基本的にコピーがその世界特有の能力を得るために行った先での出来事ですので、過去話に当たります。
第一話
五大国の一つ、火の国の存在する忍びの里、木の葉隠れの里。
里の傍にある岩壁に作られた彫刻、火影岩が特徴の里であり最大の隠れ里と言われている。
その中に未来の忍びを育成する忍者アカデミーがあり、この日は新たな生徒を受け入れる入学式の日だった。
新入生のクラスでは教師の挨拶から始まり、生徒が順番に自己紹介を行なっていた。
そんな中でまた一人金色短髪の少年が席から立ち上がり自己紹介を始めた。
「波風ミナトです、夢は火影になることです」
火影は木の葉隠れにおいて最強の忍びの称号であり、里の忍びの長の事を指す。
そう簡単になれるモノではなく吹聴すれば笑われるだろうが、アカデミーという子供達のコミュニティーにおいて、火影という憧れの存在になりたいというのは珍しくない。
ミナトの宣言を聞いた子供たちも”お前には無理だ””なるのは俺だ”などと否定しつつ自己主張する者がちらほらいる。
本気かどうかはともかく忍びを目指す子供たちにとって、火影は憧れる存在には違いない。
そんな和気藹々とした子供たちの喧騒の中で、他の生徒を眺めながらやる気のなさそうにだらけてる子供が一人いた。
「(四代目と同世代か…。 狙ってたわけじゃないけどあまり関わりたくはないな。
関わらずにはいられないだろうけど、原作の流れをあまり変えるようなことはしたくはないし)」
中野ハジメは波風ミナトを見ながら、今後の付き合いをどうしようか考えていた。
ハジメはこの世界の忍術を学ぶために、年齢を秘密道具で調整して忍者アカデミーに入学していた。
ひみつ道具を使って手当たり次第に情報を集めることは出来たが、ちゃんと学べる場所があるならそこで学びたいと思うのは自然だ。
独学と教えてくれる教師がいるのとでは効率が違うし、納得がいくまで修学するには長期的な拠点も必要だった。
そこで親と一緒に忍者アカデミーに入学に来た外来者として、木の葉隠れの里にやってきた。
ちなみに親も中野ハジメのコピーで大人の姿に変えており、この場にいる子供の中野ハジメもコピーだ。
オリジナルはこの世界におらず、元の世界でコピー達が技術を習得してくるのを待っている。
この世界は戦争も頻繁にあり、特殊な忍術で予想だにしない方法で殺される可能性がある。
戦闘能力を高めるためにもこの世界の忍術を学びに来たが、殺されてしまっては本末転倒なのでコピーだけがこの世界に来ている。
十分に強くなってそう簡単に殺されないようになればオリジナル自身が異世界に飛ぶようになる予定だが、今はまだ力を集めてる段階なのでリカバリーが叶うコピーが出ているのだ。
「(そんなわけでアカデミーに潜入、って言い方はおかしいけど入学したわけだが、同級生の子供のテンションについていけそうにない)」
ハジメは外見こそ子供になっているが、幾度ものコピーとの統合によって溜まった経験を纏めると精神年齢は当の昔に成熟している。
合計で何歳なのかはハジメ自身も理解しておらず、老成しているわけではないのでまだまだ若いはずだと時々悩んでいる。
気にしたらその分老けてしまいそうなので、自分は精神年齢二十代だという事にしている。
「(まあアカデミー時代はチャクラの練り方や印の組み方なんかの基礎だろうから、厄介ごとは起きないだろう。
第二次忍界大戦も終わったばかりらしいし、当分は大きな戦いもないだろう)」
今の木の葉は第二次忍界大戦が終わり、戦いの傷跡がだいぶ消えて復興を終えようとしている時代だ。
この戦いにより名を広めた三忍や白い牙と呼ばれる忍び達が、火影の名に次いで里内に名を轟かせている。
アカデミー生のくノ一達の間では、三忍の紅一点”綱手”が憧れの存在として人気を呼んでいたりする。
こうやって子供たちが楽しそうにアカデミーに通えることも平和な時代の証だった。
