四次元ポケットと異世界漫遊記   作:ルルイ

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 お読み頂きありがとうございます。
 前作から続けて読んで頂ける方も、見かけて読み始めて頂ける方も、今作をよろしくお願いします。

 前作の続編となりますが新作としての投稿ですので、評価ポイント0からのスタートです。
 面白いと思って頂けた方は、新たな評価をよろしくお願いします


プロローグ
プロローグ1 パラレルマシン


 

 

 

 

 

 地球のすぐ隣に存在する、バードウェイという超空間を超えた先にある世界、バードピア。

 地球に並列する世界であり、地球と同じくらいの歴史を誇るその世界は長年鳥たちの楽園として人の手に触れる事はなかった。

 その世界に多くの事件を解決してきたハジメは安住の地としてそこに降り立ち、住居兼研究所を建ててひみつ道具の研究を続けていた。

 そしてこの日ひみつ道具研究の成果として、自らが作り出した新しい自作ひみつ道具が完成した。

 

「フッ、フフフ、ハハハ、ハーッハッハハッハハッハカフッ、ゲホッゲホゲッホ!」

 

「落ち着くでござるよ、殿」

 

 高笑いをしたハジメは途中で咽てしまい咳を繰り返し、ドラ丸が落ち着かせるように背中を撫でる

 

「急に高笑いをして、どうしたのかと思ったら咽るのでござるから。

 これまでそんな笑い方をしたことなかったでござるよ」

 

「ごほっごほっ! …いや、せっかく最高の研究品が完成したからか科学者っぽく高笑いの後に”遂に完成したぞ!”ってやってみたかったんだけど、高笑いってなかなか難しいものだね。

 漫画の科学者達も普段から高笑いをするのに慣れてるんだろうか?」

 

「慣れないのに変な事をするものではないでござるぞ。

 それで”遂に完成したのでござるな!?”と、ここは聞くべきでござろうか?」

 

「咽ちゃった時点でいろいろ台無しだから、気遣ってくれなくていいよ」

 

 つまらない事をやって失敗し気遣われるのは流石に辛いと、ドラ丸の好意を遠慮する。

 呼吸も落ち着いてきたのでハジメは改めて発明品の説明をドラ丸にする。

 

「やり直す気はないからそのまま本題に入るけど、以前から言っていたものがようやく完成した。

 これが【もしもボックス】を研究して、その機能を組み替えて作り出した新たなひみつ道具【パラレルマシン】だ!」

 

 ドラ丸の目の前にあるのは、畳二畳分の大きさの板状の土台に様々な装置がつけられた乗り物型の装置だった。

 それは原作ドラえもんのタイムマシンの形に酷似しており、新しい発明品という割には貧弱そうに見えた。

 ひみつ道具は外見からは想像も出来ないとんでもない機能を持っている物がたくさんあるので、その性能は外見からは予測出来る物ではない。

 だが元祖タイムマシンに似た形状なのには意味があるのだろうと、ドラ丸はハジメに訊ねた。

 

「それでどういう道具なのでござる? 殿がコピー殿達と時間を掛けて作っていたようでござるが…」

 

 コピーとはハジメが映画事件の時に人員不足を解消する為に【タマゴコピーミラー】で作りだしたハジメ自身のコピーの事である。

 映画の事件を参考に、コピーを作ってもオリジナルに経験と一緒に一つに統合出来る事から、多用したひみつ道具の使い方である。

 

「この道具の機能を説明するにはいろいろ順序立てて説明しないといけないが、まずはこいつの機能と作った目的を説明しよう。

 このパラレルマシンはベースとなったタイムマシンの時空間移動機能を拡張し、完全な異世界に行くことも出来る様にした、時間も空間も世界の壁をも超える事の出来る異空間移動装置だ!

