四次元ポケットと異世界漫遊記   作:ルルイ

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第七話

 

 

 

 

 

 

「これからガイ、君の修行を始める」

 

「はい! よろしくお願いします、ハジメ先生!」

 

 いつものように元気、いや青春溢れる力強い返事をするガイ。

 

「とはいえ君の場合はこれまで通り体術を高めることに終始するわけだが、僕は君ほど体術を重きに置いているわけじゃない。

 もしかしたら技術という点においては、既に上回っているかもしれないぞ」

 

「そ、そんなはずありません! ハジメ先生は大戦の英雄じゃないですか!

 僕…じゃなかった、俺なんか足元にも及びません」

 

 父の死をきっかけに強くなろうと決意したガイは、心機一転にと一人称を俺に変えた。

 

「確かに総合的な力であれば大きな差があるが、体術の技量という意味では僕はそれほど高い方ではない。

 チャクラ量と身体能力で僕の体術は成り立っているから、はっきりいって力任せなんだ」

 

「それでも十分すごいです」

 

「まあ、僕とガイの差は、純粋な意味での力の差だということだ。

 つまり僕に出来る事はガイの身体能力を高める事だ」

 

「つまり筋トレということですか?」

 

「それはこれまで通りガイの自主的なものでいいだろう」

 

 ガイやダイの特訓模様を知っているので、通常の筋トレは問題ないだろうと判断する。

 

「僕がやるのはガイがこれまでやってこなかった分野だ。

 とりあえず、まずは組手をやるぞ。 ガイは八門遁甲を使えるところまで使って全力でな」

 

「!?」

 

 

 

 

 

 今開けられる体内門を全て開放し、組手を終えたガイは疲労困憊で倒れている。

 

「三十分程か。 全開で戦ってこれならもった方だな、流石だ」

 

「ぜぇぜぇ……あれだけ動いてピンピンしてる先生の方がすごいですよ…」

 

「まあ体力でそこらの忍に負ける気はないよ。

 それでガイ、八門遁甲を全力で使って戦って体の状態はどうだ」

 

「全身が痛くて動けません」

 

 動けなくなるまで使った八門遁甲の反動でガイの体の筋肉はボロボロだった。

 

「じゃあ治療するからジッとしていろ」

 

 医療忍術で治療を施し、数分で筋肉の裂傷を治癒し動ける状態にまで戻す。

 

「これで動けるようにはなっただろう」

 

「はい、ありがとうございます」

 

「知っての通り八門遁甲は強力だが、その分肉体への反動が非常に大きい。

 体術使いのガイにとっては最高の切り札だが、自分の体を破壊する諸刃の剣だ。

 まずはその欠点を克服することを目標にしよう」

 

「わかりました! それで俺はどんな特訓を?」

 

「とりあえず毎日八門遁甲で組手かな」

 

「えぇ!?」

 

「習うより慣れろ。 毎日使ってれば自然と耐えられるようになる。

 動けなくなるなら僕が治療するから」

 

 

 

「………」

 

「………」

 

「………あの、先生」

 

「どうした、何かわからないところがあったか」

 

「いえ、なぜ俺は医療忍術の本を読んでいるのでしょう」

 

「医療忍術の基礎を憶え込ませるためだが」

 

 何を当たり前なことを、といった様子でハジメも合間にと医療関係の書類を片付けている。

 体は動けるようになってもチャクラが回復していないからと、次は座学で医療忍術の初歩の教科書を読ませていた。

 

「あの、俺は体術以外は全然ダメで…」

 

「知っている、別に一流の医療忍者になれと言ってるわけじゃない。

 それでも簡単な医療術、掌仙術くらい覚えて自分の怪我くらい自力で治せるようになれ。

 修行の間は付き合うが八門遁甲の反動をいつも治してやれるわけじゃないからな」

 

「お、俺に医療忍術が使えるのでしょうか!?」

 

「簡単なものなら使えないことはないだろう。

 医療忍術に重要なのは知識とチャクラコントロールだ。

 それさえ出来ていれば掌仙術くらい使えるようになる」

 

「そうなんですか!」

 

「ああ、印なんて結ばなくても使える術は結構ある。

 それとガイは綱手様の事を知っているか?」

 

「ええと、三忍の一人ですごい医療忍者だってことくらいは」

 

「まあ、あの人も医療関係以外にあまり顔を出さなかったからな。

 綱手様は医療忍者でくノ一だが、怪力無双の腕力の持ち主だ。

 その怪力の秘密は卓越したチャクラコントロールによるものだ」

 

「チャクラコントロールをするだけでそんなことが出来るのですか!?

