リベール王国南部の臨時首都であるツァイスではただならぬ雰囲気が流れていた。グランセルより届いた知らせ、帝国軍の手にアリシア女王陛下の身柄が拘束されるというのは司令部の人間にとって青天の霹靂であった。そもそも決戦の日にはすでに南部に向かって移動していなければならず、万が一遅れても第一軍と第二軍を相手取ればそれなりに時間がかかり、帝国軍とはいえ女王一行を捕捉することは不可能なはずであった。にもかかわらず捕まった場所はグランセル近郊であったと続報は本来なら考えられないことのはずだった。
「エドワードが裏切った」
誰が言ったのかわからないがそれが一番しっくり来る理由だった。南部は帝国派でなく共和国派が多かった。それゆえ首都移転で一緒に来るはずだった帝国派は共和国派によって阻止され最前線で指揮を執ることになっていた。それは最悪の結果を運んできた。共和国派の筆頭たるコリンズなど自室にこもってしばらく出てきていない。それほどの失態だったのだ。軍全体に流れる諦めのムード。キングを取られた時点でこの戦争はチェックメイトであった。
ただ全員が諦めていたわけではなかった。グランセルは占領されたがレイストン要塞はまだ陥落はしていなかった。ただそれでも絶望的な状況には変わりなかった。
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グランセルの異変に最初に気づいたのはスタイナーであった。軍曹に昇進した彼は己の本分たる狙撃術の訓練を行うため部下を連れて要塞近くの森で魔獣狩りをしていたときに砲撃音がしたような気がしたのだ。戦場はなにがあるかわからない。万が一野戦部隊が突破された場合を考えて訓練を中止し、己の上司たるシャルルに報告した。報告を受けたシャルルはすぐに偵察隊をおくった。彼らの持ち帰った情報は血の気を引かせるものだった。女王の捕縛と野戦軍の無抵抗降伏。そして最前線の部隊指揮をしているのはヴァンダール中将でなかった。こちら側の事情をすべて知る、そしてそこにいてはいけないはずの敗軍の将・エドワード=アーネット中将の名があった。
最悪の事態を見せられながら思考は止まっていなかった。すぐにモルガンと相談し一通りの対応策を練った。まず、要塞へ続く道の地雷原化と湖の機雷散布。時間がないため地雷は表面にばら撒くだけだが時間稼ぎを狙いだった。帝国軍の砲艦による艦砲射撃を防ぐ為にもありったけの機雷をまいた。そして要塞前の橋を落として完全の孤立状態にした。外部からの支援が絶望的である以上もはや陸と繋がるよりは侵入経路を遮断するべきだというシャルルの意見が採用されたのだった。エドワードもモルガンやシャルルの手ごわさを理解していたので勝手に孤立した彼らを包囲するだけにして南部への侵攻を急いでいた。
「女王陛下を救出します」
会議はシャルルの発言から始まった。南部と同様に将校には諦めが見えていた。
「具体的な作戦は?救出の見込みは?それもわからないのにどうやって……」
ある佐官からそんな声が漏れた。他からも同調するような意見が出た。その負のムードはドミノのように連鎖していき仕舞いには降伏を勧めるものが出てき始めた。その様子をモルガンは黙ってみていた。するとシャルルが手を叩いた。
「静かにしてください。この状況をひっくり返すことは出来ませんが上を宇野救出程度なら出来る秘密兵器があります」
そういって資料を配るシャルル。手元に与えられた資料には飛行艇に関する記述が書かれていた。それを読んでみなの顔にさまざまな表情が出た。可能性の明かりに喜ぶ者や新しい物への抵抗感があるのか微妙な顔をする者おのおのが違った反応を見せた。
「それを見たうえで降伏と抵抗の多数決を取ります。降伏派は扉側、主戦派は奥に立ってください。相談なしで自分の意志で決めてください」
そういうと皆まちまちに動いた。新兵器を信じる者は抵抗を、帝国派と保守派は降伏にまわった。その割合はおよそ6:4。ぎりぎり抵抗派が多かった。
「もういいですか?変えるなら今ですよ?……主戦派のほうが多いですね。それでは遊撃隊の諸君入って来い」
シャルルの掛け声で完全武装した遊撃隊のメンバーが会議室に入ってくる。それをモルガンは不審そうな目で見ていた。