 当然このマシンを作ったのも異世界に行くことが目的だ」

 

「なるほど。 しかし異世界に行くのであれば元のタイムマシンでも、とりあえずは可能であったのでは?」

 

 ドラ丸が言うように、映画事件の時には既に別時空に行くことはタイムマシンの簡単な改造で可能だった。

 しかしこのパラレルマシンはその機能をさらに拡張した、タイムマシンと隔絶した機能を備えている。

 

「確かに元のタイムマシンでも異世界に行くことは可能だったが、それは何らかの目印が必要だったり、迷走した先に偶然辿り着く不確定要素の多いものだった。

 だがこのパラレルマシンは、操縦者が望むどんな世界にも理論上行く事の出来る機能が備わっている。

 それこそ人間ではない亜人種しかいない世界や、現代世界と比べ物にならないほど科学が発展したハイテク世界、神や悪魔がいる神話のような世界にだって行くことが出来るんだ」

 

「神や悪魔は分からんでござるが、人間以外の亜人種は元々の世界に居ったでござるし、拙者達自身が発展した科学の持ち主でござるよ」

 

「うん、まあその通りだね」

 

 ドラえもんの世界自体がファンタジーからSFまで備えたごちゃまぜ世界なので、上記の世界と言っても大して驚く様なことではない。

 神っぽい存在も事件の時に会っていたし、むしろハジメ自身が世界創造の神をやってた事実がある。

 改めて語ると、無茶苦茶な世界だと再認識する。

 

「んんっ! 確かにそういう事もこの世界じゃ珍しくないが、この世界と全く違う技術が広まっている世界に僕は興味がある。

 手っ取り早く言うとドラえもんの世界とは違う、漫画やアニメラノベの世界にもこのマシンを使えば行くことが出来るんだ。

 そんな世界で技術を収集しながら物語を楽しむのが僕の目的だ」

 

「似た様なひみつ道具で【絵本入り込み靴】と言うものがあったでござらぬか?」

 

「確かに同じような機能だけど、あれは絵本がないと行けないし、見て体感するだけしか出来ない。

 その上靴を失うだけで遭難する危険性もあるから危ないんだよ」

 

 映画では発端がドラえもん達自身だったから関わらなかった事件だが、言った通り絵本の中の世界で絵本入り込み靴を失えば出てこれなくなるという危険性がある。

 それに加えて中に人が残ったまま絵本自体を焼かれてしまうというのが映画の展開で、その危険性があるから絵本入り込み靴からの改造をハジメは行わなかった。

 

「とにかく空想の物語の世界でもこのパラレルマシンなら自由に行くことが出来るんだ。

 さらにこのマシンの機能はそれだけじゃない。

 このパラレルマシンの主な機能は、タイムマシンともしもボックスを元に組み合わせたひみつ道具同士の合体と言っていい。

 この二つのひみつ道具それぞれの機能は知っていると思うが、この二つを使った合わせ技を目的としてこのパラレルマシンに集約している。

 先日、僕が魔界大冒険の事件に関わって、魔法の世界に行き魔法を覚えてきたのは覚えているだろう」

 

「もちろんでござるよ。 コピー達を動員して魔法世界の資料と睨めっこしていたでござるな」

 

「本来もしもボックスで魔法の世界にすれば魔法はたしかに使える様になるが、元の世界に戻せば当然魔法が使えない状態に戻るはずだった。

 だけど原作の情報をヒントにタイムマシンを併用すれば、魔法を使えるまま元の世界に戻る事が出来ると予想して試した。

 そして実験は成功し、僕は魔法世界の魔法が使えるままこの世界に戻ってこれた。

 その仕組みを利用し、異世界に行った時にその世界の特性を体に取り込み、元の世界に戻ってきてもそのまま異世界の力を使える様にしたままに出来るのが、二つのひみつ道具を組み合わせたこのパラレルマシンの真の機能だ」

 

 魔界大冒険の事件でのび太達が、もしもボックスで改変した魔法の世界からタイムマシンで過去に戻り、改編前の元の世界に戻った際にそのまま魔法を使うことが出来た。

 ハジメはこれに注目し、魔法が使えるのはその世界が魔法の世界だからだけではなく、その世界の人間が魔法を使える特性があるからであり、もしもボックス使用時に世界と一緒に使用者自身も魔法世界の人間に特性を変化させられるのだと気づいた。

 つまりタイムマシンでもしもボックスの世界改編を時空間を飛び越える事で回避すれば、元の世界に戻っても改編世界で出来る様になった魔法などの特性を元の世界に持ち越すことが出来るという事だ。