ハジメは未来の四代目火影の同世代としてアカデミーに入学し、無事に卒業の時を迎えた。
卒業試験の忍術も、アカデミーでは素質があり真面目にやっていれば容易な物だったので問題無く試験に合格した。
アカデミー時代に特記すべき事件はなかったので、授業内では可もなく不可もなく中堅辺りの成績を残すようにハジメは行動した。
NARUTOの世界に来るまでにも幾つかの世界の技術を習得して、この世界では異質に見える力を有している。
お陰でこの世界でおそらく上忍にも余裕で対抗出来る力も持っているので、普通のアカデミー生を演じるのに全力を出すことはなかった。
試験の合格を確認すると里内に構えた家に帰ってきた。
家にはハジメの父親役をしている同じコピーのハジメがおり、この里ではヒトシと名乗って鍛冶屋をやっていた。
「おお、おかえりハジメ」
「ただいま、父さん。
…流石に何年も演じてれば、親子の会話も違和感を感じないな」
「ハハッ、まったくだ。
父親らしく聞くが卒業試験に合格できたか?」
「当然だろ。 アカデミー生をやっていても、アカデミー以外では原作を元にいろいろ修行してたんだ。
下忍になるための試験で失敗するはずがない」
「まあ、そうだな。
俺は役割とはいえ、鍛冶屋の仕事ばかりだから結構退屈だ。
合間に忍具開発もしてるとはいえ、最近は思っていたより繁盛してきて時間が取れん」
キャラを変えるために父親役をやっているヒトシは一人称を”俺”にしちょっと強気な感じの喋り方をしている。
木の葉での生活を維持するために不自然じゃないように仕事として鍛冶屋を選んだのは、ちょうどいい技術をこの世界に来る前に習得していたからだ。
―パンッ!―
ヒトシが手を音を立てて合掌し、その手を目の前にまとめていた鉄くずの山に突き付ける。
すると青白い稲光が放たれて鉄くずがみるみる形を変えて、生成された鉄のインゴットに成形された。
NARUTOの世界に来る前にハジメは”鋼の錬金術師”の世界に行き、真理を見る事で出来るようになる錬成陣無しの錬金術を習得していた。
これを木の葉の里では流れの秘伝忍術を持つ一族の技として通しており、この技を使って鍛冶屋として生計を立てていた。
この世界では、里に属さずに放浪する独自の忍術を保有する一族というものが珍しくないらしい。
放浪しているうちにだんだん数を減らして、一族で形を成さなくなったものが一般人に身を落とすこともよくある話なのだ。
そんな忍びの一族を祖先に持つ秘伝忍術の使える一般人として、ハジメ達は木の葉の里に住み着いていた。
特殊な術を持つことを来た当初から宣言していたので当然里の忍びにいろいろ聞かれはしたが、よく言えば優しく悪く言えば甘い木の葉の里はハジメ達を受けいれられた。
秘伝忍術と称している錬金術も教えられるものではないので概要を正直に説明したら、それ以上は深く探られるようなことはなかった。
見えない所から監視されている可能性もあったが、ヒトシは錬金術を使った鍛冶屋に専念しハジメはアカデミー生を普通にやっていただけなので、他里の間諜と疑われるようなこともなかった。
「鍛冶屋、繁盛してるんだ」
「この術のお陰で金属加工が早いからな。
鍛造は出来なくても鍋とか包丁くらいなら手早く済むって近所に評判なんだぞ」
「確かに便利な術だからな」
「それで今後は下忍として活動するわけか。
下忍がやることは雑用ばっかりなんだろうけどがんばれよ」
「そうだろうけど、その前に下忍の試験がある筈。
うまくいくと思うけど、もしもの可能性があるからちょっと不安なんだよね」
「試験てのは本来そういうもんだろう。
絶対受かるとは限らないから、試験としての心構えが成り立つんじゃないか」
「それもそうか」
数日後、アカデミーで卒業生の下忍の班分けが行われた。
後の四代目である波風ミナトと同じ班になるという事もなく、覚えの無い担当上忍と特に交流もなかった同級生と班を組むことになった。
試験内容は原作でもあった鈴取りサバイバル。
