四次元ポケットと異世界漫遊記   作:ルルイ

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第十二話

 

 

 

 

 

 ダンゾウが間もなく五影会議に出発する頃に、僕は綱手様の病室に来ていた。

 

「というわけで、ダンゾウが暫定六代目となりました」

 

「私を病室に押し込めておいて何をやっているのかと思えば、ダンゾウが火影とは大丈夫なのか?」

 

 昏睡状態だった綱手様は既に目を覚ましていたが、医療忍者としての権限で未だ昏睡状態という事で押し通させてもらっていた。

 原作よりも僕の処置が効果を成したことですぐに目を覚ましたが、ダンゾウを予定通り暫定六代目として五影会議に向かわせるために、綱手様には目が覚めていないという事にさせてもらった。

 

「上忍達の信任決議もやる暇がないので、まだ暫定です。

 恐らく五影会議に参加する事で外堀を埋める形で、火影の座に収まろうとしてるんじゃないんですかね」

 

「ダンゾウが今更火影に成ろうと考えるのも理解出来んが、奴を泳がせてお前は一体何をする気だ」

 

「………いい加減、あの人には退場してもらおうと思いましてね」

 

「ッ!?」

 

 綱手様はとても驚いた様子で目を見開く。

 

「…お前がそのような事を言うとは思わなかったが、本気か?」

 

「僕にも堪忍袋というものがありますからね。 そろそろ限界だったんですよ。

 正直あの人の行いは、木の葉の為とはいえ見るに堪えません。

 イタチの件もそうですが、木の葉の為とはいえダンゾウは敵を作り過ぎている。

 その上、あの年ですからね。 綱手様の言う通り、今更火影として脚光を浴びるべき人間ではありません」

 

 忍として戦場に幾度も出ているが、僕自身荒事を好む性格ではないので、ダンゾウを処断するといったことに綱手様が驚くのも無理はない。

 原作の予定通りではあるが、それ以上にダンゾウの事で長年ヤキモキしてきたのは本当の事だ。

 

 イタチの事件の時には、僕がうちはを壊滅させるついでにダンゾウも一緒に殺そうかと考えてもいた。

 結局原作通りにイタチが事を成したが、その時からダンゾウにはいずれ借りを返してやりたいと思っていた。

 僕がここまで本気で殺意を抱いた相手はそうはいない。

 

「そこまでは言ってないが…。 どう始末する気だ」

 

「火影に成る事がどこまで本気か分かりませんが、最近はいろいろボロを出してきています。

 そこを突けば芋づる式に罪を洗い出して処断することが出来ます」

 

 先の会議で大名は妙にダンゾウを擁護する姿勢を見せていた。

 恐らくうちはシスイの写輪眼による幻術を使ったのだろうが、外から見ていくら不自然さが無くても、術を掛けられていると分かった上で調べればその痕跡は発見できる。

 そうすればダンゾウの正当性は後からでも容易に崩せる。

 

「………どうやら本気のようだな。

 お前がそこまで言うのなら、きっちり始末をつけろよ」

 

「ありがとうございます」

 

 綱手様の許可が出た事で正式にダンゾウを始末する算段がついた。

 

「それでは事が済むまで綱手様はこのまま静養を続けてください。

 シズネにだけは綱手様の事を伝えておきますので」

 

「里の大事な時に寝ている訳にはいかないのだが…」

 

「少し前まで危険な状態だったのは間違いないんですから、本当に静養していてくださいよ」

 

「…仕方あるまい」

 

 

 

 綱手様を付き人のシズネに任せ、僕は身を隠しながら五影会談に向かうダンゾウの後を追った。

 極力原作通りの流れにするのなら、五影会談でダンゾウが逃げ出した時に仕留めるべきだ。

 右手に隠し持つ柱間細胞とそこに埋め込まれた写輪眼による【イザナギ】は脅威だが、種が解っていれば僕の力なら持久戦で時間切れを狙える。

 

 ダンゾウの存在を気と仙術の感知で把握しながら、こちらの存在が気取られない距離で追跡する。

 その途中で予想していなかったが、ある意味予定通りの者達に遭遇する。

 

