四次元ポケットと異世界漫遊記   作:ルルイ

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第四話

 

 

 

 

 

 中忍試験を終えてハジメは中忍に昇格したが、下忍の頃と特に変わりなくこれまでのフォーマンセルで任務を続けていた。

 その合間に行っている自主練ではダイに始まり、ツミキとクルミが増えて、中忍試験で縁の出来たミナトも時々やってくるようになった。

 今もハジメはミナトを相手に模擬戦を行っていた。

 

「フッ!」

 

 

――飛雷神の術――

 

 

 急接近してハジメが打ち出した打撃を、ミナトが飛雷神の術で飛ぶことで姿を消して避ける。

 消えたミナトを探してハジメが辺りを見回すが、意識を逸らした絶妙なタイミングで同じ場所にミナトが再び現れて片手(・・)で螺旋丸を下段からハジメに放つ。

 すぐに反応したハジメだが迎撃するほどの時間は無く、回転拳の腕でガードするが螺旋丸の威力に押されて上に打ち上げられる。

 

 上空に打ち上げられたハジメの上を狙って飛雷神の術のマーキングが施された苦無を投げながら、ミナトはもう片方の手で螺旋丸の準備に入る。

 それを見ていたハジメは次の攻撃を予想するが、空中では態勢を整えるのがせいぜいであまり身動きが取れない。

 それを狙ってミナトはハジメを上空に打ち上げるように攻撃し、さらにハジメの更に上にめがけて苦無を投げて飛雷神の術で先回りし身動きが取れないハジメに螺旋丸を当てようとしていた。

 

 苦無がハジメを追い越して後ろに回った所で、飛雷神の術でミナトが現れて螺旋丸を当てる態勢に入っていた。

 身動きの取れないまま螺旋丸の直撃を無防備に受ける筈だったハジメだが、空中を蹴ることで更に飛び上がり螺旋丸の一撃を回避する。

 

「なにっ!」

 

 空中で跳躍することで回避されたミナトは驚き声を漏らすが、ハジメは既に上空で体勢を整えて攻撃の準備に入っていた。

 ハジメもまた螺旋丸を手に生成して攻撃の姿勢を見せる。

 攻撃が来るとわかったミナトは空振りした螺旋丸を戻して迎撃の準備をした。

 迎撃の準備が整ったのを見計らったハジメは、再び空を蹴って突撃する。

 

 

――螺旋丸――

 

 

 ハジメとミナトの螺旋丸が衝突し、球体に圧縮されていたチャクラが解放される。

 その破裂した衝撃にミナトは下方に吹き飛ばされたが、慌てることなく姿勢を整えて両手足を突いて地面に着地し威力を殺す。

 ハジメも再び上空に打ち上げられるが、落ち着いた様子で空中で弧を描きながら体勢を整えて着地した。

 お互いに模擬戦であることを忘れず螺旋丸の威力を調整したからか、二人とも大したダメージもなく吹き飛ばされても冷静に対処した。

 

 

 

 螺旋丸の衝突を最後に模擬戦の終了とした。

 こうして時々ハジメは、ミナトと模擬戦を行いながらお互いの技を披露して技術を高め合っている。

 時には自身の技を教え合ったりしており、ミナトに螺旋丸を使って見せたのも習得方法を直接聞いていたからだ。

 

「驚いたよ、まさかもう螺旋丸を習得しただなんて。

 オレがこれを完成させるまでどれくらいかかったと思ってるんだい」

 

「知っての通り僕はチャクラの回転技をいくつか考案してるんだ。

 コツと条件とチャクラコントロールが十分なら、後は練習すれば今の僕なら難しくない。

 手探りでゼロから開発するよりもずっと早いのは当然だろ」

 

「それはそうだけどなんだか納得いかないな。

 片手での生成だって最近になって出来る様になったっていうのに」

 

「そのコツの相談に乗ったのも僕だっただろう」

 

「そうだったね」

 

 ハジメは原作に関係の深いミナトに関わる事に最初は消極的だったが、もう今更かと諦めて中忍試験の時からそこそこな頻度で会っている。

 それによって螺旋丸の完成期間が短くなったり、試験では使いこなしていなかった飛雷神の術の練度が上がるなどの過程をハジメは見る事になったが、どうせ完成するなら特に影響はないだろうと割り切った。

