「弟子入りしたいのですが」
「はあ?」
ここは木の葉の医療忍者たちが詰めている木の葉忍者病院。
近年の戦争で医療忍者の需要が高まった事で、その教育及び医療の研究目的で設立された病院である。
当然普通の病院としても機能しており、木の葉の忍者でない住人も気軽に受診出来るように扉が開かれて自由に出入りできる。
それ故に治療目的でない者も容易に入ることが出来るが、忍びにかかわる施設である以上最低限の防犯機能はある。
だが同じ里の忍びであれば作用することはないし、特に悪意もなければなおさらである。
ハジメは病院にいる人物に弟子入りできないか尋ねるためにここに来ていた。
ハジメが弟子入りを尋ねたのは綱手。
第二次忍界対戦において三忍という二つ名を貰った、くノ一の中でもっとも有名な忍者である。
綱手は医療忍者であり医療忍者育成の政策を火影に進言し、この病院を設立させた張本人でもある。
今現在はとある事情もあって忍びとしての前線を離れ、医療忍者育成の為の病院の仮の院長として仕事をしている。
ある程度病院経営が軌道に乗れば後は後進に任せて退散するために(仮の)と院長の前につけているが、辞めさせまいと綱手を慕う後輩の医療忍者たちが抵抗を続けているのはこの場では特に関係はない。
ともかくハジメは綱手の弟子入り目的で病院を訪ねていた。
「私は忙しいんだ。 そういうのは断ってるよ」
「じゃあ諦めます。 お邪魔しました」
「こら、ちょっと待て!」
さっさと出て行こうとするハジメを綱手が叫んで止める。
「貴様いくらなんでも諦めるのが早過ぎるだろう!
もう少し粘ろうとする気概はないのか!?」
「いえ、ダメ元だったのもあるけど書類に埋まってる綱手様を見たらさすがに悪いなと思って…」
ハジメもサッサと諦めたのがばつが悪いのか困った様子で指で頬をかく。
綱手は病院経営から教育の状況、研究の進行具合などの報告書の山を捌きながら対応していた。
そんな忙しい光景を見たら誰でも引き下がろうとするのは不思議ではない。
「そもそもここは病院だが医療忍術を学ぶ場所でもある。
見たところ下忍のようだが、医療忍術が学びたいなら書類を出して開催している講習会に行け」
「いえ、学びたいのは医療忍術じゃないんです。
興味がないわけじゃないんですけど、医療忍術とは別に綱手様に教わりたい事があるんです」
「私に? 医療忍者の私に医療忍術以外の何を教わりたいというんだ?」
「綱手様の怪力です」
「はあ!?」
予想外だったのか、綱手から驚きの声を上げる。
これまで弟子入り希望の者はたくさんいたが、医療忍術でなく怪力を学びたいと言ってくるものは一人もいなかった。
綱手は医療忍者として有名なので、そちらについて学びたいと正面から言ってくるものなどいなかったのだ。
「女性ながら驚異の腕力で地面を殴れば、せんべいのように容易に砕くことのできる怪力。
それを学びたいと思うのは変でしょうか?」
「まあ、確かにそうだが…
女の私に腕力の鍛え方を教えてくださいと正面から言うか?」
「そんなにおかしいことですか?」
「…デリカシーにかけると思うぞ」
女性と見られてないと思える発言に綱手は少し落ち込む。
自身の強みとは言え、女性が怪力を誇るというのは少しばかり気にはしていた。
「それはすいません。
でしたらやっぱり諦めるしかないですね」
「だからちょっと待て。
弟子にはしてやれんがヒントくらいやる。
チャクラコントロールを鍛えてみろ」
「チャクラコントロールですか?」
チャクラコントロールとはその名の通り練り上げたチャクラをどうしようするか操作する技術だ。
体術はもちろん忍術の発動にも関わる忍の技術の基礎と言える。
「私の怪力は言わばチャクラコントロールを極める事で出来るモノだ。
自身の体の構造を熟知し骨格、腱、筋肉、皮膚、その他もろもろに的確にチャクラを通して強化する。
