四次元ポケットと異世界漫遊記   作:ルルイ

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第十四話

 

 

 

 

 

 穢土転生を解かれ消えるかに思われたマダラだが、口寄せ契約そのものを解除する印を結んだことで穢土転生の術の解除を無効化した。

 術者の縛りすらなくなった穢土転生のマダラは、輪廻眼の力を備えた上に無限のチャクラを持つ不死身の存在となった。

 このマダラを倒すには封印するか、穢土転生の不死体を破壊する為の術が必要になる。

 僕の現身・穆王であるO.S.なら霊体に直接ダメージを与えられるが、所詮副次効果なので穢土転生体を破壊できると言う訳ではない。

 

 この穢土転生のマダラ、この世界の中で最も厄介な敵かもしれない。

 いくら僕の力がこの世界で強力なのだとしても、不死の敵というのは非常に厄介だ。

 以前戦った不死身コンビなんて目じゃない不死身っぷりだ。

 僕が本気になっても、もしかしたら倒せないかもしれない。

 

「どうやらまだまだやれそうだな!」

 

 

――木遁・木龍の術――

 

 

 マダラは木人の術で巨大な樹の人型を作っており、それを内部に取り込ませて須佐能乎を更に強化させていた。

 更に木製の龍が須佐能乎の周りの地面から飛び出してくる。

 

「そっちこそまだまだ本気でもないくせに!」

 

 完成体須佐能乎に加えて木遁の併用も始めたが、それでもまだ強力な術をマダラは残している。

 輪廻眼もさっき少し使っただけで未だ本気を出さず、こっちの戦力を楽しみながら図っているといった様子だ。

 

「行け!」

 

 マダラの合図に木龍が蛇の様に蠢きながらこちらに迫ってくる。

 僕は印を組んで対抗する術を発動する。

 

 

――沸遁・熱水龍弾――

 

 

 現身・穆王の体から木龍と同数の熱湯の龍を作り出して撃ちだす。

 水遁・水龍弾を沸遁で行なった物であり、激流に加えて熱で対象を煮えたぎらせる。

 生き物ではないので効果は半減するが、その熱で木龍にも確かに影響が出て動きを鈍らせている。

 

「それだけではないぞ」

 

 マダラの忠告と同時に、足元の地面から更にもう一体木龍が現れる。

 気づくのに遅れた事で現身・穆王の体に木龍が巻き付き、その性質からチャクラを奪おうとしてくる。

 

『この術は厄介ですよ』

 

「わかってる! はぁ!!」

 

 

――我流・回天――

 

 

 現身・穆王の体で日向の回天を行ない、巻き付いていた木龍を一瞬で弾き飛ばす。

 

「日向の回天をその巨体で再現とはやってくれる!」

 

「形だけの出来損ないだ。 古い友人が見たら雑だって言われる」

 

 この巨体で再現する為に体術ではなくチャクラその物を回転させながら放ったので、正しい回天よりもだいぶ形が違っている。

 だが木龍を吹き飛ばせれば十分であり、次はこちらと攻撃の準備をする。

 

 現身の手にチャクラを集中させると、白と黒の光が集まりながら黒の球体になっていく。

 更に乱回転と沸遁のチャクラを込める事で、須佐能乎の防御も砕くことが出来る威力の術が完成する。

 

 

――仙法・沸遁・尾獣螺旋丸――

 

 

 いろいろな属性のごちゃ混ぜになったが、強力な術が出来上がった。

 巨体の身で作っているので螺旋丸と言っているが大玉も同然であり、ナルトと違って手裏剣になっていないが仙法でもあるので当然投げられる。

 

 そして、完成した螺旋丸をマダラの木遁須佐能乎に向かって撃ち出した。

 

「ハアッ!!」

 

 マダラはそれを木人須佐能乎の木の腕で抱え込むように受け止める。

 尾獣螺旋丸の威力に押されてその巨体が後退していくが、翼と一体化した腕がそれぞれ刀を振るって四分割にする。

 当然螺旋丸は爆発するが、斬られた事で威力が殺され須佐能乎の鎧を砕けぬまでに減衰していた。

 

