Game of Vampire 作:のみみず@白月
「平均十秒くらいね。」
咲夜から古めかしいストップウォッチを受け取りつつ、パチュリー・ノーレッジは羊皮紙にタイムを書き込んでいた。
言わずもがな、咲夜の能力についての検証である。図書館の机に広げられた羊皮紙を見る限りでは、彼女が時間を止められるのは平均して十秒間だけだ。無論、彼女にとっての十秒間だが。
短いか長いかは人によって意見が分かれるだろうが……世界で自分だけが動ける十秒間。私からすれば長すぎるくらいだ。
「しかし、昔はもう少し長かったと思うのだけど……理論立てて考えすぎたせいなのかしらね?」
羊皮紙を見ながらの呟きを聞いて、頭上から咲夜が疑問を寄越す。
「ってことは、まだ伸び代があるんですよね? 練習すればもっと長くなりますか?」
「ええ、恐らくね。検証で色々分かってきたことだし、効率的な練習方法、を……。」
答えながら頭を上げてみれば……咲夜がたらりと鼻血を流していた。ヤバい。今回の検証では前例の無いほどに連続して能力を使用したのだ。その副作用だとすると……。
「こあ、来なさい! すぐによ!」
焦りによって速くなった鼓動を感じながら、大声で小悪魔を呼びつける。同時に懐から取り出した魔道具をそっと咲夜に当てた。
「あの、パチュリー様? どうしたんですか?」
「いいから、動かないの。」
先ずは脳だ。モノクル型の診断用魔道具を覗き込んで丁寧に調べていくと……よし、異常無し。思わず安堵の吐息を漏らしながら一応身体中を調べているところで、慌てて走ってきた小悪魔が近寄ってきた。
「ど、どうしたんですか? 珍しく本気で焦って……わー! 咲夜ちゃん!」
鼻血を流す咲夜に気付くと、小悪魔は素っ頓狂な叫び声を上げながら慌ててハンカチを押し当てる。ハンカチを当てられたことでようやく咲夜も自分の状況に気付いたようだ。
「あれ? 私、鼻血を……?」
「ほら、横になってください! トントンしますから! トントン!」
「その対処法、間違ってるわよ。」
困惑する咲夜に対して凄い勢いで首筋にチョップを決め始めた小悪魔に忠告しながら、脳内ではぐるぐると思考を回す。
やはり能力を使い過ぎたことが原因か? そもそも咲夜は少し間隔を空けないと連続して能力を使えないし、それでなくとも一回毎に数分間の休憩を挟んでいたのだが……短かったのかもしれない。しくじったな、パチュリー。
そうなると、十秒間というのは無意識のストッパーが働いている可能性がある。……いやいや、それなら赤ん坊の頃にもっと長く止められたのはどういうわけだ? 咲夜はまだまだ子供なんだから、成長に従って多くの身体機能は向上しているはずだぞ。当然ながら処理能力だって今の咲夜の方が上だろうに。
……ああもう、意味不明! 困惑顔で小悪魔に膝枕されている咲夜を見ながら、頭をぐっしゃぐしゃに掻き回したい衝動を必死に堪える。落ち着け、落ち着け。整理するんだ、パチュリー・ノーレッジ。
「こら、パチュリーさま! 咲夜ちゃんに無茶させたんですね? アリスちゃんに言いつけちゃいますよ!」
告げ口悪魔を無視して考える。現在判明しているのは三つ。一つは自分以外の生物と止まった時間を共有できないことだ。例えアリンコ一匹でさえも、咲夜の世界を共有することは出来なかった。紅魔館の面々はこのことを非常に残念がったものだ。……もちろん私も。
「ちょっと! 聞いてるんですか? パチュリーさま! 私は怒ってますよ!」
「えっと、私は大丈夫だよ? どこも痛くないし。」
「そういう問題じゃないんです!」