 

 魔法世界では科学は逆に迷信として存在しないとされていたが、ひみつ道具という科学は普通に使えたので、もしもボックス使用者は改編前と改編後の世界の力を併用して使えるというのも特徴の一つだろう。

 おそらく科学の無い世界に行ったとしても、使用者の持つひみつ道具や科学の産物は問題なく使えると言った結果になる筈だ。

 

 もしもボックスからの改造でネックだったのは使用した場合全てが”もしも”の世界であり、元々の世界である地球の可能性の世界に限定されるので、もしもボックスによる完全な異世界の再現は微妙だったのだが、パラレルマシンへの改造時に機能拡張して地球という括りに限定しないまったく別の世界への改編を可能にした。

 同時に世界改編時の使用者の体質改変機能も区別して機能するようにし、異世界に行く際にその世界の人間の特性への改編を受け入れ、元の世界に戻る際は特性改編の修復を行わずに戻る事で特性を持ち帰れるようにした。

 この機能のみを独立させて、人間単体の世界特性の改編を世界改編なしで行えるひみつ道具を作るか検討している。

 

「ただ、少々気になる事があってな。

 もしもボックスで魔法世界に改変した後、元の世界に戻した後に魔法世界がパラレルワールドとして独立したのは解るな」

 

「理解しているでござる。 世界の独立の確認に殿が世界を繋いで、時々美夜子殿が遊びに来るでござるな」

 

 ハジメは魔界大冒険で元の世界に戻した場合、魔法世界がパラレルワールドとして別々の世界になるという話があった。

 その確認に、世界としてそれぞれ独立しているのかもしもボックスを使わない魔法世界への移動を試み、魔法の世界と科学の世界ではないがこのバードピアとの接続に成功している。

 美夜子とは魔界大冒険のゲストキャラで、魔法世界改変時の映画事件をさっさと解決する際にハジメは知り合っている。

 

「もしもボックスで世界を改変した場合にタイムマシンで使用前の世界に戻れるという事は、その時点では世界軸的には魔法世界と科学世界は同一世界と言う事になるのだが、元の世界に戻した後は魔法世界は独立し二つの世界となっている。

 独立の確認された状態の魔法世界でタイムマシンなどで時間移動で過去に戻った場合、どうなると思う?」

 

「えーと、どういう事でござる?」

 

「もしもボックス使用時は同一世界軸として使用前の科学の世界に戻れたが、魔法世界が独立している現在はもしもボックス使用時以前の過去はどうなっているのかという事だよ。

 過去に戻る事で分岐点であるもしもボックス使用前の科学の世界にたどり着くのか、或いはもしもボックスによる分岐など関係なく魔法世界の過去にたどり着くのか」

 

「ど、どっちなのでござろう?」

 

 ドラ丸は予想が出来ず、眉を潜ませて考え込む。

 

「これも実験で確認したんだが、魔法世界で時間移動は出来ても空間移動が出来ない【タイムベルト】を使って過去に飛んだら、もしもボックス使用前の魔法世界にたどり着いた。

 つまり独立している現在は魔法世界に過去も存在し、もしもボックス使用開始時から使用終了時まで科学世界と重なって状態になっており、使用終了後から分岐しているという状態になっているんだ。

 この結果を聞いて、もしもボックスは実際はどういう効果を持っているのだと思う?」

 

「殿が何を言いたいのか拙者にはよくわからんでござるよ…」

 

 お手上げといった様子で、難しい話にドラ丸は降参と言った感じで答えを出すのを諦める。

 

「もしもボックスは世界を改編するという、ひみつ道具の中でも理論的に考えてぶっ壊れた機能を持っている。

 だけど使用後にパラレルワールドとして独立するという事は、世界改編と言うより平行世界の創造とも言える更にぶっ壊れた機能になってしまう」

 

「確かに普段から当たり前のように使っていたでござるが、ひみつ道具は玩具みたいな機能から魔法みたいな機能まであるでござるからな」

 