「こんなところで何をやっているんだ、サスケ」

 

「あんたこそ」

 

 サスケとそれに率いられた鷹のメンバーだった。

 先日別れた後、サスケはダンゾウの調査を始め、暫定六代目として五影会談に参加する事を知って後を追っていたらしい。

 香燐が感知タイプの忍らしく、遠距離からの追跡を行なっていて、同じく追っていた僕と接触したというわけだ。

 

 彼らは現在背後関係の無いフリーな立場にあり、因縁のあるサスケであれば向こうに与する事もないだろうと、僕がダンゾウを始末する為に動いている事を教えた。

 

「木の葉は平和な里だって聞いてたけど、やっぱり黒い所もあるんだねえ」

 

「お前たちの出先の大蛇丸も木の葉出身だぞ。 他里よりは温厚なところが多いが黒い所が無いわけじゃない」

 

 物語的に考えれば、木の葉が騒動の中心と言える。

 ナルトの迫害しかり、黒い所はそこら中にある。

 光が強い分、影もまた濃いって事だろうか。

 

「そういやそうだったね。 サスケの事情も聞いちゃったし、案外木の葉は怖い所なのかね」

 

「水月、安易にその話を口にするな」

 

「わかってるよ」

 

 サスケはうちはの事情を仲間に説明したらしい。

 口止めはしてるようだが仲間として同行している以上、自身の事情を話す筋を通したといったところか。

 本来のサスケであれば話していなかっただろうな。

 

「それでサスケ。 ダンゾウは近いうちに僕が処理する。

 お前はどうしたいんだ。 うちはの仇として復讐したいのか?」

 

「…殺してやりたい気持ちが無いわけじゃない。 だがその前に聞いておきたい事がある。

 なぜうちはを滅ぼしたのか?

 理由は分かっているが、奴自身の口からそれを聞かなければならない。

 奴をどうしたいかは、それを聞いてから決めるつもりだ」

 

「そうか…。 だが奴の口からは胸糞悪くなるか腸が煮えくり返る様な答えしか聞けないだろう。

 ダンゾウはそういう人間だ」

 

「それでも、イタチに一族を殺させたのか聞かなければならない。

 俺自身が答えを出す為に…」

 

 以前のサスケであればこの話をすれば憎悪をにじみ出させていたが、イタチと会話を果たしたことで穏やかさを保っている。

 おそらく今のサスケなら、ダンゾウを前にしても冷静な判断を下せるだろう。

 

「それなら僕もこれ以上言う事は無い」

 

「ならダンゾウについて、お前の知っている事を教えろ。

 前は話が途中で終わったからな」

 

「わかった」

 

 僕はダンゾウについてわかっている事を、噂程度の事も含めてサスケに教えた。

 いくつもの悪辣な策謀が過去に行われてきたことを伝えて、サスケだけでなく水月や香燐も眉を顰める。

 

「僕等も真っ当な訳じゃないけど。 ろくでもないね、その爺さん」

 

「胸糞わりぃ。 そんな奴のせいでサスケは…」

 

「俺はどうでもいい。 だが噂以上の奴のようだな」

 

「これでも僕が知っている限りだ。 その業の深さは悪名高い大蛇丸をも超えているかもしれん」

 

「そこまでかぁ…」

 

 大蛇丸の行いは外道だが、それでも私利私欲という自身の範疇だけに収まっている。

 だがダンゾウは木の葉の為という大義の元に組織的に動いており、影響力を考えればワンマンだった大蛇丸以上の闇を抱えているともいえる。

 実際にはどちらがどうと比べても仕方がないが、ダンゾウの方が年季がある分罪深いかもしれない。

 

「近年のダンゾウの行いは目に余る。

 故に処断する事に迷いは一切無いが、奴の在り方については一定の敬意がない事もない」

 

「どういう意味だ? 随分と毛嫌いをしていた様子だったが」

 

