咲夜は午後最後のマグル学の授業中で、ジニーは変身術をやっている。夕食の時間になったら呼びに来てくれるらしい。

 

白い息と共に口から出た私の文句を受けて、杖明かりを翳しながらパズルを調べているルーナが応答してきた。立体パズルになっている総大理石のオブジェの全体的な形は、一言で表現すれば『球体を支えている王冠』って感じだ。大きさは私より少し背が低いくらいで、王冠のトゲトゲした部分が模様の入っている球体を支えているような形状。オブジェ自体がそこそこデカい上に稼働箇所が山ほどあるため、私たちは苦戦を強いられているわけである。

 

「ん、きちんと整理してから動かすべきなんじゃないかな。王冠の方は大きく動かないけど、球体は一番下以外回せるんだから……やっぱり球体の模様を合わせると完成なんだと思うよ。」

 

土台になっている王冠は放射状に七つのギザギザがある『それっぽい』形で、球体は横方向に輪切りにされるように十一の層に分かれているわけだが……まあ、ルーナの言う通り球体の各層を動かして模様を合わせろということなのだろう。十一ある層のうち一番下は球体そのものを支えるために王冠のギザギザと繋がっているから、実質的な稼働箇所はその上の十層だ。

 

「未だに何の絵かもさっぱり分からんけどな。おまけに零時になると自動的に『リセット』されちまう始末だ。」

 

「シンデレラみたいなオブジェだね。」

 

ここ数日を使って調べた結論として、どうもこのオブジェは夜の零時になると魔法で勝手に『初期化』されてしまうらしいのだ。ルーナは謎のセンスを発揮して自分の発言にクスクス笑っているが、私としては笑えないぞ。いちいちリセットされてたんじゃ牛の歩みじゃないか。

 

だから手始めに『どこを動かすとどう動くのか』を地道にメモしているものの……そら、これだもんな。私が球体の上から二段目を回してみれば、三段目と五段目、七段目と十段目がそれぞれ同期して動いてしまった。さっきは八、九段目と同期していたのに、別のどこかを動かしたのが原因で変わってしまったようだ。

 

ああくそ、あまりにも複雑すぎるぞ。多分これは王冠のどっかを動かしたのが原因だな。ギザギザにある押し引きできる突起か? それとも下部に五つ付いている、スイッチのように押し込める宝石みたいな石ころのどれかか? フラストレーションを感じながらどこが対応する仕掛けなのかを探っていると、私と同じく『ペア』になっている箇所を探しているルーナが話題を変えてくる。

 

「そういえば、ハッフルパフのサインはどうだったの? 見つかった?」

 

「おう、そっちは楽勝で見つかったぜ。お前とペンフレンドと、そしてニュートン・スキャマンダーのお陰でな。」

 

ロンドンからホグワーツに戻る列車の中で、ルーナから受け取った『魔法生物研究の父』が書いてくれたらしい直筆の手紙。細かい手順が明記されていたその手紙を参考に、一階の廊下の突き当たりにあるちょっとしたスペースを咲夜と二人で調べてみたところ、ハッフルパフのサインは拍子抜けするほど簡単に見つかったのだ。

 

手紙が示していた場所は古い空き教室や今は使われていない物置がある袋小路で、もはや通行する者は殆ど居ないのであろう通路の行き止まりには数段程度の短い階段があり、サインが刻まれてあったのはそこを上った先にあるささやかな室内テラスのような空間の床面だった。

 

隠されたサインを見つけるための手順もグリフィンドールのそれやこのパズルほど面倒ではなく、その空間を照らす窓……縁に蔦模様の可愛らしい飾りが入った、薬草園が真っ直ぐ見える小さな窓だ。から陽光が差し込んでくる時間帯に、同時に二人で陽光の呪文を使うだけ。そうすると窓の下の床にハッフルパフのサインが浮かび上がってくるのである。

 

陽光の呪文は使いどころが少ないってだけでそんなに難しい呪文ではないし、強いて条件を挙げるとすれば陽が差し込む時間帯限定ってことと、『最低二人は居ないといけない』って点くらいだな。一応一人で陽光の呪文を使ってみたりもしたのだが、それだとサインは見えないままだった。

 

まあうん、吸血鬼にとってはかなり難しい条件だろう。別にサインを隠した者が意図したわけではないと思うが、リーゼ以外の吸血鬼だと条件を達成できなさそうだぞ。真昼間限定かつ陽光の呪文を使わなければいけないのだから。

 

自分が吸血鬼ではなかったことに感謝しつつ、サインの文字が人柄を表すような柔らかいものだったことを思い返していると、ルーナが小さな笑みを浮かべて口を開く。

 

「そっか、見つかって良かったね。……クリスマス休暇中にスキャマンダーさんの家に招待された時、サインについての思い出話を教えてくれたんだ。」

 