もう一つは、停止した世界では何かを『破壊』することはできないということ。……ここは非常にあやふやな点だ。実験用のマウスにナイフを刺すことは出来なかったが、紅茶をポットからカップに注ぐことは出来た。妖精メイドを抱えて動かすことは出来るが、コップを割ることは出来なかった。
これに関してはいまいち分からん。咲夜が呼吸出来ていること、歩いた際に生じる摩擦、空間の体積の変化。光、音、重力。考えれば矛盾点が多すぎるのだ。非常に悔しいが、この件についてはとっくに匙を投げている。私が停止した時間に入れない以上、咲夜が自分で検証出来るようになるまではどうにもならないだろう。
「ちょっと? パチュリーさま? 無視するなら考えがありますよ! 下克上しちゃいますからね! 革命ですよ!」
最後の一つは、止まった時間の中で動いているのは咲夜の周囲にある物だけだということだ。例えば咲夜が思いっきりナイフをぶん投げれば、一定距離離れた時点でベクトルを保存して停止する。先程のストップウォッチにしたって、机に置いて少し離れれば針の動きを止めるのだろう。
難しいな……今度大きなプールの中で時間を停止させてもらおうか? その場合周囲の水はどうなる? 咲夜が移動した場合は? ううむ、気になってきた。早速美鈴に頼んでプールを──
「ちょあぁ!」
「むきゅっ! ……何のつもりよ! こあ!」
何なんだ、一体! いきなり小悪魔がチョップをかましてきた。おのれ小悪魔、上司にチョップをするとはいい度胸じゃないか。
「パチュリーさまが全然話を聞かないからじゃないですか! もう怒りましたからね……アリスちゃーん! パチュリーさまが咲夜ちゃんを実験動物にしてますよー! モルモット扱いですよー!」
「待ちなさい、こあ。それはいけないわ。」
ぷんすか怒りながら過保護な人形技師を呼び始めた小悪魔を、必死の思いで押さえつける。レミィはスヤスヤ寝ているだろうし、妹様の地下室までは声が届くまい。アリスさえどうにかすれば『鼻血事件』は闇へと葬れるのだ。
「むー、むー!」
「静かになさい。」
小悪魔の口を押さえつけて耳を澄ませば……あ、ダメだこれ。バタバタとアリスが走ってくる音が聞こえてきた。
勝ち誇った顔の小悪魔をぐりぐりしながらも、パチュリー・ノーレッジは今日一番の思考速度をもってアリスへの言い訳を探すのだった。
─────
「……は? ドラゴン?」
思わず朝食の目玉焼きがフォークから落下するのも構わずに、アンネリーゼ・バートリはそう聞き返していた。
ハグリッドがドラゴンを飼い始めたと聞こえたのだが……いやいや、そんなわけがない。内心で馬鹿馬鹿しい思考を蹴っ飛ばした私に対して、ハリーが返答を口にする。
「そうだよ、ドラゴンを育ててるんだ。」
なるほど。私は耳医者に行く必要はないらしい。蹴っ飛ばした思考を引き戻しながら、ハグリッドをアズカバンに送ろうかと真剣に考え始める。……ダメだな、アリスに怒られるか。
つまり、最近妙に大人しかったのはこれが原因なわけだ。ちょっと前までは石について調べまくっていたというのに……妙だとは思っていたが、ドラゴン? そりゃあ賢者の石に構っている余裕などないはずだ。
呆れ果てている私に、ロンがうんざりしたように口を開いた。
「言いたかないけど、ハグリッドは狂ってるぜ。自分のことをママだって言って猫可愛がりしてるんだ。」
「……法に触れることは知っているんだろうね?」
「知っての上さ。それでもかわいいノーバートちゃん……ドラゴンの名前だ。を引き離すことは出来ないんだってよ。」
頭を押さえてため息を吐く私に、ハーマイオニーが『悪夢』の続きを話す。