「ダンゾウの役割はいわば汚れ仕事だ。

 正しいだけでは対処出来ない事に、秘密裏に処理する役割は必要だ。

 サスケもそれは解るだろう」

 

「………」

 

「それはイタチが罪を背負って、うちはのクーデターを止めて木の葉を守った事と同じことだ。

 決して日の目を見ることなく、名誉も得られず汚名と嫌悪で見られる役割と言える。

 ダンゾウはそれを自らの意志で担い、三代目火影の時代から長年勤めてきた。

 そこに対しては木の葉の者として、先人に対する敬意がある。

 恐らく日の目を見ることなかった数々の功績があるのだろうからな」

 

 そうでなければダンゾウは木の葉に長年巣食ってきただけの害虫でしかないからな。

 相応の功績はあってしかるべきだ。

 

「随分と評価が裏返ったな」

 

「いいや、何も変わっていない。

 そんな人間だからこそ、今更木の葉の顔である火影に名乗りを挙げるなど、年老いて耄碌したとしか思えん。

 日陰道を進むと決めたはずなのに今更脚光を浴びようなんて、敬意があるからこそ失望したとしか言えない。

 お前に例えれば、イタチが一族を殺して悪かったなとお前に謝るようなものだ。

 あいつが言うはずないが、それは腹立たしいだろう」

 

「確かにそれはいろいろ台無しだ」

 

 イメージの中でイタチがサスケとの戦いのときに、手を合わせてスマンと謝る姿は只のコメディだ。

 失笑物だが実際にやられれば怒りが沸くだろう。

 

「イタチは身内を殺してでも木の葉を守る道を選んだ。

 だがイタチは木の葉を守る事を免罪符として、うちはを滅ぼしたことに罪の意識を持たなかった訳じゃない

 イタチは多くの苦悩をして、サスケに殺される事で少しでも罪滅ぼしをしようとしたんじゃないかと思っている」

 

「…かもな」

 

 イタチと話をしたサスケにもそんな思いを感じ取っていたらしい。

 

「罪は罪だ。 僕は彼らの様に率先して罪を犯して何かを成そうとしてきた事は無いが、どんなに正しい事の為、木の葉の為だと言おうと、それを免罪符として正当化しちゃいけないと思っている。

 長年里の闇として過ちを犯して木の葉を守ってきたダンゾウは、罪の意識というものを無くしてしまったんだろうな。

 イタチですら数年で多くの苦悩を抱えてはやく楽になりたいと考えてたんじゃないかと思えば、長年その世界で生きてきたダンゾウが真っ当な感性を失っていても仕方が無いのかもしれないがな」

 

「イタチがなったかもしれない成れの果てという事か」

 

「わからん、これは僕の勝手な妄想だ。 

 ダンゾウが何を思って今の道を選んだのか、知る者は長い付き合いのある相談役くらいだろう。

 だが、今のダンゾウが暴走しているのは間違いない。

 決定的な何かをやらかしたら、それを切っ掛けに処断する。

 お前に話が出来る時間を作ってやるつもりだが、暇がなければ諦めてもらう事になる」

 

 サスケもいろいろ変わってきているし、原作通りオビトが会談に現れるとも限らない。

 最悪でもダンゾウの排除だけは成功させておきたい。

 排除出来なければ不和を生むダンゾウの存在で、忍連合も出来ず五里の同盟も成り立たなくなるかもしれない。

 

「…わかった」

 

 サスケは何か考え込みながらも了承した。

 ダンゾウと話す機会があっても、いい傾向にあるサスケが再び悪い方向に向かわなければいいのだが…

 

 

 

 見つからないように追跡して、五影会談が行われる鉄の国に入った。

 五影会談が始まるまで、僕らは遠くから会談が行われている建物の様子を窺っていた。

 

「これからどうする気だ。 会談の後に木の葉に戻るところで仕掛ける気か?」

 

「いや待て、今会議の様子を窺っている」

 

「わかるのか?」

 

「僕固有の術でな」

 