「そいつらを拘束して地下牢にほりこんでおけ。やる気のない奴らにこの局面で邪魔されたら面倒だ」
「横暴だ!貴様は憲兵でもないのに逮捕権はないぞ!モルガン将軍も何とか言ってください」
「エドワードの腰巾着がほざくなよ。銃殺されないだけましだろうが。連れてけ」
ぎゃあぎゃあわめくのを黙らせて部屋からつまみ出したあと再び作戦ついて話し始めた。
「さて、邪魔もいなくなったので始めますか。今回の作戦は王城にいる女王陛下の救出作戦の概要を説明します」
「何で陛下が王城にいるってわかるんだ?」
質問がされる。それは当然の疑問であった。
「孤立してから三日間寝てただけじゃないんですよ。グランセルには私と情報部の友人で張り巡らした諜報網があります。そこに引っ掛かった報告によると現在帝国軍は本格的に戦闘が送ると考えられる南部作戦に向けて準備中ですがヴァンダール中将に代わってスナイダー大将がでしゃばって配置換えが起こります。そのときに女王陛下も一緒に帝国領に護送する話になっているようです。その日は今日から4日後。それまでの間は王城にて軟禁状態にするとのことです」
「そんな情報よく掴んだな。信頼度はどの程度なんだ?」
モルガンの問いにシャルルはパーフェクトと伝える。この情報は盗聴によってもたらされていたからである。それを聞いて皆も納得したようであった。
「続けます。皆さんご存知の通り往生はかなりの広さがあり、軟禁状態とはいえかなりの警備がいることが考えられます。しかし占領地の中心部ということもありかなり警戒レベルは低いと考えられます。つまり速さ、正確さ、不意打ち。以上の三条件を満たせば成功します」
一息ついて皆を見ると真剣な顔をして聞き入っていた。掴みは上々か、と思いながら話を続ける。
「まず戦闘能力の高いメンバー10名を選抜します。そして泉水具をつけてラッセル博士に依頼して作った魚雷を改造した簡易の水中移動用の乗り物で要塞地下から出撃し、王城裏の遊覧用の桟橋に向かいます。そこから敵に見つからないように上階を目指します。女王の身柄を確保した後に照明弾を打ち上げます。おそらくここで確実に気付かれますが飛行艇の速度を考えれば十分可能です。今回は殲滅戦でないので見つからないことが前提です。一応消音機能つきも武装をしていきますが見つからなければ手を出さない。アクションは迎えが来るまで起こらないのが理想です」
一通り話し終えると次々に質問が飛んだ。携帯武器は?王城内の敵兵の始末の仕方は?気付かれて射ち合いになったら?
これらの質問に対してスムーズに答え、質問がなくなるとモルガンに意見を求めた。
「以上が私の立てた作戦ですが許可をいただけますか?」
その質問を聞いてモルガンは笑った。
「そこまで言っておいていまさら中止などとは言わんわ。ただしこれが最初で最後の作戦になる。失敗すればこの国は滅びる。それを肝に銘じて取り掛かれ。信頼しているぞ」
そこからは速かった。メンバーの選抜と作戦に向けての徹底的な訓練。要塞を王城に見立てて何度も侵入の確認がなされた。また壁に見えないうちと深夜に飛行艇の操縦訓練が行われた。一回一回の訓練をこなすうちにメンバーはさまざまな技術を貪欲に吸収した。自分の動きがこの国を変えるという重責を担うことになった以上弱音を吐いている場合でなかった。作戦に必要なものが次々に用意され満を持して決行の日を待った。
「最後のブリーフィングだ。良く聞けよ」
王城の地図を背景にシャルルが話し始めた。
「諸君はアルファとデルタチームの2つに分かれて潜入する。自分の所属する方の人間の顔は暗闇でもわかるようになっていると思う。カービンとサイドアームのサイレンサーはしっかりつけておくこと。照明弾発射後に気付かれた場合のみ威嚇の意味も含めてサイレンサーをはずすことを許可する。今から一時間後、ここを出発する。準備が出来次第地下に集合しろ。上陸後内部に潜入したら二手に分かれて上へと向かう常に警戒を怠らず3階の広場を目指す。前も行ったが出来るだけ手を出すな。目的は女王陛下の救出であることを忘れないように。万が一についてだが……」
シャルルの説明は続いた。隊員たちは皆真剣に言葉を聴いていた。説明を終えるとモルガンがしめた。
