寝ぼけていた俺の腹に、何かがのしかかるのを感じる。
大方、クリスあたりだろう。
いいぞ。
パパは拒まないからな。
愛する娘の為ならば、喜んで枕になってやろうではないか。
「……ん?」
見下ろすと、想定とは違う光景が広がっていた。
青だ。
青といえばロキシーの色だ。
次女と三女の色でもあるが、真っ先に浮かぶのはロキシーの顔。
最も、最近ではかなり似てきていて区別がつかなくなったこともあるのだが。
だが、神を見間違えるなどあってはならない。
俺のアイデンティティが崩れてしまう。
間違いない、今俺にくっついて離れないのはロキシーだ。
そっと抱き寄せる。
落ち着く。
パウロを喪った直後のことを思い出す。
あの時の彼女の温かさは忘れられない。
「ん?」
あることに気付く。
何かが違うな、と。
具体的に何が、まではわからないが、違うのだ。
おかしいなと思いながらも、俺はそのままの姿勢でいた。
ふと、ドアが開く。
そこには、ロキシーが立っていた。
「あれ、ロキシー?」
俺はロキシーと寝ていたはずなのに、どうして。
いつの間にトリックベ〇トを手に入れたのですか。
「ララは、パパとお昼寝ですか」
にこっと笑って言う。
ララは、という言葉を聞き逃すことはなかった。
俺は自分の過ちに気付く。
娘がニヤニヤしていた。
「パパ、ママと私を間違えたね」
こっちを見るんじゃない。
明らかに狙っただろうに、わざとらしく笑うララに一言言ってやりたいところだが、やめておく。
それよりも大事なことがあるのだ。
「え、ルディ?」
神を見間違えた俺に許されたのは、こうして頭を下げることだけだ。
アイデンティティを守るべく、言葉を発する。
「ごめんなさい。ララとロキシーを間違えてしまいました。もう二度としませんから、許してください。」
まだ、足りない。
続けて言う。
「それと、間違えた直後に言うのも変ですが、愛しています。ロキシー」
「私とララは良く似ています。知らない人からは姉妹だと勘違いされるほどです。そこまで頭を下げるほどのことではありませんよ。」
「ありがとうございます。」
赤面しながらロキシーは続ける。
「あと、私も愛していますよ。ルディ」
気が付くと、ララの姿が消えていた。
イタズラが済んで満足したのだろう。
あるいは、俺たちがイチャつき始めたので退散したか。
ともかく、二度とロキシーと娘を見間違えないと心に誓うルディちゃん(三十路)なのであった。