少しだけ書き上がりましたので投稿します。
以前ほど連続で書けなくて申し訳ない。
――キンッ! キンッ! ギャイン!――
見上げる空で金属音が鳴り響き、凄まじい速さで飛び回りながら剣を振るい合っているリースとシグナムがいた。
「なかなかやる。 騎士というだけはある」
「当然だ。 慣れぬ戦いであっても剣では負けん」
「ならばついてこい。 マスターに与えられた力を使いこなして見せろ」
「無論だ!」
一瞬の鍔迫り合いの対話から互いに剣をはじき合う事で離れ、再び高速で飛び回りぶつかり合う。
リースの武装は
魔導師の魔法だけではその速度に対応し続けるのはかなり難しいが、シグナムはハジメに与えられた試作型の神姫とISをベースにした複合武装フリーアーマメント(FA)でリースの動きについていく事が出来ている。
シグナムも使い始めたばかりなので慣らすための腕試しの戦いなのだが、お互いの気質がかみ合ってかなり本気の戦いになっている。
剣のみで戦っているのがまだ冷静さを残している証拠だ。
「まーた戦闘狂が増えちゃったよ。
…おっと。 もしかして君もあの二人と同じ?」
アイナは後ろからの攻撃を見ずに回避すると、攻撃してきた相手に尋ねる。
「一緒にすんな! アタシは違うけどちゃんと戦え!」
「ヴィータちゃんがFAにもう少し慣れて、攻撃が当てられるようになったらねー」
「くっそー、なんで見てもいねえのに避けられるんだ!」
「ハイパーセンサーを使いこなせば死角はないからね」
アイナもまたヴィータのFAの練習相手になっていた。
こちらは本気で戦う事は無く、ヴィータの攻撃が当たらないように避け続ける鬼ごっこになっている。
地上付近ではザフィーラとシャマルが同じく試作型のFAを装備してその性能を確かめており、ハジメと月夜がその様子を窺っている。
ザフィーラは軽く飛んでその機動力を確認し、シャマルはデバイスと機能を接続する事でハイパーセンサーと同期させ知覚処理能力の拡張を試していた。
「デバイスとの機能の同期はうまく合っているか?」
「はい、クラールヴィントも調子がいいみたい。
処理能力も拡張出来ているから、魔法の運用も効率がだいぶ上がってるわ」
「うまくいっているならいいんだ。
ザフィーラはどうだ?」
「通常の飛行魔法よりはるかに機動力が高いので戦い方がだいぶ変わります。
それとこの副腕というものが慣れません」
「シグナムもヴィータもまだ使う事を考えてないみたいだし、先ずはFAの使い方に慣れてくれ。
もともと神姫のリース達みたいには簡単にはいかないだろうし、副腕の使い方はおいおいでかまわない」
神姫のアーマーとISはもともと特性がよく似ている。
なので神姫のアーマーの特徴で、FAに目立って受け継がれているのが背部の副腕だ。
一応シグナムやヴィータに合わせて剣やハンマーなどの装備を副腕に持たせられるようにしているが、直接振るう事に慣れているために使う様子はない。
模擬戦をしていないザフィーラも直接拳で戦うタイプなので、副腕を意識して使うのは逆に戦い辛いだろう。
シャマルに至ってはサポート専門なので、副腕は完全の飾りだ。
「さて、ザフィーラ達の専用FAをどういう風にするか…」
試作機を使ってもらっているのは慣れてもらう為だ。
ハジメは四人に専用の機体を作ってみたいと考えていた。
「主、このような物がなくとも我等は十分戦えます」
「それは良く知っているけど、魔法の力だけで戦うのは状況によりけりだよ。
少なくともFAを装備している相手には、機動力ではかなり不利だろう」
「…はい、速度という観点ではかなりの加速魔法の使い手でなければ追い縋るのは困難でしょう」
「その上強力なバリアーも常時張られている。
大火力の魔法なら貫けるかもしれないが、当てられなければそれも無意味。
君達も僕の部下なんだから、いい武装を使ってほしい」
「承知しました」
まだまだ固い様子でハジメと打ち解けていない様子のザフィーラ。
もう少しうまく付き合いたいと思うが、元々の性格からハジメにはザフィーラが不機嫌なように思えてしまう。
もしかしたらFAを使ってほしいという言葉に、実力を疑われたと気を悪くしたのではないかと勘繰る。
「ザフィーラ達の実力を疑っているわけじゃないんだ。
二人の相手をしているリースとアイナもFAを装備しているから、新しく来たヴォルケンリッターにも同じように戦えるようにFAを使ってほしいだけだ。
戦うのに必要と感じた時にだけ使ってくれればいい」
「いえ、私は決して不満があるわけでは」
「それならいいんだけど、何か思う事があったら遠慮なく言ってくれ。
はやてさんの様に面と向かって言うのは恥ずかしいが、仕えてくれるからには君達を家族として扱いたい」
幸せにしてくれとははやての言葉だ。
