亜種特異点:EX 人害怪因地区 アマゾン   作:16:25教

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第4節 DEAREST DUSTS 2/3

自分達を襲ってきたアマゾンは元は人間の可能性がある。

 

貴方がそう言うとエミヤとダヴィンチはそうだろうと頷き、マシュの顔は苦い表情に取り付かれた。

 

『人があんな怪物に...そんなのまるでバビロニアのよう...』

 

マシュは以前、7つの特異点を解決する旅のなかで、貴方と共に人が異形の怪物に変化するところを見たことがある。そして同時に、それによりもたらされた悲劇や惨状も目撃していたため、人間が怪物になる悲惨さを理解することができてしまったのだ。

 

『マシュの気持ちの分かるけど、しかし事実マスターくんの仮説がほとんど有力なんだ。元々アマゾンの生態反応は人間のそれととても似ていたからね。しかしアレを人間と呼ぶなんてできないだろう? だから明言は伏せていたけど、しかしあの質量の生物を魔術も使わずに生命を短時間で誕生、成長させるなんて方法は到底考えられない。ならば、人間そのものを触媒としてアマゾンを増やしていったと考えれば辻褄も合う』

 

「実に醜い手法だがな。おおよそ人間が考えて実行できるものでもない。しかしその仮説を建てたとしても、疑問は残る。それならばアマゾンたちはどうやって人間をアマゾンに変えているのかということだ」

 

エミヤの言葉に貴方も首をかしげる。たしかに人間を減らし、アマゾンを増やす。アマゾンの首謀者の目的は貴方は理解できた。しかし要となるその手段に関して貴方たちはなにも思い付くことはなかった。

 

「バビロニアのように、アマゾンたちが自ら人間たちを同族に変化させているのではないでしょうか?」

 

『できなくはないね。ラフムたちのように人間たちの体から新たに生物を増殖することは可能だ。ぶっちゃけた話、人間の素体というものは結構応用が効くからね。やろうと思えば何にでもなれる。ただしそれも魔術や魔力を媒介としていることを前提とすれば、だ』

 

マシュの意見にダ・ヴィンチが丁寧に答えていくが、最終的にはその意見を否定した。詰まるところ、魔力の有無というところがこの問題のネックになっているのかと貴方は理解した。

そこでさらにエミヤが言葉を投げる。

 

「もうひとつ要点になっているのは、アマゾンたちが()()()()()したことだ。この場合1人ずつアマゾンに変えていったというのは考えにくい。なにか要因となるものがあるはずだが...」

 

エミヤはそこで話を区切り、ダ・ヴィンチへと顔を向ける。エミヤと目のあったダ・ヴィンチだが、残念そうに眼を瞑り頭を横に振った。どうやら原因について思い浮かばないらしい。

 

【とにかく】

 

【アマゾンの暴走を止めないと】

 

重くなった雰囲気を払拭させるため、貴方は手を叩き目の前の課題を指し示した。自分を奮起させることも兼ねた貴方のその行動に、その場にいた全員が目を丸くさせるが、少しした後小さな笑みを浮かべたのだった。

 

「ふむ、先ほどの件で気落ちしていると思っていたが、なるほど。それでこそカルデアのマスターか」

 

『はい! いつでも前向きなのが先輩の良いところですから!』

 

エミヤの皮肉にマシュが貴方の代わりに誇らしげに答える。エミヤはその姿にやれやれと首を振り、貴方もそんなマシュの姿に癒されて自然と笑顔になるのだった。

 

『まぁともかく。アマゾンの生態に関してはこちらで引き続き調査しておこう。君たちも慎重に特異点の調査をお願いしたい』

 

話を戻したダ・ヴィンチの言葉に貴方は無言で頷く。人の生存を確認した今、一人でも多くの人を救出するために、早期の特異点解決が必要だと貴方もか考えていたからだ。

 

「さて、そうなればマスター。君も人々と一緒に休め。食事も摂っておくように。いざというときにマスターが指示を出せないようでは不甲斐ないからな。なに心配するな。見張りは私とナイチンゲールが行う。君は明日のための鋭気を高めておくんだ」

 

エミヤの説教じみたお節介に貴方は苦笑いをしながら、忠言どおりに軽く保存食を食したあと人々と一緒に毛布を被り、眠りについた。

 