 会談の場所はここから数キロ離れているが、僕は忍術ではなく超能力の透視を使って五影達の会談の様子を見ていた。

 僕の透視は超能力を過度に鍛えた事で、千里眼のような遠視も出来るようになっている。

 白眼のような能力になっているが、流石に何を喋っているかまではわからないので、動きで会議の雰囲気を読み取りチャンスを待つ。

 

 原作通りなら、ダンゾウは司会役のミフネに幻術を掛けて操り、それが発覚して追いつめられる事態に陥る。

 そこへ僕が現れば他の影の前でその罪を白日の下に晒し、責任を取らせる形で処断できるのだが…

 

 そういえば、会談にはマダラを名乗るオビトも現れるんだった。

 そこでふとサスケの存在を確認する。

 

「…どうした」

 

「…ちょっといい方法を思いついた。

 うまくいけば復讐とまではいかないが、サスケがうちは一族としてダンゾウを弾劾する事が出来るかもしれないぞ」

 

「俺がか?」

 

「ああ、その権利はお前には十分にあるだろう。

 だがそれにはイタチの汚名を蒸し返す事になるが、どうだ?」

 

「まずは聞かせろ。 どうするかはそれからだ」

 

 

 

 サスケは僕の策を多少悩みながら承諾し、僕らは正面から会談を行なっている建物に足を運んでいた。

 他の三人には隠れて待っていてもらい、水月には『僕ら待たされてばっかだね』と愚痴を貰った。

 透視で様子を見た限り、どうやら会議に動きがあったようで足を速める。

 

「止まれ、この場に何用だ」

 

 警備をしていた鉄の国の鎧姿の侍が僕らを呼び止めた。

 

「木の葉の火影補佐、中野ハジメだ。 火影代理で会談に来た志村ダンゾウを追ってきた。

 ダンゾウは既に会談の場にいるのか?」

 

「はい、五影会談は既に中で行なわれています」

 

「遅かったか。 …ダンゾウに火影代理として相応しくない重大な疑惑が浮上した。

 真偽を確かめ、場合によっては捕縛も余儀無しと追いかけてきた。

 ダンゾウの元まで案内してほしい」

 

「しかし、今は会談の最中ですので…」

 

「ダンゾウは火影の代理を務める資格に疑惑があるのだ。

 資格の無い者をこのまま会談に参加させ続ける訳にはいかないだろう。

 木の葉の恥であるが火急の事態だ。 案内してくれ」

 

「しょ、承知しました」

 

 その侍の案内で会談が行われている部屋に早足で向かう。

 サスケも何も言わず僕の後についてくる。

 会議室にたどり着いて中に入ると、ダンゾウは五影全員から鋭い視線を向けられており、護衛のフーとトルネが守りを固めていた。

 

 ここに着くまでの時間を調整していたが、絶好のタイミングだ。

 

「なんじゃ?」

 

「会談中失礼します。 木の葉の方をお連れしました」

 

「お前は木の葉の巨獣か!」

 

「中野ハジメです。 出来れば異名ではなく名前で呼んでほしいですが」

 

 雷影が僕が誰なのかに気付いて異名で呼ぶ。

 異名が着くというのは僕も男なのでそれなりに嬉しいのだが、実際に呼ばれるとこそばゆく恥ずかしい。

 

「随分と物々しい雰囲気ですが、何かありましたか?」

 

「どうしたもこうしたもないわ! 貴様ら木の葉の火影が幻術を使って進行役を操ったのだ!」

 

「ああ、やっぱりですか」

 

 ちょうどいいタイミングに来れた事に、僕は演技も兼ねながら納得いったといった感じにほくそ笑む。

 

「どういう事じゃ。 木の葉の巨獣はそいつを助けに来たのかと思うたが、その様子では違うようじゃな」

 

 土影が僕に訊ねてくる。

 

「そこの志村ダンゾウを追ってきたんですよ。 暫定火影である事にいろいろ疑惑が浮上したので確認する為に来ました」

 

「中野、貴様何のつもりだ?」

 

「ご自身の行いからお考え下さい。

 すみませんがここで何があったか、もう少し詳しくお聞かせください」

 

