「あれは十尾なのか?」
「恐らくな。 取り込まれる前とは姿が違うが、尾獣化した姿なんだろう」
マダラが取り込む前の十尾は辛うじて人型をしていたように思えるが、あれは完全に獣の風貌をしている。
前の十尾は他の尾獣達よりも大きかったが、獣の十尾はチャクラを取り込んだからか更に大きくなっている様に思える。
「だがこれで封印はしやすくなった。
デカいなら俺達が触れるのは容易だ」
ナルトと同時に触れるだけで封印出来るなら好都合だとサスケは言うが、あの状態は厄介なのだ。
十尾化したカグヤが動き出し、獣の形など全く関係なく体中のいたるところから手を生やしてこちらに伸ばし襲い掛かってきた。
ナルトが迎撃しようとチャクラの腕を伸ばすが、
「触れるなナルト!」
「え! な!? 吸収される!」
僅かに抵抗を見せた後、ナルトのチャクラの腕は飲み込まれるかのように白い腕に吸収されていく。
即座にナルトはチャクラの腕を切り離して全て吸収されるのを回避するが、抑えの無くなった白い腕がこちらに襲い掛かってくる。
「「夕象!」」
即座にチャクラで触れなければいいと夕象の一撃をガイと放ち、迫っていた白い腕を弾き飛ばした。
だが後ろから何本もの白い腕が迫ってきており、連打できるほど威力を押さえた夕象では尾獣サイズの腕を全て迎撃しきれない。
「離れるぞ!」
白い腕から距離をとるが、空を走れる僕達と違いナルトとサスケの速度では追いつかれそうだ。
仕方なく二人を抱えて逃げようかと思ったところで、ミナトが二人の元に現れ、二人を連れて姿を消す。
次に僕とガイの元に再度飛んできて、僕達と共に飛雷神で移動した。
「危ないみたいだったから移動させたよ。
あの巨体なら直ぐにこっちに来るだろうが、僅かでも時間が稼げる」
「助かったミナト」
直接触れる事の出来ない、あの形態は一番厄介だ。
あの状態のままでは、触れても封印されるか取り込まれるかのイチかバチかになってしまう。
すぐに元に戻るならいいのだが、巨大な兎らしき姿のまま空に浮いて白い腕を伸ばして元に戻る様子が無い。
あのままでは封印をすることが出来ない。
「どうやら今の奴に直接触れるのは不味いみたいだね。
ハジメ、何か手はあるかい」
「直接触れない夕象の空気砲なら迎撃は出来るが、全ての攻撃に全力で撃っていたら僕もガイも体が持たない。
それにあの巨体では有効打にはなっても決定打にはならないだろう」
本当は僕なら夕象を撃ち続けても大丈夫だが、ガイは確実に力尽きる。
「一瞬だがナルトのチャクラの腕で押さえることが出来たから、吸収されるまで僅かな間がある。
吸収されるよりも早くダメージを与える強力な攻撃か、吸収も出来ないような特殊な攻撃。
後は吸収出来ないような大きな質量による攻撃なら、あの十尾にも有効だろう」
「あの大きさにダメージを与えられる術はオレは持ってない。
特殊な攻撃と言うと…」
「俺の神威ですか。
両目の神威が揃ったことで威力が増していますが、十尾に効くような威力となると何度も撃てません」
原作で神威手裏剣で攻撃していたカカシだが、ここでは神威の時間制限がない代わりに須佐能乎はもう使えない。
直接の神威による攻撃は、本来のうちは一族ではないカカシにはどうしても負担が大きいからな。
「ナルトの持つ求道玉なら吸収されないかもしれないが、武器として使うなら奴の巨体には小さすぎる」
「全部一纏めにして細長くすりゃいけるかもしんねえけど、それでも大した攻撃にはならないってばよ」
「吸収出来ない様な質量の攻撃と言うと、君の現身の術とナルトの尾獣化、サスケ君の須佐能乎くらいか?