 

ーーーーー

 

 

時刻は丑三つ時。

 

文明の明かりが消えたこの血みどろの世界では、月明かりのない深夜は闇が深く、また肉の腐敗臭も混じったせいでより恐ろしい雰囲気を作り上げていた。

そのような環境が普通である世界の、ある平屋の一室にて、カルデアのマスターである貴方は眠りについていた意識を覚醒させた。

貴方は自分が眠りから醒めた原因を理解していた。昼間に見ていたあの光景が自身にとって大きいストレスになっており、睡眠を妨げているからだ。今までも多くの残忍な光景を見てきた貴方だったが、人が食べられ、赤子すらも犠牲になり、さらにその頭部がコレクションのように並べられた光景は、あまりにも酷く、惨く貴方の脳裏に刻まれていた。

貴方は手を強く握りしめながら、その光景を自身の戒めとした。もうこんな思いをさせない。黒幕を突き止めこの特異点を解決してみせると、自身に強く言い聞かせた。

 

と、その時、通信用の端末から小さく映像が映る。そこにいたのは貴方の大事な後輩、マシュであった。

 

『先輩、大丈夫ですか? 急に先輩のバイタル値が高まったので失礼ながら通信させていただきましたが...』

 

どうやらマシュは自分を心配して連絡をしてきたようだと貴方は気づく。貴方は小さくお礼を言い、全く問題ないよ、とマシュを安心させるために優しく答えた。

 

『そうですか...先輩はとても強い人ですね』

 

【そんなことない】

 

【強がってるだけかも】

 

貴方はマシュに答えつつ、昼間のエミヤの言葉を思い出す。

 

〖「マスター、言ったはずだ。こんな状況、なんでもないほうがおかしいのだと。強がるな、とは言わない。マスターにとってその虚勢は力だろうからな。我々は君のそんな姿に惹かれ、君に手を貸し、そして君は世界を救ったのだ」

 

「だが、自らの役目は見出しておけ。これは明らかに君の領分から外れすぎている。こんな光景は君には似合わない」

 

「マスター、君は私のようにはなるなよ」〗

 

エミヤが言った自分の役目とは何か、貴方は思い返す。こんな光景は似合わない、と彼は言った。ならば自分がここで為すべきことは何か、貴方は考える。

特異点を修復すること。これは絶対的なことだ。役目というより義務である、と貴方は認識し、除外する。

サーヴァントを使役すること。これもまた違うと貴方は考える。魔力供給だけなら自分がする必要はない。むしろ自分よりも適任の魔術師がほかに存在するだろうと、これも除外する。

 

そこで貴方は気づいた。自分は今まで特異点を解決するために何を為してこれたのか。いつも必死に動いていたためか、自分が特異点を修復するなかで何をしてきたか、貴方は振り返ることをしてこなかったということを。

 

『あの、先輩...いきなりどうしたんですか...?』

 

貴方が唸りながら頭をひねっていると、目の前の映像ではマシュが貴方のいきなりの珍妙な行動に驚く姿が映っていた。そして貴方はピンと閃く。今までの旅の中で最も長く共に行動してきたマシュに尋ねるのがよいのではないかと。考え付いた貴方はすぐにマシュへと質問を投げ込んだ。

 

【俺の役目って何だろう?】

 

【今まで私は何をしてこれたんだろう?】

 

貴方が放った言葉にマシュはしばし驚いた顔を見せると、そのすぐ後に表情を崩し小さく笑い声を出した。

笑うようなことを聞いてしまったか、と貴方は少し恥ずかしさを感じていると、マシュはそんな貴方の感情を機敏に察してフォローを入れる。

 

『す、すみません先輩。いえ決して笑うことではないんでしょうが、おそらくカルデアにいらっしゃる皆さんが同じ質問をされれば、皆さん同じような反応をされると思います』

 

そんな笑うようなことを自分はしてきたのかと貴方はまた羞恥を感じていると、いいえ、とマシュがきっぱりと答える。

 

『先輩はきっと気づかれていないでしょうが、先輩がこれまで行ってきたことはどれも恥ずべきことではなく、多くの人や、サーヴァントの皆さんをも勇気づけることでした。もちろん私も、先輩の姿に勇気をもらって戦い抜くことができたんですよ』