「短い時間だったができるだけのことはしたはずだ。おのおのが自らの責務を果たせば必ず成功する。それだけだ」
作戦開始時間となり隊員たちが集まった。主に遊撃隊メンバーで構成される潜入隊はゴム製のドライスーツに酸素ボンベと各自の武器を装備して魚雷を改造した小型潜水艇の前にそろった。
「こんなちゃっちなモノですまないな、シャルル君。戦争が終わればきちんとしたのを開発しておくよ」
申し訳なさそうに言う博士。この短時間で仕上げたには十分すぎる代物だが博士は満足がいかないらしい。
「いえいえ。こちらのわがままに付き合ってもらってありがとうございます」
「そういってくれて嬉しいよ。明かりは下に向かってしか出ないようにしている。岸から離れすぎないように気をつけたまえよ」
要塞の人間に見守られながら静かに作戦は開始された。
シャルルたちは潜水艇に乗って王城の桟橋付近にまで到達していた。前方の部隊にいる夜目の利くスタイナー軍曹が潜望鏡で桟橋を確認し手話で様子を伝える。
(桟橋に人影あり。武装してる。潜水艇を捨てて排除する)
(了解。エーカー曹長以外は水中で待機)
後方の部隊にもジェリコーが同じことを伝えいよいよ臨戦態勢に入る。ゆっくりと水面に近づき敵を視認する。どうやら用足し中のようだった。休憩がてら外に来たと考えられた。
刹那、水面から飛び出したエーカーに水中引きずり込む。声を上げるまもなく帝国兵は首をかききられ湖底に沈んでいった。
『オールクリア』
エーカーからの無線が入る。それを聞いて全員桟橋に上がり、ボンベを捨て武器を装備する。桟橋から王城内に入るとそこは倉庫であった。王族たちが湖で色々と興じる為の道具がおいてあった。部屋を出ると左右に続く廊下があり途中に階段がある。ここからが本番であった。廊下は静かであり帝国軍の兵士が本当にいるのか怪しいほどであった。
裏口から侵入したシャルル率いるアルファチームは左へと進み階段の近くにまで来ていた。元々離宮だったので防衛上の複雑さはなく、サクサクと進んでいた。暗闇の影に隠れて巡回の兵をやり過ごし、上階の状況を確認すると一回の入り口に二人、二階の階段の上に1人いた。ただし下の階の二人は居眠りをしているようだった。その二人を無視して、二階の敵に照準を向けた。百メートル先の目標の目玉をぶち抜けるレベルのメンバーにかかれば近距離の狙撃など朝飯前だ。しかし確実という保証はない。こちらが静かに撃っても、相手が静かに死ななければ意味はない。そこで二人に撃たせることにした。二人がかりで一人を狙えば成功確率はほぼ100に近い。二階にいた敵兵は頭に一発の鉛弾が確実に叩き込まれ、声も上げることなく死んだ。
敵の排除を確認してアルファチ-ムは前に進み、死体を軽く処理してロッカーの中にほりこみ何事もなかったようにする。デルタに進むようにジェスチャーで指示し後方の警戒しつつ、デルタと入れ替わるようにもうひとつの入り口を確認しに行くアルファ。明かりの消えた廊下を静かに進んでいくと突き当たりについて、角からその先を確認する。しかしもう一箇所の入り口は警備をしやすくするためかバリケードで完全に封鎖されており、加えて明かりのついた部屋には交代要員と思われる兵士たちがトランプを興じていた。ルートの確認を終えこちらの道が使えないことを確認するとアルファはもと来た道を戻った。
一方デルタはもうひとつの入り口近くにいた。屋上に続く道を確認すると二人の警備兵が立っていた。こちらも通路を封鎖する為に鉄条網らしきモノがついておりアルファの確認した側ほど出ないが封鎖されていた。角から二人の兵士の様子を確認し丁寧に排除していく。上へと繋がる鉄条網の扉には鍵がついていた。死んだ敵兵の体からは鍵が出てこずこれ以上は進むことが出来なくなった。仕方なく鍵を破壊し先に進むと屋上に出た。屋上には土嚢などが置いてあり、遮蔽物のない空間でも侵入者と戦闘ができるようになっていたが警備の兵士はいなかった。何かの罠かと警戒したが本当に何もなく、敵に見つからないで終わりそうだとシャルルは安堵しかけたがすぐに気を引き締めて先に進んだ。