「ハッ! なかなかの威力ではないか。

 だがこの俺に攻撃を届かせるには足りんぞ。

 ンッ!?」

 

 僅かに押したが健在な木人須佐能乎に追加で攻撃を加えるべく、僕は更に術を加えた螺旋丸を準備した。

 腰だめに引いた両腕に力を集中させるかめはめ波の態勢に、周囲の自然エネルギーを仙術チャクラにせずダイレクトに集めて力の塊にする、嘗て仙術の修行で亀仙人に教わった仙気玉を作っていく。

 その集まる力にマダラも気が付いたようだ。

 

「短時間で大して集まらないが、威力の上乗せになるなら十分だ!」

 

 更に仙気玉に乱回転、沸遁、尾獣玉のチャクラを加えて力をため込む。

 流石に僕もこれだけ並行して別の術を一つに組み込めないので、影分身で制御を増やしている。

 

「さあ、今度は受けられるか? 仙法・沸遁・尾獣螺旋仙気玉かめはめ波!!」

 

 自分で言っててごちゃまぜで可笑し過ぎると思ったが、その名の通りの完成した技が木人須佐能乎に放たれる。

 ごちゃ混ぜ螺旋丸を撃ち出した後には、それを押し出す推進力であるかめはめ波の奔流が続いている。

 その流星の如き一撃を木人須佐能乎がその巨体で受け止めるが、先ほどとは比べ物にならない速度で押されていく。

 

「ウオオオオォォォォ!」

 

 木人の腕だけでなく翼と一体の腕を含めた四腕で受け止めているが、全く抑えきれずにどんどん後ろへ通されていくばかり。

 僕は駄目押しとばかりに放出するチャクラに更に力を入れた。

 

「ハアッ!」

 

 その押し込みで受け止めていた螺旋丸が木人須佐能乎の鎧を引き剥がし、内部の木人を削りだしたところで様々な術を複合した螺旋丸が割れて爆発するようにエネルギーが解放される。

 それを放出していたチャクラが押し出すような形になり、着弾点の木人須佐能乎のあった場所から扇状に爆発するエネルギーが広がった。

 後に残ったのは地面を削り取った扇状に窪みと、巨体を消し飛ばされたことを物語らせるひざ下だけを残した木人の足だけだった。

 

 勝ったかと一瞬思ってしまったが、マダラは穢土転生の不死身の体。

 粉々に吹き飛ばしても直ぐに復活すると思いだし、どこに現れるのかと僕はあたりを見渡す。

 

 結構本気の尾獣玉螺旋丸を受け止められたことで、つい更に力を上乗せしたごちゃ混ぜ技で吹き飛ばしてしまった。

 それでも吹き飛んだ地面のクレーターの中で塵が集まり、マダラの体が再生しようとしていた。

 

「あれでも復活するとは、やっぱり穢土転生はとんでもない術だな」

 

 霊体へのダメージもあるのでマダラ自身は疲弊しているかもしれないが、穢土転生を倒すには封印するか六道仙術のような術その物を破壊出来る力が必要になる。

 僕も穢土転生をどうにか出来そうな封印術を習得はしているが、マダラはまだカグヤが出現するまで倒すわけにはいかない。

 暗躍する黒ゼツとカグヤの存在を明らかにしておかなければ、後の大筒木一族の襲来を警告することが出来ないからだ。

 

 それ故にマダラの体の再生をただ眺めているだけだったが、集まる塵の周りに津波の様に砂が集まっていく。

 一目で我愛羅の砂と判り、復活途中のマダラの体を飲み込みピラミッドのような四角錐の形になって、封印札によって呪印模様が砂に浮き上がる。

 まさか封印に成功してしまったかと思ったが、直後須佐能乎の剣が砂を突き破って現れて、即座に完成体へと復活を遂げた。

 

「これは封印もダメかもな」

 

『いくら倒しても復活するのでは、ハジメでもチャクラに限界が来てしまうでしょうね』

 

 穆王が言うよりもまだまだ僕には余力は残っているが、それでもマダラの強さにこの不死身さは流石に僕も少々お手上げかもしれない。

 魂に造詣の深いシャーマンキングの世界の力ならどうとでもなる気はするが、僕の手にあるこの世界の力だけではいくら頑張っても倒せない気がする。

 

「この程度の封印で俺をどうにか出来ると思うな!

