四次元ポケットと異世界漫遊記   作:ルルイ

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第十六話

 

 

 

 

 

 これから全員でマダラに挑むというところで、カカシが両目に写輪眼を宿して戻ってきた。

 カカシの状況は影分身からの情報ですべて把握出来ている。

 両目の神威がカカシにあるのなら、求道玉に対してもかなり有効な手段となる。

 

「マダラの下半身の再生も直ぐに終わる。

 それまでに作戦を立てて全員で攻めるぞ」

 

「十尾の人柱力だからって、いったいどういう体をしてるんだ奴は?」

 

 下半身がうにょうにょと生えてくるマダラを見て、呟いたガイだけでなくミナトとカカシも少し慄いている。

 

「気にしても仕方ない。 ガイ、お前は僕と一緒にオフェンスだ。

 戦い方は見ていたからわかるな」

 

「奴の見えない分身を攪乱しながら耐えて夕象で攻撃ですね」

 

「それとこのチャクラも受け取っておけ」

 

 ガイに拳を突き出して示すと、ガイも理解して拳を合わせる。

 合わせた拳から穆王に練り上げてもらった沸遁チャクラがガイに流れ込み、その中の僕の意志がしっかりと受け取った。

 

「これでガイも沸遁・怪力無双が使えるはずだ。

 体内発動の術だからそれだけのチャクラでも長持ちする筈だ」

 

「しかし、先生のチャクラは…」

 

「まだ大丈夫だ」

 

「…流石です先生」

 

 先ほどもチャクラの受け渡しをしているので、まだ尽きない事にガイも少し呆れているみたいだ。

 

「ガイは僕と連携してオフェンスだ。 ガイもほぼ同じ術を使える状態だが、創造再生までは僕の分身の補佐があっても使うのは難しい。

 体内からの治癒活性が限界だから、治癒の追い付かない体の限界を見極めながら戦え」

 

「わかりました」

 

 ガイは貸し与えた術ゆえに性能は僕に劣るが、体術のキレなら確実に僕より上だ。

 輪墓が見えなくても二人掛かりならさらに優位に運べる。

 

「ミナトとカカシはサポートだ。 飛雷神と神威の時空間忍術なら今のマダラにも十分有効だ」

 

「わかった。 だがさっきの空中の高速戦闘にはオレも流石についていけない」

 

「だから少し工夫がいる」

 

 僕は飛雷神の応用方法を提案し、ミナトが出来ると聞いて準備を整えた。

 

 

 

 作戦の相談を終えて、僕とガイが並んで前に出る。

 相談の間にマダラは下半身を完全に再生させて万端で待ち構えていた。

 

「待っているとはずいぶん余裕だな」

 

「俺も体が不完全な状態で貴様と十全に戦えると思ってはいない。 こちらから攻撃すれば貴様は即座に対応しただろう。

 まさか輪廻眼と六道仙術を揃えた今の俺に警戒させるなど、このワクワクは生前の柱間以来だ」

 

「その余裕もそこまでだ。 今度は俺と先生の二人掛かりで行かせてもらう」

 

「行くぞガイ!」

 

 僕とガイは沸遁の混ざった八門遁甲・第七門の青い蒸気を噴出させて駆け出す。

 真正面から突っ込んでも輪墓のマダラが確実にいるので、マダラの周囲を残像拳を残しながら駆け回る。

 マダラは輪廻眼を凝らして僕等の動きを追っているが、その場からは動かない。

 

「「夕象!」」

 

 僕とガイの空気砲が別方向からマダラに向かうが、マダラは即座に反応して求道玉を変形させて壁にし空気砲から防御する。

 更に防御した直後に飛び上がって空気砲の射線から退避する。

 その場に居れば先ほどのように空気砲で動きを封じられると分かっているからだろう。

 

 僕等は続けて夕象の空気砲を放つが、求道玉で防御し或いは回避して動き回り動きを封じられないように徹底している。

 先ほどと同じでは通用しないと次の手に移る。

 

「ガイ、残像拳で行くぞ!」

 

「はい!」

 