グランセル城の最上階。そこには女王陛下の居住区画があった。城の平坦な屋上に追加でつけられたそれは、城の材質に合わせ大理石を基調としており全体の雰囲気を崩さないように注意して設計されていた。本来宮中関係職の人間以外は入れる場所でなく、シャルルたちが一般人の中では第一号である。大理石の大きな岩で出来た扉を開けると一階には広い空間があり、上の階に女王の個室がある。現在一階には帝国軍の兵士が5人ほどいた。他の階にも警備がいるうえに街そのものが支配下にあったこともあってこちらも気が抜けていた。武装を外して歓談中であったようで突然入ってきた集団を見て馬鹿みたいに口をあけて硬直した。
「こんばんは」
にっこりと笑顔になったシャルルは次の瞬間に引き金を引いていた。サプレッサーカービンのくぐもった発射音が鳴った。あるものは吹き飛び、ある者は床に崩れ落ちた。死亡確認をし上の階に行こうとしたとき、深夜のグランセルに特大の警報音が鳴り響いた。
「気付かれましたか。かなり敵をかわして上がったつもりでしたけどやはり無理だったみたいですね」
スタイナーが言ったがここまで来ていたら十分だった。後は照明弾を射ち、迎えを待つだけである。
「決めていた通りに迎撃態勢に入れ。指揮はシード少尉に任せる。迎えが来るまで10分ぐらいだ。ここまできたら誰も欠けないで帰るぞ!」
「「「Yes,sir!」」」
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シャルルは戦闘を任せている間に女王の個室にやってきた。部屋をノックして自分の所属と名を名乗る。
「レイストン要塞守備隊長代行、シャルル=ブライト中尉です。女王陛下の救助に参りました。失礼承知の上で入室の許可をお願いします」
中から返事があったので入る。すると机に座って完全に起きている女王陛下がいた。
「救出に参りました。詳しいことは後になりますが最低限必要なものがあればまとめてください。10分ほどで迎えが来ます」
「何処から逃げるのですか?警戒態勢が築かれている以上逃げれませんよ?」
飛行艇のことを知らない女王は陸から逃げると思っているのだろう。よく判らない顔をしている。シャルルは質問に答えずにベランダに向かいドアを開けた。夜風が入ってきたその先に見渡す夜のヴァレリア湖は絶景だった。懐から取り出した照明弾を打ち出す。マグネシウムのまばゆい光は要塞に届いたことだろう。振り返ったシャルルは先ほどに質問に答える。
「空には敵はいませんよ?女王陛下」
一方他の隊員たちは屋上に上がってくる敵をサプレッサーを外して応戦していた。
「いやー、これ持って来ておいて正解だったな」
ジェリコーはそういいながら軽機関銃を撃っていた。作戦前は邪魔になるしサプレッサーがつけられないからやめろといわれていたがゴネて持って来ておいて正解だった。750発/分の破壊力は戦車や飛行艇のいない平地においては無敵を誇った。銃弾だけでなく絶え間ない発砲音は兵士に恐怖心を植え付ける。おまけに侵攻経路は一本だけなので弾をばら撒く必要もなく、中々帝国軍の兵士は屋上に上がれていない。暇になったスナイパーたちは増援のために地上に集合した兵士たちを狙撃し始めておりもともと防衛戦に向いている地形をうまく活用していた。敵が前進するのを完全にシャットアウトしていた。
「コイツら何処から沸いて出てきたんだ!正面玄関にはかなりの警備兵を割いていただろうが!何であんな重装備の奴を発見できなかったんだ」
「正面じゃなく裏の桟橋から侵入してきたんだ!気付いていない奴ばっかりだったが何人か殺されてた。万が一女王が連れ去られでもしたら大変なことになるぞ!」
「安心しろ裏にも警備艦を回して陸の方も厳戒態勢に入っている。しばらくは乱射していられるだろうがすぐにでも弾切れを起こすに違いない。それからゆっくり包囲していけば確保できるだろう」
帝国軍も突然の来襲に虚を疲れて混乱していたが、包囲が完成したあたりから落ち着きを取り戻し敵に弾を使わせる作戦に変更していた。警備艦も湖のほうで警戒しており逃げ道は完全にふさがれたように見えた。
「!あいつら奥のほうに引っ込んでいくぞ!追いかけろ」
機関銃の連射音が止まり外の様子を確認すると侵入者たちが女王の居住区に撤退していくところが見えた。