 だがやってくれたな。 今のは確実に俺を殺した痛みだった。

 餓鬼道でも無効化しきれんとはな」

 

「こっちも少し困ってるよ。 まさか封印も効かないんじゃね」

 

 当分時間を稼ぐつもりだったが、マダラが相手では僕でもそれは難易度がかなり高い。

 正直このままカグヤ復活までもっていけるか賭けの要素が多すぎるのだ。

 いっそマダラをこのまま倒して、黒ゼツを捕らえて山中一族にカグヤと大筒木一族の情報を引き出してもらった方が手っ取り早いかも、と考えていると…

 

「「!?」」

 

 遠くの方で巨大なチャクラの出現を感じ取り、僕とマダラは同時にそちらの方向を向いた。

 

「まさか十尾が復活したか?」

 

「オビトめ。 先走ったか」

 

 尾獣よりも大きなチャクラは間違いなく十尾だと確信し、思った以上の規模に少しばかり驚く。

 ドラゴンボールの世界で修業した時にどれくらいの力かと興味を持って遠くから感じ取ってみたフリーザのように巨大で、シャーマンキングの世界のグレートスピリッツの様に存在その物の強大さを感じた。

 

 マダラはマダラに扮しているオビトの名を言って悪態をつくが、おそらく十尾の近くにまだ八尾と九尾の存在を感じるから、まだ不完全な復活に不満に思っているのあろう。

 

「ちっ! お前との戦い、この生きている痛みを感じられて面白いと思っていた所だったが、そうも言ってられない様だな。

 ここは一度ケリをつけさせてもらう」

 

「そう簡単にいくか!」

 

 十尾の所へ向かいたいマダラにそうはいくかと僕は言うが、こちらとしては展開を進めるために好都合だ。

 殺されるつもりはさらさらないが、隙を見てマダラを逃すとしよう。

 

 再び須佐能乎で向かってくると思いきや、その翼を羽ばたかせて上空へを一気に舞い上がる。

 このまま逃げる気かと思い、そう簡単に逃がしては不自然とこちらも飛び上がって後を追うが、マダラとてそれを分かって次の手を打ってきた。

 

 

――天碍震星(てんがいしんせい)――

 

 

「ンな!」

 

 須佐能乎が手を翳した天の上空に、突如巨大な大岩が出現してこちらに向かって降ってくる。

 そういえばこんな術も使っていたなと思い出しながら、僕は現身・穆王のチャクラ刀の斬撃を飛ばし一撃で斬り砕く。

 この現身・穆王なら完成体須佐能乎の真似事くらい当然出来る。

 

「二手目も想定内だ!」

 

 大岩を砕いた先には次の大岩が迫っており、それももう片方の手のチャクラ刀から斬撃を飛ばして再び切り砕く。

 大岩の二連撃は土影様に使って重傷を負わせたことは覚えている。

 

 マダラの攻撃がこれだけで終わるわけは無いと思っていると、案の定二発目の大岩の向こう側に須佐能乎が迫っており刀を振り下ろそうとしている。

 僕は現身・穆王の体を形態変化させ、体の上に巨獣亀の時の亀の甲羅のような鎧を作って、須佐能乎の剣の一撃に耐えた。

 相応の衝撃は受けたが、防御力は巨獣亀だった時よりも数段上がっており現身・穆王は健在だ。

 

 攻撃に耐えた隙を突いて両腕の刀で反撃に出ようとしたが、須佐能乎の額のマダラに違和感を覚えて一瞬疑念を憶える。

 その一瞬のスキを見逃さず、次の瞬間には現身・穆王の体越しではあるが目前にマダラが現れていた。

 