直接攻撃するよりはましだが、それでもチャクラをどんどん奪われてしまうよ」
「いい物がある。 尾獣のような大きな奴を相手にするために作った巨大な剣がある。
あれなら相手に触れずに白い腕位なら十分切り飛ばせる」
ガマブン太の持つドスみたいな武器だ。
チャクラを剣にするのもいいが、媒体となるものがあった方が僅かに丈夫だ。
「そんなもんどうやって用意したんだってばよ」
「ナルトは知らなかったか? 僕の家は以前鍛冶屋をやってたんだ。
物を作り替える程度の秘伝忍術が使えて、それで父親が………そうか、これなら」
「何か閃いたのかい」
「ああ、これなら多少は十尾を抑え込めるだろう」
空に浮かびながら次第に近付いて来る十尾を見据える。
「そろそろ決着を着けないとな」
「おらぁ!」
「はっ!」
僕の作った巨大な刀を尾獣化したナルトが振るって白い腕を切り飛ばす。
サスケも完成体須佐能乎で直接触れずに斬撃の衝撃を飛ばす事で白い腕を切り飛ばしている。
念の為、六道仙術に有効な仙術チャクラを使うために重吾が中に入り呪印を纏わせているが、今の十尾相手にどこまで有効かは定かではない。
カカシの神威も有効だろうが、二人の様に攻撃に多用しては目の負担が持たないので取りこぼしが来た時の為に待機してもらっている。
二人に守ってもらっている間に僕は多重影分身を出して作戦の準備をしている。
まずは僕本体と影分身を含めた四人をそこそこ距離をとって四方に配置する。
――パンッ――
そして四人同時に合掌し地面に手を着くと紫電が走り、四方に散った僕達を起点に線が繋がるように地面に深い裂け目が出来ていく。
彼らには忍術と言ったが、以前僕の父親役をしていた僕が鍛冶屋と称す為に使っていた【鋼の錬金術師】の世界の錬金術だ。
本来は素材の組成まで組み替えて錬金出来るが、戦いで使うとなるとこの世界では直接相手を錬成破壊でもしない限り大した攻撃も出来ない土遁紛いの術にしかならない。
だが忍術が通じない相手なら、作り替えるだけで物理で干渉する錬金術なら忍術も何も関係ない。
「
「大丈夫、いい位置にいる。 いくよ!」
錬金術でキューブ状に地面から切り離した岩を、ミナトが飛雷神で飛ばす。
送り先は十尾の真上に待機しているガイの元だ。
「よし、これでもくらえ!」
ただ時空間忍術で送り出したキューブ状の岩石はそのまま空中に浮いているはずもなく、重力に引かれて真下に落ちる。
落ちていく先は当然真下に浮いている巨大な十尾。
更にガイは巨石が少しでも加速するように十尾に向かって蹴り出す。
十尾に叩き落す目的で切り出した岩石は、当然それ相応の大きさだ。
それが重力とガイの蹴りで加速した状態で落ちてくれば、十尾がどうなるかも明白だ。
突然の上からの質量攻撃に対処出来ず、十尾に岩石は直撃し、その重みで地面に墜落した。
「やった、成功だ!」
「だが、ただ落としただけだ。 直ぐに起き上がる。
押さえるのは向こうは影分身に任せて、こっちも次弾を打ち込むぞ」
ただの巨大な岩を真上から叩きつけただけだ。 それで倒せるわけがない。
すぐさま次の球になる巨石を錬金術で切り出し、それをミナトがガイの元に送り出す。
それを続ける事で十尾を地面に押し付けるのだ。
もちろんそれだけでは十尾を抑えきれない。
不意打ちは当てられたが、回避や対処も出来ない事は無いだろう。
だから落下先には既に僕の影分身を大量に配置しており、落ちた所で一斉に錬金術を発動して地面を操作し十尾の拘束に掛かった。
――バチバチバチバチバチバチッ――