 ではチャクラコントロールを憶えれば俺も!」

 

「僕も昔はそう思って医療忍術を学んだが、必要技量の高さに体術に活かすにはあまり割に合わない結果だった。

 ガイがそこまで出来るようになるのなら、医療忍者として大成出来るな」

 

 才能の無さからか体術一本に絞ったガイには暗に無理だという。

 

「そうですか…」

 

「だが忍者としてチャクラを扱うならコントロールは重要だ。

 ガイは体ばかり鍛えてチャクラの運用を疎かにしてるようだから、扱いがかなり雑だ。

 医療忍術を憶えるためにもそこも改善していかないと」

 

 

 

 ガイの体力がある程度回復したところで、次の修行に移った。

 

「次はこの術の練習をガイにしてもらう」

 

「ハジメ先生、この技は一体?」

 

「知らないか? ミナトの作った術だからそこそこ有名だと思ったんだが。

 これは螺旋丸という、先ほど言ったチャクラコントロールのみで出来る術だ。

 お前にはこれをチャクラコントロールの練習として覚えてもらう」

 

「これが! これなら俺にも習得出来るんですね!」

 

「ああ、まずは第一段階の水風船割りからな」

 

 原作通りの習得法をガイに伝えて実践させた。

 

「全然割れません」

 

「まあいきなり出来るとは僕も思っていない。

 ほかの特訓と一緒に毎日続けていこう」

 

 

 

 

 

 八門遁甲、医療忍術の勉強と一緒に螺旋丸の練習を続けて二か月。

 

「ハジメ先生、どうですか!」

 

「両手ではあるが一応完成しているな」

 

「やったー!」

 

「まずは木にでもぶつけて試してみろ」

 

「はい、いきます! 螺旋丸!」

 

 ガイが螺旋丸をぶつけると木は削り取られるように抉れて渦巻いた傷跡を作った。

 まだまだ未熟だが螺旋丸として形になっている。

 

「うおおぉぉぉぉ! これで俺もすごい術が使えるようになったんだぁ!」

 

 忍術を碌に使えないと言われていたガイは、初めて忍術らしい術を使えたことに感動していた。

 

「喜ぶのはいいが、これはガイにとってチャクラコントロールを鍛えるための術だ。

 実践ではたぶんガイには使いこなせないぞ」

 

「えっ!? ………な、なぜですか。 確かにまだ片手で作る事は出来ないけどこんなにすごい威力なんですよ!」

 

「確かに威力はあるし印を結ぶ必要がないという利点があるが、作るのに溜めがいるし持ったままでは動きが大振りになる。

 本来は分身などで相手の動きを制限してからでないと、単独では当てにいくのが難しい。

 よほど瞬時に生成出来るようにならないと、純粋な体術での戦法に組み込むのは無理がある。

 ガイなら無理に相手を追い込んで螺旋丸を当てるより、近づいて殴った方が早いだろう」

 

「そんなぁ。 どうしてそれを先に言ってくれなかったんです」

 

「チャクラコントロールの練習用だと言っただろう。

 一人じゃ使いづらいだろうが覚えておいて損もない。

 医療忍術も成果が出てきてるんだから、なにも文句はないだろう」

 

「そうですけど、せっかくの必殺技が…」

 

「ともかく片手で使えるようになるまでは練習を続けておけ。

 それで一応合格だ」

 

「はい…」

 

 

 

 影分身を何とか習得させられないかと、ハジメはガイに印を教えていた。

 

「ハジメ先生、自慢ではないのですが分身もちゃんとしたのを出すことが出来ません。

 それなのに影分身なんて高等忍術、流石に…」

 

「まあ物は試しだ。 分身も発動しないのではなく失敗するだけなら芽が無いわけではない」

 

 原作でもナルトは分身が使えずとも影分身に成功しているので、可能性はあるだろうと試すことにしたのだ。

 

「それに影分身は高等忍術というが、チャクラの消費量に問題があるというだけだ。

 体内門をいくつか開放して使えばチャクラは十分に足りるだろう」

 

「先生のお陰で毎日使ってますけど、八門遁甲って一応禁術なんですよ」

 

「影分身も禁術と言われている。 今更気にするな。

 ともかく全力でチャクラを込めてやってみろ」

 

「わかりました。 開!」

 

