サポートサーヴァント
エルドラドのバーサーカー
アマゾンΩ
ーーーー久しぶりに外に出た。
あの人からはなるべくここにいろと部屋を渡されたが、あいにく室内での娯楽はまったく心得ていなかったから何をすればいいか分からなかった。
できたのは昔の思い出を思い起こすことだけ。
それも大分薄れてきて、自分がどんな生き方をしてきたのかすら忘れてきている。
そんな中で思い起こせたのは古くて朽ちかけた牧場。
そこで自分がどんな思い出を作っていたのか、少し気になったから食事を取りに行くついでに外に出てみた。
後ろには懲りずに連いてくる2体の怪物。
監視が目的なのか、それとも他にやることがないのか。
そういえば名前を決めるんだった。
なるべく覚えやすいものがいいかな。
そうだな、だったらーーー。
ーーーーー
「ふぅ、スッキリした」
【エルバサちゃんヤりすぎ!!】
【辺り一面に命だったものが...】
道中、アマゾンを見かけるとすぐに突っ込んでいき戦闘をおこなってしまうエルドラドのバーサーカーの呑気な一言に、遂に貴方は大声で突っ込んでしまう。
さらにその横では頭を抱えた水澤悠もため息をはいていた。
「無駄だよマスターくん。霊基がバーサーカーだし、言って素直に聞いてくれる人じゃないのは経験でよく分かる...」
まるで以前にも同じような人種を相手にしていたかの言い方をする悠は、カルデアが送ってくれたマップを頼りにそのまま先へと進む。
エルドラドのバーサーカーはいうとそんな悠をジと目で睨みながら一言ぼやいた。
「なんだ、まるで私が癇癪を起こした子供のような言いぐさだな。貴様だっていざ戦闘を始めれば狂戦士にも負けぬ派手な戦いを始めるではないか。うむ、似たようなものだ」
【すごいこじつけを見た...】
【断じて同じではない】
貴方は極論を放つエルドラドのバーサーカーにツッコミをいれながら悠の後ろをついていく。エルドラドのバーサーカーもまた貴方たちに色々と言われながらも渋々と殿につく。
【そういえば水澤さん】
【鷹山さんとはどんな関係?】
歩くなかで話のネタとして貴方が話題を振ると、悠は歩く先を見ながら答える。
「悠でいいよ。君はマスターなんだから...そうだな、仁さんとの話をするなら僕の出生から話すことになるし、ちょっと長くなるけど、それでも聞くかい?」
【もちろん!】
【あっ、でも話したくないことならいいですよ?】
貴方が多少気を遣うと悠はふっ、と少し笑いを溢した。
「構わないよ。なんだかずっとバーサーカーさんと一緒に歩いてたから気を遣われるのが新鮮だね」
「遠回しに私をディスるな」
エルドラドのバーサーカーが悠の発言に少しムッとすると、同時に何もない虚空に映像が写りだす。カルデアからの通信だ。
『面白い話をしているね。悠くんの出生、それは私としても実に興味深い。よかったら共に聞かせてくれることを許してくれるかい?』
モニターから出てきたのは言わずもがなダ・ヴィンチだった。ダ・ヴィンチは悠に傍聴の許可を求めると、悠もそれに答える。
「もちろんいいですよ。どこから話そうかな...そうだね。実は僕は最初、自分がアマゾンだと知らされずに生かされていたんだ」
悠はダ・ヴィンチに返答すると、静かに、そしてまるで自分にも言い聞かせるかのように語り始めた.........
僕が母さんの遺伝子から生まれたアマゾンだということはさっき話したよね?
僕は母さんのもとで生まれて、ずっと家のなかに閉じ込められていたんだ。自分のことをなにも知らされずにね。
僕が置かれた部屋は家具が最小限に置かれた殺風景な部屋だったよ。
着る服も白色の無地のものばかりで、食事もサプリメントだけだった。外に出ることも許されていなくてね。当時の僕はまるで家で飼われているペットのような存在、いや水槽の中の魚かな? ともかく普通の青少年のような生活はしていなかったよ。
でも別に寂しいとか嫌だなって感情は起きなかったな。僕自身、生まれたときからその生活が普通だったから。不自由もなかったし不満もなかった。
趣味として水槽作りもさせてもらっていたからね。
それに妹と呼べる人も...いやこれはいいか。ともかくアマゾンである僕の出生は、意外と静かなものだったんだ。
水澤悠はそこまで述べると貴方の方を向く。そのとき貴方が見た悠の顔は、過去を懐かしむような穏和な表情ではなく、まるで今言ったことが他人事であるかのような感情のない表情であった。
【そこからどうしてアマゾンに?】
貴方が尋ねると、悠はまた前を向き語りを始める。
「...僕が自分をアマゾンだと気づいたきっかけは、僕のある我が儘からだったんだ」
さっき不満はなかったって言ったよね?でも本当はひとつだけ嫌なことがあったんだ。
それは母親から絶対に毎日続けるように言い渡されていた、投薬だった。
なんのための薬か、自分は病気なのか、それすら伝えられずただ続けるように言われていたんだ。
...察する通り、それは僕の中のアマゾン細胞を抑えつける抗生剤だった。僕はそれを打ち続けることが日に日に嫌になってきていた。つまり僕の中にあるアマゾン細胞が、次第に覚醒しようとしていたんだ。今思えば、よくもそれまで耐えきれていたと思うよ。