 夕象の空気砲を飛ばさず、僕はマダラに真っ直ぐ突っ込んでいく。

 当然マダラは直線的な動きなど容易に対応、求道玉の錫杖を振るうが、消えるのは僕の残像だけ。

 僕自身はマダラの攻撃範囲に入る前に別方向に軌道を変えている。

 

「ッ! さっきの技か!?」

 

 続いてガイが向かっていきマダラは反応して攻撃するが、それもまた残像。

 残像に気付けばすぐに本体僕等にマダラは視線を戻すが、残像拳を使った直後であれば僅かな間僕等を見失っている。

 それは致命的な隙となる。

 

 

――夕象――

 

 

「ガハッ!」

 

 マダラが錫杖を振りぬいて残像を消す隙を突いて懐に入り込み、空気砲ではない直接の打撃を叩き込む。

 

「はぁっ!」

 

「ゴハッ!」

 

 一撃で吹き飛んだマダラの飛ぶ先にガイが先回りし、無防備になったその体に追撃の一撃を食らわせた。

 再び吹き飛んだ先に僕が回り込み殴り飛ばし、その先でガイが回り込んで殴り飛ばすのを繰り返す。

 マダラはピンボールの球のように飛び回り翻弄されている。

 

 夕象の攻撃は段階的に速度を上げて威力を高めていく連続攻撃。

 マダラは殴り飛ばされるたびに威力は上がっていく。

 僕とガイの二人掛かりの夕象で普通の人間ならとっくにミンチになってる攻撃を、マダラは耐えている。

 まさかこのまま翻弄されるだけかと頭に過った所で、マダラを殴り飛ばした直後に僕の体が急に動かなくなる。

 

「これは、輪墓か!」

 

「俺がやられるばかりと思うな!」

 

 吹き飛びながらマダラは僕に向かって求道玉を三つ射出してくる。

 飛ばす程度の速度なら容易に避けられるが、先ほど殴った輪墓マダラが押さえているのか体を動かせない。

 今の身体能力ならマダラの輪墓であっても力ずくで拘束を破れるが、その僅かな間に求道玉が到達する。

 ピンチではあるが、マダラから離れた求道玉は同時にチャンスでもあった。

 

「ミナト!」

 

「わかった!」

 

 ミナトが僕にされたマーキングを目印に飛雷神で飛んでくる。

 

「無駄だ! 求道玉は穢土転生だろうと破壊する!」

 

「それは百も承知だよ」

 

 狙いは僕の壁になる事じゃない。 ミナトは飛雷神の苦無を両手に構えて、求道玉に対して斬り払った。

 飛雷神の苦無は触れた所を僅かに削り取られるが、その一瞬でミナトは求道玉をどこかへと飛ばした。

 

「求道玉を時空間忍術で飛ばしただと!? ガッ!」

 

「四代目とカカシの時空間忍術なら、その黒い球にも有効という事だ!」

 

 マダラの反撃している間も夕象の攻撃は続いており、ガイが再び殴り飛ばす。

 飛ばされた先に先回りしたいが、僕はまだ拘束されたままなので動けないのだ。

 

「ガイ、夕象でマダラを縛れ! ミナト、飛んでくれ!」

 

 こっちがまだ動けないのでマダラを抑えるようにガイに指示し、飛雷神でこの拘束を抜ける様にミナトに言う。

 目の前で求道玉を飛ばしたミナトが答えるより前に僕は飛雷神で飛ばされ、マーキングされたガイの傍へと移動していた。

 ガイは僕の指示に従って移動しており、直ぐに傍から離れていく。

 

「助かった、ミナト」

 

 僕は懐の飛雷神の苦無に向かってそう言い、マダラと戦っているガイの後をすぐに追う。

 

 懐の飛雷神の苦無はミナトの影分身が変化したものだ。

 飛雷神の術の条件はマーキングした場所へであれば、ミナトは意志一つで発動して何時でも飛べる。

 他者が同行する場合は、ミナトとチャクラで接触している必要がある。

 ならば武具などに変化したミナトの影分身を所持していれば、何時でも飛雷神で飛ばしてもらえるのではないかと緊急回避手段としてミナトに提案していた。

 