「なっ!?」

 

「もらったぞ!」

 

 

――天道・地爆天星――

 

 

 マダラから黒い球体が僕の最も近くに放たれた瞬間に、何が起こったのか全て理解する。

 須佐能乎の中にいるマダラに感じた違和感はそこにチャクラはあっても魂を感じ取れなかったことによるものだ。

 一瞥すれば須佐能乎の中のマダラの眼は万華鏡写輪眼になっており、木遁分身に須佐能乎を引き継がせて本体は大岩に紛れていたのだと悟る。

 

 それを悟っても隙を突かれて受けたマダラの術は流石にどうしようもなかった。

 黒い球体の正体は強力な引力を持った輪廻眼・天道の地爆天星。

 ナルトもペインによって同じ術を受けて、九尾の封印が解けかける事によって抜け出す事に成功した封印術だ。

 その上位版がカグヤすら封印する、六道・地爆天星と呼ばれる位の強力な封印術だ。

 

「くっ! このおおぉぉぉ!!」

 

 黒の核に引き寄せられて地面から岩石が無数に向かってくる。

 それを両手の刀を振るいまくって斬り払おうとするが、引き寄せられる無数の岩石に現身・穆王の体が覆われていく。

 

「ならこれで!!」

 

 

――我流・回天――

 

 

 現身・穆王の体の体から沸遁の蒸気を発するチャクラが放出され、回転する事で纏わり着く岩石を吹き飛ばし始めた。

 回天は幾分か有効で、集まってくる岩石に対処出来た。

 

「やはり一個では足りんか。

 ならば追加だ!」

 

 

――天道・地爆天星――

 

――天道・地爆天星――

 

 

 追加で放たれた地爆天星の黒球を、寄ってくる岩石に抵抗していた僕には対応出来ずくらってしまう。

 結果、引力の力が三倍となって回天でも岩石を弾き飛ばせなくなり、現身・穆王の体を覆いつくして僕はその内側に閉じ込められることになった。

 体を覆いつくしてなお岩石は集まってきており、その外圧に耐えるために現身・穆王の強度を上げて耐えるしかなかった。

 

「ぐうぅぅぅ!」

 

「そのまま押し潰されてくれるなよ。

 お前とは十尾の力を手にしてから続きをしたいからな」

 

 そのマダラの言葉を最後に視界は岩石に塞がれ、僕は地爆天星の封印に閉じ込められた。

 

 

 

 

 

 一切光の無い暗闇の中に一筋の光が差し込み、そこへ更なる一押しをする事で光は一気に広がる。

 

「だああぁぁぁ!! 漸く出られた!」

 

 地爆天星の封印を打ち砕き、ようやく外に出る事に成功した。

 強力な封印だけあって容易に外に出られないのは解っていたが、飛雷神の術だけでなく超能力のテレポートまで封じられるとは思わなかった。

 透視まで効かないので外の様子も分からず、だいぶ長い時間封じられてしまった。

 外に抜け出したことで、僕の体から放たれている赤いオーラを納める。

 

『あなた…一体どれだけの力を秘めているのですか。

 一瞬でしたが十尾とも思えるような巨大な力を感じましたよ』

 

「…正直、使うつもりの無かった、使っちゃいけない力なんだよ。

 ここまで封印が強力だとは思わなかったから使う事になったけど、これ以上時間をかける訳にもいかなかったから仕方なかった」

 

『その力ならマダラにも容易に勝てるのではないのですか』

 

「いや、もうこの力を戦いで使うつもりはない」

 

 まさか地爆天星の封印を抜けるために、界王拳を一瞬とはいえ使う羽目になるとは思わなかった。

 流石は輪廻眼、六道の封印術と言ったところだ。

 

 それよりも封印を破るのに結構な時間をかけてしまった。

 何とか忍の力のみで脱出するつもりだったので、界王拳を使う事に踏ん切りがつかなかったのが時間が掛かった原因だが、本気で時間をかけすぎた。

 一時間は流石に経ってないと思うが、戦場では致命的なレベルの時間ロスだ。

 

 僕は直ぐに感知能力と遠視で状況確認を行うと、直ぐ近くで五影全員が倒れている事を察知する。

 口寄せ動物で蛞蝓のカツユによって治療が行われているが、綱手様自身も上半身と下半身が切り離されている重症だ。

 見覚えのある光景! 僕が封印された後にマダラにやられたか!