そしてある日、僕はついにその投薬を自分の意思でやめた。それによって僕の中のアマゾン細胞が活性化して、そして僕は遂にアマゾンとして覚醒したんだ。
「仁さんとはその時に知り合ったんだ」
水澤悠はそう言うと顔を天に向ける。今度は他人事のような顔ではなく、しかし知人を思う優しい顔でもない、何かを哀れむ表情を張り付けて。
「仁さんは、その時からアマゾンを殺し尽くすことに執着していた」
それを聞き、貴方が思い出したのはアパートの外で殺戮を繰り広げていたアマゾンアルファの姿。
アマゾンを殺すことだけに特化した彼は、その当時からの戦闘により今でも研ぎ澄まされているのだろうと貴方は予測した。
「当時の僕は混乱していた。今まで自分は人間だと思っていたからね。でも仁さんはそんな僕に、お前は人を食うアマゾンだと突き付けたんだ。
怒りもした。知っててそれを教えなかった母親にも、同じアマゾンである僕にアマゾンを殺せと命じる人たちにも、そしてアマゾンの命を弄んだ奴らにも。その中で僕は、自分なりの答えを出した。そして、とても大切な人から、優しい願いも受けた。これが正解だったかどうかなんて分からないけど、精一杯の力を尽くして生きていった。仁さんとはその途中で何度もぶつかり合って、時々手を貸したりもしたけど、結局は...」
そこで話を切り、また悠は貴方の方を向く。今度は優しい、小さな笑みを浮かべながら。
「これが僕の出生。仁さんとのことはあんまり話せなかったけど、あんまり言うと本人が嫌がるからね。ごめん」
【謝らなくていいよ】
【話してくれてありがとう】
小さく頭を下げた悠に、貴方はお礼を言う。それを聞き悠もまた小さな声で貴方に謝辞を述べた。
「聞けば聞くほどに虫唾の走る話だ。人自らが生み出した異形の怪物のせいで、人理の危機が訪れる...まさしく人間の愚かさの象徴というものだな。こいつらは」
傍で聞いていたエルドラドのバーサーカーも、悠が話終えたのを期に感想を述べる。その言葉には、頑なに怪物らを自分達の聖地の名で呼ばないようにしている意思が存在しているようだった。
『ふむ、エルドラドのバーサーカーの言うことは、こちらとしても耳が痛いね。生命を弄ぶというのは、カルデアのなかでも他人事ではないからね』
『.........』
ダ・ヴィンチがそう言うと、彼女の隣でモニターに入り込んでいたマシュが目を俯かせるのを貴方は気付いた。
ダ・ヴィンチの言ったカルデアが命を弄んだという事実、それはそのままマシュの存在へと繋がることであったからだ。
『元来、生物が優等種を求める事例は数多くある。人間以外でも獅子だって我が子を谷から落として育てていたのだし、スパルタなんてその語源の通り厳しいという言葉では通らないほどの英才教育を若人に積ませていたみたいだからね。その欲求を否定することは出来ない』
ダ・ヴィンチは生物の進化への欲求について語る。貴方や悠はもちろん、エルドラドのバーサーカーも、ダ・ヴィンチの語る言葉に耳を傾ける。彼女もまた、女戦士を育ててきた女王だからこそ、ダ・ヴィンチの語る話には共感を持てるのだろう。
そしてまた、ダ・ヴィンチもエルドラドのバーサーカーもその欲求に理解を持てているからこそ、アマゾンという存在を許容できないのだ。
『生物の進化への欲求は否定できない。だがしかし、だからといって進化のために他の生命を勝手に産み出して、要らないものだからと手前勝手に排除しようとするのは、あまりにも業が深すぎる。それが、生まれたばかりの何も知らない弱い生物ならなおさらね』
ダ・ヴィンチは影を含んだ声色でそこまでを話すが、すぐに強い眼差しを帯びた表情に戻り、今度は貴方に強い口調で話しかけた。
『アマゾンはその誕生の経緯こそ悲劇だが、しかし何分彼らは強すぎた。マスターくんも察する通り、このままアマゾンの繁殖を放置すれば、この世界の人理は文字通り食い荒らされるだろう。優しい君には酷な話だろうけど、あまりアマゾンに同情しすぎないでくれよ?』
いいね?、とダ・ヴィンチは強く貴方へ問いかける。
貴方はその問いに対し、
【強く頷く】
【悠の表情を覗く】
貴方の行動に、悠は何も言わず、ただ見守るだけであった。
「ちょうど話が落ち着いたところで報告だ。物陰から奴らがこちらをうかがっている。先手をとるぞ」
エルドラドのバーサーカーの一言で貴方たちの周りに緊張と警戒が走る。
悠もまた、ベルトを取り出していつでも戦闘体制に入れるようにしていた。
すると、エルドラドのバーサーカーの言う通り、道の物陰から複数のアマゾンが虚ろな目でこちらを捉えながら唸り声とともに現れ始めた。
「.........」
悠はそんなアマゾンたちを物憂げな表情を浮かべながら見つめる。
貴方は悠のその表情に気づきながらも、今はただ自分のやるべきことを見つめ直し、血の臭いが漂う空気を気にせず深呼吸をする。そして二人に対して強い口調で号令をかけた。
【行くよ、二人とも!】
「無論だ。奴らはすべて殺す。皆殺す。殺す殺す殺す殺すころすころすころすコロスコロスコロスコロスコロスコロスーーーーー!!」
エルドラドのバーサーカーの叫びとアマゾンたちの雄叫びが重なりあい、戦闘の火蓋は切られた。
次回、再会
配布星4はニトちゃんにします。周回に便利すぎる...