 ガイとカカシにもミナトの影分身が変化した苦無を持っており、いつでもミナトの意志でお互いの場所に飛ぶことが出来る。

 この手段なら連携にも緊急回避にも応用が出来る。

 僕もミナトに飛雷神を習っているが、戦闘時に自在に使えるほど使いこなせなかった。

 より使い慣れているテレポートなら戦闘でも使えるが、そう言う訳にもいかない。

 

 ガイの夕象によるマダラの拘束に参戦し、空気砲をいくつもの方向から放って動きを封じる。

 

「今だ、カカシ!」

 

「はい!」

 

 

――神威――

 

 

 ミナトの飛雷神で僕の傍に飛んできて、オビトから譲り受けた神威を発動する。

 両目に万華鏡写輪眼が揃った頃で神威の発動速度は格段に上がり、カカシの視線の先がゆがんで対象を異空間へ飛ばす。

 対象はマダラ――――ではなくその周囲に浮かぶ求道玉。

 

「求道玉が狙いかぁ!!」

 

「その球は厄介だ。 先に無力化させてもらう!」

 

 神威の空間の歪みは求道玉を二つ巻き込んで異空間へと飛ばした。

 これにマダラ自身を巻き込むわけにはいかない。

 神威はあくまで異空間に対象を飛ばすだけ。

 マダラ自身が生きたまま神威の空間に飛べば、おそらくその空間を破壊しようとするだろう。

 

 十尾の力を持つマダラが暴れれば神威の空間でも耐えられるとは思えない。

 どのような影響が出るか分からないので、カカシにはマダラ本人を飛ばさないように注意してある。

 

 先ほどの飛雷神と合わせて、マダラの持つ求道玉の数はさらに減る。

 数を直ぐに元に戻そうとしないあたり、やはり容易には求道玉を新たに作り出せないらしい。

 時間をかければ生み出せるかもしれないが、一度無力化することが出来れば何とかなりそうだ。

 

 カカシは更に続けて求道玉を飛ばそうと別の求道玉に狙いを定め、僕とガイはマダラを押さえ続けるために夕象の空気砲を続けて打ちにいく。

 

「このマダラを舐めるな!」

 

 

――天道・神羅天征――

 

 

 マダラが両腕を広げると神羅天征を発動し、強力な斥力が発生する。

 それも一方向ではなく、ペインが木の葉隠れを吹き飛ばした時の様な全方位に放つ強力な斥力だ。

 木の葉隠れを吹き飛ばした時の様な威力ではないが、それでもマダラを押さえていた空気砲は吹き飛び、近くにいた僕らも全員吹き飛ばされる。

 

 僕は空中で体勢を立て直し確認すると、ガイも態勢を整えて着地しており、ミナトは地に打ちつけられたようだが穢土転生の体ゆえに問題無い。

 カカシはなんと須佐能乎の第一段階の骸骨を纏って身を守っていた。

 原作と条件は違って実際に写輪眼を両目に収めているが、オビトのチャクラを貰って須佐能乎にも覚醒していたらしい。

 

「みんな無事か?」

 

「俺は大丈夫です、先生」

 

「俺も大丈夫です。 カカシ、それは須佐能乎という奴か」

 

「ああ、オビトが残してくれたものだ」

 

「全員問題無いな」

 

 一端態勢を整えるために一か所に集まる。

 マダラも夕象のダメージと強力な神羅天征を使ったことで息を切らしているが、十尾の無尽蔵な力なら直ぐに回復するだろう。

 堪えた様子の無いこちらを見て忌々しそうに睨んでいる。

 

「やってくれる! まさか六道の力である求道玉を無効化するとはな」

 

「形ある塵遁のようなそれは、体術で戦う上では一番厄介だからな。

 ミナトとカカシがいてくれて助かったよ」

 

 二人のサポートを称賛し、この世界で最強の忍術は六道の術じゃなくて時空間忍術だと本気で思う。

 

「マダラ、これまでの攻防でわかったことがある。

 その輪廻眼は写輪眼の進化系の様だが、写輪眼としての力は失われてるな」

 