更に力のリミッターをチャクラコントロールで一時的に外す事で、人の体の限界を超えた身体能力を瞬間的に発揮できる」
「瞬間的にですか?」
「この力の制御は簡単に切れる糸をチャクラで強化して、その上で綱渡りをするようなぎりぎりで繊細なチャクラコントロールが必要だ。
そんな状態を長時間維持するのは、いくらチャクラコントロールに自信があっても長くは持たない。
その上本来人体では出せないような力を発揮するのだから、当然反動も大きく制御に失敗すれば自滅する。
筋力を最適に動かし、骨格の強度を高め、反動を最小限に抑え、医療忍術で反動ダメージを治癒する。
以上の事を全てチャクラコントロールで行なって、ようやく実用と言える力だ。
よっぽど精密なチャクラコントロールを瞬時に出来なれば成立しない技術。
これでも習得する気はあるか?」
高難度の技術だという綱手は改めて習得したいかどうか尋ねる。
「チャクラコントロールは忍者の基本ですし。
常に鍛えている事ですから、やれるところまではやりたいと思います」
「…まあチャクラコントロールにも素質がものをいう時がある。
やれるだけやって無理だったとしても、覚えたチャクラコントロールが無駄になるわけではない。
それに医療忍術も習得していないと出来ない技術だから、学びたいなら受講届を出しに来ることだな」
「わかりました、ありがとうございます綱手様」
「後はせいぜい頑張りな」
気の無い激励を後にハジメは部屋から退出した。
用が済んで病院を出ようと廊下を歩いていると顔見知りと鉢合わせる。
「あれ、ハジメ君? こんなところでどうしたのかな?」
「クルミちゃんか」
鉢合わせたのはハジメと同じ班の下忍のくノ一、丘咲クルミであった。
クルミは医療忍術の資料らしき本と筆記用具を持って部屋から出てきたところだった。
「私は医療忍術の講習を受けに来てたの。
ハジメ君は何か病院に用事だったのかな?
ケガしてるんだったら私が練習中の医療忍術で直してあげようかな」
「いや、ケガはしてないから大丈夫」
クルミは少々おしゃべりな所があり、興味や疑問があれば迫るように聞いてくることがよくある。
そんな積極的な様子に押され気味になることの多いハジメは、彼女を少し苦手としていた。
「僕は綱手様に弟子入り出来ないかって聞きに行ってたんだ」
「えっ! ハジメ君も綱手様に弟子入り頼みに行ったんだ!
私もだよ、最初にこの病院に来た時に綱手様に会いに行って頼んだんだけど忙しいって断られちゃったの。
綱手様から医療忍術を教わりたかったんだけど、代わりにこの病院でやってる医療忍術の講習会の受講届貰って、今日はここで講習会を受けてたの。
もしかしてハジメ君も綱手様から受講届貰って今度から講習会に参加するのかな。
同じ班の子が一緒だと私もうれしいかな!」
高いテンションで嬉しそうに話してくるクルミに、ハジメはタジタジしながらも質問に答える。
「いや、講習会に出るかどうかはまだ決めてないよ」
「えー、綱手様に弟子入りしたかったのなら医療忍術を学ぼうと思ってたんでしょ。
それならここの講習会に参加するのが一番手っ取り早いと思うよ。
綱手様にここの講習会の事を紹介されなかったのかな?」
「紹介はされたけど、どうするかはもう少し考えてからにするよ。
医療忍術は練習するつもりだから」
実はハジメは医療忍術をある程度自力で既に習得している。
多重影分身による修練でチャクラコントロールの向上のためにある程度の医療忍術を練習済みだった。
それでもまだまだ訓練不足なので、綱手のように怪力を発揮するような技術を使えそうにない。
「(タイムテレビで盗み見た資料で独自に練習してきたけど、誰かに教わることも必要かもしれないな)」
「それなら一緒に練習しようよ!