彼女と彼女の所の守護騎士達のような関係に成れるとは言い切れないが、良い関係を作っていきたいとは思っている。
「…有難き幸せ」
「やっぱり固いなぁ。 もう少し気楽に接してくれていいんだよ」
「そうねザフィーラ。 ハジメさんがこう言っているのだから、気を張り詰めすぎるのは良くないわ」
「シャマル…お前のようにはいかん」
性格的なものとしか言いようがなく、シャマルとヴィータは明け透けに、シグナムとザフィーラは騎士足らんとするが故に自分を律している。
そんな騎士道的在りようをハジメは嫌いではないが、堅苦しい関係のままでは居心地が悪いと思った。
「蒼き狼…いや、ザフィーラよ。 騎士であらんとする気持ちはわかるが、我が主が望んでいるのはそればかりではない。
我が主は従うばかりの道具としてではなく、一人の人間として我等を扱ってくれている。
今はまだ慣れなくとも書の騎士としてではなく、真の騎士として己の意志で仕えてくれるといい」
「月夜。 ………わかった努力しよう」
ここでの暮らしが守護騎士達より長い月夜は、ハジメが自分たちにどのような在り方を望んでいるのかある程度理解している。
決して難しい事ではないが、起きたばかりで戦いに生きてきた守護騎士達には理解し難い事だと分かっている。
それでも時間が経てば、少しは自分の様にここでの生活に慣れるだろうと思っていた。
「まあ、君らを起こしてからそれほど時間が経っていない。
少しずつ慣れてくれればいいよ」
「…はい」
「もう一人の私達とこの間話したけど、ちゃんと仲良く出来てるって言ってたわ。
みんなもきっと大丈夫よ」
夜天の書の修復の時に、守護騎士達ははやての守護騎士と情報交換を行なっている。
何を話していたかはハジメもあえて聞いていないが、シャマルの様子からは有意義だったに違いない。
ここでの暮らしに役立ってくれればとハジメは思う。
「私達は騎士だけど、はやてちゃんの所の私達は戦いとは関わり無い暮らしをしてるって言ってたわ。
あっちの私はお料理に興味があったみたいだし、私も挑戦してみようかしら」
「………なぜだ? お前が料理と言い出したら悪寒がするのだが」
「…どういう事なのでしょうか? 我が主」
「…同一存在だから、どこかで繋がっているのかもしれない」
月夜ははやてと暮らす守護騎士達の生活をタイムテレビで窺っていた。
故にシャマルが料理と言い出しザフィーラが悪寒がすると言い出す訳も知っていた。
シャマルの様に戦い以外の生き方に挑戦するのはいいが、あまり目を離さない方がいいかもしれないとハジメは思った。
守護騎士達にFAを使わせて慣れてもらいながらデータを集めていると、研究所の方からエルとレーナがアリシアとリニスを連れて走ってくる。
二人が遊びに来たのかと思ったが、なにやら慌てた表情を見せており可笑しいとハジメは気づく。
「ハジメさん!」
「どうしたアリシア」
「ママが大変なの!」
何かがあったのだと確信し、付き添っているリニスに詳しく聞きたいと目を向ける。
「どうやらプレシアが攫われた様なのです」
「プレシアさんは管理局に拘禁されていた筈だろう。
何があったんだ?」
「詳しくは分かりません。
ですがプレシアが夢で伝えてきた話によると、自身の移送中に襲撃を受けて、気が付いたら管理局とは別の場所に攫われていたそうです」
「それで僕に伝えてほしいと言われたわけか」
「はい」
「ハジメさんお願い。 ママを助けて!」
大変な状況にあるプレシアを思って、アリシアが悲痛な思いでハジメに頼み込む。
「どうしますか、マスター」
「それはもちろん助け出す」
エルの問いに答え、放っておくなどという選択はハジメにはなかった。
「主、我等の力もお使いください」
「事情は分からないけど何かが起こっているのよね」
緊急の事態と悟ったザフィーラとシャマルは気を引き締め直して、騎士としてハジメの力になろうとする。
「待て、二人共。 我等の力が必要であれば主は言ってくれる。
あまり出過ぎた真似をするな」
「月夜、そこまで気を使わなくてもいいよ。
ありがとう、二人共。 だけどまずは情報収集だ。
荒事になるなら力を借りるかもしれないけど、今は待機していてくれ」
「「ハッ」」
戦いが全てではないと分かっているが、ザフィーラもシャマルも騎士として主の力になる事を望んでいた。
騎士として忠を示した二人は月夜と共に待機する事になるが、その場におらず上空で模擬戦を続けていたヴィータは出遅れた事に腹を立て、シグナムも口にはしなかったが不貞腐れた様子を僅かに見せていた。
管理局に拘禁されていたプレシアは事件の取り調べがようやく終わり、裁判に向けて収容場所を移すために船で移送されることになった。
その際に船が衝撃で大きく揺れてプレシアは何かがあったことを悟る。
何があったのかわからないまま待っていると、閉じ込めている部屋に何者かが現れてプレシアは即座に気絶させられた。