「手紙にはどうして見つけたのかは書いてなかったな。陽光の呪文なんて滅多に使うもんじゃないし、そこはちょっと疑問だったぜ。」

 

「スキャマンダーさんが学生の頃、一人だけ凄く仲が良かった友達が居たんだって。五年生の時にその人と二人でフウーパーの卵を孵そうとしてる時に見つけたらしいよ。ほら、フウーパーを孵すには強い日光が必要だから。」

 

「あー、なるほどな。あの場所で二人で陽光の呪文を使って、フウーパーの卵に光を当ててたってことか。」

 

床に置いてある羊皮紙にパズルの手順を書き加えながら言った私に、ルーナはこっくり頷いて話を続けてくる。ちなみに『フウーパー』というのはアフリカ原産の魔法生物だ。カラフルなふくろうみたいな見た目で、陽気な歌声でこっちを惑わせてくる鳥。

 

「スキャマンダーさんは懐かしそうに話してたから、きっと良い思い出なんじゃないかな。話し終わった後でちょっと寂しそうになっちゃったけどね。」

 

「どうしてなんだ?」

 

「んー、分かんない。聞くべきじゃないと思ったから聞かなかったの。……聞いた方が良かったのかな?」

 

「それは私にも分からんぜ。お前が聞くべきじゃないと思ったんなら、それが正解なのかもな。」

 

ルーナは変わっているが、感情の機微を読み取る技術は人一倍持っている子だ。その彼女が『寂しそう』と感じたのであれば、楽しいだけで終わる思い出ではないのだろう。かのスキャマンダーにも色々あったということか。

 

私が何とも言えない気分で相槌を打つと、ルーナはちょびっとだけ大人びた表情で話題を締めてきた。

 

「少し気にはなったけど、私はスキーターじゃないからね。『良い思い出』の部分で終わらせちゃった方が幸せなんじゃないかな。」

 

「いいな、その表現。その通りだぜ。他人の過去を根掘り葉掘り調べるのはゴシップ記者の仕事だ。私たちはスキーターじゃないんだから、おいしい部分だけを聞くのが正解なのさ。」

 

「ひょっとすると、スキーターは損してるのかもね。見なくてもいい部分まで見なきゃいけないのは、実はとっても辛いことなのかも。」

 

「まあ、あいつの場合はそれを楽しんでるんじゃないか? 性分なんだろうさ。人生を送るにおいて、その性分が損なのか得なのかは判断できんがな。」

 

うーむ、またしても独特な意見が出てきたな。ルーナは人の『裏側』を暴かずにはいられないスキーターを哀れんでいるわけか。本人は間違いなく楽しんでやっているのだろうが、言われてみれば物事を素直に受け取れないのは損に思える。大多数の人間が『何か』に喜んでいる時、スキーターは多分喜ばずに『何か』の裏側にある悪意を探しているのだろう。それを紙面で皮肉たっぷりに取り上げるために。

 

スキーターの記事が真実かどうかはさて置いて、善意や慶事の粗を探さずにはいられないってのは哀れむべき点なのかもしれないな。……むう、どことなく『ダンブルドア的』な考え方だ。完全に受け入れるのは躊躇うものの、どこか納得してしまうような達観した考え方。最初に認めてから否定するような言い方が似ている気がするぞ。

 

真実を見抜くのは常に『変わり者』たちなのかもしれないな。時たま本質を突くような発言をする鷲寮の友人に感心しつつ、霧雨魔理沙は薄暗い廊下の片隅でパズルの続きに取り組むのだった。

 

 

─────

 

 

「……で? キミは何だ? 私に自動車を買って欲しいと言っているのかい?」

 

こいつら、ちょっと調子に乗りすぎじゃないか? 東風谷家のリビングで堂々と主張してくる諏訪子を前に、アンネリーゼ・バートリはイライラと翼を揺らしていた。自動車の正確な値段など知らんが、あの大きさだとそう安い物ではないだろう。何故そんな物をお前らに買ってやらねばならんのだ。

 

自分で持ち込んだ丸椅子に腰掛けた状態で応答した私へと、部屋の中央の炬燵に半身を入れて寝そべっている諏訪子が頷いてくる。ちなみに神奈子はやや気まずげな表情で座布団に正座中で、早苗は外出日ではないのでこの場に居ない。さすがに守矢神社の敷地内であれば早苗無しでも行動できるようだ。

 

「そうだよ、買ってよ。アンネリーゼちゃんなら買えるでしょ? 私は子供の見た目を気に入ってるから無理っぽいけどさ、神奈子が自動車の免許を取れそうなんだ。どうせ免許があるなら車も欲しいじゃん? 早苗と三人でドライブとかに行きたいじゃん? だったらアンネリーゼちゃんに買ってもらうしかないじゃん?」