「そうなのか、ガイ?」

 

 ガイがマダラの輪廻眼の在りように気付き、カカシがそれを問う。

 

「ああ。 お前とのこれまでの対決で、写輪眼の事は俺もよく知っている。

 基本となる写輪眼は幻術と洞察力に特化した瞳術だ。

 万華鏡写輪眼になれば千差万別な瞳術が目覚めるようだが、本来は体術使いの天敵のような能力だ」

 

「あのね、体術使いのお前に負け越している俺の前で言っちゃう、それ?」

 

「そういうな。 天才な上に写輪眼まで手にしたお前に勝てるようになるのはだいぶかかった。

 写輪眼に体術で勝つことに関しては、俺が誰よりも知っているつもりだ」

 

「何せうちは最強と言われたマダラを殴り飛ばせるくらいだからねぇ」

 

 自身が勝てないほど強くなったガイに、面白くないように言いつつも認めている様子のカカシ。

 

「だからこそ、その輪廻眼の動きが写輪眼の相手を見る目と違っているのはよくわかる。

 その輪廻眼も並の眼よりは見切る力はあるのだろうが、うちは最強と言われたマダラの写輪眼としては明らかに洞察力が低い。

 もし本来の写輪眼ならもう少し攻めるのが梃子摺っている筈だ」

 

 写輪眼を持つ相手に体術を仕掛けた事は無かったからわからなかったが、カカシと対決してきたガイが言うならそうなのだろう。

 マダラの輪廻眼が写輪眼としての力を失っているなら、いくつか納得いくこともある。

 

「なるほど。 だからマダラ、お前は万華鏡写輪眼の瞳術を使ってこなかったのか」

 

「どういう事だ、ハジメ? あの見えない分身がマダラの固有瞳術じゃないのか?」

 

「あれはおそらく輪廻眼としての固有瞳術だ。

 マダラの輪廻眼は奴が死んでる間オビトやペインの眼に収まっていたが、あの能力を使っているところはなかった。

 万華鏡写輪眼の瞳術は他者の眼に移植しても使える事はカカシが証明済みだ。

 ならば輪廻眼は写輪眼から進化したのではなく、異なるものに変異したと考えるのが正しいだろう」

 

 サスケが開眼する輪廻写輪眼という物があるからには、輪廻眼と写輪眼は区別されていると見るべきだ。

 輪廻写輪眼に至ってようやく両方の瞳術が使えるのだろう。

 そういう意味では輪廻眼でもまだ不完全なものだと言えるかもしれない。

 

「なるほど、最強の瞳術と言われた輪廻眼にも欠点があった訳だ」

 

「…確かに輪廻眼となったことで写輪眼だった時の力は失われている。

 だがこの輪廻眼は写輪眼をはるかに超えた瞳力を宿している。

 写輪眼の力を失っても余りある力だ!」

 

「確かに強い力だが、それも絶対じゃない。

 現にオレ達四人を相手に劣勢に立たされている」

 

「粋がるなよ、若造共が…」

 

 ミナトの言ったことにマダラは腹立たしそうに悪態をつく。

 生き返って若々しい姿をしているが、実際には長い年月を生き老成しており、僕等を若造と言っても仕方ない年齢差がある。

 経験値で言えば、僕は実際に何年生きてるか分からないんだけどね。

 

「欠点は輪廻眼だけじゃないだろう?

 十尾の人柱力になったデメリットがあるんじゃないか?」

 

「なに?」

 

「須佐能乎はどうした。 なぜあの攻防一体の強力な術を使ってこない」

 

「………」

 

 前の戦いであれほど猛威を振るった須佐能乎を、マダラは夕象で幾度となく殴られていながら全く展開しようとしない。

 求道玉の守りと六道仙術の回復力があると言っても、急所にダメージを受ければ致命傷になる事に変わりない。

 それでも身を守ろうと展開しないのは、おそらく展開出来なくなっているのだ。

 

「ハジメさん、須佐能乎も万華鏡写輪眼の瞳術では?」

 

 逆に須佐能乎を使えるようになったカカシが聞いてくる。

 