錬金術が発動する紫電が十尾の周囲に一斉に広がる。
十尾の下の地面が沈み、更に一瞬液体の様に変化してその巨体が地面に沈み込む。
それを確認した影分身達は、即座に地面を硬化させて沈んだ十尾の半身を固めて埋めた。
当然十尾は抵抗し白い手を伸ばして影分身を襲うが、影分身達は広大な大地を錬成し続ける事で同じような巨大な腕を作り出して対抗する。
形を変え続ける必要があるが、錬金術によってゴーレムの真似事をする事も不可能ではない。
錬金術に使うエネルギーも生命力に由来するところがあるので接触部分から奪われてしまうが、その後には無機質な材料の地面が残るので、それが壁となりその先のエネルギーまでは奪いきれず練成を全て止める事も出来ない。
白い手を十尾は体から幾つも生やすが、こちらは影分身が一人ずつ錬金術を使用可能だ。
手数も負けておらず、白い手の迎撃以外は十尾の地面から出ている半身を押さえにかかる。
材料は所詮土なので、練成して強度を増しても十尾が振り払おうとするだけで破損する。
それでもわずかでも動きを押さえていられるなら問題無いと、壊されようと即座に修復し、更にその上に地面を錬成して拘束を重ねる。
ミナトとガイによって上から降ってくる巨石が、浮かび上がろうとする十尾に落ちる事で地面に押し戻す。
落ちてきた巨石も影分身が練成して十尾の拘束に利用する。
抵抗も激しいので長くは続かないだろうが、十尾を地面に抑え込むことには成功した。
「ハジメ。 大したことない秘伝忍術なんて冗談だろう。
十分凄い忍術だよ」
「たまたまチャクラを吸収してしまう相手と相性が良かっただけだ。
本来なら術として使う土遁の方が効率がいいに決まっている。
上から落とすというのもマダラの使った術を参考に、ミナトの協力があって成功する作戦だ」
「確かに、こんな無茶苦茶な事もオレ達が協力してこその術だね。
術名は飛雷紫電昇巌天墜壱式と言ったところかな」
「お前のネーミングセンスも相変わらずだな」
よく螺旋丸がシンプルかつベストな名前で落ち着いたものだ。
…いや、この世界で珍妙な名前になりそうだったのを僕が訂正したんだった。
たぶん僕がやらなくても誰かが止めたんだろうが、それ以来時々技名の相談を受ける事になって頭を痛める事になったんだ。
「あの、先生。 今は術の名前なんて考えている場合じゃありませんよ」
「術の名前は大事だと思うんだけど、カカシの言う通りだ。
ハジメの術も使い続ける事で無理矢理十尾を押さえこんでるから、長くは持たないよ」
「そう言う訳だ、ナルト、サスケ! 頼んだぞ!」
「任せるってばよ!」
「ナルトのフォローはしてやる」
「俺一人でも大丈夫だってばよ!」
こんな時でも対抗意識を持っている二人に、僕とミナトは笑みを漏らし担当上忍のカカシは呆れのため息を漏らした。
攻撃の狙いは重要器官と思える十尾の顔の額にある赤い輪廻眼。
それに向かって進むと当然十尾も反応し、顔の近くから白い手を新たに生やして二人に襲い掛かる。
影分身達が錬金術で妨害しても全ては抑えきれないが、数を減らせばナルトの前を跳んで白い手を切り飛ばすサスケの負担は減る。
十尾の抵抗も及ばず、力を溜めながらナルトが十尾の額までたどり着く。
「いくってばよ、みんな!」
尾獣化した九尾の尾一本一本に影分身が収まり、全員が尾獣達の力で作った螺旋丸を完成させていた。
それを巨大な輪廻眼に向けて九本全ての尾を叩き込む。
――仙法・超尾獣螺旋手裏剣――
僕を除けば最大威力の攻撃が出来るのがナルトだ。
あの攻撃が十尾の状態のカグヤにどこまで効いた?