 

「先ずはそのイラつく口調をやめたまえ。……キミたち、そんなことを話すために私を日本の僻地に呼んだのか?」

 

「ひどいなぁ、諏訪は僻地じゃないよ。色々あるんだから。ほら、えーっと……色々とさ。」

 

土着神の癖に地元の名所も知らんのか。咄嗟には何一つ思い浮かばなかったらしい諏訪子を無視しつつ、ある程度常識がある方の神にジト目を向けてみれば……神奈子はサッと目を逸らして意味不明な言い訳を寄越してきた。こっちは多少なりとも罪悪感を持っているようだな。要するに諏訪子よりは遥かにマシだということだ。

 

「……私はただ、ビデオを借りたかっただけなんだ。藤原派にお前の名前を出したり、車をせびろうと計画したのは私じゃない。今日だっていきなり呼びつけるのは迷惑だと何度も諏訪子を止めたんだぞ?」

 

「びでお? 何を言っているんだ、キミは。それに藤原派に私の名前を出しただと? どういうことなのかを詳しく聞かせてもらおうか。しっかりと経緯を整理して説明したまえ。」

 

つまるところ、私は二柱の神の呼び出しを受けて日本の守矢神社を訪れているのだ。『大事な話がある』と手紙に書いてあったので、わざわざイギリスからポートキーを使って雪に囲まれた守矢神社まで来てやった結果、こうして無礼にも程がある『おねだり』をされているわけだが……突けば突くだけ問題が出てくる連中だな。藤原派云々は初耳だぞ。

 

じろりと睨め付けながら訊いた私に対して、神奈子は意味もなく戸棚の方に目を向けつつ歯切れの悪い口調で語ってくる。こいつらが私を『便利な財布』だと思っていることはこの際後回しだ。最初に厄介そうな件を問い詰めておかなければ。

 

「日本魔法界において、身分証の利権を管理しているのは藤原派なんだよ。だから免許を手に入れるために、早苗がこう……アンネリーゼ・バートリの知り合いだって点を前面に押し出して交渉してみたんだ。マホウトコロの藤原派にな。」

 

「……それで?」

 

「そしたら殊の外すんなりと事が運んだから、味を占めた諏訪子がお前の名前を『利用しまくる』ことを早苗に提案してな。それでまあ、早苗は素直な子だからそれに従っちゃって……おい、怒らないでくれ。何度も言うが、私はビデオを借りたかっただけなんだよ。それには身分証が必要だったんだ。それだけなんだ。」

 

「……諏訪子、キミからは何かあるかい?」

 

私と決して目を合わせないままで説明を終えた神奈子から視線を動かして、マイペースに蜜柑を剥き始めた諏訪子へと問いかけてみれば……この邪神め、少しは申し訳なさそうな顔をしたらどうなんだ。彼女はにへらと笑いながら開き直ってきた。

 

「だってさ、嘘じゃないもん。早苗はアンネリーゼちゃんの大事な同盟者じゃん。『密な関係』って表現しても問題ないっしょ? ……ねー、それより車は? カタログを取り寄せておいたから早く選ぼうよ。どうせならでっかいのがいいな。その方がカッコいいし。」

 

「キミはあれだね、私を骨の髄まで利用するつもりだね。幻想郷に行った後で借りた分だけ返すってことを分かっているのかい?」

 

「分かってるって。私たちはね、『ローン払い』でこっちに居る間の早苗の幸せを買おうとしてるわけ。折角顕現して直接手助けできるようになったんだから、これまで苦労させた分くらいは早苗を幸せにしてやらないといけないの。だけど無い袖はどう頑張ったって振れないでしょ? だからローンを組むしかないんだよ。多少の利子はつけてもいいから貸してくれないかな?」

 

「……本当に返せるんだろうね? 私は別にまだ貸せるが、返ってくる当ての無い金を貸すのは御免だぞ。」

 

二柱の債務者たちに疑問を呈してみると、諏訪子と神奈子はそれぞれの反応を返してくる。金貸しの真似事をする羽目になるとは思わなかったぞ。

 

「返すよ。それは洩矢諏訪子の名前と、洩矢神の名前と、この神社にかけて約束する。私は幻想郷に行った後で順風満帆の甘っちょろい生活が待ってるとは思ってないの。だからせめて、こっちに居る間は早苗を甘やかしまくろうって決めたんだ。今の私たちは何にも持ってないから、そのためのお金とか立場とかはアンネリーゼちゃんから借りるしかないけど……幻想郷に行って力を取り戻したら利子をつけて返すよ。貸した甲斐があったって思うくらいの利子をね。」

 