 

 慌てて僕はオーバーソウルを消し穆王を自身の体に憑依させながら、倒れている綱手様の元に駆け付ける。

 憑依させることで人柱力のような状態になると思ったが、これなら分離しても死ぬという事はなさそうだ。

 封印していないというのもあるが、本体ほど大きく無い断片だからというのもあるのだろう。

 

 とりあえず穆王は憑依してても問題無いとして、すぐさま綱手様の治療とチャクラの供給を行なう。

 創造再生の術もチャクラ切れでほとんど機能しておらず、すっかりおばあちゃんになってしまっている。

 

「綱手様、大丈夫ですか!」

 

「…ハジメか。 あの岩から…抜け出せたか」

 

 弱々しい声で何とか意識を保っていた綱手様。

 意識が途切れては口寄せのカツユも消えて、五影達の命も維持する事は出来なかっただろう。

 知った光景ではあるが、医療忍者として流石の信念だ。

 

「私はいいから……他の影達を…」

 

「全員治療しますよ! 後は任せてください!」

 

 綱手様の治療を引き継いで全員の治療を開始する。

 カツユを僕が新たに口寄せして治癒を引き継ぎ、影分身で全員同時に処置を施す。

 一番重症というか致命傷の綱手様には、胴体を繋ぎながらチャクラを送って創造再生の術を機能させる事で回復を促進させる。

 細胞の寿命とか気にしているレベルの傷ではない。

 

 伊達に綱手様の弟子を名乗っておらず、五影達の治療に問題は無かった。

 マダラの事も気になるので、これならもう少し治療をすれば奴の後を追える。

 

 そう思っていた時に、こちらに近づく者達の気配を感じた。

 敵意は感じなかったのであまり警戒せずその気配の主が向かってくる方向を見ると、現れたのはサスケの仲間の水月と香燐、そして死んだと噂されていた大蛇丸だった。

 

「久しいわねハジメ君。 貴方と直接会うのは何時以来かしら」

 

「僕が最後に見たのは、サスケの呪印から飛び出して来た時ですかね。

 それ以前は貴方が里抜けをする前かと思いますが?」

 

「あら、あの時見ていたの? 恥ずかしい所を見られたわね」

 

 口だけではあるが恥じらいを語る大蛇丸に、僕だけでなく水月と香燐も微妙な表情を見せる。

 蛇に属するあらゆる姿に変態する大蛇丸が、今更どのような姿だと恥ずかしいのか甚だ疑問だ。

 

「大蛇丸…、貴様生きていたのか…」

 

「起きていたのね綱手。 サスケ君が私を復活させてくれたのよ。

 今は彼に協力する事にしているの」

 

「一体何が目的だ」

 

「サスケ君の行く末、それが今の私の興味よ。

 その為にはうちはマダラの望みは邪魔なの。

 だからこの戦争にテコ入れをしようと、死にかけてるみたいだったアナタを助けに来たのだけれど…、もう必要ないみたいね」

 

 大蛇丸から見ても問題無いというところまで治療が終わり、綱手様は自分の足で立ち上がった。

 先ほどまでの状態を考えれば、創造再生の術は改めてとんでもないモノだと思う。

 何せ、高難度だが血継限界ではなく、誰にでも習得可能で僕も習得出来たというところが素晴らしい。

 

「大蛇丸、変わったな」

 

「変わらない物などないわ」

 

「もっと早くそうなっていれば、自来也ももしかしたら…」

 

「そしたらそしたらで、彼も変わっていたかもしれないわね」

 

