Game of Vampire   作:のみみず@白月

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先輩と後輩

 

 

「ええ、一週間の休暇を取ったの。ブリックスさんからそろそろ取って欲しいって言われちゃったのよね。だから来週からスーザンと一緒にフランスのホリデーコテージでバカンスってわけよ。」

 

微笑みながら言うハーマイオニーを横目に、アンネリーゼ・バートリはグリーンカレーの匂いをすんすんと嗅いでいた。ダメだな、香辛料の香りがキツすぎて私は食べられそうにない。大人しく自分が頼んだサーロインステーキを待とう。

 

徐々に気温が上がってきた七月の中旬、私はいつもの三人とランチを楽しんでいるところだ。時間がない時は魔法省の食堂で食べるのだが、今日は珍しくロンが時間を取れたということで、ハーマイオニーが同僚のスーザン・ボーンズから教えてもらったというパブを訪れているのである。

 

夏の予定を語ったハーマイオニーに対して、ロンがサイダーを飲みながら相槌を打つ。赤毛のノッポ君はちょっとだけ体格ががっしりしてきた気がするな。闇祓いの訓練の成果なんだろうか?

 

「羨ましいよ。こっちは未だに休暇を取れないからな。入局してから一年間は『余計な休み』は無しなんだそうだ。何ともありがたい話だろ?」

 

「来年度からは取れるってこと? ……リーゼ、食べないの?」

 

「ん、香りが強すぎる料理は苦手でね。自分のステーキを待つよ。」

 

「今年の九月からは年間二週間の有給休暇が貰えるっぽいな。だけど、そっちは初年度からもっと多いんだろ?」

 

私の応答の後に放たれたロンの問いに、ハーマイオニーがこっくり頷いて肯定した。

 

「協力部は初年度から年間五週間よ。結婚してたり、子供が居たりするともっと増えるみたい。」

 

「五週間もか。まあ、イギリス魔法省は基本的にそれくらい貰えるよな。……闇祓い局ってのはどうして何もかもが厳しいんだ? 嫌になってくるよ。」

 

「お給料は闇祓い局員の方が断然上だけどね。他にも色々と優遇されてる部分はあるでしょうし、隣の芝生は何とやらよ。……あら、美味しい。ハリーも一口どう?」

 

うーむ、二倍以上の差があるのか。省内でも結構違いが出るんだな。グリーンカレーを食べながらのハーマイオニーの質問を受けて、ハリーが首肯してから手を伸ばす。

 

「うん、一口貰うよ。……どうやって食べればいいの? これ。」

 

「これにつけて食べるの。えーっと、何だったかしら。ロティ? みたいな名前のやつ。要するにパンよ。」

 

「こう? ……んー、不思議な味だね。美味しいんだと思う。未知の味すぎて上手く判断できないよ。」

 

何だそりゃ。何とも曖昧な感想をハリーが口にしたところで、ロンが注文したカルボナーラが席に到着した。ステーキはどうしたんだよ。グリーンカレーよりもカルボナーラよりも簡単な料理だろうが。焼くだけなんだから。

 

「よし、来たか。……そういえば局長がハリーのことを心配してたぜ。勉強の調子はどうかって。」

 

「ロバーズさんが?」

 

「シャックルボルト副局長からも聞かれたしな。去年の試験での杖捌きが良かったからかもしれないけど、『ハリー・ポッターが闇祓いになる』ってのはやっぱり望まれてるみたいだぞ。」

 

「だったら去年の段階で入れておけば良かったろうに。」

 

鼻を鳴らしながら通算何度目かの文句を場に投げてやれば、苦笑いのハーマイオニーがフォローしてくる。

 

「規則なんだから仕方がないわよ。闇祓いがそれを破ってたら本末転倒じゃない。……でも、四人で旅行するのは再来年度まで無理そうね。九月からはハリーが今のロンと同じ状況になるわけでしょう?」

 

「なるだろうな。そこまでいくと『卒業旅行』って感じでもなくなっちゃいそうじゃないか?」

 

「名目なんて何でもいいわよ。四人で記念の旅行をするっていうのが大事なの。……リーゼはどう? 日本魔法界云々は一段落した?」

 

ロンに応じてから話を振ってきたハーマイオニーに、テーブルに運ばれてきたサンドイッチを見ながら返答を返す。ハリーのサンドイッチも届いたか。何故私のステーキだけが来ないんだ? 忘れているんじゃないだろうな?