一人でやるより一緒にやった方が捗ると思うよ。 どうかな!?」
「えっと、少し考えさせてほしいかな…」
「今決めてほしいかな!」
クルミの押しにハジメは困り気味に対応する。
彼女のテンションに終始翻弄され、ハジメは容易に押し切られて一緒に講習会に参加することまで決めさせられてしまうのだった。
「とまあ、そんなことがあって」
結局受講届を病院の事務から貰って帰ってきたハジメは、家で仕事をしていたヒトシにクルミの事を愚痴ることになった。
「聞く限りじゃ気になる年頃の女の子を前にして戸惑う小学生みたいだぞ」
「…言われてみれば確かに。
好きとかそんなんじゃないけど、客観的に見れば否定出来ない」
「その否定の仕方がますます怪しく聞こえる」
「やめろよ父さん。 同じ自分からその手の弄りをされるのはいろいろ痛い」
大人と子供の姿であるが二人は同じコピーの元々同一人物である。
この世界に来てからの経験の違いはあれど本質に違いはないので、自分で自分の恋愛事情を弄るなど痛々しいにもほどがある。
「そんなつもりじゃないんだが、そんなに戸惑うような事なのか?」
「どうにも普通の女の子に気安く話しかけられるのが慣れなくて。
これまでは私的だったり上下関係を意識して、礼節を忘れない対話をする関係がほとんどだった。
本当に遠慮のない友人として話しかけてくる、それも女の子なんていなかったから少し対応に困ってる」
「アカデミーでもボッチだったからか」
「いや、社交性はあったはずだよ、僕達!
ただ気安い友人関係を俺たちの事情で作ろうとしなかっただけで!」
ひみつ道具を持つことで裏切りを恐れて必要以上の関係を持とうとしなかったハジメ達は、遠慮のない友人というものを作ることがなかった。
この世界に来ても忍術を学ぶためだけに来ているのだと人間関係に頓着せず、秘密を抱えていることが無意識に気掛かりで友人を作ろうとしていなかった。
遠慮せずに話しかけてくるクルミは、ハジメにとってはこれまでいなかった特異な人間と言えた。
「それでどうするんだ?」
「どうするも何も戸惑っていたとはいえ、約束した以上講習会には付き合うよ」
「いや、そうじゃなくて。 そのクルミちゃんと今後どう付き合っていくかってことだ」
「どうって、同じ班の下忍なんだから否応にも付き合わなきゃいけないだろ?」
「そういう意味じゃなくて、一人の人間としてどういう風に付き合うかだ。
これまでのように戸惑いながら付き合うのか、もっと積極的な友人として付き合うのか、いっそ告白して付き合うのか。
………すまん、最後のは冗談だ」
「自分で色恋沙汰を弄るのは痛いって言っただろうに…」
勢いで冗談を口にしたが、思った以上に自分自身に恋愛事情で弄るのは反動が大きくヒトシは最後に訂正する。
「とにかくどれくらいこっちの懐を許すかってことだ。
俺らの事情を話さないにしても、もうちょっと気を許して仲良くなってもいいんじゃないか?
こっちではあまりひみつ道具を使わず、忍術を習得するのが目的で活動してるんだ。
終わりの時までなら気安い友人を演じるのも悪くないと思うぞ」
ヒトシの言ったとおり、この世界では極力ひみつ道具の使用を控えて、里の住人と下忍として二人は行動している。
かつてのように事件に備えて気の張った生活をする必要もないので、自分たちの事情を知られなければ里の人間の一人として付き合う事も悪くはなかった。
忍術を十分習得すれば元の世界に帰る予定の二人だが、それまでは当分付き合いが続くことが確実だ。
「同じ自分のくせに他人事のように言いやがって」
「他人事のように言った方が客観的な視点が解って為になるだろ。
相談くらいには乗れるし聞くだけなら悩みも聞ける。
同じ自分でも別人なら客観的な考えから解決策が思いつくものだ」
ヒトシに諭されてハジメは少し今後のこの世界の人間関係について考えてみる。
「………まあ、もう少し前向きに彼女達と向き合って話をしてみるよ。
このままじゃ女の子とまともに話が出来ないコミュ障みたいだしな」
「コミュ障そのものじゃないか」
「言ったな! 同じ自分なんだから父さんだってそうだろ!」
「残念だったな。
俺は仕事の関係上近所との付き合いがあって、これでも顔が広い。
調理器具の修復を近所の奥さんから頼まれたときなんかに、旦那について相談されることもよくある。
コミュ障とは無縁のご近所付き合いのいいナイスミドルとして評判の鍛冶屋さんなんだよ」
「何…だと…」