 今この場に、妙木山で静養している自来也を口寄せしたい衝動に駆られる。

 ペインとの戦いで生き残ったが、片腕を失い怪我の後遺症で碌に戦えないと半ば隠居の様に引きこもったのだ。

 綱手様に生き残ったことを伝えるタイミングを失って、僕やナルトにも口止めをして未だ隠れ潜んでいる。

 知られれば綱手様に殴り殺されかねないというのは同意できるが、大戦開始前に有意義そうに新たなエロ本を書きながら見送られたのはなかなか腹立たしかった。

 

 呼び出しても混乱しか起こらないので自重しようとその葛藤に耐えていると、綱手様が大蛇丸からこちらに意識を向ける。

 

「他の影達の治療は後は私がやっておく。 お前はマダラを追ってくれ。

 火影として情けない話だが、奴と戦えるのはお前くらいしかいない。

 マダラを好きにさせておけば、奴だけで忍連合が壊滅しかねん」

 

「わかりました」

 

 綱手様に後を任せて、現身の術を纏って翼を作り出し飛び上がる準備をする。

 そして戦場の様子を確認しようと、十尾の巨大な仙術チャクラを感じる方を感知した時だった。

 

「!?」

 

「どうした、何があった?」

 

「すいません綱手様! 向こうが拙いようなので急ぎます!」

 

 返事を待たずに飛び上がり、戦場に向けて真っ直ぐ飛んだ。

 同時に感知だけでなく遠視も行い、戦場の状況を直接確認すると予想以上に状況が切迫していた。

 

「なんでマダラがもう十尾の人柱力になってる!?」

 

 見えた戦場ではマダラが既に生き返っており、十尾を取り込み六道仙術を得た姿になっている。

 輪廻眼も片目に収めており、もう片方も半身を真っ黒に染めて動きを封じられているオビトから取り出した所だった。

 

 戦場をチャクラ感知しながら見渡してみれば、巨大な樹の神樹が樹界降誕のように暴れて連合を蹴散らしている。

 穢土転生された歴代火影達も確かにいるが、動きを封じられたり破損しても再生できなかったりと既にやられている。

 そして何より真っ先に感知した、ナルトとサスケのチャクラがとても小さく弱っているのが窮地の証だった。

 

 原作にも覚えのある展開に思えるが、進行が予想していたよりもかなり早い!

 一体何があった!?

 

 一刻の猶予も無いと時間をかけて飛んでいくのを諦め、テレポートで戦場の近くまで転移し一気に距離を短縮する。

 ナルトは九尾を奪われて死にかけているが、クシナが傍に居てミナトが既に九尾の半身のチャクラを入れたのか持ち直そうとしている。

 倒れているサスケにはサクラが駆け付けていたが、治療が思わしくないらしく手を貸した方がいいかもしれない。

 近くにカブトの姿も見えたので、輪廻眼に覚醒させるために柱間細胞をサスケに植え付ける為だろうが、サクラとひと悶着起こしそうなので、フォローの為にも影分身を一体送っておくことにする。

 他にも救援が間に合ってない場所に影分身を落としながら、僕自身はマダラの元へ真っ直ぐ向かう。

 

 だんだんと近付いて来る遠視の先では、輪廻眼を奪われたオビトが放り捨てられ目を納める事で両目を揃えたマダラの姿が見えた。

 十尾も取り込んで正に最強の状態となったと言っていい。

 そんなマダラに対峙しているのは、放り棄てられたオビトを受け止めたカカシにガイとミナトの三人だった。

 そこへ降り立ち、僕もまたマダラと対峙する。

 

「先生!」「ハジメさん!」「ハジメか!」

 

「どうやら遅くなってしまったようだな。

 空から見渡したが、かなり旗色が悪くなってるらしい」

 

 三人を背に睨みつけるが、十尾と両方の輪廻眼を手にしたマダラの圧を強く感じた。

 穢土転生だった時とは比べ物にならない威圧感だ。

 

「来たか中野ハジメ。 封印を破ったのには気づいていたが、ずいぶん遅かったではないか」

 

「お前が暴れ回ったせいでな。 これでも急いできた方だ」

 