「実際の魔法世界の魔法を見た後では、世界改編でも世界創造でも魔法なんかにはとても収まらないんだけどね。

 話を戻すけど、世界を分岐させた後でその世界軸にも過去がちゃんと存在するという事は、もしもボックスの機能の実体は僕の予想出来る限り二つに分かれる」

 

「機能の実体でござるか?」

 

「一つはもしもボックスが使用時に元の世界をベースに世界を改編し、使用終了後に元々の世界と改編世界を分離して、改編世界の過去現在未来を構築して新しい世界軸として独立させる世界創造機能。

 もう一つはもしもボックスが使用開始時に、既に存在する平行世界を探し出して元の世界の世界軸に重ねる様に融合させ、使用終了後に元通りに分離する世界召喚融合機能。

 この二つが予測出来るんだが、ドラ丸はどっちだと思う?」

 

「拙者にはもうついていけないでござるよ。

 これまでのように既に検証などしたのでござろう?」

 

「残念だが、今の僕の技術力じゃこれ以上の機能の分析は不可能だった。

 もしもボックスの機能が世界創造か世界召喚融合のどちらかなのかを明確にする検証方法が存在しない。

 もう一度魔法世界をもしもボックスに求めれば、既に存在している魔法世界に繋がるか、新たな魔法世界が生まれるかではっきりするかもしれないが、もしもボックスが過去に同じ世界を作っていた場合は同じ世界に繋がるという設定があればどちらが正しいのかわからなくなる。

 だから検証で機能を確認するのはお手上げなんだ」

 

「もしもボックスをベースにパラレルマシンを作ったのでござろう?

 作ることが出来たのに正確な機能が解らないのでござるか?」

 

「重要な機能はひみつ道具で複製したもしもボックスをハツメイカーの指示で材料にしているからね。

 いまだにぶっ飛んだ性能のひみつ道具は、まだまだ解析しきれてないのが現状だよ。

 今となっては時間移動の出来るタイムマシンの方がまだまだ理論が簡単な方だったって思うよ」

 

 映画事件時代に宇宙船開発でワープ機能を解析した際に、超空間に部類される時空間についての理論も足掛かりを得ており、宇宙船兼用のタイムマシンを作るなどして理解を深め、超空間関連の技術をだいぶ理解できている。

 今なら現代技術だけでも時間を掛ければタイムマシンを作れるようになる自信がハジメにあった。

 

「もしもボックスの機能の実体がはっきりしていない事は分かったと思うが、それを流用したパラレルマシンも機能の実体を説明できない。

 だけどもしもボックスが使えたのだからパラレルマシンも理論が解らなくても使える事に変わりない。

 世界を創造してその世界にパラレルマシンで向かうのか、あるいは既に存在している異世界をパラレルマシンが自動で探し出して向かうのか。

 機能の実体が明確でないのはすっきりしないから説明したが、結果的に異世界に行けるのが同じであることに変わりない。

 僕としては世界創造論よりも世界召喚論の方が、まだ穏やかな性能だと思うからそっちを推すけどね」

 

「確かに世界創造よりは、既にある世界を探し出していると考えた方が常識的でござるからな」

 

 ハジメ達はそういうが、世界創造論があり得る可能性は十分にあり、別のひみつ道具で証明されている。

 創世日記の事件で神様シートの中に作った世界の昆虫人がタイムマシンを使って現れるという事があり、創世セットは夏休みの宿題用だと言われているのに世界創造を間違いなく行っているのだ。

 ひみつ道具に常識を求めるのが間違っている証拠だが、ハジメ達はそれでも普通の人間として常識を無意識に求めていたりするのだった。

 

「仕組みがわからなくても使えるのは、ひみつ道具に限らず科学の産物にはよくある事だから、気にしても仕方ないんだけどね。

 とにかくもしもボックスの拡張された機能で異世界の創造或いは探索をし、タイムマシンの超空間移動機能で世界を超えて目的の世界に行くのがパラレルマシンの主な機能だ。

 パラレルマシンのAIに目的の世界の情報を入力すれば、後は自動的に道筋を示して望んだ異世界に行くことが出来る筈だ」

 

「それで、さっそく行くのでござるかな?」

 