自分と同じだと思っていたハジメは、驚愕の表情で某セリフをネタに愕然とする。
下忍に忙しいハジメと違って暇なヒトシは、ご近所付き合いを暇つぶしに円満な人間関係を広めていたのだ。
この事実に焦りを覚えたハジメは、本気で下忍としての人間関係を改めなければならないかと考えた。
後日任務が終わると、いつもの予定通り自主訓練の予定だった。
この日はダイとの約束もあったので、任務が終わり次第約束している演習場に向かうつもりだ。
もう少し下忍としての付き合いを見直そうと考えたハジメは、任務でも積極的に発言をするように心がけて行動し、他の班員は今日はよく喋るなと驚かれることがあった。
実力を隠すために遠慮してサポートに回ることで発言を控えていたつもりだったが、無口な人間だと思われていたようでハジメは自分が思ってた以上に消極的だったと再認識する。
「今日のハジメはよく喋る」
「うん、なんだか人が変わったみたいかな?」
「先生としては意見を出してくれることはいいことだと思うぞ」
「ちょっと心境の変化がありまして」
各々に感想を言われてあまり変わったつもりが無くても、皆からはだいぶ違いを感じるようだ。
遠慮していた自覚はあったがそこまで変化したという自覚はなかったので、ハジメも皆の反応に少し戸惑った。
ハジメの変化にお互いの戸惑いもあったが、特に何事もなく任務は終わり解散して各々の自由に行動しようとする。
担当上忍の山吹コガラシは既に去り、ダイとの約束もあって直ぐに演習場に向かおうと足を進めようとするが、クルミに声を掛けられて止められた。
「ハジメ君、この前の約束覚えてるかな。 一緒に医療忍術の練習しよう。
今日も一人で演習場に行くなら私も一緒に行っていいかな」
「な、なに!? どういう事だ、クルミ!」
クルミの誘いにハジメが答えるよりも先に、もう一人の班員日向ツミキが過剰な驚きで反応し問い掛ける。
「この間医療忍術の講習に行った時に、病院でばったりハジメ君に出会ったの。
その時ハジメ君も医療忍術に興味があるからって、今度一緒に勉強しようって約束したの。
数日任務無かったから会えなくて話の続きが出来なかったけど、一緒に勉強するのが少し楽しみだったかな」
「約束!? 会えなくて!? 楽しみ!?」
オーバーリアクションで単語のみを復唱するツミキだが、クルミはにこにこしながらハジメとの勉強のこと考えている。
改めてハジメにどうするか聞こうとするクルミだが、それより先にツミキがすごい剣幕で問い質した。
「おいハジメ、これはどういう事だ!
いつの間にクルミと約束して仲良くなってる!?」
「いや、クルミちゃんが言った通り病院で約束しただけだけど…」
猛烈なツミキの問いかけにハジメは戸惑いながらも冷静に答える。
「仲良くって言っても、クルミちゃんは大抵こんな感じで誰にも親しい感じで話すから普通じゃないか?」
「そうだよ、私普通だよツミキ君」
ハジメの言葉にクルミが同意するが、それがツミキを余計に動揺させる。
「だけどとても仲良さそうに見える!
病院で何かあったんじゃないか!?
はっ! まさかハジメの心境の変化もそれに関係してるのか?」
「それは一応あるかな」
「えっ? ハジメ君が今日はよく話したの私が理由だったのかな?
なんだかよくわかんないけど、ハジメ君がよくお喋りしてくれれば仲良くなれそうだからうれしいかな」
他意の無いクルミの笑顔での発言にハジメは普段通りの人懐っこい発言と思ったが、ツミキはショックを受けて今度は落ち込み静かになる。
「…たった数日の間に何があった。
ハジメはその気はないと思ってたのに…」
声が一気に小さくなりツミキはブツブツと呟いている。
クルミには聞こえていないようだったがハジメには聞き取ることが出来た。
これまで何となく察してはいたが、ツミキはクルミの事が好きなのだとハジメは確信する。
ハジメの方針転換がクルミと仲良くなったことだと誤解して、ツミキは動揺を隠せないようだった。
とりあえず放っておくとややこしいことになると思ったハジメは、誤解を解くことにする。
「ツミキ君、確かに僕の心境の変化はクルミちゃんだけど、彼女のことは友人としてちゃんと向き合おうと思ったからの行動だ。
君が思ったような関係になったわけじゃないから安心してくれ」
「本当か! ホントのに本当なんだろうな!?」
ツミキは沈黙から直ぐに脱してハジメに聞き返す。
その食いつき様に苦笑せざるを得なかった。
「ああ、さっきも言ったけど彼女は誰にでも親しい感じで話すだろう?