「そうとも言い切れない。 開眼すれば千差万別の瞳術が得られる万華鏡写輪眼だが、須佐能乎だけは共通して両目を開眼した者に発現する。

 その力は尾獣にも匹敵し、瞳術と呼ぶには少々異質な力だ。

 関連性はあるだろうが、実際には瞳術とは別物なんじゃないかと僕は思ってる」

 

 何せ原作でマダラが両目を失った状態で須佐能乎を使った時は、なんで使えるんだと驚いた記憶がある。

 ここではそういう事実はなかったから説明のしようが無いが、須佐能乎は万華鏡写輪眼の開眼の際に覚醒する別の能力と考えるべきだ。

 

 そもそも写輪眼は大本を辿ればインドラ、六道仙人、大筒木カグヤ、そして十尾にたどり着く。

 写輪眼が本来十尾の物という事は、須佐能乎は写輪眼の系譜に残った十尾の名残、影のようなものではないかと僕は思っている。

 姿はまるで違うが元が尾獣の名残だとすれば、呼び起されたその力が尾獣に匹敵するのは何も可笑しくない。

 

 そして今マダラの中にあるのは名残ではなく本物の十尾。

 名残は実像に上書きされ、須佐能乎は十尾と重なり合って別の術として使うことが出来なくなったのではないか。

 

 十尾を操れているなら須佐能乎の時の様にと思うが、輪廻眼で完全に十尾を操り切れるかというのも疑問だ。

 輪廻眼も本来は十尾の物なのに、分かたれた力の断片であるマダラの輪廻眼だけで、どうして完全に操れると言い切れよう。

 マダラの輪廻眼で十尾を封印前からある程度操れているのは、おそらく十尾が意思のない本能だけの存在だからこそ、同じ輪廻眼の繋がりから操ることが出来ているのだろう。

 他の尾獣のように明確な意思があれば容易にはいかない筈だ。

 

 十尾の人柱力化は力をある程度制御できる輪廻眼も必要ではあるが、ナルト達のような他の人柱力と変わらないリスクもおそらく持っている。

 断片的にであればリスクも少なく尾獣の力を引き出せるが、全ての力を使うには尾獣自身の協力を得る必要がある。

 しかし十尾には意思がないゆえに輪廻眼での制御は出来るが、意思がないゆえに人柱力と尾獣の共闘も出来ない。

 

 すなわちマダラでも十尾の力を完全に引き出す事は出来ず、おそらく尾獣化をすれば操り切れなくなる。

 須佐能乎を使えば尾獣化の引き金になりかねず、そうなればマダラは十尾の巨大な力に激流に流されるかのように飲み込まれるだろう。

 もしかしたらカグヤの覚醒に繋がるのかもしれない。

 

 

 そう考察しているがまだ明らかになっていない事も多いので説明は出来ない。

 しかしマダラの反応から須佐能乎が使えないのは確信出来るので、説明出来ずとも今は問題ない。

 須佐能乎が無くても求道玉は厄介だが、僕等の体術とミナト達のサポートがあれば今のマダラの方が相性がいい。

 

「…その通りだ。 確かに今の俺は十尾を宿したことで須佐能乎が使えなくなっている。

 六道仙人と同じ力を得られるならば惜しくないと思っていたがうまくいかんものだ。

 これほど強大な力を得てなお、食い下がるどころか俺を追い詰めようとしている。

 認めてやる! 貴様らは柱間を超える俺の最大の障害となった!

 もはや出し惜しみはせん! この俺の全ての力を持って貴様らを葬ってくれる!」

 

 そう啖呵を切ったマダラは印を組み術を発動する。

 

 

――木遁・花樹界降臨――

 

 

 周囲の木遁の巨大な木々がうねりながら押し寄せ、更に巨大な花も咲き乱れる。

 

「ッ! 気をつけろ! 花の花粉を吸うなよ!

 あれは麻痺性の毒がある!」

 

 樹の波を回避しながら散開し、息を止める。

 穢土転生の体のミナトはともかく、僕達三人は花粉を警戒しないといけない。

 夕象の拳圧で花粉を吹き飛ばし、息をつきながら声を上げる。

 

「ガイ、花粉を出す花を潰しながら戦え!