 

「ところでさっきの空中で跳躍したのはどうやったんだい?」

 

「別に難しい理論じゃない。 木登りの行と水面歩行の行があるだろ」

 

「うん、忍者の基本的な修行法だね」

 

「固体にくっつき液体を足場に出来るなら、気体を足場に出来ない理由はない。

 つまり空中を足場に跳ぶことも不可能ではないんだよ」

 

「なるほど、確かに」

 

「確かに………、じゃねえ!」

 

 模擬戦の反省会に二人で語っていると、演習場の傍らでクルミと共に見学していたツミキが叫んだ。

 ツミキはハジメに教えてもらった回転拳の練習に、体術の構えをしながら腕に纏ったチャクラを回転させて維持する特訓をしていた。

 回転拳は攻防一体の技だが剛拳より守りに向いた柔拳向きで、柔拳を使うツミキなら有効に使えるとハジメに教えてもらい練習しているが未だに実践で使えるほど慣れてはいなかった。

 その為維持する練習をしながら模擬戦を見ていたが、模擬戦とはいえ自分に出来ない高等技術の応酬に少しばかり八つ当たり気味にキれていた。

 

「てめえら本当についこの間まで下忍だったのか、ああん!

 中忍試験の試合だってのに一気に上忍にするかどうかなんて話が上がってたそうじゃないか!

 追いかけるこっちの身にもなれ、この天才ども!」

 

 ツミキは日向一族だが血継限界を持っている以外は普通の忍だ。

 前々から実力があると思っていたハジメを少なからずライバル視して、中忍試験で負けてからそれを明確に自覚したと思ったら、決勝のミナトとの試合は次元が違っていた。

 同じ同期でアカデミーを出たはずなのにここまで差が出来ていたことに苛立ち、同時に二人の事をツミキが天才と呼ぶの無理はなかった。

 それでも追いかけるのは諦めずに技術を学ぼうと努力しているが、明確な差を見せつけられれば心が折れそうにもなるし、それに反発して苛立ってもまあ仕方ないかもしれない。

 

「ミナトと一緒にしないでくれ。

 僕はチャクラが多いことを除けば基本的に凡才だよ。

 チャクラ量があるから練習時間を多く取れて技量を伸ばすことが出来るだけだ」

 

「オレも普通に特訓をしているだけなんだけどな」

 

「普通の特訓で下忍のうちに性質変化を三つも使えて、二代目火影様の使った飛雷神の術を使える様になるのはおかしいぞ」

 

「そうかな?」

 

 ハジメはチャクラ量に任せて影分身修行を多用することで修業時間を大量に取れているが、それの無いミナトは本物の天才だった。

 中忍試験でも見せた戦闘での立ち回りは、センスのないハジメには経験を十分重ねなければ出来ない芸当で、もしかしたら火影となる頃の最盛期のミナトならドラゴンボール世界の力を持ったこの世界に来たばかりのハジメでは完封されてもおかしくないと思っていた。

 尤もハジメもこの世界の任務で戦闘経験を積んでおり、駆け引きを学んでいるので油断しなければそうそう負ける事はないだろう。

 

「どっちにしろ同期の中でお前ら二人が突出しているのは確かだ。

 お前ら二人が天才でなきゃ俺達は何なんだってんだ」

 

「ツミキ君、落ち着きないよ。

 私も二人が凄いとは思うけど、ちゃんと鍛えているからなのは解るよ。

 一緒に医療忍術の勉強もしているけど、ハジメ君は私よりずっと手際が良く治癒術をどんどん修得していくんだもん。

 ほとんど同時に勉強始めたのに今じゃ教えてもらう事の方が多いくらいかな」

 

「体術に忍術に医療忍術…この完璧超人が…」

 

「そういう言い方は好きじゃないな。

 いろいろ手を出しているけど特化したことはないから器用貧乏になりそうなんだよね」

 

「そんなことないよ。 ハジメ君、綱手様が手際がいいから本当に弟子にしようかって言ってたもの」

 

「ほんとに?」

 

「うん」

 