 

「一番難しい部分は終わったんだけどね。まだまだ細かい作業が残っているんだ。日本魔法省に対策委員会の要請を呑ませたいんだよ。」

 

「あー、あの要請か。ロシアとドイツは当然呑んで、マクーザとイギリスとカナダも大半を受け入れたんだろ? となると残りはフランスと日本と……あれ、もう一つはどの国だっけ? 全部で八ヵ国だよな?」

 

「ブラジルだよ。そっちはゲラートが直接働きかけているらしいね。」

 

「ブラジルか。クィディッチのイメージしかないけど、何でいきなりブラジルが入ってきたんだ?」

 

カルボナーラを食べつつ疑問を呈したロンへと、サンドイッチに手を付けたハリーが予想を送った。サンドイッチも美味そうだな。……いや、今は我慢だ。ステーキがもうすぐ来るはず。すぐ来なきゃおかしいぞ。

 

「カステロブルーシュじゃない? 七大魔法学校と関係が深い国を優先したってことでしょ?」

 

「正解だよ。あとは非魔法界への理解度が比較的高いって理由もあるけどね。」

 

「あれ、そうなんだ。知らなかったな。僕としてもブラジルの印象はクィディッチと、カステロブルーシュと……あとはそう、蛇だけだよ。」

 

「蛇?」

 

ブラジルと蛇がどう繋がるのかと思って問いかけてみれば、ハリーは苦笑しながら懐かしそうに回答してくる。

 

「子供の頃に動物園の蛇と喋ったことがあるんだ。僕が魔法界のことを知るちょっと前に、ダドリーの『おまけ』で連れて行ってもらったんだよ。……その蛇が元々ブラジルに居る蛇で、故郷に帰ることを夢見てたらしくてさ。生まれは動物園だったみたいだけどね。数少ない蛇語を使った機会の一つってわけ。」

 

「へえ、見たことのない故郷を想ってたの。ロマンチックな蛇ね。」

 

ロマンチックか? 私とロンがハーマイオニーの感想に首を傾げているのを尻目に、ハリーは『思い出話』の結末を口にした。

 

「それで、最終的には魔法でガラスを消しちゃったんだよね。つまりその、蛇が入ってた大きなケージのガラス面を。……今思うと迷惑をかけちゃったのかも。後で惨事部の魔法使いが直してくれたのかな?」

 

「『未就学魔法使いの意図せぬ魔法使用』に当たるでしょうし、気にしたって仕方がないわよ。私もいくつか覚えがあるわ。」

 

「僕は生まれた時から魔法界だったから分かんないけどさ、マグル界出身なら一つや二つはある逸話なんじゃないか? ……融和が実現したらマグルからしても有り触れた話になるのかもな。」

 

「現状だとかなり遠い未来の話に思えるわね。」

 

ハーマイオニーがロンに相槌を打ったところで……やれやれ、ようやく来たか。私のサーロインステーキがテーブルに運ばれてくる。まあ、十年そこらじゃ無理だろうな。四半世紀か、半世紀か、もっと先か。あるとしてもこの三人の子供の世代の更に後の話になるだろう。

 

うーん、時計の針との競争だな。タイムリミットに追いつかれる前に非魔法界問題が『ゴール』にたどり着けることを願いつつ、アンネリーゼ・バートリはステーキを細かく切り分けるのだった。

 

 

─────

 

 

「おっす、アリス。戻ったぜ。……いやー、疲れた疲れた。どっこいしょっと。」

 