代々伝わってきた由緒ある試験内容だったらしい。
この試験の内容は担当上忍が持っている二つの鈴を班を組む下忍三人が奪うというもの。
鈴を取れた者が正式に下忍になれるが、一人は不合格となると担当上忍に言われるが、この試験の意図は別にある。
三人のうち一人は合格出来ないという席を奪い合う形式の中で、上忍から鈴を奪うにはチームワークによって対抗するしかないという意地悪な試験内容だ。
下忍三人がチームワークの大切さに気付くことが本来の試験の意図だが、ハジメはすでに知っているので他の二人のサポートに回ることにした。
結果的には全員合格になったが、チームワークに気づいていたのは最後までハジメだけで、残り二人には担当上忍から最終的に教えられることになった。
原作みたいに最適な結果になる方が少ないだろう。
こうして下忍として活動を開始したハジメだが、しばらくの間は雑用ばかりのDランクの任務が続くので、終わった後は自主訓練を行なっていた。
自主訓練はアカデミー時代から原作を参考に続けてきたので、螺旋丸なんかの練習方法がわかっている術は習得済みで熟練度を上げる事を続けている。
四代目が開発する予定なので公表することは出来ないが、チャクラコントロールの訓練になるので自己流の応用技を編み出したりしている。
そんな訓練を一人で続けていることは、任務後にいつも演習場に向かうので同じ班の下忍たちも知っていた。
「ハジメ君、今日も一人で特訓するのかな?」
同じ班の下忍のくノ一、丘咲クルミは演習場に行こうとするハジメに声をかけた。
「山吹先生が任務後の打ち上げをしないかと言われた。
先生の提案だから奢ってもらえる」
「ちょっと待てツミキ。
俺給料日前だからそんなに余裕ないぞ」
「わかってる、だから先生の財布ギリギリの所を選ぶ」
「ギリギリかよ」
先生に奢らせようとしているのは日向ツミキで、奢らされそうになっているのは山吹コガラシ上忍だ。
ハジメは任務においてチームワークを考えて行動しているが、任務外になると班員との交流は無頓着だった。
そこで三人は交流を深めるためにハジメを打ち上げに誘おうとしていた。
「打ち上げ?」
「ああ、一緒に行かないか?」
ツミキの誘いにハジメは少し考えるそぶりを見せると、すぐに答えを出した。
「悪いけど今日は約束があってちょっと無理だ。
また今度誘ってくれ」
「それなら仕方ない。 次は付き合ってくれ」
「ああ、それじゃあな」
挨拶を残して三人と別れるハジメ。
「行っちゃったね。 何時も任務が終わると訓練って言っていなくなっちゃうけど、訓練するのが好きなのかな?」
「毎日のように訓練してるんだから嫌いなはずないだろう」
「何か急いで強くなりたい理由でもあるのかな?」
「俺もそう思って一度聞いてみたけど違うみたいだ。
あいつはよくサポートに回って目立たないようにしてるが、俺はあいつは既にかなりの強さを持っていると思ってる。
訓練を続けてるのはやりたい事があって、強くなるのはその為の手段だって。
特に強さに執着してるって感じじゃないから、単にストイックなだけみたいだ」
「先生として、もうちょっと仲間との親睦を深めてほしかったんだけどな」
コガラシは必要以上に仲間に溶け込もうとしないハジメの事を思っての打ち上げだったのだが、うまくいかなかったことを残念に思っている。
「親睦を深めることが出来なかったのは残念だが、四人から三人になればもっとグレードの高い店に行ける」
「っておい、ハジメが行かないんだから中止なんじゃ」
「本命も大事だけど建前を立てた以上中止はない。
俺らだけでも親睦を深めることに意味はある。
というわけで二人ともそろそろ行こう」
「私デザートのあるところがいいなー」
「結局財布が軽くなるのか…」
若干一名気落ちしながらも、三人は里の繁華街に歩いていった。
三人と別れたハジメは木の葉にある無数の演習場の中で、約束の相手が待つ演習場に向かっていた。