 影分身のお陰で多大な経験を積んでいるので、ハジメは自身の才能と言われても信じていない。

 実際にハジメの才能は可でもなく不可でもなく、戦闘センスに関しては平和な世界で生まれ育った意識が強いので性格的に低い方だ。

 この辺りは命のやり取りをしないと学べない物だが、影分身やコピーにドラゴンボール世界の戦闘力と、命の危険を極力離してきた事で危機感があまり働かないのだ。

 

「綱手様か」

 

「どうしたんだミナト」

 

「いや、オレの担当上忍が同じ三忍の自来也先生なんだけど、ある修行の提案があってね。

 今のままじゃ本気で戦ってもハジメには勝てそうにないから受けようと思うんだ」

 

「どんな修行?」

 

「口寄せ動物の蝦蟇の住む妙木山、そこで仙術の修行をしないかって言われている」

 

 仙術は原作でナルトの習得した、自然エネルギーをチャクラに混ぜて使用する忍術の上位のようなものだ。

 仙術の元となる仙術チャクラを使っている状態を仙人モードと呼び、身体強度が高くなり感知能力や術の威力が上がるなどの恩恵がある。

 ただし仙術チャクラを練るのは難しく、制御に失敗すると肉体が変異したり自然と同化して石になるなどのリスクがある。

 

「仙術かー…」

 

「ハジメも仙術に興味があるのかい?

 それなら一緒に修行できるように自来也先生に相談するよ」

 

「おいおいミナト。 お前ハジメに勝ちたいから仙術とやらを学びたいんじゃないのか?

 一緒に行ったんじゃ差は縮まらないだろ」

 

「確かにハジメには勝ちたいけど、それはオレがもっと強くなりたいからだよ。

 ハジメがもっと強くなるのなら、競い合うことでオレももっと強くなれると思ってね」

 

「ぐぅっ! なんて心持ちの余裕!

 これが天才と凡人の差なのか…」

 

 先ほどまで自分は才能の差を僻んでいたのに、ミナトはハジメより強くなれる機会を逃してでももっと強くなりたいという前向きな姿勢に、自身の嫉妬の醜さにツミキは胸を痛ませる。

 強くなるにはこんな前向きな姿勢が必要なのかと、悔しくも眩しそうにミナトを見た。

 

 ハジメは技術の収集を目的にしており、仙術もいずれは学んでみたいと思っていた為に興味はある。

 だが妙木山はナルトがいずれ修行に行く場所で、少々関わり過ぎかと気が掛かった。

 仙術を学べる場所は原作では二か所明かされており、ほかにも学べる場所があるかといずれ探してみようと思っていた。

 仙術は口寄せ動物と関係しているが、今の所ハジメは特定の動物との契約はしていない。

 これを機会に仙術を学ぶ事の出来る動物を探してみようと決める。

 

「仙術に興味はあるけど自来也様はミナトの先生だろう。

 いきなり僕が行っても迷惑だろうし、まずは僕等の担当上忍に仙術を学べる場所について聞いてみるよ。

 自力で調べて見つかりそうになかったら、その時お願いするよ」

 

「わかった、そういう事なら先に仙術の修行を始めさせてもらうよ」

 

 ハジメは次の任務の時に仙術に繋がる口寄せ動物について、山吹に聞いてみようと思った。

 

 仙術の話が終わって修行を続けようと思ったところで、演習場にダイの姿が現れた。

 

「よう皆、今日も青春の汗を流してるか!」

 

「どうもダイさん」

 

「「こんにちは(相変わらず暑苦しいなー)」」(ツミキ、クルミ)

 

「こんにちは、ダイさん。

 今日はずいぶん遅かったですけど何かありました?」

 

「うむ、実はうちの息子がもうすぐアカデミーに入る歳でな。

 そこで忍の修行風景を見せようと思ってその心構えを語っていたら遅くなってしまったのだ。

 紹介しよう、俺の息子のガイだ」

 

 ダイの後ろから現れたのは、父親によく似た顔つきとまるで同じ太い眉毛をした子供だった。

 

「初めまして、僕はマイト・ガイです!

