少女終末旅行~お別れのうた 作:深淵の杖
本当に嫌な方は読まないで下さい…
よろしくお願いします。
「ユー…リ…」
その言葉を最後に。
チトの身体から力が抜けた。
「…じゃあね」
ユーリはチトを抱き抱えて言った。
…
心の中から大事な物が抜けていくような、そんな気がして。
しばらくユーリはチトを抱いたまま星空を見上げていた。
「…ちーちゃん」
返事はない。
「ねぇ、ちーちゃん」
それは自分がよく知っていた。
「ちーちゃんってば」
…
ユーリは立ち上がると、チトの身体を座らせる。そして月を見上げて叫んだ。
「月光…パワーーーーーッ!!」両手を広げて誰も踏み入れた事のない新雪へと駆け出す「うおぉぉ…!ひゃはは!!」
…あ、そうだっ!アレ使おう!
一度荷物のある場所へ戻り、ユーリは荷物を漁った。
「ちょっと借りてくね」
そして再び新雪へ駆けていく。
しばらく進むと不意に立ち止まり、爆薬を地面に置いて、銃弾を頭上に掲げた。
「月光…月光…ひゃはははは!」
『うるせえ』
「はっ…あ…」手からポトリと銃弾が落ちる「…ご、ごめん…」
『いいよ』
「ちー…ちゃん?」弾かれたようにユーリは走り出す「ちーちゃんっ!」
チトは黒い石の影に座っていた。
頭と身体に少し雪が積もっている。ユーリはチトに駆け寄ると、手を握った。
「ちーちゃん!ここだよ!ここに…」
…冷たい。
…何も感じない。
「あぁ…あああぁぁぁ…!!」ユーリはとうとう、封じ込めていた感情を爆発させた「なんで…どうして置いてくの…寂しいよ…寂しいよちーちゃん」ユーリは彼女の名を呼ぶ「ちーちゃんっ…ねえ」
…
「ちーちゃんっ!」
ユーリはチトを再び寝かせると、胸に両手を当てて規則的に体重をかけていく。
…重症を負った者を生き返らせる方法。
「よいしょ、ちーちゃん、1、2、ちーちゃん、よいしょ」ユーリは頭の中で無駄だと分かっていても、繰り返した「ちーちゃん…ちー…ちゃん…う…うぅ…」
安心したような表情を浮かべたまま、
彼女は何も喋らない。
息を吹き返さない。
…ちーちゃんは…戻ってこない。
「私…また何かしたの…?」ユーリは涙を拭きながら言う「ごめん…ごめんなさい…ごめんなさ…ぁぁぁっ…ちーちゃ…チ…ト…チトぉぉぉ!!わぁぁぁ…!」
…
ひとしきり泣き終えた後、どっと疲れが襲ってきて身体を重く、軋ませる。
立ち上がるユーリ。
「ちーちゃん、これも貸して」
チトのヘルメットを借りると、自分のヘルメットと並べて地面に置く。
近くに空き缶が落ちているのを見つけると、ヘルメットの隣に置く。
…
爪を軽く当てると、軽く音が鳴った。
これは…。
「ちーちゃん、これ…何だっけ」
ユーリは順番に缶とヘルメットを叩いて音を出していく。
雪を少し詰めると音が変わるようだ。
「絶望〜♪ぜつぼ〜♪ぜつ…ぼ〜♪」
少しだけ、楽しい。
「絶望、絶望、ぜ・つ・ぼ…」
…あ。そうか…
絶望と仲良くなれてないのは、
私の方だったんだ。
私…逃げることしか考えてなかった。
私達は、ずっと進んでたはずなのに。
だからちーちゃんは私を…
「よし」
ユーリはまた立ち上がる。
「…うん」ユーリは寝ているチトを振り返る「ちょっと待っててね」
………。
しばらくして。
「でき…た…ぁ…」
ふらふらしながらユーリは汗を拭った。
水筒を鞄から取り出して傾ける。
「ありゃ…空っぽだ。フフッ…」
ユーリとチトの目の前に、仲の良い二つの大きな雪だるまが現れていた。
燃えかすや銃弾の残りを使って顔を作り、二人のヘルメットを被っている。
「我ながら最高傑作じゃない?家族は月光パワーで復活したのだぁ!」チトの顔を覗き込んでユーリは言った「私とちーちゃんの親…こっちが父さんでね…こっちがえぇと、母さん…四人になったら、ちーちゃんは世界で二番目に幸せになれるね!ハッ…そしたら父さんか母さんがどっちかが不幸に…!?え…マジか。というか、どーでもいっか…。えへへ…そーだよ…ね…」
ユーリは地面に倒れた。
「う?あ…れ…?」
…辺りが暗い…
もうすぐで夜明けなのに。
寒い。
「ちーちゃん…?おかしいな、ちょっと…いや、大丈…夫」
手探りでチトが寝ている場所へと身体を動かしていく。
星空が…近い。
ユーリは手袋を外して、
チトの手を握った。
…チトが握り返してくれた気がした。
「ごめんね、ちーちゃん」ユーリは星空を見上げた「ちーちゃんが言ったみたいに、私達はこの世界とおんなじなんだよね。…何も怖いことなんて、無いんだよね」
見て触れて、感じられる物がすべて。
今まであったものが無くなったとき、
チトも動揺していたんだった。
それでも、今まで積み上げてきた物を無くしても、彼女は我を忘れなかった。
逃げようとなんてしなかった。
「私…頭空っぽだから今更だけど」ユーリはチトの顔を見て笑う「ようやく本当にちーちゃんの言ってたこと、分かったみたい…ははは…ごめん」
チトが隣にいて。手を握ってくれる。
…私も握り返す。
心臓の音は聞こえないけど。
でもその手はさっきよりもずっと…
ずっと暖かかった。
ちーちゃん、見てよ。
星と月がとても綺麗だよ。
びうを持って来てれば良かったなぁ。
あの時二本開けてなければ…
あぁ、夜明けはもう…見られないかな?
