サポートサーヴァント制限
アマゾンΩ
道中、疎らに襲ってくるアマゾンたちを危なげなく退けながら貴方たちは遂に目的地である採石場にたどり着いた。
「やっと着いた。飲まず食わずだったからマスターも大変だったよね。もう少しだから」
集団で前を歩く悠はその後ろで額に汗を流しながら息をつく貴方へと気遣いの言葉をかける。
それに対して貴方は、両腕を挙げてまだまだ元気であることをアピールしながら笑みを浮かべて返答した。
【ヘーキヘーキ!】
【気遣ってくれてありがとう】
悠は貴方の動きに小さく笑みを浮かべ返すと、また前へと向き直った。
そんな折、貴方の持つ端末から立体映像と音声が流れ出る。そこに映るのはマシュだった。
『採石場の中心地がちょうど霊脈の真上となっています。道中大変でしたが、もう少しの辛抱です。先輩、ファイトです!』
マシュもまた貴方に向けて力強いエールを送ってくれる。貴方は健気にもこちらを気遣ってくれる後輩の言葉に自然と笑みを溢しながら、先程よりも足が軽くなったような感覚を得た。これならばもう少し前に進むことも余裕だろうと感じつつ、貴方は映像のマシュに感謝の言葉を送った。
しかし束の間、同じくモニターの奥に映るダ・ヴィンチが深刻な声でこちらに呼びかけた。
『いやちょっと待ってくれ。その先に霊脈があるのは確かだ。でもその奥から多大な生命反応が検出されている。明らかにアマゾンの群れだ』
「何だと?」
ダ・ヴィンチの報告にエルドラドのバーサーカーが思わず聞き返す。悠もまた表情を強張らせ、貴方のこめかみには疲れ以外の汗が流れていった。
『これは...罠とみたほうがよいのでしょうか?』
マシュが緊張を含んだ声で誰に言うでもなく言葉を投げる。
それに答えたのは意外な人物、悠であった。
「それは...考えにくいな。この現状の黒幕が誰かはまだ不明だけど、少なくともアマゾンたちは魔術なんてものを知らない。そんな彼らが霊脈なんて存在は知る由もないはずだ。なのに待ち伏せなんて...」
悠は顎に手を当てて考え込む。確かに道中で聞いた悠の話から、アマゾンやアマゾンを産み出した研究者たちが魔術に通じていたなどの話はなかった。しかし現にアマゾンたちは貴方たちを待ち受けるかのように採石場に集っている。これを偶然と見るか、あるいは...
【黒幕に魔術に長けたものがいる?】
【黒幕は魔術師?】
貴方が呟くとダ・ヴィンチが食いつくように答える。
『その可能性は十分に考えておく必要があるね。この地の霊脈はそこまで強くない。カルデアのセンサーでようやく見つけたぐらいの場所だ。なのにそれを先回りで探られていたとなると、中々の魔術師が向こうに潜んでいると考えた方がいいだろうね』
ダ・ヴィンチの言葉に貴方は息を飲む。生存能力の高いアマゾンに魔術師というパーツが組合わされば、より大きい脅威になるだろう。貴方たちは不安を募らせるが、傍にいたエルドラドのバーサーカーがそんな貴方たちを一喝する。
「だからなんだというのだ、くだらん。そもそも向こうにサーヴァントがいた時点で魔術師の存在など予見できていたはずだ。今さら魔術師の存在の有無など無駄な思考に囚われるな」
『いやまぁ、それもそうなんだけどね...』
エルドラドのバーサーカーの言葉に返す言葉をなくすダ・ヴィンチに、さらにエルバサは言葉を投げる。
「やるべきことは変わらん。奴らが霊脈を占拠しているのならば強襲して奪うだけだ。罠かどうかなどそれから考えればいい」
【すごくバーサーカーだなぁ】
【でもそれしかないね】
貴方はエルドラドのバーサーカーの案に凶戦士らしさを感じるとともに、現状を考えこむよりそれが一番であると思い至り、彼女の意見に乗った。
「魔術師の存在...溶原性アマゾン細胞...もしかして何か関わりが...」
一方、悠は魔術師という単語を聞いてからブツブツと呟く仕草を続けている。貴方、そしてダ・ヴィンチはそんな彼が気がかりになり話しかけた。
『どうしたんだい水澤くん? 魔術師の存在がそんなに気になる?』
ダ・ヴィンチに声をかけられた悠はようやく顔を上げて貴方たちの方へと向いた。
「いや、きっと僕の考えすぎだから...バーサーカーさんの強襲の案には賛成かな。ここで考え込んでも埒が明かないし、そろそろマスターにきちんとした物資が必要だと思うから」
『水澤さんの言う通りです。先輩のバイタル値は今はまだ正常値ですがこれ以上低くなると警戒値になりますので...』