「どうだ?」
「やったか?」
ミナトとカカシの呟きに不安を覚えたが、あれだけで十尾を倒せるとは始めから思っていない。
せめてあの状態に変化があればとナルトに任せたが…
攻撃によって巻き起こった煙が晴れると、十尾の顔と輪廻眼には確かにダメージはあった。
だが形は保っており健在の様に見えたが、直後十尾の顔が泡立つかの様に膨張して変形する。
その変化は伝染するかのように全身に広がり、十尾の姿を元の状態から更に歪にさせる。
そして凸凹に変形した十尾の体の膨らんだ部分から、取り込まれていた尾獣達の顔が浮かび上がる。
「あれは何が起こってるんだ」
「おそらくナルトが尾獣のチャクラを使った攻撃で、十尾の中に封じられた尾獣達が呼応したんだ。
チャクラのバランスが崩れて尾獣達が十尾から抜け出そうとしてるのかもしれない」
嘗てカグヤが健在だった頃の十尾は、尾獣という部類はなくただの十本の尾を持つ怪物だったはずだ。
六道仙人に封印された後にそのチャクラを九つに分散して、陰陽遁で生み出したのが尾獣達であり、元は個のない力の塊だったはずだ。
元は自分の力とは言え、今は個々の尾獣として自分の意志を持っており、再度取り込むことも尾獣達の意志を抑え込むことも本来十尾が想定していた訳じゃない。
取り込んだ力がそれぞれの意志で抵抗すれば、いくら本来の力の持ち主であっても制御しきれなくてもおかしくない。
「尾獣達のチャクラが出てきた!
チャンスだってばよ!」
「おい、ナルト!」
呼びかけたサスケを気にせず、ナルトは九尾の尾を伸ばして表面化した尾獣達のチャクラと繋ぐ。
そのまま地面に降り立ち、両手足を地面に着いて踏ん張りながら引っ張った。
「このまま引っこ抜いてやるってばよ!」
尾獣達を十尾の中から引き摺り出すつもりらしい。
原作で十尾の人柱力と化したオビトからそれをやったが、それとは状況が違い過ぎる。
その時は忍連合全員が協力して綱引きをするという、文字にすると珍妙な感じではあるが、その時とは人数が圧倒的に今は仲間が少ない。
更に輪廻眼も片方だけで十尾の復活も不完全だったオビトと違い、完全だったマダラも超えて十尾と同一化しているカグヤでは引き抜くための難度が違い過ぎる。
今はカグヤの力が不安定になっているのでチャンスではあるが、うまくいく可能性は原作のオビトの時より期待できない。
ナルトも六道仙人の力を得た状態だが、うまくいくか?
「うおおおオォォォォォ!」
ナルトが叫びながら地面を踏ん張って引っ張ると、十尾の体から盛り上がっていた尾獣達の顔がさらに盛り上がり、体の輪郭を作り出していく。
その半身が引き出されたあたりで、十尾の体と同化していた事で白くなっていた体色に変化が起きる。
白かった状態から尾獣達それぞれの体色に変化し、十尾から分離し始めたのが解る。
「(まさか、このまま引き抜けるのか?)」
そう思ったが、やはりそう簡単にも行くはずがない。
ダメージを与えた十尾の顔の部分に変化が起こり、顔が形を崩しながら小さくなっていく。
小さくなった顔の先が変化し、背面部が十尾の体と繋がったまま人型のカグヤの姿となる。
あれほどボコボコのメタメタにしたのに、十尾化して体を再構成したからか五体満足の完全な状態に戻っている。
人間離れしているのわかっているのでそこまで気にしないが、人の姿のカグヤが現れた事で十尾の体にも変化が起こる。
十尾の体がカグヤの背面部に引きずり込まれていく。
引き摺り出そうとしていた尾獣達もまだ十尾と繋がっており、同じように引きずり込まれ始めた。
そしてこれまで順調に引っ張っていたナルトの動きも止まり、逆にカグヤの方へと引っ張られ始めた。
「何やってるナルト! 逆に引っ張られてるぞ」
「わかってるってばよ! けどやっぱアイツの方が引っ張る力がつえぇ!」