それはその歳で使う台詞じゃないだろうに。大荷物を抱えた状態で人形店のリビングの暖炉から出てきた魔理沙へと、ソファに座っているアリス・マーガトロイドは紅茶を片手に返事を返していた。予定より少しだけ早かったな。ヨーロッパ特急がまた早着したのかもしれない。

 

「お帰りなさい、魔理沙。随分と荷物が増えたわね。何をそんなに買ってきたの?」

 

「へへ、今見せるぜ。すっごいのを買ってきたんだ。」

 

暖炉のすぐ前に荷物を置いた魔理沙が自慢げに応答したところで、続いて咲夜が緑の炎と共に出現する。要するに、咲夜と魔理沙がフランスをメインとした大陸側のヨーロッパ旅行から帰ってきたのだ。先週の火曜日に出発して、月曜日である今日帰ってくるという六泊七日の日程だったわけだが……まあうん、兎にも角にも無事に帰ってきてくれて何よりだぞ。

 

「わっ、魔理沙? 危ないじゃないの。早く暖炉の前から退いてよ。……ただいま、アリス。」

 

「お帰り、咲夜。」

 

「悪い悪い、アリスに早く『あれ』を見せようとしてたんだよ。」

 

「私はアリスに意見を聞いてから買うべきだと思ったけどね。買ってから見せたって仕方がないじゃない。」

 

やっぱりこの二人が居ると賑やかだな。いきなりリビングが慌ただしくなったことに微笑みつつ、何の話だろうと首を傾げていると、魔理沙が木と革で作られたケースのような物をこちらに持ってきた。ブリーフケースよりもやや大きいくらいかな? 留め具やハンドルもしっかりしているし、高級感があるデザインだ。

 

「これだよ、これ。……じゃーん! どうだ? 良い物だろ?」

 

なるほど、ツールケースだったのか。魔理沙が私の目の前のセンターテーブルにケースを置いて、ダイヤル錠付きの留め具を外して蓋を開くと、内部の収納スペースが立体的に展開する。明らかに見た目通りの収納量じゃないな。拡大魔法がかかっているらしい。ぎっしり詰まっている工具もツールケース自体と似通ったデザインだし、工具付きで一式丸ごと買ったようだ。

 

でも、何の工具なんだろうか? とりあえず人形作り用じゃないことは分かるものの、見たこともないような工具がちらほらあるぞ。となると普段目にする機会のない専門的な工具かつ、私が今まで関わったことのない道具ということになるな。そして買ってきたのが魔理沙となれば──

 

「箒作り用の工具なの?」

 

「そうそう、大正解だぜ。旅行後半に行ったドイツで箒工房の見学をした後に買ったんだ。幻想郷に帰ったら自分で手入れしたり作ったりしないとだから、どうせならってことで奮発して良いやつを買ったんだが……アリスはどう思う? これを選んで正解だったか?」

 

「そうね、良い品だと思うわよ。箒作りはやったことがないからはっきりとは言えないけど、作りがしっかりしているのは分かるもの。……あら、これなんかは人形作りにも使えそうね。」

 

「小鬼が作った工具セットなんだぜ? 値段が値段だったから物凄く迷ったんだが、絶対に必要になると思って妥協しないで選んだんだ。」

 

小鬼製か。それなら間違いなさそうだな。やはりこういう品は小鬼との関係が深いドイツ魔法界が一枚上手かと感心している私に、咲夜がやれやれと首を振りながら口を開いた。

 

「魔理沙ったら、箒作り用品の専門店で二時間も迷ってたの。二時間だよ? その間私はずーっと待ってたんだから。」

 

「それは悪かったけどよ、お前だって小鬼製の刃物店で一時間以上使っただろ?」

 

「その時は勝手に一人で近くのカフェに行っちゃったじゃない。はぐれたかと思って不安になったわ。一言断ればそれで済むのに、何で無言で店を出るのよ。」

 

「断ったぞ、私は。『さっき見つけたカフェで待ってるからな』って。夢中になってて聞いてなかっただけだろ。」

 