「日に日に大きくなってるのよ。このままだとハグリッドの小屋が炭になるのは時間の問題だわ。ハグリッドはリーゼには言わないでって言ってたんだけど……もう私たちじゃどうしようもなくって。何かいい方法を思いつかない?」
「ふぅん? 私に内緒にして欲しいわけだ、あの男は。」
「その……ロンのお兄さんに頼むって手もあるのよ。ただ、誰にもバレずにやるのは難しそうなの。ハグリッドには悪いと思ったんだけど、相談出来そうなのはリーゼしかいなくって。」
いい度胸だな、ハグリッド。ハーマイオニーは申し訳なさそうにしているが、そんな表情をする理由などないのだ。ツルツルなお口のハグリッドが他人に文句など言えまい。
内心に浮かんだ選択肢から、迷わず一つを掴み取る。アリスに言おう。ダンブルドアだとどうせ甘々な感じで終わらせるに違いないが、アリスならきちんと叱りつけてくれるはずだ。ドラゴンの対処はそれからでいい。
潰れた目玉焼きが乗った皿を押し退けながら、立ち上がって口を開く。
「私に任せておきたまえ。ハリー、ヘドウィグを貸してくれるかい? 連絡を取りたい人がいるんだ。」
「そりゃあ、構わないけど。どうにかなるの?」
「どうにかするのさ。」
言い放ってから、すぐさまふくろう小屋へと歩き出す。ただでさえ問題が山積みだってのに、ドラゴンなんかに構っていられるか! 早急に解決する必要があるだろう。
アリスへの手紙は多少脚色しようと決意しつつ、大広間を抜けて荒い足取りで歩くのだった。
───
「おお、お前さんたちか。入れ入れ、ノーバートもよろ、こ……ぶぞ。」
二日後の昼休み。ニッコニコでハリーたちを招き入れようとしていたハグリッドは、私の顔を見ると途端に硬直してしまった。ふむ、罪の自覚はあるらしい。
「やあ、ハグリッド。いい天気だね。」
「あー……こりゃ、アンネリーゼさん。ええと、そうですね。最高の天気だ。」
どんよりした曇り空を見ながら言うハグリッドに、和かな笑みで小屋を指差す。
「私も入っていいかな? 珍しい生き物を飼い始めたそうじゃないか。私にも見せておくれよ。」
「そりゃ、その……ちいっとばかしごちゃごちゃしてるもんで。アンネリーゼさんを招けるような場所じゃねえんです。」
「構わないさ、ハグリッド。私は寛大な吸血鬼なんだよ? そんな小さなことで怒るわけがないだろう? 私が怒るとすれば、そうだな……ドラゴンを飼い始めた時とか? つまり、有り得ない話だよ。」
ニッコリ笑って言ってから、引きつった顔のハグリッドを押し退けて小屋へと入ると……暑っついな、おい。暖炉の火力をマックスにした上で、完璧に小屋の中を閉め切っているようだ。
そしてサウナのような小屋の中央には、ギャーギャー喚く件のドラゴンが鎮座していた。なんというか……産まれたての鳥みたいだ。つまり、非常に醜い。
「……なるほど、かわいいね。」
当然皮肉だ。少なくとも私に続いて入ってきたハリーたちにはそれが通じたようで、然もありなんとばかりの苦笑を浮かべている。
しかし反面、この小屋の主にはそれが通じなかったようだ。嬉しそうに私の前に躍り出ると、コクコク頷きながら捲し立ててきた。
「その通りです! ノーバートは人懐っこくって、全然害はない子なんです! 見ててくだせえ……ほら、ノーバート! ママでちゅよー!」
なるほど、ロンの説明は物事の本質を射ていたな。ハグリッドは間違いなく狂ってる。おまけにギャーギャー鳴きながらハグリッドに噛み付いている姿は、どう見たって獰猛な猛獣にしか見えない。
そんなことは御構い無しに、ハグリッドは嬉しそうな顔で『ほらね?』みたいな目を向けてくるが……コイツ、本当にバジリスクの件は無罪なんだろうな? アリスの言葉といえども疑わしくなってきたぞ。