 カカシ、お前は神威で異空間に退避しながら息継ぎをして戦え!

 ミナトは穢土転生なら大丈夫だろうからサポートを続行!」

 

「わかりました!」

 

「了解」

 

「わかった!」

 

 指示を出した直後にマダラが攻撃を仕掛けてきたので、動きを見切り反撃の一撃を加える。

 あっさり決まったことに呆気にとられた直後、マダラは木に代わり木分身であったことに気付く。

 

「マダラが木分身を放った! 注意しろ!」

 

 警戒を促した直後、複数のマダラが囲い込むように攻撃を仕掛けてくる。

 霊視から魂が見えずすべて木分身と判り、最小威力の夕象を連打してすべて迎撃するが、混ざっていた輪墓の攻撃を受けて吹き飛ばされる。

 

 体勢を立て直しつつダメージを回復していると、再び木分身が囲い込むように再び襲い掛かってくる。

 異空間に退避したカカシはともかく、ガイとミナトの方にも木分身が向かっていってる。

 

「なりふり構わなくなってきたな! それだけ追い詰めたという事か。

 だが、こっちも簡単にやられる訳にはいかないんだよ!」

 

 影分身を出して周りやガイとミナトを狙う木分身の迎撃に出す。

 反動のある八門遁甲等は影分身には使えないので未強化の状態だが、木分身相手なら多少は持つ。

 僕自身も木分身を倒しながら、本体のマダラを狙う。

 ガイも僕の分身のサポートでマダラの本体が解るはずだ。

 

 輪廻眼や六道の術だけでなく持ちうる数多の術を使い始めた事で、マダラとの戦いはより激しい乱戦状態になった。

 

 

 

 

 

 こちらを攪乱するように分身や広範囲の術を使う事によってこちらは攻め辛くなったが、僕等の体術の速度と時空間忍術によるサポートを封じ込められるものではなった。

 求道玉や強力な仙術を使うマダラの攻撃に防御手段の無い僕とガイは一切油断は出来なかったが、それを掻い潜り夕象の攻撃に神威と飛雷神でマダラに肉薄し続けた。

 

 カカシの須佐能乎が完成体となって花樹界降臨を斬り飛ばし、ミナトがマーキングを各所に設置しマダラの不意を突く形で僕達を近くに飛ばして攻撃のサポートを行なう。

 マダラは時空間忍術を警戒して求道玉を自身の近くから離す事はなくなったが、攻撃するふりをして求道玉を仙術チャクラを纏った足で蹴り飛ばした隙にミナトが飛ばしたり、カカシの神威を込めた雷切でマダラの腕ごと錫杖を消し飛ばすなどして求道玉を減らしていった。

 

「お、おのれぇ………」

 

 そして現在、マダラの背に浮かぶ求道玉は一つもなくなり、手に持つ錫杖だけが最後の求道玉だった。

 十尾を宿す故にその力はまだまだ健在だが、追い込まれている状況からマダラは確かに息を切らせていた。

 

「あの厄介な球もあと一つだ」

 

「もう一息だけど俺も限界が近いですよ。 もう須佐能乎を維持する余力はあまり残ってません」

 

「もう少し耐えろカカシ。 最後の一つを消せば俺と先生の夕象に耐える手段はなくなる」

 

「心臓にも夕象の一撃を叩き込んだが死ぬことは無かった。

 マダラに止めを刺すには、致命傷だけは避けているあの頭をかち割ればいいみたいだな」

 

 ミナト、カカシ、ガイ、僕は消耗しながらも、求道玉もあと一つという状況に余裕はあった。

 

 幾度も夕象の一撃を直接与えているが、マダラは頭部だけは直撃を回避していた。

 やはり頭までは回復出来ないみたいでマダラを完全に追い詰めつつあり、このまま倒してしまいそうになっていた。

 それに気づいて僕は逆に焦り始めている。

 このままカグヤが出てこずに倒してしまっていいのかと。

 