 パパがいつもお世話になってます!」

 

「「パパ!?」」

 

 ダイの事をパパというガイにツミキとクルミが驚く。

 ダイの容姿はパパというイメージとはかけ離れており、親父といったごついイメージしかわかない。

 余りに容姿に似合わない呼び方にツミキとクルミは声を漏らしてしまった。

 

「? マイト・ダイが僕のパパなのは何かおかしいですか?」 

 

「いや、おかしいのはそこじゃなくて…」

 

「パパってイメージじゃないかな」

 

「ははは、特徴的な所はダイさんにそっくりだね」

 

「話には聞いていたけどよく似てるよ」

 

 驚いて声を上げた二人に対し、ミナトとハジメは落ち着いた様子で親子を見比べていた。

 マイペースなミナトは素で驚かなかったが、ハジメはどういう人物か最初から知っていたので驚かなかった。

 

「はっはっはっ! 似ているのは容姿だけではないぞ。

 俺に似て忍術や幻術の才能もからっきしで、体術一筋でやってく予定だ!

 この年から鍛えればきっとすごい体術使いになるぞ!」

 

「いや、笑い事じゃないだろ。

 忍術も幻術もダメなんてアカデミーに入学できるかどうかも怪しいぞ」

 

「大丈夫だツミキ君! 俺だって忍者になれたのだ。 なれないはずがない!

 それに俺もこの年になってからでも、ハジメ君達との修行で少しずつではあるが強くなったのだ。

 ガイもここで修業すればアカデミーなど一発合格だ!」

 

「本当パパ!」

 

「もちろんだとも息子よ!」

 

 嬉しそうに語り合う暑い親子の様子に、四人は苦笑いをしている。

 

「どうするハジメ。 アカデミー前の子供の修行に付き合う?」

 

「ダイさんは既にその気だけど、まあ別にいいんじゃないかな」

 

「後輩の育成も忍者の務めかな」

 

「アカデミー入学までならそんなに時間はないけど、オレも付き合うよ」

 

 こうして四人もガイの入学まで修行を付ける事になった。

 ダイがハジメとの修行で強くなった影響でガイもアカデミー前にしては体力があったが、忍術幻術の適性の無さを覆すものではなく、原作通りに補欠合格になるがその過程のドラマにハジメ達も少しばかり巻き込まれ、その後も時々ガイの修行を見る事になるのだった。

 

 

 

 

 

 数日後の任務が終わった後、ハジメは担当上忍の山吹に仙術の習得について尋ねてみた。

 仙術を使える忍はあまり聞かないので知っている可能性が低いとハジメは思っていたが、幸運なことに山吹の契約している口寄せ動物が仙術を伝える事の出来る種族だった。

 山吹自身も仙術の修行をしようとしたが、適正が低かったために諦めたそうだ。

 

 ハジメは山吹の紹介で口寄せ動物と契約し、任務の無い空いた日に逆口寄せをしてもらい仙術の修行が出来る口寄せ動物たちの住む場所に来た。

 その場所は竜宮島(りゅうぐうとう)と呼ばれ、口寄せ動物の亀たちが住む海上の島だった。

 そこで仙術を教えることが出来るという仙人亀に会う事になった。

 

「ワシが竜宮島仙術指南役の仙人アマタケじゃ。

 皆はワシの事を亀仙人と呼ぶが、好きに呼ぶがよい。

 お主が仙術を学びたいというコガラシ君の生徒じゃな」

 

「…ア、ハイ。 よろしくお願いします」

 

 アマタケという仙人亀はウミガメのヒレのような手足をしながら二足歩行で立っており、先が捻じれ丸まった木製の杖を持ち口元に白く長い髭を携えている。

 そこまでは普通の仙人のイメージなのだが、なぜか黒いサングラスをかけていてその姿はまるで本物の亀になっているドラゴンボールの亀仙人その人だった。

 ゴツゴツした肌が爬虫類である亀の証をしているが、それ以外はオリジナルの亀仙人そのままの姿なのでハジメは少し呆然としてしまった。

 

「む、どうかしたかの?」

 

「いえ、何でもないです」

 

「ふむ、まあよかろう。 それでお主は仙術についてどれほど知っておるかの。

 仙術を使うにはいろいろとリスクがあるときいておるか?」

 

「自然エネルギーを使う事と、制御が難しく肉体の変異のリスクがあることは知っています」

 

「なるほどなるほど、なかなか勉強熱心だの」

 

 大まかではあるが勉強してきたことにアマタケは嬉しそうに髭を弄っている。

 