 話を聞くと原作通り、ダンゾウが進行役のミフネを操って、忍連合の総大将の座に着こうとしたらしい。

 火影に成ったばかりな上暫定の文字も取れていないのに、そんな大役を任されようなんて無理がありすぎると思うのだが、急いで地位を得たい理由でもあって焦っているのかと思える。

 しかしダンゾウの策謀は水影の護衛である青が目に移植していた白眼で見抜かれて、糾弾しているところだったというわけだ。

 

「なるほど、ここでも同じ事をやらかしたわけですか」

 

「同じ事とは?」

 

「暫定とはいえ火影を選出する会議で、大名が幻術に操られた形跡があったんですよ。

 それで疑惑のあるダンゾウを追ってきたわけですが、それが明確になりましたね」

 

「中野、貴様…」

 

 僕の思惑に乗せられていると悟ったダンゾウが睨むが、他の影がいる状況では戦う事も逃げる事もうかつには出来ない。

 

「それに火影として相応しいかという疑惑はこれだけじゃありません。

 彼が貴方についていろいろ情報を持ってきてくれました」

 

「お前は、うちはサスケか」

 

 ここでサスケの存在が光り、五影達も視線が集まる。

 サスケには今は余計な事は喋らないように言ってるので黙っており、ダンゾウをじっと見つめている。

 

「サスケは先日うちは一族を壊滅させたうちはイタチを討ち取りました。

 その際にイタチから一族を滅ぼした際に、ダンゾウが協力したと証言を得たそうです」

 

「出鱈目だ。 犯罪者の証言など何の根拠もない」

 

 イタチに一族を殺すように命じておきながらよく言う。

 サスケも腹立たしかったのか、歯を軋ませる音が僅かに聞こえた。

 

「ではその写輪眼はどうやって手に入れたのか説明頂きたい」

 

「………」

 

 ダンゾウの右目に埋め込まれた写輪眼はうちはシスイの物と青が明言している。

 力ずくで奪い取ったものだなどと答える事は出来まい。

 

「それだけではありません。 そいつの右腕にはいくつもの写輪眼が埋め込まれているのが見えます」

 

「本当なの、青?」

 

「はい、間違いありません」

 

 青が白眼で右腕の中身も見抜いたことで、写輪眼をどこから奪ってきたという疑惑が浮上し、うちは一族の壊滅に関わったという説は濃厚になる。

 実際に本当の事だし、こちらが隠すべきはうちはがクーデターを起こそうとしてイタチが止めたという真実だけだ。

 例えダンゾウがそれを明らかにしたところで、写輪眼で操ろうとした事実もうちは壊滅に協力して写輪眼をせしめた事実も変わらない。

 

 他の影が目撃してる状況で、うちはを壊滅させた罪を晒した。

 ここまでやれば火影など名乗る事は出来ず、里に戻っても他里の信用を失わない為に処断は免れず、更にサスケにとっては正しく報復を果たしたと言える。

 ダンゾウは原作以上に詰みに追い込まれたと言えるだろう。

 

 ここまでやればダンゾウを排除するという目的はほぼ達成だが、サスケに話をするチャンスを作る事がまだ出来ていない。

 ダンゾウもこのまま大人しくするとは思えないので、原作通りの展開に近づける。

 流れに任せる出たとこ勝負になるが、次の仕掛けに移る。

 

「うちはイタチから聞き出したという情報はそれだけじゃない。

 事件の協力者は他にもいたそうだ。 それはこの会談の発端となった暁とも繋がる」

 

「確かうちはイタチは暁に所属していると聞いた。 里抜けする前から繋がりがあったという事?」

 

「そうと見ていますが、暁のリーダーと言われていたペインは先日木の葉で討ち取っています。

 繋がりがあったのはその暁を裏から手を引いていた存在とです」

 

「そいつは一体何者だ?」

 

 水影と風影の問いに答えてその正体を明らかにしていく。

 

「正体はまだはっきりしていません。 仮面で顔を隠しうちは一族の証である写輪眼を持つ男。

 そいつはうちはマダラと名乗っていました」

 