「そうだな、借りた分以上を返すことを私も誓おう。お前も既に知っている通り、私たちはそれなりの神格だ。力さえ戻れば役に立てることは保証するぞ。絶対に後悔はさせないから、今は早苗のために協力してくれないか?」

 

「……まあ、分かったよ。私の方だってもはや引くに引けないんだ。ここで見限ればただ損をするだけだし、『早苗の幸せ』の対価がキミたちの神としての力だと言うのであれば取引内容に異存はない。早苗の後ろ盾になることは許可しようじゃないか。」

 

そこで一度区切った後で、表情を明るくしている二柱に続きを話す。とはいえ、譲歩にも限度というものがあるのだ。

 

「だが、自動車は必要ないだろう? その点に関しては話し合う必要があると思うがね。」

 

「えー? ケチだなぁ。アンネリーゼちゃんはお金持ちなんでしょ? 車の一台や二台買ってくれたっていいじゃんか。」

 

「金持ちが何故金持ちたり得るのかを教えてあげよう。金の使い方と稼ぎ方を熟慮するからだよ。無駄に使いまくるのは幸運で端金を掴んだ成金だけさ。稼ぎ方をきちんと知っている者は、賢い使い方も知っているものなんだ。」

 

「うっわ、金持ちっぽい台詞。」

 

『っぽい』んじゃなくて、実際そうなんだよ。嫌そうな顔で突っ込みを入れてきた諏訪子に同じ表情を向けていると、神奈子がおずおずと質問を投げてきた。

 

「しかしだな、バートリ。貯め込んだままにしておいたところで無駄なんじゃないのか? 幻想郷で使えるわけではないんだろう? ……いや、車を買って欲しくて言っているわけじゃないぞ? 純粋な疑問だ。」

 

「私はこっちと向こうを行き来できるんだから、財産を持っておいても無駄にはならないさ。その方向から攻めようとしたってダメだよ。」

 

「意地悪しないで買ってよー。この神社からだとスーパーもコンビニも遠いし、長期休暇の時に毎回自転車で買い物に行く早苗が可哀想じゃん。買ってってば。買って買って! お願いお願い!」

 

『本物』の子供ならともかくとして、お前の年齢で駄々をこねられても不気味なだけだぞ。炬燵に入ったままでバタバタと暴れ始めた我儘祟り神に冷めた視線を送っていると、神奈子が額を押さえながら妥協案を提示してくる。こいつもこいつで諏訪子のお粗末な芝居にうんざりしているらしい。

 

「まあその、安い中古車で構わないんだ。スーパーまで早苗を送っていけるのは確かに魅力的だし、どうにか頼めないか?」

 

「……具体的に幾らくらいなんだい?」

 

「ちょっと待っててくれ、近所のカーディーラーのチラシを取っておいたから。」

 

どこまでも用意周到な連中だな。戸棚の引き出しから安っぽい紙を出した神奈子は、それを私に差し出してきた。……うーむ、想像より全然安そうだ。馬車より遥かに安価だというあたりに文明の進歩を感じるぞ。大量生産が故の安価ってわけか。

 

「……どう? 買ってくれる?」

 

『駄々っ子』をピタリと止めて私の隣ににじり寄ってきた諏訪子へと、忌々しい気分で念押しの一言を放つ。

 

「返すんだね?」

 

「うん、返す。幻想郷に行ったら絶対返す。必ず返す。約束する。……あのね、中古車ならこれがいいな。年明けにみんなで話し合って決めたの。丸が付いてるやつ。」

 

「……いいだろう、買いたまえ。」

 

ため息を吐きながら渋々認めてやれば、二柱は揃ってお礼を口にしてきた。

 

「やったー! ありがとね、アンネリーゼちゃん。話の分かる金持ちは良い金持ちだよ。好き好き。大好き!」

 

「感謝するぞ、バートリ。これで買い物が楽になりそうだ。ビデオ屋にも簡単に行けるしな。」

 

こいつらは恐らく、最初からこの車を私に買わせるつもりだったのだろう。諏訪子が高級品をねだった後、神奈子が『お手頃な品』を提示してハードルを下げるというやり方か。神奈子の方は若干心苦しそうな顔付きだし、諏訪子が立てた作戦に付き合わされていたと見て間違いなさそうだ。

 

早苗といい、諏訪子といい、この神社の連中は遠慮がなさ過ぎるぞ。私も魔理沙たちと一緒に逆転時計を探すべきなのかもしれんな。早苗経由で二柱を利用してやろうと思っていた頃の私に、そう簡単にはいかんぞと警告するために。

 

果たして今の私は利用している側なのか、利用されている側なのか、あるいは対等な取り引きをしているのか。何となく答えが分かってしまうその疑問を考えないようにしつつ、アンネリーゼ・バートリは虚しい気分で神々からの感謝を受け取るのだった。

 


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