「いや、僕自身が実際に行くのはもう少し控えるつもりだ。

 映画事件の時もそうだったけど、ひみつ道具があるからって安心できるほど僕は強くない。

 魔法世界で魔法を習得したように、僕自身が強くなれる力がある異世界にまずはコピーを送ろうと思う。

 異世界の力をコピーに習得させて、帰ってきたら統合する事で僕自身の力を強化しようと思う。

 いくつかの世界の力を集めて、並大抵の事では死ななくなってから僕自身が異世界に出ようと思う」

 

 映画時代は事件に直接出向いて危険に対処していたのは、ハジメのコピーの場合がほとんどだった。

 コピーと言ってもハジメと同じ記憶と能力を持っているが、四次元ポケットを持っているのはオリジナルのハジメだけだった。

 その為万一にもオリジナルが死ぬわけにはいかないと、表に出て事件に対処するのはコピーの役目だった。

 

 ドラえもんの世界も映画版はそれなりに危険な世界だったが、バトル漫画等の戦闘系の世界となったら咄嗟の時に生身ではひみつ道具を使う間もなく死ぬ可能性が十分にある。

 今回も同じようにオリジナルがいきなり異世界に行って死なない様に、安全策としてコピーに先行させる事にしたのだ。

 

「相変わらず殿は慎重でござるな」

 

「そこはあえて臆病と言ってくれ。 ひみつ道具があっても僕は普通の人間に過ぎないんだ。

 他の物語の世界に行きたいと言っても、物語のキャラに成り替わるとかそういうのが目的じゃない。

 ただその世界の力を体験したり、技術収集をしたりしてみたいだけの道楽に過ぎないんだから。

 僕に映画ののび太達みたいに、危険を前にして立ち向かえるような勇気はない。

 必要以上にスリルはいらないから、安心できる異世界探検が僕のモットーだ。

 仕え甲斐の無い主人でごめんね」

 

「確かに武士としては主を危険から守ってこそでござるが、危険に近づくのを従者が進める訳にもいかないでござるからな。

 これまで通り、命の危機とは無縁なまま、殿の護衛を務めさせてもらうでござるよ」

 

 映画事件ではドラ丸もその刀を振るう事はあったが、護衛としてハジメの目の前で危機から守った事はなかった。

 ドラ丸はもしもの時の最終防衛ラインで、当然それまでに多くの安全策をハジメは講じていた。

 そもそも危険に近づくのはコピーに任せていたので、オリジナルが危険地帯に立ち、その護衛をドラ丸がすることなどほとんどなかった。

 オリジナルは安全な所から状況を眺め、コピーの護衛としてドラ丸が剣を振るう事があったくらいだ。

 必要無いとは言わないが、護衛として真に役に立った事などなかったのだが、無いのであればそれに越したことはないのも事実だ。

 

「それじゃあパラレルマシンを何台か複製してから、コピー達をそれぞれ幾つかの世界に送り出す準備をしようか。

 行先は既に何か所か候補に挙げているから、後は向かう先で必要になりそうなひみつ道具を用意しないと」

 

「殿、いずれで良いのでござるが、拙者も剣客のいる世界に行ってみたいでござる。

 物語に語られる名剣士と是非とも剣を交えてみたいでござる」

 

「それは構わないけどドラ丸。 それには一つ問題がある」

 

「何でござるか、それは」

 

「ドラ丸が二頭身のロボットってことだ。

 この世界や科学の進んだ世界ならともかく、その姿では奇抜過ぎて果し合いどころでは無くなる」

 

「そうでござった、拙者ロボットだったでござる!」

 

 現代の世界観ならドラ丸の姿はマスコットで済むが、ロボットの存在しない時代の世界では化け物扱いされる可能性が高い。

 ドラえもんが21世紀で普通に活動してるのもアニメなら気にならないが、普通なら何らかの騒ぎになっている筈なのだ。

 そういう意味ではドラ丸の容姿は現在以前の社会で活動するのにまるで適していないのだ。

 

「ここで暮らす分には問題ないけど、異世界の社会に紛れ込むにはドラ丸の容姿は目立ち過ぎるだろうな。

 ドラえもんの世界だからという理由でその容姿にしたけど、人の多い場所で活動するには適していないんだよな」

 

