亜種特異点:EX 人害怪因地区 アマゾン   作:16:25教

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更新が大分遅れて申し訳ございませんでした。


第5節 EAT KILL ALL 3/6

『溶原性アマゾン細胞...人間をアマゾンへと変質させる細胞、とね。また恐ろしい単語があらわれてきたものだ』

 

溶原性アマゾン細胞。アマゾンの増殖について、その原因の一端かもしれない情報について水澤悠から聞き入れた貴方たちは、悪い予想が当たってしまったばかりに落胆の情報を隠せずにいた。

 

『人間を怪物に変異させる...以前にも経験したこととはいえ、やはりやりきれませんね...』

 

モニターの奥でもダ・ヴィンチが息をつき、マシュは明らかな落ち込んだ表情を見せていた。

するとその様子を見た水澤悠は疑問にを感じたのか貴方たちへと質問を投げる。

 

「君たちはもしかして、この事態に似た状況に会ったことがあるのかい?」

 

【ちょっと前に少し】

 

【色んな所を回ってきたからね】

 

水澤悠の問いに貴方が答え、それに続いてマシュが補足を入れる。

 

「エルドラドのバーサーカーさんからお聞きでしょうが、先輩と私は特異点を直す旅の中で、多くの英霊の方々に出会い、また多くの出来事の渦中に入り込んできました。その内のひとつに、人間を人間以外の存在に変質させる特異点もあったのです」

 

マシュの説明を聞き、水澤悠はそうか、と小さく呟くと、その表情に陰を落とし込んだ。

貴方は水澤悠のその表情に少し気がかりを覚えたが、それを尋ねる前にダ・ヴィンチが彼に質問を投げかけた。

 

『水澤くん、溶原性アマゾン細胞についてもっと詳細を聞かせてもらえないかな。最悪マスターくんの身に大きな危害が出てくる可能性がある対策を講ずるためにも隠し事はなしでお願いね』

 

ダ・ヴィンチの頼みに水澤悠は大きく首を縦に降る。

 

「はい、もちろんです。溶原性アマゾン細胞...さっきも言った通りそれは人間をアマゾンへと変質させる悪魔のような細胞です。そしてその発生源はオリジナルと呼ばれる素体...人間の遺伝子が組み合わさって変異したアマゾンなんだ」

 

『人間の遺伝子が組み合わさったアマゾン...しかしその場合水澤さんも該当されるのでは?』

 

マシュの質問に水澤は首を横に振り否定を示す。

 

「いや、詳しくは分からないけど僕の体では溶原性アマゾン細胞の生成はされていないみたいなんだ。たぶんこの体は人間の遺伝子に適応されたアマゾン細胞を基に作られたんだろうね」

 

水澤悠は自嘲気味に笑いながらマシュの言葉に答える。それに続き貴方の傍にいたナイチンゲールも質問を投げる。

 

「オリジナルと呼ばれる素体からの感染と言いましたが、感染した個体からの二次感染はあるのでしょうか? そうなるとマスターの保護はより一層の対策が必要になりますが」

 

ナイチンゲールの言葉に貴方は思わず息を呑む。自分ももしかすればあの食人生物のように変化してしまうのかと嫌な想像が頭を巡ってしまったからだ。

 

「それに関しては問題ないです。感染はオリジナルの細胞のみで二次感染はありません。でもここまで大きく感染が広がっているとなると、おそらくオリジナルの体組織を何かで広げているとみるのがいいと思います」

 

水澤悠の答えに貴方はホッとするが、同時に紡がれた言葉に再び緊張が走る。

 

『なるほど。そうなると感染を広げている原因は、水、とみるべきだね』

 

「そう考えるのが懸命でしょう。生前、軍の衛生問題において不衛生な水による感染症、病原菌の拡大は大きな問題になっていました。また故意に井戸に水銀を放ち一個中隊を内部から壊滅させる作戦もありましたので、それほど水の拡散能力は高いです。充分に可能性はあるでしょう」

 

『専門家にそう言われればもはや確実だ。マスターくん、これからはその世界の水分、いや十全を期して食料も取らないでほしい。かなりきついお願いだと思うけど、君の体のためだ。どうかわかってほしい』

 

【分かった】

 

【サバイバルは慣れてるから】

 