「五影共の手当てか。 奴らなど放っておけば、俺が十尾の人柱力になる前に間に合ったかもしれんぞ」

 

「そう言う訳にもいかないからな」

 

 そもそも封印されて時間を稼がれたのは僕の油断からだ。

 

「ガイ、手を出してくれ。 お前の封印にチャクラを補給する」

 

「ですが先生。 マダラを前に余計な消耗をするべきではないのでは?」

 

「余力はまだ十分残っている。 お前という戦力の期待もあるが、それよりも何があったのかお前の中の僕のチャクラと繋いで情報の共有がしたい」

 

「わかりました」

 

 手を繋いでガイの中に封印した僕のチャクラと繋ぐ。

 ガイの中に封印した僕のチャクラは影分身の様に意思を残しているが、通常の影分身と違い独立しており、封印された分のチャクラを使い切れば消えてしまう存在だ。

 だがこのようにチャクラを繋げば供給も出来るし、同時に影分身の様に蓄積した経験も還元することが出来る。

 ガイの中の僕のチャクラが見聞きした情報を共有し、頭を抱えたくなった。

 

 

 

 ガイの中からの視点だけでは憶測もあったが、知りたかった大よその事態は把握出来ていた。

 

 事態は十尾の封印が解かれたところからだ。

 原作通りナルトが九尾化し尾獣達のチャクラを受け取って、穢土転生の人柱力を倒した事でオビトが十尾の復活に踏み切った。

 ガイは尾獣との戦闘で、僕のチャクラを使う事で完全な八門遁甲の陣の様な戦いぶりを見せ、かなり優位に進んでいた。

 十尾復活の過程でオビトの正体が明かされたが、それはまあどうでもいい。

 

 そこから十尾の猛威を八尾と九尾がメインに掻い潜り、忍連合の応援と歴代火影を連れたサスケが参戦した。

 同時期にマダラも到着し、初代火影柱間が応戦する事で、残りが十尾を総力で倒そうと奮闘した。

 十尾の力は強大だが、皆が力を併せて戦う事で優位に進んでいたところで、突如戦っている最中の十尾が消えて事態が急変した。

 

 十尾は消滅した訳ではなく煙を起こして姿を消し、ガイたちが戦っていた場所とは少し離れた場所へ姿を現した。

 現れた場所はマダラと柱間が戦っている場所で、それを察知した主力組は直ぐにミナトと二代目扉間の飛雷神の術で十尾の後を追った。

 カカシは丁度オビトと共に神威の異空間に消えていたのでそこで別れている。

 

 十尾を追った先でガイ達が最初に見たのは、柱間を六道の黒棒で封じ込めている蘇生して片目に輪廻眼を納めたマダラの姿だった。

 それにはガイの中の分身の僕も驚いていた。 原作では輪廻眼の蘇生術でマダラを復活させるのは体を黒ゼツに操られたオビトだったはずだからだ。

 だがマダラが復活しているのはどうしてかと、分身は状況を把握する事で答えを導き出した。

 

 復活したマダラの傍には動けない柱間だけでなく、木人を操る白ゼツ・グルグルと干乾びた白ゼツを持った黒ゼツの姿があった。

 直後放り捨てられた白ゼツの眼は片目が無くなっており、分身はこの白ゼツがもう片方の輪廻眼を使って蘇生術を使ったのだと判断した。

 蘇生したマダラは輪廻眼までは再生出来ず一時的に両目を失う事になるが、白ゼツから輪廻眼を移し替える隙を補うためにグルグルが時間稼ぎの為に現れた。

 そして輪廻眼を片目でも取り戻したマダラは柱間でも止められず無力化され、外道魔像が口寄せ出来たように輪廻眼の力で十尾は口寄せされる事で戦場を移動した。

 

 そこからはマダラの独壇場だった。

 