 

マシュの優しい言葉遣いに、貴方は照れくさくなり、そんなことない、と返す。しかしマシュはゆっくりと首を振り貴方の謙遜を否定した。

 

『たしかに先輩は強くないかもしれません。魔術の才能も一介の魔術師よりも劣っているのかもしれません。しかしそれでも、先輩の優しさや勇気はその何百倍も価値があることなんです。私たちはそれを知っているので先輩に力を託せられるんです。

知ってますか先輩? 普通の人は瓦礫に埋もれた人と炎の中お喋りできないんですよ?』

 

優しさや勇気。

 

自分を慕う後輩は、貴方にそれがあると言った。なんてことはない。それ以外出来ることがなかっただけだ。

それを必死に続けていって、途中で挫けそうなこともあったけどへこたれずに、足掻き続けていたらいつか自分が求める光景を掴めるんだと意地を張り続けていただけだ。

 

 

けど、けどもしもその意地が、誰かの光になっていたのだとすれば。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

【...うん】

 

【ありがとう、マシュ】

 

 

貴方は小さく映像に映る、自慢の後輩へと感謝を述べる。

 

『先輩の力になれたのでしたらなによりです!』

 

貴方の謝辞にマシュは本当にうれしそうな笑顔を浮かべる。

そんな可愛い後輩の姿に見惚れていると、貴方はいつの間にか眠気を感じウトウトとしてきた。このまま睡眠に落ちるのは申し訳ないと、貴方はマシュに声をかける。そして意識が落ちる直前、貴方はなんとかマシュの返事を聞くことができたのだった。

 

『おやすみなさい先輩。きっといい夢が見られますように』

 

 

―――――

 

 

時刻は変わり明け方。

 

カルデアのマスターたちが眠る平屋の屋上では、赤い外套を羽織った男、エミヤが見張りとして辺りの警戒を行っていた。さらに屋内の方ではナイチンゲールも周囲に注意を払いつつ、いまだ体調の優れない人の看護にあたっていた。

 

その折、屋上にいたエミヤが先にその状況に気付いた。

 

「アマゾンか...」

 

エミヤが射貫くように見つめる視線の先には大量のアマゾンがこの平屋へと進んでくる光景があった。しかしそのアマゾンの群れの光景は、今までの食料を求めてやってきた散発的なものではなく、明らかにこちらを戦力としてみなし、壊滅させるための群れであることに赤い弓兵はいち早く感づいた。

エミヤはすぐに自身のマスターを念話で叩き起こし、状況を報告する。マスターのほうは最初は寝ぼけて驚いていたが、すぐに事態を把握し、エミヤにそこからの狙撃の指示を出した。

 

「ほう。ようやく弓兵らしい仕事が回ってきたか」

 

エミヤがニヒルに笑う中、平屋の中ではカルデアのマスターが人々を地下へと避難させる。いまだ地下倉庫はあの惨状を片付けられておらず、ナイチンゲールが衛生面から渋ったが、無暗に地上に出すよりも生存率が高いとマスターが妥協させたのだった。

 

弓兵は弓を投影し、直後にまた剣を投影してそれをまた弓の形へと変容させる。

狙うは先頭に立つアマゾン。弓を構えいざ狙いを定めたその時。

 

 

「あんたがカルデアってやつらの仲間か?」

 

 

背後から聞こえた問いに、エミヤは目を見開き、そちらのほうへと目を向ける。

エミヤが屋上から声の聞こえた地上へと見下ろした先にいたのは、スーツを着た年若き青年の姿であった。

 

「貴様、何者だ?」

 

「質問をしているのはこっちだが?」

 

エミヤの額から冷汗が零れ落ちる。彼は驚愕を隠せずにはいられなかった。

この男がまだ、ただの人間やアマゾンであったのならば、なぜこんな場所にいるのかというただの疑問ですんだのかもしれない。

しかしこの男はどちらでもない。なぜならば...