ダ・ヴィンチからの頼みに貴方はすぐに返事をする。なにより貴方自身も先ほどの話を聞き、喉が何も受け付けようとしていなかったからだ。

貴方の返事を聞きダ・ヴィンチも満足そうに首を縦に降る。その時、体を壁に預け包帯の巻かれたわき腹を手で押さえていたエミヤが、沈黙を破り口を開いた。

 

「水澤、と言ったか。溶原性アマゾン細胞についてはよく分かった。だが我々は貴様から肝心のことを聞けていない。オリジナルの存在について、そしてその存在と貴様の関係について、なぜそのことを知っているのかについて、そろそろ白状したらどうだ」

 

エミヤの鋭い眼光が水澤悠を貫く。水澤悠もまた、エミヤのその眼光をまっすぐに受け止める。

まるで一触即発な雰囲気にモニター越しからマシュが慌てて場を取り持とうとする。

 

『待ってくださいエミヤさん! そんな言い方では水澤さんを疑っているようです! 彼は私たちを先ほどの窮地から助け出してくれたんですよ!』

 

「甘いな。それもこいつらの自作自演だと見る事はできる。事情を知りすぎているのも疑わしいな。なによりこいつは我々を襲ってきたアマゾンと同じ存在だ。信用しきるほうが難しいだろう」

 

マシュの言葉にエミヤは努めて冷静に言葉を返す。貴方はエミヤの言うことは辛辣だが、しかし正論であると感じている。ゆえに貴方は水澤悠のほうへと向き、彼にまっすぐに話しかけた。

 

【できるなら話してほしい】

 

【貴方を信用したい】

 

貴方の言葉に、水澤悠は貴方の顔をしばし見つめてから視線をそらし、口を開いた。

 

「...確かに僕はオリジナルの存在と面識はある。でもそれについてまだ教えることはできない」

 

「なんだと?」

 

水澤悠の答えにエミヤが眉を顰める。他のサーヴァントたちも同じく水澤の言葉の真意を問うように空気を張り詰めた。

しかし水澤は周りのサーヴァントたちの空気に気圧されることなく、続いて言葉を繋げる。

 

「さっきも言った通り僕はこの事件の原因、つまりは人間をアマゾンにする溶原性アマゾン細胞の保持者、オリジナルの存在についてよく知っている。でも僕の知っているオリジナルはこんなことを率先してするような者ではなかった。この状況から、オリジナルの他に溶原性アマゾン細胞を拡散した元凶がいるはずなんだ。僕はその元凶について先に調べなくてはならないと思っている。それを突き止めるまでは僕は君たちにオリジナルについて喋ることはできない」

 

「話がつながらんな。確かに貴様の言うことが正しければその元凶とやらも特異点を作り上げた当事者として我々も警戒しなくてはならないだろう。だがそれが貴様が我々にオリジナルのことを語らないことと何の関係があるというのだ」

 

水澤悠の言にすかさずエミヤが疑問をぶつける。水澤は言葉に一拍置いた後、エミヤの質問に答えた。

 

「...彼の、彼らの来歴について僕からは話したくないんだ。僕の存在について疑ってもらったり警戒してもらうのは構わない。でも彼のことを、僕の話す言葉だけで判断はしてもらいたくない。僕がオリジナルのことを話せない真意は、ただそれだけだ」

 

水澤悠はそう言い終え、エミヤの鋭い眼光になおも物怖じせず見つめ返した。

一触即発の雰囲気が辺りを包み、貴方は場を取り持とうと発言しようとするが、その前にエミヤの口からため息がこぼれたのだった。

 

「...あまりにも人間的な感傷だな。聞けば聞く程に、貴様は甘い考えのもとでその人生を生きてきたのだとつくづく思い知らされる」

 

「...生前、同じことをいろんな人から言われました」

 

エミヤのこぼす言葉に、自嘲するように水澤悠が答える。しかしエミヤはそれに構わず言葉をつづけた。

 

「そんな甘い戯言をほざく阿呆を俺は知っている。あまりにも愚かで、馬鹿らしく、見ているだけでイライラする奴だった」

 

『あ、あのエミヤさん?』

 

【私怨入ってない?】

 

【いったん落ち着こう】

 

話すにつれてだんだんと言葉に怒気を含まれ顔に青筋が立っていくエミヤの様子に、堪らずマシュと貴方が声をかける。

少し落ち着いたエミヤは最後に水澤悠に言をこぼす。

 