「マダラじゃと!」

 

 もっとも因縁のある土影がいち早く驚きの声を上げる。

 

「奴は初代火影との戦いで死んだはず! 生きておったのか!?」

 

「だとしてもかなりの高齢の筈では?」

 

「本人とは断言出来ませんが、万華鏡写輪眼を使ううちは一族の者であることは間違いありません。

 僕も先日それらしき人物に遭遇しましたので。

 そうだろう、うちはマダラを名乗る男よ」

 

『!!』

 

 僕が上を見ながらその名を呼ぶと、この場にいた者達も驚いたようにバッと上を見た。

 透視能力と気の感知によって、マダラを名乗るオビトが上に潜んでいることを察知していた。

 存在が明らかにされた事で隠れていた場所から姿を現す。

 

「気づかなかったの、青」

 

「確かにあそこには誰もいなかったはずです」

 

「奴は時空間忍術で移動が出来ます。 誰にも見つからず忍び込むことは容易です」

 

 

――ボンッ!――

 

 

 全員の意識がマダラに向いたときに、煙が広がって全員の視界を覆いつくす。

 ダンゾウがチャンスと見て煙玉を炸裂させたのだ。

 

「サスケ、追え!」

 

「ああ!」

 

 ダンゾウが逃げようとするのは解っていたので、僕は警戒を怠らずに感知能力で動きに対応して、護衛の二人を即座に作り出した現身の術の腕で掴み捕らえた。

 先にこの展開を予想して説明しておいたサスケも対応し、写輪眼でダンゾウを補足し後追わせた。

 後はダンゾウとどうなるかはサスケ次第だが、水月たちとも合流するだろう。

 イザナギについても説明しておいたので、原作よりもかなり有利に戦えるはずだ。

 それでも簡単にはいかないだろうが、負けて死ぬことは無いだろう。

 

 サスケが追いかけて行ってすぐに会議室に風が巻き起こり、視界を遮っていた煙が吹き飛ばされた。

 見れば風影我愛羅の護衛であるテマリが巨大センスを振り切っており、風遁で風を起こしたのだと分かった。

 

「しまった! ダンゾウは何処へ行った!」

 

「あやつめ、逃げおったか!」

 

 僕が護衛の二人をチャクラの腕で押さえつけており、ダンゾウの姿が見えない事に状況を理解した雷影と土影がいきり立つ。

 

「…それが木の葉の巨獣の所以たる現身の術という奴か」

 

「ええ、この手の不定形の物体干渉手段は便利なんですよね。

 風影様も似たような手段をお持ちですからわかりますよね」

 

「俺でも砂を介しての方法だ。 チャクラその物をそのように扱っては、いくらチャクラ量があっても足りんだろう」

 

「ええ、まあ。 何時も僕のチャクラ量に驚かれる方ばかりです」

 

 この術は実際に効率がかなり悪いのだ。 術として安定して効率がある程度改善するまでは僕でもチャクラがたびたび枯渇していた。

 今の効率であれば仮に一般的な上忍が使うのなら、須佐能乎の第一段階くらいの大きさであれば作り出すことが出来るだろう。

 

「フーとトルネだったな。 今はそのまま大人しくしてろ。

 まだ敵がいる」

 

「「………」」

 

「ダンゾウは火影の名誉を傷つける失態を犯した。 言い逃れは出来ない。

 これ以上木の葉に不利益を出させるわけにはいかない。

 木の葉の忍であるならば、それは解るな」

 

「…わかりました」

 

「…はい」

 

 護衛の二人はこれで片付いた。 後は現れたうちはオビトだが…

 

「木の葉の巨獣! 奴がそうか!?」

 

「ええ、うちはマダラを名乗っている暁の黒幕です」

 

「そうか!」

 

 僕の答えを聞いて即座に飛び上がってオビトに殴りかかる。

 雷影様、知ってたけど手を出すのが早すぎ!