拘禁中のプレシアは魔法の使用を封じられており、抵抗する力は一切なかった。
プレシアが気付いた時には、これまでとは別の軟禁室に閉じ込められてベットで寝かされていた。
魔法の使用を封じる道具はそのままに、別の場所に捕らわれた事を悟った。
「一体何が起こったというの?」
何一つわからない状況だが、移送中に起こった衝撃は何者かの襲撃ではないかと考える。
自身を気絶させたのは何者かが自分を攫ったのではないかと推測する。
何の目的があっての事かと推測を重ねるが、部屋の中に空中モニターが現れて答えを悟る。
「目覚めたようだね、プレシア女史」
「貴方だったのね。 ジェイル・スカリエッティ」
嘗てアリシアとしてフェイト生み出した技術、プロジェクトFのその根幹となる技術を作ったのがモニターに映る男だった。
プレシアもこの技術を手に入れるためにスカリエッティと面識を持っていた。
このような技術である以上、まっとうな科学者ではないとは当然知りながら。
「元気そうで何よりだよ。 風の噂では体調が良くないと耳にしていたからね」
「お気遣いどうも、とでも言えばいいのかしら。
これは一体何のつもり」
「ん? …ああ、手荒な真似をして申し訳ない。
君が管理局に自首したなどと聞いて、気になって貴女に会いたくなってしまったのだよ。
だからクライアントにお願いして、私の元に招待させてもらった」
「クライアントね」
嘗てプロジェクトFの技術を得るために非合法な科学者であるスカリエッティと関わりを持ったことを、当時はアリシアを生き返らせることばかり考えて気にしてもいなかった。
スカリエッティにどのような背後関係があるのか興味はなかったが、ハジメに原作の10年後の事件の事も知らされており、管理局との繋がりがあるのを知っていた。
自首した自分に接触する為に管理局の裏を使ってきたのだとプレシアは察する。
「かつて娘を生き返らせるためにあれほど情熱を燃やした貴女が、どうして自首などというつまらない真似をしたのか?
虚数空間に落ちたが、どういうわけか生還して理由を語らない。
まさかとは思うが虚数空間の先にあると貴方が語ったアルハザードに到達して、娘を蘇生させることに成功したから満足したから自首した、などという妄想までしてしまったよ。
実際のところはどうなのかね?」
「さあ? ただ貴方と答弁をする理由はないわ」
「手厳しいね。 共に技術を研鑽し合った仲だろう」
「私を笑わせたいの? ただお互いに利用し合っただけじゃない」
「確かにその通りだ。 今の貴女は私に興味が無いのだろうが、私には今の貴女に大いに興味がある。
クライアントには私の研究に協力してもらうために貴女を呼んだと説明してある」
「あなたの研究になんて興味ないわ」
「だろうね。 貴女との会話をもう少し楽しみたいが、今は些か立て込んでいてね。
私の研究に協力してくれるかは、ゆっくり休んでもらってから返答を聞こう。
管理局が貴方を捜索に来ることも無いだろうから、じっくり考えておいてくれたまえ」
そう言い残してスカリエッティを移していた空中モニターが消える。
一方的に会話を打ち切られたが、囚われている身では大した事は出来ないとプレシアは諦めるように溜息をつく。
監視はされているだろうが、額に触れるくらいは問題ないだろうと手を当てて確認する。
「(夢アンテナの存在は気づかれなかったようね)」
見えなくなっているが手触りで取られていないことを確認し安堵する。
夢アンテナは透明化して皮膚にくっつくが、検査されれば見つかる可能性が十分あるので、管理局出頭時には付けていなかった。
管理局で拘留された後にハジメにアンテナを持ってきてもらい、夢を見る時はいつでもアリシアに会えるようにしてもらった。
連れ去られた時も管理局では何も所持していなかったので、スカリエッティも所持品の確認や身体検査を行わなかったようだ。
「(これのお陰でアリシアを通してハジメに連絡が取れる。
局の人間がスカリエッティに私を売り渡した以上、ノコノコと管理局に戻るわけにはいかないわね)」
自首したのはフェイトと自身の行いにケジメをつけるためだが、易々と売り渡されてやるつもりはない。
プレシアは今後どうするかを考えながら、夢を見るために目を瞑って体を横にした。
ハジメ達の使う主力武器を設定した訳ですが、今のところまだ活躍の機会があまり思いつきません。
ISのような空飛ぶパワードスーツは最近は珍しくないですよね。
ロマンがあって好みの武装なのですが、武装を除いたレオタードのようなパイロットスーツは自分でもちょっと気になることろです。
ちなみに神姫組の普段の服装はアニメのような際どい物ではなく、武装を纏っていないときは普通の洋服です。
武装を纏うとやっぱりレオタードっぽいですが。