「仙術を教えるのは構わぬ。 教えるのがワシの仕事じゃから習得出来るかはともかくしっかりと最後まで教えよう。

 ただ交換条件というわけではないのじゃが、一つ頼みごとを聞いてくれぬか?」

 

「僕が出来る事でしたら構いませんが」

 

「なに難しい事ではない。 お主は木の葉から来たんじゃろう。

 木の葉で売っているという本を、今度でいいので持ってきてほしいんじゃ」

 

「本ですか?」

 

「うむ、何でも大人気の品でワシの耳にも波の噂が聞こえてくるほど」

 

 ハジメは忍の修行に重視しているので世間の噂には疎い。

 大人気と言われても特に思い当たる本は思いつかなかった。

 

「それくらいでしたら構いませんが、題名が解らないと何を持ってくればいいかわかりませんよ」

 

「うむ、確か何と言ったかの…。

 妙木山で仙人修業した自来也と言う忍が書いた本なんじゃが」

 

 自来也の名前が出てきてハジメは本と亀仙人を繋がるイメージで思いついてしまった。

 そういえば三忍の自来也が新しく本を出したと噂になって、内容を聞いて呆れられたという話を小耳にはさんでいたのをハジメは思い出した。

 

「もしかしてイチャイチャパラダイスですか?」

 

「そうそれじゃ! ワシもう内容が気になって気になって。

 丁度木の葉のコガラシ君から連絡があったから、もうグッドタイミングじゃったんじゃ。

 買ってきてもらえんかの?」

 

「わ、解りました」

 

 仙人はエロいというのはあらゆる世界に定められている法則なのだろうか?

 いや、もしかしたらドラゴンボールの亀仙人が元祖エロ仙人だったのかもしれない。

 後日、イチャイチャパラダイスをハジメが買ってくることになるのだが…

 

「うっひょーーーー!」

 

 エロ本の味を占めたアマタケに、その後も何度かお使いを頼まれる事になるとはハジメは思っていなかった。

 あんた亀だろう、というツッコミは亀仙人そのままの姿でハジメは気にもならなかった。

 

 

 

 

 

 任務の合間を縫って仙術修行を受けに来る日々が続いたが、仙術の修行は捗ることはなかった。

 適性が無いわけではないが優れているわけでもなかったハジメの習得速度は普通で、原作のナルトのように短期間で習得出来るほどうまくはいかなかった。

 影分身による時間短縮も仙術修行では危険なため、自然エネルギーを感知するのに一か月仙術チャクラを練り始めるまでに三か月かかった。

 仙術チャクラを練ることが出来ても体の一部が亀に変異する不安定なもので、修行を終えるのは年単位の時間が必要になるのを覚悟した。

 

 ギリギリ仙人モードが使える様になった頃、亀仙人に連れられて場所が広げた海岸に来ていた。

 

「さて、ようやく仙人モードが使えるようなってきたところで、モチベーションを上げるためにワシ直伝の仙術奥義を教えよう」

 

「よろしくお願いします!」

 

「うむ、元気でよろしい」

 

 ハジメは誰かに師事するのはこれまで無かった事だが、亀仙人との師弟関係はうまくいっていた。

 エロ本買いに行かされるといった羞恥を代償としていたが、普段は修行に専念して極力忘れるようにした。

 忘れた頃に買いに行かされるので、これだけは修業とは別ベクトルの苦行を感じていた。

 

「まずは見ておるがいい。

 この技は仙人モードによる自然エネルギーと同調することで体外での操作性を上げた仙術チャクラでなければ扱うのが難しいからの。

 フンっ!!」

 

 亀仙人が常に持っている杖を砂浜に刺すと、海に向かって仁王立ちになり気合を入れて仙術チャクラを練る。

 すると体内のチャクラの増大で肉体が活性化し、甲羅から出た手足の筋肉がバンプアップする。

 甲羅から出るムキムキの手足とは非常にシュールな光景だった。

 

「これはっ!?」

 

 ムキムキになる亀仙人というシチュエーションに既視感を感じて、ドラゴンボールの漫画のシーンをハジメは思い出す。

 驚きを口に漏らしたがこの後の展開を予感してしまった。

 

「か~」

 

 海に向かって腕を伸ばし掌を広げて手首を上下に重ねる。

 

「め~」

 