 戦いは長引いているがナルトもサスケもまだ戦場に戻ってこない。

 カグヤが復活したら彼らに任せるつもりだったが、それは一種の賭けになる。

 状況は原作と違い、万一に負ける可能性があるならここでマダラを倒してカグヤ復活を阻止するのもいいのではないか。

 

 大筒木一族の存在が明らかにされないのは不安要素だが、サスケの輪廻眼の開眼条件は既に満たしているから、それを切っ掛けに対策はとれない事もない。

 遠視で確認してみるとナルトとサスケがようやく目覚めたのを確認できた。

 せっかく力に目覚めた所で悪い気がするが、ここは別に僕達で倒してしまっても構わんだろうという事だろうか?

 

「よし、もう一息だ。 全員最後まで気を抜くな」

 

 僕がこの場で決着を着けると言い、三人が頷いたところで再度仕掛けようとした時だ。

 

 

――ドドドドドド!――

 

 

 背後で音が鳴り振り向くと、見覚えのある木遁の木々の津波が押し寄せて来ていた。

 既に見慣れたもので全員余裕で回避するが、前方にいたマダラを見逃していないのに後方から木遁・樹界降誕が押し寄せてきた事を疑問に思う。

 更に樹界降誕の中から巨大な木人が立ち上がりこちらに攻撃を仕掛けてくる。

 その木人の肩には渦を巻いた仮面をした白ゼツ・グルグルが立っている。

 

「これ以上はやらせないよぉ」

 

「マダラの援護か」

 

 マダラの方に視線を戻すと傍に黒ゼツが現れて何かを話している。

 

「何をする気だ?」

 

「ハジメ!」

 

 ミナトの声で振り向くと木人のチャクラが高まって、その背から無数の手が出現しこちらに攻撃を仕掛けてくる。

 それを僕とガイは、夕象の空気砲で纏めて破壊し吹き飛ばしていく。

 

「ガイ、速攻で片づけるぞ!」

 

「はい!」

 

 降り注ぐ木人の掌底を回避し迎撃しながら駆け上がり、木人の首元までたどり着く。

 木人の仏像の顔から五遁の攻撃が一斉に飛んでくるが、夕象の一撃で纏めて吹き飛ばす。

 僕が障害を排除したところをガイが滑り込み、肩に居たグルグルの顔に拳を叩き込んだ。

 

「ブベッ」

 

「お、お前はヤマト!」

 

 渦を巻いていた仮面が砕けて、その顔を見たガイがグルグルの中身に気付く。

 そういえばヤマトが憑りつかれて操られてたんだと思い出す。

 

 ヤマトに取り付いたグルグルは健在の様で、殴られて吹き飛ばされながらも体を操って印を組み、代わりに木人の肩に立ったガイに木遁を這わして拘束した。

 すぐに抜け出すだろうが動けないガイの代わりにヤマトを追い、ミナトを呼ぶ。

 

「ミナト! ヤマトは操られてる!

 取り押さえる暇はないから、遠くに飛ばせ!」

 

「わかった!」

 

 ヤマトに接近していた僕の傍にミナトは現れ、グルグルは抵抗する間もなく飛雷神の術で飛ばされた。

 

「マダラは!?」

 

「あっちに行きました!」

 

 カカシが示した先には確かにマダラの隠しきれない十尾のチャクラを感じる。

 だがマダラの向かった方角には………まさか!

 

「カカシ、あっちは確か!」

 

「忍連合があの巨大な樹と戦っているはずです。

 忍連合を巻き込んで乱戦に持ち込む気でしょうか?」

 

 違う! おそらくマダラの狙いは呼び出していた神樹そのものだ!

 原作で追い詰められた時と同じように、神樹を取り込んで無限月読を強行する気か!