…………
………
……
…
「…?」
ユーリは辺りを見回した。
一面真っ白な世界。
辺りには瓦礫が散らばり、
ちらちらと降る雪が積もっている。
ユーリは体を起こした。
「…寝てた…?」
少し離れた場所に、自分の荷物と銃が並べて置いてあるのが見えた。
這ってそれらを身につけ、立ち上がる。
「おいユー、遅いぞ」
「…!!」
「一体何してたんだよ」
トトトト…
懐かしい声。懐かしい音。
ユーリは声のする方を振り返った。
「ちー…ちゃん」
チトはケッテンクラートに乗り、早く乗れとでも言わんばかりに荷台を指差した。
「…いきなり姿が見えなくなったから何事かと思っただろ」チトは少し怒ったように言った「それとも、何か見つけたの?」
「…いや、それが…寝てたっぽい」
「おぉい!死ぬぞ!?」
「えへへ、ゴメンゴメン」ユーリはケッテンクラートの荷台に飛び乗ると、銃をさする「行くぜ相棒、ちーちゃん」
「はいはい、行くよ」
ぶっきらぼうにチトが返してケッテンクラートを前進させた。
荷台から後ろを振り向き、前方に大きな塔があるのを確認する。
あの塔には何があるのだろうか。
「あれが次の目的地…?」
「あぁ」チトは前方を見たまま言う「食糧が見つかると良いけど」
「そうだね…」
ユーリはチトの後ろ姿を見る。
いつも被っているヘルメット。二つに結んだ黒い髪、たまにため息を漏らしながら操作する小さな手。
ユーリは気づけば後ろから彼女を抱き締めていた。
「うわぁぁぁ!ユー!?」チトは叫ぶ。ケッテンクラートが蛇行運転を始める「やめろぉぉ…何…何なの!?」
「えへへ…ちーちゃんっ」ユーリはチトの耳元で囁いた「ちーちゃんは…ちーちゃんなんだよね?」
「お…お前まさか、さっき寝てたのって変なもの食べて昏睡してたんじゃ」チトはちらっとユーリを振り向いた「えっと…大丈夫?具合とか悪くない…?」
「もち、絶好調だぜ」
ユーリはグッドサインを作って見せる。
「あっそ」少し安心したように言って、前方に視線を戻す「…ユー?」
「ん?」
「その…こんな事訊くのもおかしい気がするんだけど…さ」チトは白い空を見上げた「私達…最後どこでご飯食べたっけ?」
…
「さあ?」ユーリは首を傾げた「あぁー、なんか大きな石の影だったかなぁ」
「適当だな」
「というかお腹すいたよちーちゃん」ごそごそと荷物を漁ってユーリは言った「さかなの缶詰めがたべたい」
「そうだね…でも一応ご飯はあの塔に入ってから食べようか」
「OK」
チトはスピードを上げる。
ユーリは荷台から落ちそうになるのをいつものように踏ん張る。
「水と食糧があればいいけどね…」チトは呟いた「あの塔には何があるんだろ」
「ぐー…」
「おーい、早速寝るな〜」
ケッテンクラートは走る。
少女二人を乗せて。
雪はやがて降りやみ、
暖かい季節が始まりを迎える…。
四季は巡る。何度でも。
少女達は、旅を続ける…
終末に向かう、この世界で。
いつまでも…いつまでも…
【おわり】
…どうでしたか?
我ながらうまく動かせたかな?
【達成感】
ラストシーンはアニメの
オープニングの一番最後のシーンを
意識してたりするんですが…
(ありきたりな展開かもだが…)
まぁ、ここまで読んでくれて
本当にありがとう。
最後になりますが…
ユーちゃん、かわぇぇなぁ…
チト「…」
はっ!チトちゃんも可愛いよ!?
痛い痛い叩かないでぎゃあぁ…
【茶番、失礼しました】