「ではどうするのでござる。 目立ち過ぎて一緒に行動出来ないのでは、護衛をするのも難しく成るでござるよ。

 透明マントの外装を使えば、陰から努めることは出来るでござるが…」

 

 ドラ丸には護衛としてあらゆる状況に対応できるように、装備や内臓機能としてひみつ道具自体が多く使われている。

 サムライモデルに合わせた外装はマント型のひみつ道具を組み合わせて作っており、【ひらりマント】や【透明マント】などの多様性を持たせた複合ひみつ道具となっているのだ。

 

「せっかくの異世界探索に影から追いかけてくるだけじゃつまらないだろう?

 時間が空いたら、人の中に居ても違和感のない人間型に成れる変身機能でも取り付けよう」

 

「それはありがたいでござる」

 

 そうして今後の予定を考えながら、パラレルマシンを複製して増やしコピーを異世界に送り出す準備を始めた。

 パラレルマシンの機能がちゃんと動くかどうかの心配はしていない。

 映画事件の時から頼りにしている○×占いで何も問題が無いか確認しているからだ。

 ○×占いの的中率100%をハジメは非常に頼りにしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウバアアアァァァ~………」

 

「殿、まだ調子が戻らないでござるか?」

 

「だいぶ楽になってきたんだが、それでもまだ頭が重い…。

 二日酔いだってもうちょっとマシだぞ」

 

 パラレルマシンを完成させてから半月ほど。

 コピー達を複数同時に異世界に送り出し、力を得て戻ってきた彼らと統合し、ハジメ自身に力のフィードバックさせることに成功していた。

 

 パラレルマシンは主にもしもボックスとタイムマシンの機能を合体させたもので、元々の機能である時間移動も当然使うことが出来る。

 コピー達を異世界に送り出し、その世界で力を付けるのに何年かかったとしても、時間移動機能で出発の翌日に戻ってくることも当然可能だ。

 そうしてわずか一日でいくつもの世界での力と知識を吸収し、ハジメはとんでもない生身の強さと無数の世界の英知を身に着ける事に成功していた。

 しかし統合した後に、ハジメは予想していなかった副作用から少しばかり体調を崩しており、何日も不調の日々を送っていた。

 

 そもそも統合とはタマゴコピーミラーで複製した物を、オリジナルを含めて一つに戻す事だ。

 その際コピー達の記憶も一つになる仕組みにNARUTOの影分身ネタを思い出し、人員不足の解消と同時に複数の頭脳による学習加速を行なった。

 NARUTOの影分身とは実体を持ち独自に考えて行動する分身を作る術で、術解除の際に分身の経験したことをオリジナルに還元できるという特性を持っていた。

 その影分身と同じようにタマゴコピーミラーでコピーを作り、それぞれが別の事を学習するし統合で知識を還元する事で学習速度を何十倍にも加速させ、ハジメは映画事件にかけた十年でひみつ道具をある程度ではあるが解析出来る科学力を身に着けた。

 

 影分身による学習加速の欠点に、オリジナルに分身達が感じ取った経験全てが還元するので、精神疲労が集中してしまうというデメリットがある。

 同じようにコピーの統合にもオリジナルに経験が集中するが、コピーは影分身と違って実体を持っており疲労しても回復することが出来たので、統合の際のフィードバックの反動も影分身に比べて非常に少ない物になっていた。

 そして今回も同じように異世界から力を付けて戻ってきたコピー達を統合したのだが、今度ばかりはこれまでの様に反動ほぼ無しという訳にはいかなかったのだ。

 

 異世界に行ったコピーはその世界の知識と力を付ける事を目的にしており、一週間や二週間、一月と言った短い期間でその世界の特質となる力を納得のいくレベルまで集めるのは不可能だった。

 当然ハジメもその事に気づいて、コピー達が異世界で年単位で活動する事も想定していた。

 それぞれの世界に送るコピーはせいぜい数人で、その世界での活動の補助にタマゴコピーミラーを持たせてこれまでの様に人員不足の解消と学習加速をさせる事で、異世界での活動期間を短縮させることにした。