私が戦慄の光景を眺めていると、もう慣れたとばかりにハーマイオニーがお茶の準備をし始めた。ハリーとロンも椅子に座りながら平然としている。つまり、このホラームービーのような光景は、日常的に行われているようだ。
「ハグリッド、牙には毒があるんだからね。」
「大丈夫、甘噛みしとるだけだ。」
ハリーの忠告も梨の礫だ。グルルと唸りながら噛みついている姿は、どう見たって甘噛みじゃない。本気で食い殺そうとしているぞ、そいつ。
もう何も言うまいと椅子に座る私に、ハグリッドがウルウルと目を潤ませながら話しかけてくる。うーむ、隣でビタンビタンと尻尾を打ちつけて威嚇してくるドラゴンがいなければ、ほんの少しは同情に値する表情かもしれない。
「お願いします、アンネリーゼさん。こいつにはママが必要なんです。離れ離れにさせないでくだせえ。まだ小さな赤ん坊なんだ。」
「安心したまえ、ハグリッド。私は何も言うつもりはないよ。」
「そいつぁ……そいつぁありがてえ!」
私は、だがな。私の返答にハグリッドが顔を輝かせた瞬間、小屋のドアが荒々しくノックされた。そら、怒れる先輩のご到着だ。
「ハグリッド! 開けなさい!」
アリスの怒鳴り声が響くと、ハグリッドは部屋の隅に移動してプルプルし始める。肩を竦めながら代わりにドアを開けてやれば……ご愁傷様、ハグリッド。久々に見る激怒モードのアリスが立っていた。
「リーゼ様、ハグリッドは……ハグリッド!」
私に話しかけながら小屋を見回したアリスは、どうやら標的を見つけたらしい。ズカズカと小屋に入ってくると、テーブルでお茶を飲んでいる三人も目に入らぬ様子で説教をし始めた。
「貴方ね、自分が何をしているか分かってるの? ダンブルドア先生にどれだけの迷惑がかかるかは? 本気で理解できているんでしょうね!」
「マーガトロイド先輩、でも、俺は──」
「それに何より、テッサにどう言い訳するつもりなの? 貴方を止めてくれてた彼女の努力を無に帰すつもりなんだったら、私は本気で怒るわよ!」
ダシダシと足を鳴らしながら言うアリスに、ハグリッドはショボショボと萎れていく。さすがにヴェイユの名前は効いたようだ。
「貴方が『ヤバい』生き物を飼おうとした時に、いつも止めてくれたテッサはもう居ないのよ? もう自分で考えて、自分で責任を取らなくちゃならないの。貴方がドラゴンを飼ったせいでアズカバンに行ったとなれば、彼女がどんなに悲しむか分からない?」
ほんの少しだけ悲しそうな表情で怒るアリスに、ハグリッドは大きな手で額を覆った後、絞り出すようにポツリポツリと話し始めた。
「俺は……俺は、そんなこと考えもしなかった。マーガトロイド先輩の言う通りです。そんなことになったら、ヴェイユ先輩に顔向けできねえ。俺は大馬鹿野郎だ……救いようがねえ、大馬鹿だ。」
随分と小さくなってしまったハグリッドに、アリスは一つ大きなため息を吐いた後、勢いを緩めて語りかける。
「ドラゴンについては何とかなるわ。ダンブルドア先生がスキャマンダー氏に連絡を取ってくれたの。彼のお弟子さんが、責任を持って面倒を見てくれるんですって。……あの方の紹介なら安心して預けられるでしょう? 魔法生物じゃ世界一の人よ。」
さすがはアリスだ。この短時間で既に受け入れ先まで見つけているのか。……しかし、懐かしい名前が出てきたな。ニュート・スキャマンダー。曲がりなりにもゲラートを打ち破った男だ。
別にそのことは関係ないだろうが、ハグリッドにとっても納得の人選だったようで、大きく頷きながら了承の返事を口にし始めた。