 言われた通りにガイは体内門を開放しチャクラ放出量を増やす。

 

「いきます! 影分身の術!」

 

 

―-ボフンッ――

 

 

 術の発動の証に煙が立ち上る。

 

「どうだ、成功したか」

 

「わかりません、でも手ごたえはありました」

 

 煙が晴れるとそこにはガイとまるで同じ姿が分身が立っていた。

 

「姿に違和感はないな」

 

「やった、初めて分身が成功した!」

 

 特に違和感のない影分身にガイは成功を喜ぶが、

 

 

――………シュー――

 

 

「ん? この音は何だ」

 

「あっ」

 

 空気の抜けるような音がするとガイの影分身の耳や鼻から煙が立ち上り、次の瞬間…

 

 

――ボーン!――

 

 

 影分身が爆発して近くにいたハジメとガイは吹き飛ばされる。

 大した破壊力を伴う爆発でなかったので、二人とも怪我をすることはなかった。

 

「すいません、やっぱり失敗でした」

 

「まあ惜しかったんじゃないか」

 

 その後、何とか一体だけではあるが影分身を作ることに成功するようになる。

 ただしそれでもガイの宿業なのか、どんなに練習しても時々失敗してしまうのだった。

 

 

 

「ガイ、仙術というものを知っているか?」

 

「いえ、知らないです」

 

「忍者の必須技能であるチャクラの練りに、さらに自然エネルギーを混ぜる事で仙術チャクラとなる、忍術の上位互換のようなものだ。

 仙術チャクラは練るだけで肉体の強度を格段に上げる効果もある。

 習得には資質が大きく左右されるが試してみるか?」

 

「強くなれるのなら、なんだってやります!」

 

 ハジメも仙術修行をやっていた竜宮島に来たガイは、早速仙術修行を開始する。

 

 

――バシッ!――

 

 

「あいたっ!」

 

 仙術チャクラを制御出来ずに、肉体を変異させたガイの体から自然エネルギーを直接叩き出される。

 自然エネルギーの抜けたガイの体はすぐに元に戻った。

 

「これまでいろんな奴の修行を見てきたが、ここまで才能の無いやつも珍しい。

 僅かな自然エネルギーを取り込んだだけで、体内チャクラのバランスを崩し変異するとは。

 ここまでチャクラの体内バランスを崩しやすいと、逆に才能ともいえるぞ」

 

 仙術の扱いに失敗すると肉体が変異し、最終的に石になってしまうリスクがある。

 亀仙人が呆れるくらいにガイには仙術の才能がなかった。

 

「それは少し興味深いですが、仙術を扱うのは危険すぎますね」

「そういうわけだからガイ、流石に危険すぎるから修業は切り上げるぞ」

 

「…わかりました」

 

 修行の中にはやはり才能の壁に阻まれることもしばしば。

 

 

 

「先生、流石にここでの組手は無理があるのでは!」

 

「修行に多少の危険は付き物だし、チャクラコントロールも一緒に鍛えられて一石二鳥だ」

 

 時には高い崖の壁面にチャクラで垂直に立ち、その状態で組手をする。

 

「ですがこんな高いところから落ちたら、ただじゃすみませんよ!」

 

「そういう状況でこそ、実力というものが試される。

 避けてばかりいないでかかってこい」

 

「わ、わかりました、では、はあぁぁ!」

 

 壁に立ったままガイは走り出して殴り掛かるが、ハジメに容易に回避される。

 

「腰が引けて普段より動きが鈍いぞ」

 

「仕方ないじゃないですか」

 

「それで攻撃してるつもりか!」

 

「先生!? ぶべっ!」

 

 ハジメがジャンプして回避するが共に崖に垂直に立っている状態。

 跳べば空中に放り出される事は明白でガイはその行動に驚くが、直後に飛んできた蹴撃で吹き飛ばされる。

 宙に飛んだハジメは空を蹴って崖側に戻り、ガイを蹴り飛ばしたのだ。

 蹴られたことに驚くが崖の側面であることを思い出し、慌てて壁にへばりついた。

 

「な、何ですか今の! 空中でジャンプしませんでした!?」

 

「そうだが、どうした」

 

「そんなこと出来るんですか!?」

 

「忍者は壁や水面を足場に出来るんだ。 空中を足場に出来ない道理はないだろう」

 

「な、なるほど?」

 