「つまりだな。そのような感傷的な言を吐けるような者が人を騙すなどという巧妙なことは出来んということだ。いいだろう、貴様からオリジナルのことを問いただすのは保留にしておく。マスターもそれでいいか?」

 

【もちろん!】

 

【誰にも言いたくないことはあるから】

 

「ということだ。ダ・ヴィンチもそれで納得してもらえるか?」

 

エミヤは貴方から了解を取ると、加えてダ・ヴィンチの方にも確認をとる。モニターの奥では複雑そうな表情の天才画家の姿が映っていた。

 

『うーん、出来れば持ちうる情報はすべてこちらと共有してほしいのだが、でも憎まれ役を買って出てくれたエミヤ君の頑張りを無碍には出来ないからね。こちらもそれで納得しよう』

 

ダ・ヴィンチの言葉にエミヤはお前はいつも一言多い、とぼやきながら再び壁へともたれ掛かった。貴方はダ・ヴィンチの話からエミヤは聞きづらいであろうことを自分から聞き出してくれたのだと気付いたのだった。

貴方は一言エミヤに礼を言うと、エミヤは少し鼻を鳴らすだけで、はやく次の話に進めろと態度で表したのだった。

 

『で現状の話せる情報に関しては以上かな? では次はこれからの話をしよう』

 

「はい、まずはマスターの安全の確保が優先かと考えます。先程の水澤悠の話から食料事情に大きな弊害が出来ました。即刻サークルを確立して安全な物資の補充をすべきだと思われます」

 

改めて進行するダ・ヴィンチに、早速ナイチンゲールが意見を出す。

彼女の意見はある意味正しく、この世界の飲料が危険な以上、貴方にとって最も危惧すべきことは餓えである。マスターである自分がサーヴァントの足を引っ張るわけにはいかないため、貴方もナイチンゲールの意見に賛成の意を示した。

 

『その通りだ。幸いサークルである採石場は当初向かっていた目的地だったため位置はそこから遠くない。歩いて半日といったところかな?』

 

『はい、先輩の安全を確保するためにもすぐにでも向かうべきかと!』

 

カルデアのマシュとダ・ヴィンチもナイチンゲールの意見に賛成するが、しかしナイチンゲールがさらに言葉を続ける。

 

「しかしサークルに向かう場合に問題があります。私とMr.エミヤは付いていくことができません」

 

【えっ!?】

 

【なんで!?】

 

ナイチンゲールのいきなりの爆弾発言に貴方は驚いた声を出して彼女に尋ねる。

 

「まずMr.エミヤは言わずもがなです。この怪我では敵性存在との戦闘は出来ませんいえ私が許しません。傷が完治するまでは安静にしてもらいます。いいですねMr.?」

 

ナイチンゲールの迫力にエミヤは唸りながら小さく首を縦に降る。彼は押しの強い女性には弱いのだ。

 

「そして私ですが、マスターもご存じのはずです。ここには多くはないですが戦えない衰弱しきった患者がいます。皮肉な話ですが、牧場のなかで家畜として生かされていた彼等は、その牧場主がいなくなったことで他のアマゾンにとっての餌となります。今はまだ来ていませんが、数刻もすれば外のアマゾンたちが彼らを襲ってくることは必然でしょう。私は彼らの保護をしなくてはいけません。そのため、付いていくことはできないのです」

 

ナイチンゲールは意思の強い口調で話し、そう締め括った。

貴方はナイチンゲールの話を聞き、とても納得した。それはとてもナイチンゲールらしい理由であり、自分もまたナイチンゲールにそうしてほしいと思ったからだ。最初は二人がついてこないことに驚いた貴方だったが、話を聞き終えた時には彼等はここに残るべきだと考えを改めた。

 

『ではその場合、先輩と共にサークルを作りに行くサーヴァントは...』

 

『エルドラドのバーサーカーと水澤くん、ということになるね』

 

「......」

 

「バーサーカーさんはともかく、僕も?」

 

ダ・ヴィンチの言葉に、エルドラドのバーサーカーは興味なさげに腕を組んでいるだけであり、水澤悠は見るからに驚いた表情を見せた。そうするのも無理はなかった。先程まで、彼は貴方たちに疑われていたのだから。

 