サスケがナルトの傍に降り立ち、須佐能乎で九尾の体を掴んで同じように引っ張るが、引きずられるのが遅くしかならない。
その間にも十尾の体はどんどんカグヤの体に吸い込まれ、尾獣達の体色も再び十尾の白に染まってしまった。
「拙い。 あのままじゃ逆にナルトが取り込まれてしまう」
「尾獣たちを抜き出せる可能性もあったが、そうもうまくいかないか。
僕もナルトの援護に向かう」
「頼んだよ、ハジメ」
巨石落としは十尾を納め始めたカグヤにはもう意味はない。
近くにナルト達もいるので安易に落とす事も出来ない。
―
この場をミナトに任せ、体内の穆王を現身の術と大気中の水を媒体にオーバーソウルする。
人型になったような穆王の姿を作り出し、引きずられるナルトとサスケの元に飛んで僕も引っ張るが、それでもカグヤが十尾を納める力の方が強い。
オーバーソウルの姿は結構本気なので流石に少し焦る。
「ハジメのおっちゃん!」
「ナルト、このまま尾獣達を引きずり出すのは無理だ。
十尾の方が尾獣達を抑える力が強い」
「チャクラを切り離せナルト。 このままじゃ逆にお前のチャクラが奪われる。
そうなったら六道の封印術も使えなくなる」
「くっそー!!」
ナルトは悔しそうに叫ぶが、抜け出ていた尾獣達の胴体部分は十尾に再び取り込まれ、更に十尾の体もどんどんカグヤに取り込まれていっている。
サスケの言う通り、チャクラを繋げたままではナルトが危ない。
だんだんと引っ張られていく先にいるカグヤの姿を見据えているとある事に気付く。
「いや待て、ナルト! もう少しだけ堪えろ!」
「え?」
「どうする気だ」
「全員聞け!」
仲間全員に聞こえるようにはり叫ぶ。
「何でもいい、カグヤの気を逸らしてナルトが尾獣を引っ張り出す援護をしろ!
今ならカグヤも引っ張られてその場から動くことが出来ない!
後の事は考えず全力でやれ!」
この膠着状態ならカグヤは無防備だ。
ナルトがこっちで引っ張っているので封印は出来ないが、他の皆は動けないカグヤを好きなだけ攻撃できる。
「わかりました先生! 動けない相手と言えど手加減はせん!」
――夕象――
上空に待機していたガイがカグヤの上から空気砲の夕象を放つ。
カグヤを中心に着弾した夕象は地面を穿ち大穴を開ける。
「ウオオオォォォォ!! 先生は全力でやれと言った!
お前を倒すまで止まらんぞ! 夕象! 夕象! 夕象!」
一発で止まらずガイは連続で夕象を撃ち続ける。
連打出来るように抑えた低威力の夕象ではなく、本気の夕象をだ。
長くは持たないだろうがそれでいい。
ダメージで十尾を取り込む力が弱まり、ナルトがカグヤの方に引きずられなくなる。
天津飯の気功法で足止めを食らうセルみたいになってるカグヤだが、ガイの攻撃に無抵抗のままではなかった。
両手を上にあげて八十神空撃で夕象の攻撃を迎撃し始める。
チャクラを取り込んでパワーアップしたからか、八十神空撃の威力が前より高くなっており、ガイ一人の夕象では逆に押され始めていた。
八十神空撃が夕象のを押しのけてガイに迫ろうとしたところで、カグヤの左腕が空間の歪みで消し飛ぶ。
「カカシか!」
「ガイにばかり活躍させられないからね。
夕象を邪魔出来ないようもう片方の腕ももらう」
カカシの神威が八十神空撃を放つカグヤの片腕を消し飛ばしたのだ。
もう片方の腕もカカシは神威で消し飛ばそうと睨みつけ、カグヤの右腕の周りの空間が歪み始めるが直ぐに収まってしまう。
「ダメか」
「どうしたカカシ」
落胆した様子を見せるカカシにミナトが問うた。
「神威を無力化されました。 おそらく奴の時空間忍術で神威を中和したんだと思います。
恐らく不意打ちでなければもう効かないでしょう」
「流石にそう容易くはやられてくれないよね」
神威が無力化されるとは驚きだが、カグヤの時空間忍術も瞳術だ。
自身の周りの空間を支配下に置くことで別の空間干渉を無力化したのか?