 

「ミナト、あっちにマーキングは!?」

 

「すまない、あっちには残してなかった」

 

「ガイ、直ぐに追いかけるぞ! 二人は後から僕等を目印に飛んで来てくれ!」

 

 返事も効かず、急いで宙を駆けてマダラを追いかける。

 グルグルに僅かに時間を取られた間に、マダラにはだいぶ距離を取られ神樹の近くまでいっている。

 僕とガイの空を駆ける速さは脚力のおかげでマダラが空を飛ぶより早いが、それでも神樹にマダラが到達するまでには追い付かなかった。

 

 マダラが神樹に触れた瞬間、十尾がマダラに取り込まれた時の様にその体に吸い込まれるように消えた。

 巨大な樹がマダラの体に取り込まれた事で、戦っていた忍連合は呆然としている。

 

「先生、あの巨大な樹がマダラに!」

 

「何かやらかす気だ。 とりあえず止めるぞ!」

 

 マダラに近づき再び夕象で動きを封じようとする。

 

「口惜しいがこれ以上貴様らの相手は出来ん。

 我が悲願を果たさせてもらうぞ」

 

 

――天碍震星――

 

 

 マダラの頭上に巨石が突如出現し、重力に従って真っすぐ降ってくる。

 

「拙い! 下には忍連合の皆が!」

 

「くそっ! 粉砕するぞ、ガイ!」

 

 明らかに時間稼ぎだが見捨てる訳にもいかず、夕象で巨石を打ち砕く。

 輪廻眼の術で生み出した物とはいえただの岩に過ぎず、巨石は簡単に砕け拳圧によって吹き飛んだ。

 だが巨石の向こうでは無数のマダラの木分身が控えていた。

 

「木分身は空を飛べたか。 本体はどいつだ?」

 

「本体は更に上だ。 …っておい」

 

 たった今粉砕して落ちていった巨石の残骸が逆戻りするかのように、今度は下から岩石や土が空へ向かって浮かび上がっていく。

 それが上空で新たな巨石の塊をいくつも作り出し、先ほどよりも数を増やしより厄介になって降ってくる様に思えた。

 

 木分身の妨害を掻い潜り降り注ぐ複数の巨石を排除して、無限月読を発動させる前にマダラに追いつかねばならない。

 

「これはちょっと無理かなー」

 

「何を言ってるんです先生!? これを何とかしないと下の皆が危険です!」

 

「わかってる! 時間が無い、一秒でも早く全部吹き飛ばすぞ!」

 

 どのみち、巨石は排除しない訳にはいかないのだ。

 上空の遥か彼方に真ん丸とした月が見えてしまっているのが危機感をより際立たせているが、愚痴を言っている暇もない。

 空中で足を踏みしめ、木分身を蹴散らしながら複数の巨石に夕象を大急ぎでたたき込み続けた。

 

 ガイと二人掛かりであっても巨石をすべて排除するには僅かに時間を取られ、全てが片付いた頃には、月に輪廻写輪眼の文様が浮かび上がり始めた。

 頭上に見える月の傍にマダラの浮かんでいる姿も見えた。

 

「間に合わなかったか!」

 

「なんだあれは…」

 

 ガイも月の異様な姿に呆然としているが、説明している暇はない。

 

「下に降りるぞ! ミナト、僕等を全員同じ場所へ!」

 

 飛雷神の苦無となっているミナトに呼びかけ、飛雷神の術で僕とガイをミナトたちのいる場所に飛ばしてもらう。

 空中で巨石を破壊する作業にはミナトとカカシも参戦は出来ず、地上で様子を窺っていたらしく、飛んできた僕達に直ぐに気付いた。

 

「ハジメ、マダラは!?」

 

「説明してる時間が無い! カカシ、僕ら全員を異空間へ入れてくれ!」

 

「え?」

 

「早く! 無限月読が発動する!」

 

 突然の要求にカカシは一瞬困惑したが、次の催促で即座に神威を発動し僕ら四人を異空間へと取り込んだ。

 異空間に飲み込まれる前に遠視を使って周囲を見渡して状況を確認しておく。

 そして僕等が神威の空間の歪みに飲み込まれた直後に、月からの光が世界の全てを照らした。

 

 

 

 

 




 マダラの欠点は独自解釈したものです。
 実際には使えた可能性もありますが、原作ではなぜか六道マダラになった後は須佐能乎を使う様子が無かったのでそういう事にしました。
 強くなったのに逆に弱くなったように見える不思議。

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