約束があったのは本当だが、任務外の同僚との付き合いも大事だったんじゃないかと、ハジメは道中思い直していた。
任務以外の付き合いが少ないのは自覚していたが、積極的に付き合おうとする気も起きなかった。
誘われたのなら付き合う気はあったのだが、今回は本当に予定があったので断った。
少し悪い気もしたので機会があったらこちらから誘ってみるかと、頭の片隅にでも留めておくことにした。
そんなことを考えながら歩いていると、目的の演習場に到着した。
演習場では一人の男がハジメが来るのを待っていた。
「ようハジメ君、今日も青春の熱い汗を流そうじゃないか!」
全身緑のタイツに海苔のような太い眉毛口髭顎髭を持った暑苦しい人、マイト・ダイがいた。
「(相変わらず暑苦しいな)こんにちはダイさん。 今日も体術の相手でいいんですね」
「よろしく頼むぞハジメ少年。
この年になっても下忍の落ちこぼれでは、なかなか相手してくれる人がいないのだ」
ハジメは自主訓練中に出会った縁から、ダイの訓練相手を時々引き受けていた。
彼は原作で登場する体術使いのマイト・ガイの父親で、ハジメもとても印象に残っているキャラクターだった。
原作主流に近い人物ではあるが、話の流れにそれほど大きな影響を与える人物ではないので、気にせず交流を持っていた。
彼は強い忍びではないが原作で描かれた内面の強さに好感を持っていたので、ハジメは彼が弱くても尊敬していた。
「(原作のガイ先生の最後の活躍はすごかったからな。
あれで間違いなく人気キャラの順位の大変動が起こっただろう)」
ダイに聞いた話では既に息子のガイは生まれているが、子育てに忙しいので最近はなかなか修行に時間が取れないらしい。
相手をしてくれる人も少ないので、下忍になったばかりのハジメでも過剰に暑苦しい表現で感謝をされている。
尤も隠してる力を含めなくても忍びとして鍛えた分の体術だけでハジメの方が強いので、ダイを相手に学ぶべきことはあまり無い。
むしろ原作キャラを魔改造する気で、ダイに技をいろいろ教えたりしようとしていた。
改めて言うが、ハジメはダイに好意的に訓練に付き合っているのだ。
暑苦しいとは思っているが…
「それで水面歩行の行は終わったんですか?」
「なかなか苦労したが立つことまでは出来るようになった。
あんな修行方法があったんだな」
「忍になったら教えてもらえるはずの特訓の筈なんですけどね」
ハジメと会った当初は、木登りの行すら知らなかったという酷い有様だった。
木に足を吸着して水平に立つ木登りの行も、水面の上に立つ水面歩行の行も、忍としては基本技術だと思っていたのだが、ダイはそんな基本的な事すら知らなかった。
落ちこぼれというよりイジメにあってワザと教えられていなかったんじゃないかとハジメは思った。
二つの修行法もアカデミーでは教わらなかったので下忍になったら先輩の忍びに教わるものなのだろうが、教わることが出来なかったからダイがこの年になっても下忍なのだろう。
しっかり学べていればもう少しましな忍びになっていただろうに。
「何はともあれ俺の青春に新たな道が開けたのは良いことだ。
もしかしたら中忍になることも夢ではないかもしれん。
いや、今度の中忍試験は挑戦するぞ。
中忍に受からなかったら里を逆立ちで百周する。
自分ルールだ!」
「自分ルールはいいですけど、人に迷惑をかける罰はやめた方がいいですよ」
「ふむ、逆立ち百週は迷惑だろうか?」
自分ルール。 目的と達成出来なかったら自分自身に罰を科す、原作でもガイと弟子のロック・リーがやっていた修行方法だ。
自分に厳しいというのは立派だが、自分を鍛えるためには人目を一切気にしないところは彼らの大きな問題点だ。
「まあダイさんにその辺りの事を言っても無駄ですね」
「当然だ。 俺の青春はどんな壁にぶつかろうと乗り越えて見せる!
今日の特訓もまたその為の第一歩! 己の限界に挑み新しい自分を迎えるのだ!