いつもの『痴話喧嘩』を聞き流しつつ、工具を順番にチェックしていく。何に使うのかを直感的に理解できる物もあれば、独特な形状すぎて予想できない物もあるな。興味深い気分で未知の道具を調べていると、廊下からエマさんがリビングに入ってきた。

 

「あれ、二人ともお帰りなさい。早かったですね。」

 

「おう、エマ。ヨーロッパ特急が遅く出て早く着いたんだよ。相変わらずあの列車はよく分からんぜ。」

 

「ただいま帰りました、エマさん。リーゼお嬢様はお出かけ中ですか?」

 

「まだトランクの中で寝てますよ。……でも、そろそろ起こすべきですね。一緒に行きますか?」

 

リビングの壁掛け時計が示している時刻は午後四時半だ。最近のリーゼ様が夜型生活なのは、油断すると吸血鬼らしい生活スタイルに戻ってしまうということなんだろうか? 考えている私を他所に、咲夜がこくこく頷いてエマさんとリビングを出ていく。

 

「はい、行きます。」

 

「じゃあ二人で起こしましょう。」

 

うーん、私も合わせて夜起きていようかな。夕方に起きて朝に寝る生活だとリーゼ様と一緒には居られるものの、店が開けられなくなってしまう。そして昼型だとリーゼ様とすれ違いだ。となれば魔女らしくずっと起きているのが正解だろう。心中で生活スタイルの『改善』を決意した私へと、魔理沙が別の荷物を開けながら声をかけてきた。

 

「なあなあ、これも見てくれよ。箒作りの本をいくつか買ってきたんだ。ホグワーツに戻ったら実践してみようと思ってさ。」

 

「いいじゃないの、空きコマを有意義に使うのには賛成よ。……結構難しそうね。」

 

「だよな。最初は絶対失敗するだろうし、上達にはかなりの時間がかかりそうなんだ。木工の技術も必要な上、複雑な魔法を完璧にかけないときちんと飛ばないらしくてさ。」

 

言っていること自体はマイナスの要素を含んでいるが……何とまあ、満面の笑みだな。『やり甲斐がある』という顔になっているぞ。私が複雑な構造の人形の制作に挑む時や、パチュリーが未知の文字で書かれた本を前にした時と同じ顔付きだ。

 

見習いだろうが魔女は魔女。自身の興味に纏わる『困難』は望むところだということか。分厚い箒作りの本を開いて強気に笑う魔理沙を見ながら、この子も着実に本物の魔女に近付いているなと苦笑していると、成長中の魔女見習いが思い出したように疑問を寄越してくる。

 

「そういえばよ、日本に行く日程は決まったのか?」

 

「あー、長期的な滞在に関してはまだ未定よ。今月末に一度守矢神社に行くから、その時決めるんじゃないかしら?」

 

「東風谷が夏休みに入る前に行くってことか?」

 

「というか、夏休みに入った直後ね。ついでに守矢神社の『測量』もする予定なの。何でも裏手の湖も幻想郷に『持っていきたい』らしくて、それが実現可能かをチェックしないといけないのよ。」

 

まあ、ほぼ百パーセント無理だろうな。私の技量では社単体でもギリギリなのに、湖を丸ごとだなんて不可能だぞ。リーゼ様もこの前の話し合いで懸念を口に出したようなのだが、諏訪子さんと神奈子さんがどうしてもと言って聞かないため、私が現地に向かうことになってしまったのだ。

 

湖の『転移』は端から無理だとして、問題は二柱をどう説得するかだなと思考を回している私に、魔理沙が何とも言えない表情で相槌を打ってきた。

 

「湖を神社ごと転移魔法で幻想郷に運ぶってことだよな? ……かなり難しそうじゃないか? 守矢神社には行ったことないから、サイズ感がいまいち掴めんけどよ。」

 

「かなりどころじゃなく難しいと思うわ。私はパチュリーほど大規模魔法が上手くないのよ。基礎となる術式は教えてもらってあるけど、細かい調整と出力の確保が課題になりそうね。」