 

 だがオビトの神威によって物理攻撃はすり抜けて一切効かない。

 雷影の攻撃は建物の一部を盛大に吹き飛ばすだけに終わった。

 

「なに? これはどういうことだ、巨獣!」

 

「出来れば巨獣って呼ばないでほしいのですが…

 そいつには全ての攻撃がすり抜けてしまうんです」

 

「なんだと!」

 

「そういうわけだ。 分かったら、無駄な攻撃はやめるんだな、雷影」

 

「巨獣、どうすればこいつを殴れる!」

 

 巨獣呼び、やめてくれないなぁ…

 

「…すり抜けている間はこちらからの攻撃は一切効きませんが、向こうも攻撃は出来ません。

 そいつの攻撃の瞬間にカウンターを入れるくらいしか、殴る方法は無いでしょう」

 

「そうか、ならば攻撃してくるがいい!

 殴り返してくれる!」

 

「………」

 

 攻撃しろと言われてするわけがないよな。

 オビトも雷影の強引さについていけなくなっている。

 

「後は罠に嵌めて動きを封じるくらいですね」

 

「どうするのだ?」

 

 風影が罠の手段を聞くが、残念ながらすでに晒した手札だ。

 

「先日罠に嵌めたばかりですので警戒されてます。

 同じ手は食わないでしょう」

 

「そうだ。 あのような手が二度も通用すると思うな」

 

 少し怒気の籠ったオビトの言いように、それなりに罠に嵌められたことに腹を立てているようだ。

 自慢の絶対防御を破られた事が気に障ったらしい。

 

「そもそも俺は戦いに来たわけじゃない」

 

「ならば何用だ!」

 

「宣戦布告だ。 第四次忍界大戦のな」

 

 その後は原作と同じようにオビトは無限月読の存在を開示し、八尾と九尾の引き渡しを要求した。

 当然それは拒否され、宣言通り五里の連合が組まれる事になり、総大将に雷影が収まる事となった。

 そして宣戦布告が終わってオビトが去った後に、ダンゾウの護衛の二人に変化があった。

 山中フーが僕に話しかける

 

「ハジメ殿、お伝えしたい事があります」

 

「なんだ?」

 

「ダンゾウ様が亡くなられました」

 

「何、どういう事じゃ」

 

 話を聞いていた土影が問いかけてくる。

 ダンゾウの部下である彼らには呪印が施されており、ダンゾウに関わる情報を話せないようにされている。

 その呪印が消えた事を感じた二人は、術者であるダンゾウが死んだと分かったのだ。

 

「なるほど、ずいぶんあっけない最期じゃわい」

 

「奴に雲隠れは散々引っかき回されてきたからな。

 出来るならこの手で止めを刺したかった」

 

 土影と雷影はダンゾウを嫌う事を隠す様子もなく、水影と風影も幻術で騙そうとしていたことから何も言わないが快く思っていないようだ。

 

「五代目綱手様も直に復帰するでしょう。

 忍連合軍の詳しい話は、後日改めて話し合わせてください」

 

「まあ、いいだろう」

 

 

 

 後はいなくなったダンゾウに変わって、木の葉に持ち帰らなければならない会議の内容を話し合っていたら、ダンゾウを追っていたサスケが戻ってきた。

 それも逃げだしたダンゾウの首を持ってだ。

 確かダンゾウは死に際に敵を巻き込んで死ぬ自爆のような術を用意していて、原作では遺体は残らなかったはず。

 どのような経緯があってダンゾウの首を持ち帰ったのか尋ねると、サスケとの戦いの死に際に自身の首を持ち帰って自身の犯した罪を木の葉の忍が贖ったと証明せよと自ら差し出したらしい。

 そうだとしたら自爆の術は自ら解除していたのだとしても不思議ではない。

 

「俄かには信じられん。 あ奴が自らの首を差し出すなど」

 

「偽物ではないのか?」

 

 土影と雷影はサスケの証言がとても信じられないようだ。

 僕だってあのダンゾウが潔く自らの首を差し出すとは信じきれない。

 サスケが別天神に目覚めていて、ダンゾウを操ったとか?