 技術なり能力なり力のある世界は大抵危険があるので、出来る限り長期の活動を避けようと思ったからだ。

 

 そうして十分な経験を積んで戻ってきたコピー達だが、これまでのように短期間別々の経験をしたコピーとは経験量が違っていた。

 そのコピー一人が異世界で活動していた期間が数年だとしても、そのコピー自身もタマゴコピーミラーの複製と統合の学習加速を行なっていたので、総合経験年数は数十倍となり数百年単位の経験値を持っていても可笑しくなかった。

 そんな経験値を持ったコピーが複数の異世界から同時に戻ってきて纏めて統合すれば、流石にこの方式の反動が少ないと言っても只では済まず、計算したくない年数の経験をオリジナルは受け取りオーバーフローを起こしたのだ。

 ここ数日頭の中は記憶の整理の真っ最中で、常に二日酔いのような状態で頭に重さを感じ続けている。

 

 普通に考えれば無事では済まないような経験量だが、異世界なら寿命など関係なく何百何千年と生きられるようになった人間などいくらでも存在する事例だ。

 そういう世界の特性もハジメは既に持っており、常識的な世界の人間の脳の情報保有量を超えても問題なく活動することが出来ている。

 それでも無数の経験からくる記憶の統合性を取る為の情報整理に時間が掛かっており、そのせいで頭が重い日々を過ごしていた。

 

「今後は異世界を攻略したコピーを一気に統合せずに、一人ずつ合体しよう。

 異世界派遣も一つの世界ずつにして、複数の世界に同時に送り出すのはやめよう」

 

「情報量に頭を悩ますなどこれまでなかったでござるからな」

 

「異世界での経験値を甘く見過ぎていた。 送った世界の中には数十年かけた世界もあったから、統合した合計経験年数なんて計算したくもない。

 この情報量の圧迫からくる頭痛も、○×占いが言うには数日で治まるらしい」

 

「それは良かったでござる。 普通の人間であれば、頭が物理的に爆発していたかもしれないでござるな」

 

「異世界で人間を完全にやめたコピーはいなかったが、力を得た事で普通の人間とも言えなくなったからな」

 

 こうして普通にしてはいるが、ハジメの力はいろいろな物理法則を超越している。

 人間が人間をやめることが出来る異世界にもコピーは送られていたが、ハジメは人間離れした容姿になるのは嫌だったので、その手の力は手に入れないようにコピーに指示していた。

 なので外見は統合前と全く変わっていないのだが、並大抵の攻撃では傷付かない体になっており通常兵器などでは死ぬ事はないだろう。

 

「まあ、これで少しは安心して僕自身が異世界に行くことが出来る」

 

「正直拙者には想像もつかない力を殿は既に持っているのでござるが、これでもやっぱり安心しきれないのでござるな」

 

「当然だ。 あらゆる物語で安心出来るほどの力なんて、いくらあっても足りないよ。

 宇宙を破壊する力とかどんな存在でも殺せる力とか、強い力なんて想像すればキリが無いし、人間が想像出来る以上の危険な力は異世界のどこかに存在するだろう。

 まあそんな危険な世界は当然避けるんだけど、あらゆる危険を想定して対策をしておきたいからね」

 

 あらゆる物語の世界にパラレルマシンで行けるという事は、人間の想像出来る危険な力が必ずどこかに存在することを意味している。

 そんな力に対抗するなどどんなひみつ道具があってもハジメは無理だと確信しており、”触らぬ神に祟りなし”と絶対に対処出来ない危険が存在する世界への接触は控えようと心に決めていた。

 近年の物語を見る限り、神の祟りであっても人の想像できる強力な力に比べると可愛いものだというのだから、人間の想像力は恐ろしい。

 

「初めての異世界探検の準備もいよいよ大詰めだ。

 この子たちが完成したら、パラレルマシンを搭載した戦艦で出発しよう」

 

「拙者の後輩たちでござるな」

 

 二人の見る先に、四つの人型が鎮座されていた。

 それはコピー達が異世界から持って帰ってきた技術で作りだされた、ドラ丸の後輩となるハジメの新しいロボット従者たちの眠る姿だった。

 

 

 

 

 

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