 掌の中に玉を包み込むように開けながら、その両手を右後ろに下げて中腰に構える。

 

「は~」

 

 身体に溢れる仙術チャクラを掌の中に集中させていき、仙術チャクラの球体を作り出す。

 

「め~」

 

 チャクラの球体をどんどん集中させ圧縮していき、限界まで溜まった所でさらに腰を引く。

 

「波あぁぁぁーー!!」

 

 両手を海に向かって突き出すと、貯めこまれ解放された仙術チャクラが真っすぐ光の尾を描きながら放たれた。

 砲撃となったチャクラは海を割って海底を顕わにしながら突き進んで行き水平線の彼方に消えていった。

 後に残ったのは割られた海に流れ込む海水とそれによって生まれる余波だった。

 

「ふぅ、どうじゃ、膨大なチャクラを一点集中させ開放し撃ち出すかめはめ波じゃ」

 

「………いろいろ思う所はあるのですが、試してみてもいいですか?」

 

「構わんがお主は仙術チャクラの運用がまだまだじゃろう」

 

「いえ、普通のチャクラでやってみます」

 

 そう言ってハジメは海に向かって立ち中腰に構える。

 

「それは無理じゃて。 先ほども言ったがこの技には仙術チャクラによる自然との調和が必要なのじゃ。

 通常のチャクラでは体外での拡散性が増して非常に効率が悪く「かめはめ波ー」なるって、エエェェェェェ!……」

 

 ハジメの気の抜けた掛け声と一緒に一瞬で両手に集中させたチャクラを海に向かって開放し、先ほど亀仙人が海を割った光景を再現した。

 今度残ったのはぶり返しの波の音と亀仙人の開いた口から洩れる驚きの声の残照だけ。

 

「亀仙人様、これでいいんですか?」

 

「………お主、無茶苦茶じゃの。

 通常のチャクラ放出ではよほど力をつぎ込まねば仙術チャクラのかめはめ波と同等にはならんのじゃ」

 

 ドラゴンボール世界で修業したのなら、真っ先に習得に乗り出す必殺技だ。

 当然ハジメも修行で再現し、この世界であっても気を使う感覚でかめはめ波を撃てた。

 

「…って、なんで一発ワシの奥義模倣しちゃってるの。

 しかも仙術チャクラを使わずに普通のチャクラでなんて、ワシの師匠としてのメンツが立たないじゃないの!」

 

「すいません、ついやっちゃいました」

 

「つい!?」

 

 修行を始めた頃から亀仙人(・・・)似の亀仙人に思う所のあったハジメ。

 世界観が違うんじゃないのと突っ込みたかったが、エロ本の事はともかく教えてもらっている身なので何も言わず言われた通りの修行を受けてきた。

 此処で奥義としてかめはめ波まで披露されてしまっては悪戯心が沸いて、ドラゴンボール世界の我流かめはめ波を披露せずにはいられなかった。

 後に反省はしているが後悔はしていないと、ハジメは語ったとか語らなかったとか…

 

「ん、んんっ! 使えてしまった物は仕方ないの。

 (このままでは師匠の威厳が立たんから、)ここはワシの秘奥義を見せてやるしかないの!

 よーく見とれよ! 今度こそ度肝を抜くワシの必殺技を見せてやるからの!」

 

 亀仙人はハジメを驚かしながら凄い技に尊敬の眼差しを向けさせるつもりで披露したかめはめ波に、逆に簡単に真似をされ驚かされた事にムキになって別の技を披露しようとする。

 ムキになっている姿を見てハジメは流石に失礼だったかと思ったが、次の技の構えを見たらそれも忘れて亀仙人の行動を観察する。

 亀仙人は再び仙術チャクラを練りながら両腕を上に真っすぐ掲げた。

 その動きにハジメは元気玉の存在を思い出した。

 

 元気玉は世界中のあらゆる生命から少しずつ元気をもらってエネルギー球を作る技だ。

 仙術は大地や大気から自然エネルギーを取り込んで己の力にする術で符合するところはあるにはある。

 それに思い至ったハジメは自身も自然エネルギーを取り込み仙術チャクラを練る。

 自然エネルギーの流れを感知するために仙人モードになるのだ。

 

「ほう、察しがいいのう。

 この技を理解するには仙術による感知が出来ねばならんからの」

 