 十尾の配置が代わったことで、忍連合は再度陣形を組み直さなければ力を発揮出来ず直ぐには動けなかった。

 故にナルト達やガイなどの実力のある忍と歴代火影のみでマダラと十尾に攻撃を仕掛けるが、マダラの操る十尾が外道魔像だった時の尾獣を縛る鎖を出したことでナルトとビーは動きを封じられる。

 残りがマダラを狙うが、白ゼツ・グルグルも立ちはだかり攻め切れない。

 蘇生したことで真の輪廻眼の力を使うマダラに忍術は効かず、近付いても神羅天征や目に見えない謎の攻撃で吹き飛ばされまともに近づけない。

 恐らく見えない攻撃はマダラのみが使える輪廻眼の瞳術、輪墓・辺獄だろうと当たりをつける。

 

 白ゼツ・グルグルも柱間には劣るが同様に木遁の木人で攻撃を仕掛けてくるために、マダラだけを警戒してばかりもいられない。

 そうしている間に尾獣を縛る鎖が、ナルトとビーから九尾と八尾を引き抜いてしまった。

 

 ガイの中のチャクラの僕はナルトを救うために、クシナと共にミナトを呼び戻して戦線を離脱することにした。

 ミナトの中の九尾をナルトに入れる際に黒ゼツの横槍を警戒して、ガイに護衛するように言った。

 そこから先は一時戦線を離脱したのでわからないが、マダラは十尾を取り込み歴代火影も敗れ残ったサスケも返り討ちにあったらしい。

 更に神樹も出現して忍連合がその猛威に晒されているのを、ガイが遠目で捉えていた。

 

 九尾の半身は無事にナルトに入れる事に成功したが目を覚まさず、十尾から一尾と八尾のチャクラを手に入れなければならない事を分身の僕も思い出す。

 その為にはやはり先ずはマダラをどうにかしなければと、ナルトの事をクシナに任せてガイとミナトは戦場に戻った。

 そこではオビトが半身を黒く染められマダラに拘束されており、更に満身創痍のカカシも神威でその場に姿を現した。

 

 半身を黒く染められた事で物体透過の力を持つ神威を封じられているようだが、オビトはそれでも拘束を逃れようと抵抗していた。

 マダラはカカシに貫かせたのだろう胸の風穴を見て、オビトがマダラに協力して無限月読を行なう事を決めたリンの死の真相を語った。

 全てはオビトをマダラ側に引き込むために絶望させる為の策謀だと語られ、オビトはショックで抵抗する気力を失い、同じチームだったカカシとミナトもマダラに憤りを覚える。

 直情的なガイが非難するが、マダラは気にすることなく抵抗をやめたオビトから輪廻眼を奪った。

 

 

 

 ここでようやく僕が到着し、状況整理が終了する。

 原作よりもいろいろ数段飛ばしに展開が進んでしまっている。

 ナルトとサスケが復帰するのにもまだ時間が掛かりそうだし、この展開だとガイが八門遁甲を使う直前だったんじゃないか?

 マンガだと一番の見せ場だが、実際に使わせる気はなかったのでそれはぎりぎり間に合ったと言える。

 

 おそらく原作の中で最も強い存在。

 輪廻眼を両目に宿し六道仙術を得たマダラを前に、主人公たちの登場を待たなければならない。

 

「全く厄介な…」

 

 そう言いながら最強となったマダラと戦う覚悟を決めた。

 

 

 

 

 

 

 




 ナルトとサスケを瀕死にしながらマダラを最終形態に持っていく展開の再構成は大変でした。
 マンガを見直せばわかると思いますが、オビトに一度十尾を封印してから引っこ抜いて蘇生して再度十尾を封印するなんて、マダラの立場なら行き当たりばったりで舐めプにも見える隙だらけの展開戦略。
 故にハジメの存在がマダラの余裕を奪って、さっさと蘇生して十尾の人柱力化を行なうと言う展開にした場合の再構成が大変でした
 原作に近い展開に行きつくための戦闘の流れを不自然でないように組み立てるのは一苦労です。

 うまくナルトとサスケを六道仙術と輪廻写輪眼に覚醒させないといけないので、原作を維持したままの二次創作というのは難しいですね

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