 

「出力ね。……使うか? ミニ八卦炉。」

 

八卦炉が入っているのであろうポケットをポンと叩きながら問うてきた魔理沙へと、首を横に振って返答を飛ばす。

 

「そう言ってくれるのはありがたいけど、私じゃ八卦炉のエネルギーを自分が扱える力に変換できないの。パチュリーなら出来たでしょうけどね。……つくづくそっち方面は追いつける気がしないわ。パチュリーは周囲の力を利用するのが得意だったのよ。内側じゃなくて、外側の力を上手く使える魔女ってわけ。」

 

「へえ、『外側の力』か。魔法陣とか?」

 

「そう、魔法陣なんかは大の得意分野ね。どんな物体がどんな力を持っていて、それをどうすれば利用できるのかをよく知っていたの。だけどそれを知らない私は仮に術式自体をどうにか出来ても、肝心の出力を確保できないってことよ。」

 

「……そういうのって『スタイル』の違いなんだよな? つまりアリスとノーレッジはやり方が違うって話であって、魔女としての力の差とはまた別の話なんだろ?」

 

腕を組んで悩みながら放たれた魔理沙の質問に、少し考えてから答えを口にした。

 

「私とパチュリーだと実力そのものにも差があるわけだけど、基本的にはその認識で間違っていないわ。噛み砕けば準備に時間をかけて強力なカードを切るか、臨機応変に手頃なカードを使い分けるかってことね。パチュリーは前者で、私は後者。……ちなみに『鈴の魔女』なんかは多分前者よ。そしてベアトリスは後者に当たるんじゃないかしら? 魅魔さんは判断材料が少なすぎてちょっと分からないわ。」

 

「おー、面白いな。私はどっちだと思う? もちろんまだ本物の魔女にはなれてないけどさ、現時点だとどっち寄りだ?」

 

「んー、後者じゃない? 貴女は自分の工房を『城』にしてひたすら研究に励むってタイプじゃなく、外に出て色々なことを調べ回るタイプでしょう? それなら後者だと思うわ。前者が主に自分の縄張りで行動するのに対して、後者は特定の場所に拘らずに動くわけだから。」

 

要するに好みの問題なのだ。前者の魔女は準備が整っている自分の縄張りでなら十全に魔法を行使できるものの、出先でいきなり魔法を使うのには向いていない。反面後者はいかなる時でも全力を出せるが、総合的な魔法の質自体は前者に劣るはず。……まあ、多分私は出先でもパチュリーに勝てないだろうけど、それは単純に実力に差があるからと判断すべきだろう。

 

もしかしたら魅魔さんくらいの大魔女になれば、そんなことは関係がなくなるのかもしれないな。あれだけの魔女なら準備だの何だのをすっ飛ばして、簡単に大規模な魔法を行使しちゃいそうだし。

 

『大先輩』の背の遠さにため息を吐いたところで、魔理沙がツールケースを片付け始めた。やる気に満ち溢れた笑顔でだ。

 

「なるほどな、言われてみればそうだぜ。私はジッと相手を待つタイプじゃなく、こっちから突っ込んでいくタイプだもんな。……おっし、サクッと荷物を片付けてくる。それが終わったら箒作りの勉強だ。最近はどんどん私の目指す『魔女の形』がはっきりしてきて良い感じだぜ。」

 

うーむ、眩しいほどに真っ直ぐだな。この子は遠い目標にため息を吐くんじゃなくて、そこに追いつける日を思って頑張れるわけか。大量の荷物を部屋に運んでいく魔理沙を見送りつつ、立ち上がって伸びをする。……よしよし、ここは後輩の姿勢を見習っておこう。先ず歩かなければ進めないのだ。簡単に追いつかれてしまっては師匠であるパチュリーに面目が立たないし、少しでも長く背を見せられるように努力しなければ。

 

半自律人形の改善点についてを頭の中で纏めながら、アリス・マーガトロイドは一階の作業場目指して一歩を踏み出すのだった。

 


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