「…自然エネルギーが集まっていく」

 

 まだまだ不慣れ故に体の一部を自然エネルギーに引かれて亀化しているが、仙人モードになった事でハジメは周囲の自然エネルギーを感知出来る様になる。

 ハジメが感じ取ったのは周囲の自然エネルギーが吸い込まれるように亀仙人が掲げている両手の上に集まっていく流れだった。

 それはどんどん収束していき、本来目に見えないどこにでもある自然エネルギーが密度を上げた事で実体化し球体状に浮かんでいた。

 

「本来の仙術は自然エネルギーを一度仙術チャクラにして練り上げて使用するが、この技は仙術チャクラを呼び水に自然エネルギーを大量に呼び寄せ気弾を作り出す技じゃ。

 これほどの自然エネルギーを体内に取り込んだらあっという間に石になってしまうが、体外に集めるのであればその限りではない。

 自然エネルギーはどこにでもあり、その力は時間さえかければいくらでも集まり事実上無限じゃ

 ワシはこれを【仙気玉】と名付けた」

 

 こんなもんじゃろう、と掲げた手を下ろせば、亀仙人の手の上に野球ボールサイズの僅かに仙術チャクラの混ざった自然エネルギーが浮かんでいた。

 僅かな仙術チャクラが混ざっているのは自然エネルギーを纏めている起点であり、術者が仙気玉の制御に必要だから。

 球体は先ほどのかめはめ波で作った気弾より小さいが、集められた自然エネルギーは膨大な物だとハジメの仙人モードが感知していた。

 

「ほい」

 

 亀仙人が仙気玉を海に向かって投げる。

 軽く投げただけあってゆっくりと飛んでいくが、重力に引かれて落下することなくフワフワと沖に向かって飛んでいく。

 

「こんな所かの」

 

 50メートルくらいの沖まで球が離れたところで亀仙人が手を音を立てて合掌する。

 それを合図に沖の仙気玉の力が解放された。

 

 

――ドオオォォォォン!!!――

 

 

 解放された自然エネルギーは爆音を起こして周囲に広がり、周囲の海水を押し広げ波を起こし空気を押し出されて周囲に衝撃と突風を起こした。

 ハジメは爆音の直後に突風と衝撃に晒される。

 

「すごい衝撃!」

 

「わずかな間、自然エネルギーを集めただけでこの威力じゃ。

 その上この技は自身のチャクラをほとんど使わずに済む。

 時間が掛かるのが欠点ではあるが、どこまでも威力を上げる事の出来る技じゃ。

 どうじゃ、お主でもそう簡単に真似出来ないすごい技じゃろう」

 

「流石に僕も即座に今の技の真似は出来そうにないです」

 

 ドラゴンボールの元気玉は悟空が界王に教わる特殊技で、独学でマネ出来るものではない。

 ハジメも最初から独自での修得は諦めていた技の一つだ。

 この仙気玉が元気玉と同じとは思わないが、似た理論で出来ている事には違いない。

 

「そうじゃろ、そうじゃろ。

 どうじゃ、ワシってすごいじゃろう」

 

「ええ、流石は亀仙人様です」

 

 ハジメは素直に亀仙人を絶賛する。

 

「そうじゃろ、そうじゃろ。 お主もこの技を覚えたいか?」

 

「はい、もちろんです」

 

「よかろう、この技をワシの修行の最終課題として教えてしんぶぶぅっ!」

 

 ハジメの絶賛に鼻高々に有頂天になっていた、亀仙人が海から押し寄せた波に飲み込まれた。

 仙気玉の炸裂で起こった波が突風に遅れて浜まで押し寄せてきたのだ。

 ハジメは気づいておりちゃっかり跳躍して波を回避し、海水の上に飛び乗った。

 大して大きな波ではないので海水はすぐに引いて元の砂浜と波に倒されて甲羅がひっくり返った亀仙人が現れる。

 

「亀仙人様、今後も教授をよろしくお願いします」

 

「…うむ、よかろう。 じゃけど、もう少しワシを敬ってくれんかのう?」

 

「敬ってますよ?」

 

「ほんとに?」

 

「はい」

 

 亀仙人はどことなく釈然としなかった。

 

 

 

 

 

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