ではハジメ君、よろしく頼むぞ!」
話も終わりにして訓練を始めようと、ダイさんが半身を引いて拳を構える。
ハジメも構えをとっていつでも対処出来る態勢にをする
「こちらは何時でも構いませんよ」
「では行くぞハジメ君!」
ダイが足にチャクラを貯めると反発作用を利用して突進するようにハジメに向かって飛び出した。
木登りの行が出来れば使えるチャクラコントロールによる忍びの基本的な移動術だが、ハジメに教えられるまで知らなかったダイにはこれまで使えなかった技だった。
それすらできなかった最初の模擬戦では酷いもので、あまりの酷いチャクラ運用へツッコミの一撃でダイを倒し、チャクラ講習会になったのは微妙な思い出だ。
その時に比べればダイとの模擬戦は様変わりして、ハジメが手加減しているとはいえまともな戦いの形になっていた。
ダイの突撃からの正拳を余裕をもって避けると、すぐさまハイキックが飛んできてハジメの頭を狙う。
この蹴りも首を傾けるだけで避けるとダイは飛び上がって反対の足で空中蹴りを放ってくるが、今度は腕でガードして受け止めた。
蹴りを受け止められたことでダイはそれを支点に、空中で体勢を整え反対の足でさらに蹴りを打ち込んでいく。
忍びとしてろくなチャクラの運用が出来なかったダイだが、基本的な体術の修行だけを続けてきただけあって運動能力は十分にあった。
チャクラコントロールがしっかりと出来なければ普通の下忍にも勝てなかっただろうが、習得したことでこれまで続けてきた修行の成果が現れ、中忍クラスの体術はあるかもしれない。
「うおおぉぉぉ! 木の葉旋風ぅ!」
ダイは一度着地すると再び勢いをつけて跳躍し、連続の回転蹴りを空中でハジメに打ち込んでいく。
ハジメは数度蹴り捌いた後に蹴り足の一つをつかみ取り、遠心力を付けてダイを振り回し地面に振り下ろす。
「なんのぉ!」
ダイは地面に両腕で着地する事でダメージを回避し、同時に掴んでいるハジメの手をもう片方の足で蹴りを入れる事で外す。
そのまま地面につけた両手で逆立ちをし、腕に力だけで勢いをつけてドロップキックを放った。
ハジメはドロップキックを両手でガードするが、蹴った反動を利用して宙返りをしてダイは地面に着地する。
着地した後に息もつかずにダイはハジメに向かっていき拳のラッシュをかける。
ハジメもそれに付き合うように捌き受け止め、時には反撃して連打の応酬を続いた。
「おおおぉぉおおぉぉl!」
「だいぶ模擬戦も様になってきましたね」
「ハジメ君のお陰だが、余裕はいけないぞ!
今日こそ有効打を入れるのが俺の自分ルールなのだ!」
雄叫びを上げなら連打を続けるダイだが、ハジメはまだまだ余裕といった様子で正確に攻撃を捌きながら隙があれば打ち込んでいる。
それに対してダイは隙を突いた攻撃をいくつかはガードするが、出来なかったものはクリーンヒットしている。
それでも連打を続けているのはダイのやせ我慢とハジメが威力のある打撃を打ってないから耐えられている。
終始攻め続けているダイがダメージは一方的に溜まり続けていた。
ダメージの限界に来たのか連打をやめて、ダイはハジメから離れるように飛び引いた。
「やはり連打ではハジメ君に勝つのはまだ無理か」
「ダイさんも最初に比べれば成長してるんですけどね」
「だが、まだ俺は諦めたわけではないぞ!
俺の今持てる全力を君にぶつけよう!」
ダイは両手を地面に着きクラウチングスタートのような構えをしてチャクラを高めた。
その体勢にハジメはどこかで見たような既視感を覚える。
「(この体勢からの攻撃、どこかで…)」
「行くぞハジメ君! これが俺の全力という名の青春だー!」
両手足のチャクラを弾かせることで推進力を生み出して、一気にハジメへと飛び上がって突進してくるダイ。
飛び上がった空中で体勢を整えてチャクラを込めた全力の蹴りを放ってきたところで、ハジメは既視感の原因がわかった。
「(これ、ガイ先生の最後の技”夜ガイ”の体勢だったんだ)」
単なる偶然なのだろうが、ダイがその技に似た蹴りを使ってきたを面白く思った。
八門遁甲を使ってないので威力は比べるまでもないが、正面から受け止める気はなかったのでギリギリまで引き付けてから体をずらして避けた。
更にカウンターで掌底をダイの顔に向けてはなった。
「ブベッ!」
突進力がそのまま利用された掌底を顔面に食らった事でダイはそのままひっくり返り気絶した。
決着が着き目を回しているダイをハジメは見下ろした。
「まさかこの人を鍛える事になるとは思わなかったけど、人の成長を見るというのも楽しいな」
原作でダイは後の戦いでガイを守って死ぬ事になる。
このまま鍛えればその未来をひっくり返せるかもしれないが、ハジメはどうなるかは流れに任せようと考えていた。
この世界の変えたくない未来は、第四次忍界大戦後の五大国の和平を壊さない事だ。
その為に原作の大筋を変えないようにしないといけないが、それ以外なら多少手を出しても問題ないと思っている。
主人公のナルトや最後の戦いで活躍する七班に関わらなければいいだろうと考えていた。