 

「本物の様です。 右目の写輪眼も間違いありません」

 

「青が言うならそうなのでしょ」

 

「少なくとも木の葉がダンゾウの先の過ちを贖ったことは認めよう」

 

 風影の我愛羅はサスケの方を見ながらそう言う。

 厳密にはまだサスケは里を抜けたままだが、僕にダンゾウの首を譲ったことで木の葉は責任を果たしたと言える。

 この手で取りたいと憎んだことはあるが、本当に首を貰ってもうれしくは無いがな。

 

「巨獣、次はダンゾウと違ってまともな奴を寄こせよ。

 なんだったら貴様でも構わん」

 

「ははは、綱手様がもう目を覚ましていると思いますので今度は大丈夫ですよ。

 では、次は忍連合軍結成の時に」

 

 そうして波乱の五影会談は解散となった。

 

 

 

 サスケとは木の葉に戻る途中で別れることになるが、仲間たちと再度合流した時にダンゾウがなぜ自らの首を差し出したかおしゃべりな水月の口から語られた。

 

「いやあ、あんたにも聞かせたかったよ。

 まさかサスケがあんな熱くなってダンゾウに語り出すんだからさ」

 

「おい、やめろ水月」

 

「いやいや、ダメだろサスケ。 報告はちゃんとしなきゃ」

 

 驚いたことにダンゾウがあのような行動に出たのは、サスケが話をした影響らしい。

 僕が教えた情報通り、写輪眼を使い潰してイザナギを使ってきたダンゾウに怒りを感じながらサスケは戦った。

 原作と違い仲間との連携で戦ったことでイザナギを容易とは言わないが乗り切り、ダンゾウを追い詰めたらしい。

 そこでサスケはうちは壊滅の真相を改めてダンゾウに問い詰め、僕の話した事とほぼ違わなかったことを確認した後にイタチの忍の在り方について語り出した。

 

 

 汚名を背負って切り捨てられたのだとしても、イタチが木の葉の為に生きた事は納得はしないが理解はしている。

 だが汚名を受けてでも木の葉を守るという道に引きずり込んだお前が、火影を名乗って日の当たる道を歩き、挙句の果てに火影の名を傷つけておきながら生き永らえる為に逃げようとする事は許せない。

 そう非難したサスケに、ダンゾウは言葉を詰まらせ顔を歪めたらしい。

 

 しばしの沈黙の後にダンゾウは口を開き、木の葉のために戦っているのかと尋ねた。

 サスケは否と答え、自分はイタチのようには生きられないと答えた。

 ダンゾウはまた僅かに考えた後に突然胸を貫いて自刃し、息絶える前に自身の首を僕に渡せと言い残したそうだ。

 

 

 ダンゾウが真に何を思いそのような行動に出たのかは分からないが、帰路を共にしているフーとトルネは何かしら納得した表情をしていた。

 僕としてはサスケの行動もダンゾウの行動も驚きでしかないが、結果的には原作とそう変わらないものとなっている。

 やっぱり何かしらの修正力が働いているのかと思ったくらいだ。

 

 サスケにも心境の変化があり、別れる前にイタチの眼の移植を申し出た。

 頼まれていた事だったのですぐさま承諾し、チャチャっと万華鏡写輪眼の移植を行なった。

 この世界って繊細な筈の眼球の移植を容易に出来るから、技術レベル的にいろいろ不思議だ。

 

 サスケはうちは壊滅の真相と自身の答えを見つけるために、マダラを名乗ったオビトを追うらしい。

 九尾事件の切っ掛けでありうちは壊滅に直接関わっていた事もあり、イタチも調べていたであろう奴の正体を調べるつもりだそうだ。

 第四次忍界大戦が起こっても自分達は独自に行動すると言って別れた。

 

 今後サスケがどのような選択をするのかわからないが、イタチから始まったこの一件は一区切りがついた。

 ついにこの世界の転換期である第四次忍界大戦が目前に迫っている。

 その中で僕はどのように行動するべきか未だ悩むところがあるが、今はこの世界に生きる者として平和な未来を作るために尽力したい。

 

 

 

 

 


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