「ほう、いきなり仲間としての信頼が試されることになったな。先に言っておくが、貴様がマスターに何かしでかした場合、座に戻れなくなるほど貴様を追い詰めるかもしれん。覚悟をしておけ」

 

エミヤはというとそんな水澤に対して、笑いながら脅しを利かせる。あまりにもあからさまな態度に水澤は苦笑いで答える他なかった。

 

『驚くことでもない。我々の今までの旅のなかで現地のサーヴァントと交渉して力を貸してもらうことも少なくなかった。そこの皮肉屋は分かりやすく警戒を見せてくれたが、万年人員不足である我々は力を貸してくれるものに対しては基本ウェルカムだよ』

 

『はい、ダ・ヴィンチちゃんの言うとおりです。エミヤさんもあんな態度をとっていますが、その実水澤さんが先輩の力になってくれることを期待しているんですよ』

 

ダ・ヴィンチとマシュの余計な一言に遂にエミヤがモニターの二人を睨み付けた。貴方はそんなエミヤの姿に朗らかになりながら、水澤悠へと言を放つ。

 

【採石場までお願いできるかな?】

 

【是非、力になってほしい】

 

ダ・ヴィンチとマシュ、そして貴方から期待を寄せられた水澤は、再び驚いた表情を見せるが、すぐに笑顔になり貴方へと手を差し出した。

 

「こちらこそ、よろしく。改めて、僕は水澤悠。アマゾンオメガに変身する、人類史の反英雄だ。でも、この場においては僕は命を懸けて君を守ることを誓うよ」

 

【よろしく!】

 

貴方は差し出された水澤悠の手を力強く握り返したのだった。

 

 

ーーーーー

 

 

「では、出発としようか」

 

エルドラドのバーサーカーの号令に貴方と水澤が頷く。

 

貴方が水澤と握手をしたあと、貴方たちはすぐに準備を始めた。ダ・ヴィンチとマシュは安全なルートの検索。エミヤとナイチンゲールは人々への状況の説明。そして貴方たちは採石場への出発の準備を行った。

そして数十分後、貴方たちはすぐに平屋から採石場はへと歩みを始めたのだった。

 

「ずいぶんと旅に慣れた様子だね。採石場へはけっこう距離もあるから飲み食いが出来ないとなると生身だときついと思うけど」

 

【アメリカ大陸を横断したこともあるからね】

 

【実は結構しんどいです】

 

道中水澤が貴方へと声がかかる。貴方は[胸を張りながら・どんよりとしながら]水澤の問いに答えた。

 

「なかなか大変な経験をしてるんだね...まぁいざとなったら僕が担いでいくから安心して」

 

「おい、あんまりそいつを甘やかすな。意外と図太い奴なのだから放置しててもいい。何、殺さねば死なんだろうさ」

 

【アマゾネスなのにスパルタだ...】

 

【誉められてるのか貶されてるのか...】

 

そんな会話を挟みながら歩いていれば、貴方たちの視界に人型の影が写る。アマゾンだ。

 

「言っているそばからお出ましだ。あまりにも醜い...このような奴等が誇り高きアマゾンの名を騙るなど、堪えきれない侮辱だ...っ! 殺す、殺すコロスコロスコロスーーー!!!」

 

アマゾンの姿を見たエルドラドのバーサーカーは何かが切れたように理性をなくし、アマゾンのもとへと走り出していく。それを見た水澤はまたか、と呟きながら貴方へと説明した。

 

「彼女は僕がアマゾンのことを説明してからアマゾンを見るとずっとあんな調子なんだ。なんというか既視感がすさまじくて...放っておけなかったから僕が勝手に彼女に付いていったんだよ」

 

【まぁそれはね?】

 

【一応アマゾネスの女王だから...】

 

貴方は暴走するエルドラドのバーサーカーを見ながらしかし遠くを観るような目をした。

 

「マスター、指示を頼むよ。僕は君のサーヴァントとなった。少しは信頼してもらえるように頑張るよ」

 

【エルバサちゃんの援護をお願い!】

 

【頼りにしています!】

 

水澤の言葉に、貴方は指示を出す。すると水澤もベルトを手に持ちそれに答えた。

 

「それじゃあ、行こう...アマゾンッ!」

 

熱波を纏い、緑色の影が異形の群れへと駆り出していったーーー。




次回、過去話

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