 

「貴様からは()()の気配しかしないぞ」

 

「こっちの話は無視かよ...」

 

眼前にいるこの男からは何も感じられないのだ。人としてあるべき所作や動作、息遣いなど、人があるべき気配がすべて()()()()()()のように存在しない。その異様さにエミヤの警戒は全開を振り切っていた。

 

「まぁいい。俺にはあんたたちを殺せって命令が出ているだけだ。だから俺はそれをこなすだけだ」

 

眼前の男から目を離せないエミヤは、さらに男が取り出したものにまたも驚愕を示す。

そう、それはつい最近同じものを、別の人間が持っていたのを目にしていたからだ。そしてそれは、あの天才画家からの報告にて宝具と見なされたもの。

 

「貴様...何故鷹山と同じベルトを持っている!」

 

エミヤの問いに男は答えず、ただ笑みを浮かべてそのベルトを腰に装着させ、一言呟く。

 

「アマゾン」

 

[SIGMA]

 

直後、男を中心に熱波が辺りに放たれる。しかしエミヤは眼前の男の注意を全く衰えさせない。

やがて晴れた熱波の先には、先ほどの好青年の姿などなく、一匹の怪物のみが存在していた。

 

鷹山仁と同じような顔つきにして、全身が凶器で出来ているかのような刺々しいフォルム。ただ違っていたのは、その体色が、灰色に染まっていることだけだった。

 

エミヤは考えた。この男は間違いなくこの特異点における原因の情報を持ち得ていると。しかしそれより早く、この男はここで始末すべきであると、本能が彼へと語りかけてくる。死人の気配、鷹山が持つベルトと同じ宝具。その要素が目の前の怪物を排除すべきであると断定させるのだった。

 

葛藤するエミヤを前に、怪物は言葉を発する。

 

「俺は、アマゾンシグマ」

 

自らをシグマと名乗るそいつは、さらに右手を上げるとエミヤに見えるように、右手で四本指をたてる。

 

「あんたは4手で詰む」

 

 

その言葉が引き金となった。

 

 

エミヤは平屋の屋上から瞬間移動するかのごとく、シグマへと向かって一気に飛び出していく。そして瞬時に干将莫邪を投影させ、二刀にてシグマの胴体を突き殺した...はずだった。

 

「...終わりか?」

 

「何っ!?」

 

エミヤは確かな手応えを感じていた。人間ならば即死の、サーヴァントならば霊基を崩したはずの一撃だった。しかし目の前のこの怪物は、致命傷の攻撃を受けてなおもこちらに話しかけるだけの余裕を持っていたのだ。

エミヤは危険を察知しすぐに二刀を怪物の胴体から引き抜こうとする。しかしその直前、シグマの左手がエミヤの右手を掴んだのだった。

シグマの反撃が、始まる。

 

「一っ!」

 

まず一撃。エミヤの腕を掴んでいないシグマの右手の正拳が相手の顔を捉える。

 

「ぐっ!?」

 

しかしエミヤも伊達に英霊として召喚されるわけではない。シグマの正拳を見切り、左腕で防御を行う。しかしそれでさえもシグマの勁力が上回りエミヤの左腕から鈍い音が鳴り、エミヤは小さく呻く。

 

「二っ!」

 

二撃目。シグマはエミヤの隙を作り出すと、次に彼の腹に膝蹴りを決める。

両腕を抑えられたエミヤは逃れるすべもなく、その腹でシグマの鋭い膝蹴りをまともに受け、堪えきれず口より血を吹き出す。

 

「三っ!」

 

三撃目。膝蹴りをまともに受け、エミヤの体が一瞬地面より離れる。シグマはその一瞬を見逃さず、浮いたと同時に左手を大きく回しエミヤの体を一回転させ、その勢いのまま地面へと叩きつける。肺から空気が押し出され、エミヤは乾いた声を出す。

 

そして最後の一撃。

 

[VIOLENT SLASH]

 

エミヤを地面に叩きつけたと同時に、シグマがベルトのグリップを回す。乱調な機械音とともに、鷹山の時と同じくシグマの腕のヒレが肥大化する。

そして...

 

「これで詰みだ」

 

シグマの宣言と共に、アームカッターがエミヤの胴体を切り裂いたのだったーーー。




次回、邂逅

シグマのVIOLENT SLASHに関しまして、作中はおろか設定的にも使用できると明言されていませんが、この度はご容赦を…
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