「居住区に入ったようだ。包囲して投降させろ。無いとは思うが人質も道連れにされたら面倒だ。くれぐれも下手な刺激はするなよ」
敵が全員入ったことを確認し前に進もうとしたとき爆発音が夜空に派手に鳴り響いた。煙の先は無残に壊れた居住区画の入り口だった。瓦礫の山になっており入ることができなくなっていた。
「通路が封鎖された。工兵の支援を頼む」
無線の要請に基づいて帝国軍の工兵隊によって明朝まで通路の確保が行われた。開通後、帝国軍の精鋭たちは二階に上がり投降することを中に向かって何度か呼びかけたが返事が無かった。不審に思い突入すると全開になった窓が目に入った。そして次の瞬間、耳を劈くような強烈な爆発音が彼らを襲った。
「おー、うまいこと引っ掛かったな」
レイストン要塞の屋上から双眼鏡を使ってグランセル城を見ていたシャルルは感心したような声を上げた。グランセル城からはかなりの煙が吹き出ておりその爆発の凄惨さが見て取れた。
「ちゃんと起動していたら上にいた奴らはほとんど吹っ飛んだんじゃないのか、ジェリコー?」
「おそらくね。導力爆薬なら感知されたかもしれませんが今回はTNTを使ったんで検知出来てないんでしょうな。無線を使った誘導で連動爆発して屋上も阿吽の地獄絵図ですよ、今頃は」
火薬の爆発でぐちゃぐちゃになった死体が今頃転がっているのだろう。もはや死体の判別もつかないのかもしれない。
「戦争とは言え気持ちのいいものではないです。まともな死に方は出来そうにありませんね。……今頃、陛下とラッセル博士は南部に到着したんだろうか?」
ふとエーカーが漏らした。救出に成功した後要塞にまで帰還した飛行艇は救出部隊を下ろして、代わりにラッセル博士を中心とした技術者メンバ-や飛行艇の資料を乗せて南部へと報告に向かわせたのだ。
「そうだな。……機密情報は運び出すか焼却処分したからここはもはや守備する価値も無くなったわけだが、いつになったら外からの援軍が来るのかねぇ~」
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南部の作戦会議室は荒れていた。女王陛下が捕らえられた以上もはや打つ手なし、と主張するグループとあくまで抵抗を主張するグループに分裂していた。ただどちらも無茶であることを理解していたので会議は堂々巡りだった。南部に避難してきていたデュナンもいたがたいした能力の無い彼は発言することも無くただ座っているだけだった。
「会議中失礼します。コリンズ大将至急報告せねばならないことがあります」
情報部の人間からの報告者が部屋に入って来て一時的に議論が中断する。静かになったことで少しためらいがちにコリンズのほうを見る。
「構わん、言え」
「はっ!偵察部隊が先ほどツァイスに向かう所属不明の飛行艇を確認しました。敵味方の判別はついておらずまっすぐにこちらに向かっているそうです。飛行物体のカラーリングは白で現在確認を急いでいます」
ざわっ、と騒がしくなる。飛行物体が帝国軍の新兵器であった場合ますます王国軍の勝率は低下する。さまざまな憶測が飛んでいるようだった。
「カシウスよ、心当たりはあるか?」
「おそらくレイストン要塞で開発中だった軍用飛行艇でしょう。鹵獲されていない限りはこちらの新兵器です」
コリンズの質問への回答を聞いてますます騒がしくなる。
「とりあえず敵か見方過の判断をしませんか?」
ツァイス上空に現れた飛行艇は上空を旋回していると民間の飛行艇の発着場からの誘導を受けた。それにしたがって徐々に高度を落としていき、無事着陸した。発着場の出入り口には武装した兵士と参謀部のメンバーが待っていた。後部の搭乗口から出てきた人影を見た者は全員言葉を失った。優雅に出てきたのはなんと自分たちが一番安否の確認をしたかった人間が出てきたからでてきた。
それに続いて飛行艇研究のメンバーやその他レイストン要塞にいた重要な人間が多数出てきた。
「女王陛下ご無事でしたか!」
コリンズが真っ先に駆けつける。
「詳しい話は後です。すぐに参謀本部に集合して作戦会議を行います」
「「「了解しました!」」」
必要な駒はすべてそろった。反撃の時は近い。
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