「下忍で木登り、中忍で水面、上忍で空中を足場にする。

 上忍クラスの体術使いなら空中戦闘もこなせなければならない。

 当然上忍の技術になる以上相当難しいが、体術で上を目指すのであれば避けては通れない。

 ここでの修業で覚えてもらうぞ」

 

「はい、絶対に習得して見せます!」

 

「ではさっそく試してみろ!」

 

「わかりました! うおぉぉぉぉああああぁぁぁぁぁ………」

 

 勢いよく飛び出し空中を蹴ってみるが空振るだけで落ちていくガイ

 

「勢いでやれと言ったが、まあいきなりは無理だろうな。 下に影分身を配置しておいたから大丈夫だろう」

 

 空中跳躍のウソにガイが気付くのは上忍になってからだった。

 その時には気合と根性でしっかり習得しているのだから流石(バカ)である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 当初は興味本位であったが修行の相手も、遅々としながらもしっかりとこなし着実に強くなっていくガイに熱が入り、ハジメも本気で強くしてやろうと様々な修行を施した。

 誰かを育てるという初めてのことに充実した日々を送るが、楽しい時間はあっという間に過ぎ去るもの。

 ハジメ達はこの世界で学ぶ予定の期限が近い事を知った。

 

「ミナトに子供が生まれる。 そう言われた」

 

「そうか、もうそんな時期なのか」

 

 ミナトの子供、すなわちナルトの誕生であり九尾襲撃事件がもうすぐ起こるという事だった。

 

 この世界に来た時にハジメ達は原作に深く関わることなく、ある程度技術を習得したら物語が始まらないうちに元の世界に帰還する事を決めていた。

 それが物語の根底となる始まりの事件、九尾襲来の時までだった。

 

「それでどうするんだ」

 

「この世界に残るよ」

 

「やっぱりそうか」

 

「わかってたのか」

 

「わからないわけがないだろう。

 俺はお前で、お前は俺だ」

 

 ハジメがこの世界に残るだろうと察していた父親役のヒトシ(ハジメのコピー)。

 

「俺だってこの世界で暮らして長い。

 メインのお前ほど濃厚な付き合いをしていないが、この里にも愛着が出来てる。

 俺も残りたいという気持ちが無いでも無い。

 だが当初の役目があるからな。 元の世界に俺は戻る」

 

「そうか。 オリジナルにはよろしく言っておいてくれ」

 

「ああ」

 

 ハジメは卵を取り出しヒトシに渡す。

 

「僕のコピーの卵だ。 それを孵して統合すれば僕の忍びの技量が継承される」

 

「まあこれが目的だったからな。 持ち帰らなければこの世界に来た意味がない」

 

「秘密道具も全部持って帰ってくれ」

 

「いいのか?」

 

 秘密道具はオリジナルを含めたハジメ達にとっての武器だ。

 それを手放すということはいくら力を得ようと最大の武器を失うに等しい。

 

「ああ、この世界で暮らすのに秘密道具は必要ない。

 この世界でいろんなことを経験しすぎた。 仲間や平和が戦争が生き死にが、僕がここで生きてるんだと訴えている。

 ならもう原作なんて関係ない。 今をより良いものにするために精一杯生きる。

 そのために秘密道具というこの世界では異物過ぎる力にはもう頼れない」

 

「そこまで言うんならいいんだがな」

 

 この世界における忍びの命は軽い。

 どんなに強い力を持っていても死ぬときは死ぬと、ハジメが死ぬ可能性をヒトシもわかっていた。

 

「心配ない。 秘密道具が無くても他の世界で得た力は残ってるんだ。

 あまり派手に使うつもりはないが、この世界の人たちよりはずっと恵まれてるんだ。

 この世界で生きていくと言ったけど、十分贅沢できるさ」

 

「そうか、それならいい。

 ある意味ここからが本当の原作介入なんだ。 しっかり最後まで生き残れよ。

 お前がどうなるか気になるから、多分すべてが終わったころに一度見に来るよ」

 

「オリジナルの俺ならそうするだろうしな」

 

「じゃあ達者でな」

 

「ああ、みんなによろしく」

 

 そしてヒトシはこの世界で得たものを携えて、この世界を去っていった。

 残ったハジメはこの世界で生きていくことを新たに決意する。

 

「原作以上のハッピーエンドとは言わない。

 僕の存在する事で良くなることも悪くなることもあるだろう。

 だけどどのような結果になるにしても、原作より悪いことが起きたとしても後悔しない。

 それがこの世界で生きていくという事なんだ」

 

 

 

 

 

 

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