僕は人付き合いが少し遠慮気味だったから、少し見直してみようと思っただけさ」
「そうか、それならいいさ」
ツミキは漸く安心した様子で落ち着きを取り戻す。
そんなツミキにハジメはクルミに聞こえないように耳打ちする。
「ツミキ君の気持ちは大体わかったから邪魔する気はないよ。
ささやかながら応援しよう」
「え…な! なんでわかった!?」
「あれだけわかりやすいリアクションすれば大抵の人は気づく」
「まさかクルミも…」
「いや、気づいてないんじゃないかな」
挙動不審なツミキの行動に不思議に思っているだけで、クルミは自身への好意に気にしていない様子だった。
非常に分かりやすい行為を見せる男子と、それに気づかない鈍感な女子の構図だった。
ハジメもこれまでツミキの態度に何となくそうじゃないかと予想していたが、クルミとの約束に刺激されて完全に馬脚を現した感じだった。
「二人で何話してるのかな?」
「いやなんでもない、クルミ。
俺も二人が特訓するなら一緒にしたいなーって話してたのさ」
「それなら一緒に特訓しようよ!
私もツミキ君が一緒ならうれしいな」
「本当かクルミ!」
「僕の意志も確認してほしいんだけど」
最後に口をはさんだハジメの声は相手にされず、ツミキはクルミの言葉に一喜一憂して楽しそうにしている。
ハジメはそれを温かい目で見守るしかなかった。
ハジメは結局二人を連れて演習場に向かう事になった。
ダイとの約束があったので遅れるわけにはいかなかったので、道すがら二人に相手がいる事を説明していた。
「ふーん、ハジメ君も一人で特訓してたわけじゃないんだ」
「俺も一人で独自に訓練しているものだと思っていたさ」
「確かに普段は大抵一人だけど、時々相手をする人がいるんだよ」
こう何度も一人で特訓をしていると言われると。ボッチと思えてきてしまうハジメは少し傷ついていた。
やはり交流を増やそうとしたのは正解だったかと思った。
「大人の人が相手なんだって?
その人にハジメ君はいろいろ教えてもらってるのかな?」
「いや、その人は大人だけど下忍で大して強くないんだ」
「大人で下忍という事は忍びとして才能がないという事だろう。
なんでそんな者と特訓をしてる?」
ツミキは弱い者と特訓してることを不思議に思っている。
「確かに大したことないけど悪い人じゃないんだ。
個人的には前向きな姿勢も尊敬できるから、時々訓練を一緒にしてるんだよ」
「そうか」
「それでどんな人なの?」
ツミキはとりあえず納得したという表情を見せ、クルミはどんな人か好奇心でハジメに訊ねる。
「あー………とりあえず暑くて濃い人かな」
ダイの容姿を思い出して言い辛そうにハジメは答える。
「暑くて濃い?」
「よくわかんないけど面白そうな人かな!」
ツミキはいまいち予想できなかったが、クルミは面白そうという感想だけで気になったようだ。
説明している内にダイが待っている演習場に到着した。
演習場では既にダイが来ており、腕を組んで仁王立ちでハジメが来るのを待ち構えている様だった。
「よう! ハジメ君待っていたぞ!」
「お待たせしましたダイさん」
「(これは濃い)」
「(濃いかな)」
ハジメが挨拶をしている間に、ツミキとクルミがダイの容姿を見て小声で感想を呟く。
極太の眉毛口髭顎髭にぱっちりとしたタイツという飛びぬけた容姿に、二人は少しばかり呆然としていた。
「ふむ? 今日は一人ではないのだな」
「すいませんダイさん。 二人は僕と同じ班の下忍で一緒に訓練したいという事になって断れなくて。
ダイさんさえ良ければ二人もここで訓練してもいいですか」
「なるほど、そういう事なら是非もない!
ハジメ君の友人というのなら俺も大歓迎だ!
俺はマイト・ダイ。 君たちも俺たちと一緒に熱い青春の汗を流そうじゃないか!」
ダイは親指を立て笑顔で白い歯を輝かせながら快諾する。
「これは暑(苦し)いな」
「暑(苦し)いねー」
「いい人なんだけど、とっても暑(苦し)いんだ」
あまりの熱血ぶりに三人は呆れながら満面の笑顔を見せるダイを見ていた。
この日の特訓を共にした二人はダイを熱血過ぎるが確かに悪い人ではないと、その後も時々一緒に演習場で訓練を行う事になるのだった。