「そいつぁ、ありがてえ。ダンブルドア先生にも迷惑をかけちまったようで……情けねえです。」
「後できちんと謝るのよ? ほら、このトランクにそれ……その仔を入れて頂戴。拡大呪文がかかってるから、不便はしないはずよ。多分。」
「わかりました。でもその前に、色々詰めてやらねえと。ノーバートは寂しがり屋なんです。」
恐らく想像よりも大きかったのだろう。ちょっと自信なさげに言うアリスに従って、ハグリッドがボールやら犬用ガムやらを詰め込み始めた。寂しくないようにとテディベアも入れているが……おっと、首を噛み千切ったぞ。
ハグリッドが慌ててテディベアの惨殺死体を取り上げようと奮闘し始めたあたりで、ようやくアリスは室内に居るハリーたち御一行に気付いたようだ。ちょっとバツの悪そうな顔で挨拶を口にした。
「あら、ハリー、ハーマイオニー、ロン。びっくりさせちゃってごめんなさいね。」
「いえ、その……助かりました。あれには凄く困ってたので。」
とうとうテディベアの綿を引き摺り出し始めた『あれ』を指差すハリーに続いて、他の二人も口々に礼を言う。ハリーとハーマイオニーはともかく、ロンとも顔を合わせていたのか。
「おや、ロンとも知り合いだったんだね。」
「ええ、初日の駅でちょっとだけ顔を合わせたんです。モリーに声をかけたときに紹介してもらいました。」
私がアリスの意外な交友関係に感心している間にも、ハグリッドの準備は着々と進んでいく。元テディベアのボロ雑巾、血抜きされた鶏、元クッションのボロ雑巾、ブランデーの入った給水機、元何かのボロ雑巾。……雑巾には絶対に困らんな。何かを拭き取るような知能があるかはともかくとして。
ようやく全ての準備を終えたハグリッドは、ドラゴンと別れを惜しむかのように抱き合った。
「あら、ノーバートもハグリッドと別れるのは寂しいのかしら? 尻尾を巻き付けてぎゅっと抱き締めてるわ。」
「絞め殺そうとしているんだと思うけどね、私は。」
夢のある解釈をするハーマイオニーに現実を教えてあげたところで、ハグリッドはウルウルと目を潤ませながらドラゴンをトランクの中へと押し込む。凄まじい声を上げながら抵抗する猛獣をグイグイと奥に入れると、蓋を閉じながらポツリと声をかけた。
「バイバイ、ノーバートちゃん。寂しくなったらママの所に戻ってくるんだよ?」
「僕、ノーバートが寂しくないように夜な夜な祈るよ。戻ってこられちゃ堪んないもんな。」
「シッ、ロン。」
ロンとハリーのコソコソ話を他所に、パタリと閉じた蓋に魔法で厳重なロックをかけたアリスは、絶対にそれが開かないことを確認してからトランクを手に出口へと歩き始めた。
「もう行っちまうんですか? マーガトロイド先輩。お茶でも……。」
「残念ながら、すぐに『これ』を運び出す必要があるのよ。誰かに見つかるわけにはいかないでしょう? お茶はまた今度の機会にしておくわ。」
言いながらドアに手をかけたアリスは、ゆっくりと開きながら振り返る。
「……いい? ハグリッド。これで最後にしてよね? 次はアズカバン行きを止めたりはしないわよ。」
「分かっちょります、マーガトロイド先輩。ご迷惑をおかけしました。……ノーバートのことをお願いします。」
「任せておきなさい。それじゃあ、ハリー、ロン、ハーマイオニーも元気でね。リーゼ様は……その、頑張ってください。」
その場の全員に挨拶してから、アリスは小屋を出て行く。……ああ、頑張るよ、アリス。私の精神が保つかは保証できないが。なんたってまだ七分の一も終わってないんだ。
アリスを目にしてほんのちょっとだけ元気が出たのを自覚しながら、アンネリーゼ・バートリは大きくため息を吐くのだった。