悠とマシュの意見も加わり、貴方たちの方針はあらかた決定する。
『では強襲は決定だね。次は作戦内容だ。幸いここにはライダーのサーヴァントが存在する。なら、やることはひとつだけだね』
ダ・ヴィンチはニヤリと笑いながら楽しそうに作戦内容を話す。
これは随分荒っぽくなりそうだと、貴方は彼女の表情から予見した。
―――――
熱い空気が流れ込んでくる。
採石場に集ったアマゾンのうち、一番外側にいたアマゾンたちがそれに気づいた。
続いて感じたのは遠くから聞こえる音。
それは空気が弾けるような、地面を散らすような、不快感を感じさせる爆音だった。
その音が徐々に大きくなってきている。こちらに近づいてきているのだ。音に気づいて多くのアマゾンたちが音の聞こえてくる方向を向く。音はなおも大きくなってきている。
採石場の中心地はくぼみのような立地になっていた。そのためアマゾンたちは遠くからの音や匂いに気づけてもその正体を視認できない。アマゾンたちはこちらに迫ってきている爆音の正体が分からなかったのだ。
アマゾンたちは緊張などしない。ただその音に反応しているだけだ。そして遂に音がすぐ近くまでやってきた。その時。
アマゾンたちの目の前に金属の馬、バイクがくぼみの上から飛び出してきたのだ。
「ーーーーーーーッッッ!!!!!!」
その直後、バイクからまるで人間らしからぬ雄叫びが炸裂し、アマゾンたちの耳をつんざくと、その雄たけびの主、エルドラドのバーサーカーが飛翔しているバイクから、群れているアマゾンたちの中心へと鉄球を抱え、榴弾のごとく飛び落ちていった。
突然の出来事に食欲しか持たないアマゾンですら混乱が生じる。しかしそれこそ貴方たちの狙い。混乱しているアマゾンたちに対しエルドラドのバーサーカーは容赦なくその手の鉄球を振り回し、周りにいるアマゾンたちの尽くを殺戮していった。
同じ頃、飛翔しているバイクの上では既に変身を終えている悠、アマゾンオメガとその後ろにピッタリとしがみついている貴方の姿が合った。
【なんと無茶な作戦!!】
【耳がキーンとする...】
貴方は大声を挙げながらバイクの上で感じる浮遊感の恐怖と戦っていた。
ダ・ヴィンチが語った作戦、それはあまりにも単純で、あまりにも乱暴で、そして現メンバーで出せる最善の策であった。
その名も『アマゾネス爆弾作戦』。採石場の立地がくぼみになっていることに気づいたダ・ヴィンチの作戦は、まず、アマゾンオメガの宝具の一つであるバイク(正式な名はジャングレイダーと言うらしい)で飛び出たあと、エルドラドのバーサーカーをアマゾンたちの中心点に投下。アマゾンたちに混乱を与えた後、その機に乗じてエルドラドのバーサーカーの制圧力とアマゾンオメガのバイクによる撹乱で、向こうの数を減らしていく作戦であった。
となるとマスターである貴方はどうなるかと言えば、アマゾンオメガが操るバイクに共に搭乗し、その背中に必死にしがみつくほかなかったのである。
その際、突如作戦にないエルドラドのバーサーカーの雄叫びを受け、貴方の鼓膜は大変なことになったが、誤差の範疇であろうと、モニターで見守るダ・ヴィンチはゆっくりと目を逸らしたのであった。
「ーーーーーーーッッッ!!」
[violent break]
しかし作戦自体は開幕として上々の仕上がりであった。
ようやく反撃の体制を整えたアマゾンたちに、なおも雄叫びを上げながら狂気の剛力を見せつけるエルドラドのバーサーカーに、飛翔を終え地面に勢いよく着地した(その際着地点にいたアマゾンを容赦なく踏み潰した)アマゾンオメガは同時にベルトのグリップの片方を引き抜きどのような原理は分からないが槍を生成すると、片手でバイクを運転しながら次々とアマゾンを轢き殺し、槍で突き殺していった。
制圧と撹乱。
見事に噛み合った二人のサーヴァントの活躍により、アマゾンたちの群れはドンドンと数を減らしていく。
これはなんとかなりそうだ。貴方が周囲を見ながらアマゾンオメガの背中でそう考えていると、突如、アマゾンオメガがバイクの進みを止めたことに貴方は気づいた。
【悠さん?】
【どうしたの?】
貴方はアマゾンオメガの背中に問いかけるが、返事はない。様子を見ると、どうやら彼は顔を進行方向に向けてまるで時が止まったかのように固まっていた。
気になった貴方はアマゾンオメガの背中から顔を出して前方を覗いた。そこにいたのは...