万華鏡写輪眼と輪廻眼では神威の方が力負けするのは確かに仕方がない。
片腕になったことで八十神空撃は半減したが、夕象の攻撃はカグヤに届かないままだ。
消し飛んだ左腕もマダラの時と同じように再生を始めている。
左腕が復活するのも時間の問題だ。
ちなみに神威の攻撃は不味いと見て、カグヤの腕と共に切り離され封印されていた黒ゼツがカグヤの力を使ってカカシを攻撃しようとしていたが、あらかじめ警戒していたハジメの影分身が妨害し失敗している。
今も影分身が見張っており、黒ゼツのカグヤへの援護はもう出来ないだろう
「今度は僕の番だよ」
――水遁・水鉄砲の術・二丁――
水月の放った水鉄砲の術がカグヤの顔に命中する。
正に水を掛けられたことでカグヤは怯むが、仙術ではない攻撃ではダメージを与える事は出来ない。
「ありゃりゃ、これじゃ本当に只の水鉄砲だよ。
まあ少しでも気を散らせるなら、嫌がらせに水を掛けるだけでも十分でしょ」
ダメージは与えられないが顔に水を掛けられれば気が散る。
例え効かなくても意識を分散させればカグヤの隙は大きくなる。
更に左右から複数の鎖がカグヤに伸びて絡みつく。
――金剛封鎖――
「うずまき一族の力、みせてやるってばね!」
「ウチだけ見てるだけにはいかねえだろ!」
クシナと香燐がうずまき一族固有の鎖を出す封印術でカグヤを縛った。
八十神空撃を放っていた右腕も絡み取り、腕を挙げさせない事で夕象の攻撃を防げないようにした。
「グッ! こいつ、鎖のチャクラを吸収してる!」
「気張るってばね! 吸収されるより多くチャクラを送って鎖を維持するってばね」
接触している事でカグヤが鎖のチャクラを吸収しているようだが、クシナ達は鎖につぎ込むチャクラを増やす事で対抗するみたいだ。
焼け石に水だが、僅かなら持つだろう。
「シャアアンンナロオオォォォ!!!」
盛大な掛け声と共にサクラがカグヤの上から強襲する。
自慢の怪力を発揮して、先ほどまでナルトが使っていた巨大な剣を持ったままカグヤに向かっていく。
振り下ろす先はカグヤ、が取り込んでいる十尾の体との繋ぎ目。
十尾の体をカグヤから切り離せれば、尾獣達の力の全てを取り戻す事は出来ないだろうが減らす事は出来る。
切り取った分がナルトの中に収まればナルトの力になると、サクラは切り離す目的でそこを狙った様だ。
夕象とうずまき一族の鎖で完全に動きを封じられたカグヤに、サクラの振るう剣を避ける事は出来ない。
だが十尾を一部とはいえ切り離される事を避けるために、カグヤは取り込んで減っていた十尾の体から白い手を生やして剣を受けた。
当たるギリギリだったことで生やした手は脆く剣で切り離されたが、威力が減衰し十尾の胴体にあたっても完全に断ち切るまではいかなかった。
「チッ!」
十尾の体から別の白い手が出てきて、剣を持っていたサクラを狙って伸びていく。
剣を振り下ろせはしたが自在に振り回し続ける事は大きさ的に出来ず、サクラに二の太刀はなく剣を手放し離脱した。
追撃はガイが夕象で援護した事でサクラには届かずに済む。
だがこの一瞬、カグヤの十尾を取り込むために引っ張る力が弱まった。
「力が弱まった? チャンスだ、全力で引け!」
「おりゃああぁぁぁ!!」
「ハアアァァァァ!!」
恐らく取り込みかけの十尾から手を
その隙を突いて全力で引っ張った事で僕達の方が力が上回り、綱引きのように十尾の胴体と尾獣達の体を再び引き摺り出した。
力がこちらに傾いたことでいけるかと思ったが、サクラが離脱して白い手を出す必要が無くなるとカグヤの引く力が再び増した。
再び膠着状態に戻る。
もう少しだったがここまでしてもやはり尾獣達を縛る十尾の力は強い。
やはり力づくではなく六道の封印術しかないか。
カグヤはガイの夕象とクシナ達の鎖で動けないが、封印の要のナルト達も尾獣達のチャクラを引くことで動けない。
ゆえに膠着状態だが、長引けば余力が有り余っているカグヤが有利。