「久しぶりだね、水澤くん」
「マ.........モ...ル、くん」
そこにいたのは、少年と呼べるほど幼い顔をした青年の姿だった。
服は鷹山や悠と同じぐらい薄汚れ、髪も全く整えられていなく、靴も履いておらず、裸足でそこに立っていた。
一番に目を引いたのはその顔であった。さきほど幼い顔と評したが、それはなにもない綺麗な顔のままであったならばそうであろうという仮定の話だ。実際に、貴方の目に映る彼の顔は、
アマゾンオメガ、水澤悠は先程のかすむような声をひねり出してから固まり、動かない。
貴方は彼の異変に気づきながらしかし、目の前で佇むマモルと呼ばれた青年のあまりの異様さに動くことができなかった。
そのまま時が止まったかのように動けない貴方たちに、いや、悠に対し青年は話しだした。
「君もこっちに来てたんだね。もっと早く会えればよかったんだけど、こっちもなにかと忙しくて。でもこうして会えて嬉しいよ、水澤くん」
まるで成人式で久しぶりに合う友人に声を掛けるかのように、青年は笑顔のまま気さくに悠へと声をかける。
それを受けてようやく悠も硬直から解かれ、青年へと言葉を返した。
「どうしてここに!? このアマゾンたちはマモルくんが操ってるの!? それにその顔...もしかして...!!」
「うん。食べたよ。人間」
素っ気なく言うマモルと呼ばれる青年の答えに、悠は絶句する。仮面で覆われたその姿だが、貴方はその裏で彼の絶望に暮れた表情が写るのが見えた。悠の感情が伝播するように、貴方もまたマモルの答えに眉を顰めさせる。
すると、ようやく貴方の存在に気づいたマモルはさきほどまで貼り付けていた笑顔を瞬時に無くし、無表情で貴方を見つめた。
「その子が、カルデアのマスター?」
「!?」
咄嗟に、悠は片腕で貴方を守る仕草をとる。貴方もまた気づいていた。今、マモルと呼ばれる青年が貴方に対し強い殺気を放っていることに。
「そっか...水澤くんはまた、僕たちを守らないんだね」
「違うマモルくん。こんなの、間違ってる」
「でもね、いいんだ。もう」
噛み合っていない。悠と、マモルと呼ばれる彼の会話が、全く成り立っていないことに貴方も、悠も気づいている。
気づいていないのはマモルだけだ。
マモルの周囲に多くのアマゾンが集う。
「見てよ、このアマゾンたち。こんなに増えたんだよ。いやもっと。これ以上にもっといる。彼らみんなが僕たちのために人間と戦ってくれる。守ってくれるんだよ!」
「ダメだ、マモルくん...こんなの絶対ダメなんだ...」
震えた声で紡がれる悠の願いは、届かない。
「きっと彼らの力を見たら水澤くんも考えが変わるはずだから。だから...カルデアのマスター、渡してくれる?」
「マモルくん!」
枯れた声で吐き出される悠の叫びも、通じない。
「大丈夫、水澤くんは殺さないよ。でも邪魔をするんだったら、ただですむと思わないでね」
「どうして!!」
【悠さん!!】
【やるしかない!】
貴方の声に押されながら、なおも悠の動きは鈍い。
「僕はっ...! 僕はっ...!!!」
アマゾンたちの凶刃が、貴方たちに迫る。
次回、奴が来る