カグヤが動けない内に仕掛けなければいけない。
動けないカグヤの前にまだ動いていなかった大蛇丸とカブトの二人が立つ。
「あなたと一緒に戦うのはこれで最後になるでしょうね」
「ええ、大蛇丸様。 僕はイタチが思い出させてくれた帰る場所に帰ります。
ですが帰る場所を取り戻す為にコイツを何とかしなければなりません」
「そうね。 世界があのままなんて流石に私も放ってはおけないわ。
忍の祖と言われた六道仙人。 その母と戦う事になるなんて夢にも思っていなかったわ。
輪廻眼の上に白眼まで持ってるなんて、さぞ世界が良く見えるんでしょうね」
仙術による感知で、大蛇丸とカブトに自然エネルギーが集まり仙人モードになったのが解る。
「なら、この術はとてもよく効くでしょう」
――仙法・白激の術――
二人の術で強い光と音が発生する。
結構距離のあるここまで光と音は届いており、目前で放たれたカグヤにはたまったものじゃないだろう。
恐らくサスケとイタチにカブトが使っただろう術であり、瞳術使いには非常に有効な術だ。
太陽拳に音まで加えた術なので、僕も習得したい。
「ナルト、サスケ!」
二人の名を呼んで合図を送る。
作戦は既に伝えてある。 カグヤの眼を晦ませている今がチャンスだ。
白激の術の光と音が途切れる。
術の間は視力と聴力が完全に奪われていたが、その間に他の攻撃は行われなかった。
治癒力の高いカグヤなら強い光を受けたとしても、光が途切れれば直ぐに視力が回復する。
回復した視界で最初にカグヤが目にしたのは、自身に触れる瞬間のナルトとサスケの手だった。
「(馬鹿な! なぜアシュラとインドラの転生体がここに!?)」
二人が触れた瞬間には封印術が発動しており、声を荒立たせることも出来なくなっていた。
六道の封印術を使うには、カグヤにナルトとサスケの二人が直接触れる必要がある。
ナルトの影分身でも意味はない。
ならば今の役割を影分身に引き継げばよかった。
「やったな、ミナト」
「僕だけじゃない、皆のサポートがあったからさ」
「そうだな」
そういって二人を送り出したミナトの影分身が消えた。
残ったのは僕と、九尾と須佐能乎の存在を支えていたナルトとサスケの影分身だ。
大蛇丸達が白激の術を使った直後に全員が動いた。
ナルトとサスケはそれぞれ影分身を一体出して、綱引きをしている九尾の体と須佐能乎のコントロールを預けた。
サスケもナルトほどではないが数体の影分身をやろうと思えばできる。
影分身は本体と同じ能力を持っているが、耐久力が低い以外に高度な力の運用には耐えられない。
故に影分身だけで尾獣化も完成体須佐能乎を出す事も出来ないが、本体からの引継ぎであれば短時間なら持つと考えた。
目論見は成功し、十尾との綱引きをしている九尾と須佐能乎の維持を影分身に預けて僕の元に集合した。
本体のミナトは白激の術を受けているカグヤの前に飛雷神の苦無を投擲し、飛ぶ先を定めていた。
僕の持っていた苦無に変化していたミナトが元に戻り、準備は完了。
白激の術が消えるのと同時に二人を飛ばし、カグヤの視界が回復する前に封印に成功した。
封印が成功した事でカグヤが十尾の体のコントロールを失う。
取り込もうとしていた十尾を引く力を失い、影分身のナルトが支える九尾によって一気に引き出された。
十尾の体が再び姿を現し、カグヤの姿は逆に飲み込まれるように消えていく。
尾獣達の体もどんどん抜け出してきて、抜け出た分十尾の体が力を失いやせ細っていく。
尾獣達が完全に十尾から抜け出すと、十尾は抜け殻の外道魔像の姿に変わりながら宙に浮かび上がり始めた。
同時に地面が広い範囲で地割れを起こし、その破片が宙に浮かぶ十尾に吸い寄せられるように集まり出した。
「六道仙人の地爆天星も発動した。 これでようやく終わったな」
面倒なカグヤの封印の成功に安堵しつつ、地爆天星によって浮かび上がる岩石に巻き込まれないようにその場を退避した。