サポートサーヴァント
騎 アマゾンオメガ
凶 エルドラドのバーサーカー
戦闘は、混沌に支配された。
「ぐっ!!」
「どうしたの水澤くん? 戦い方に切れがなくなってるよ。さっきまでの威勢はどこにいったのかな?」
襲い来るアマゾンたちをいなしていく悠...アマゾンオメガに対し、マモルと呼ばれる青年は顔に笑みを浮かべながら尋ねてくる。
アマゾンオメガはその質問を耳にいれながら、しかし答えることなく食欲を向けて襲いかかってくるアマゾンたちに意識を集中させようとしていた。
しかし、今のアマゾンオメガは、直接戦闘に携わっていない貴方から見ても本調子ではないことはすぐに見てとれた。その原因はただひとつ、あのマモルという青年の存在のせいに違いなかった。
「ほらほら、アマゾンたちはまだまだいるよ。そんな調子じゃカルデアのマスターを守りきることなんて出来ないね。こんな風に」
「■■■■■ーーーー!」
「しまった―――ッ」
死力を尽くしアマゾンを駆逐し続けるアマゾンオメガを尻目にマモルが貴方を見据えて手を挙げる。するとマモルの後ろからコウモリ型のアマゾンが飛び出し、アマゾンオメガの上空を越えて直接貴方を狙いにいったのだ。
反応が遅れたアマゾンオメガはすぐ貴方のもとへ駆け寄ろうとするが、周りのアマゾンたちが即座に囲みアマゾンオメガの動きを封じた。なおも速度を落とさずに貴方に迫ってくるコウモリアマゾンに、貴方たちは万事休すかと思われた、その時。
――――――ッッッ
貴方の頭上すぐ近くまで迫ったコウモリアマゾンは、その動きを完全に静止させた。そしてその頭部には鎖に繋がれた鉄球が頭蓋深くまで叩き込まれており、貴方はひと目見てコウモリアマゾンが絶命していることに気づいた。
「何?」
貴方という大将首を討ち取った気でいたマモルは突然のその光景にたまらず目を顰めさせた。それとは反対に貴方とアマゾンオメガはホッと息をつく。
コウモリアマゾンは悲鳴を挙げることなく貴方の目の前に落下すると、貴方はその鉄球に繋がれた鎖の先にいる人物に視線を投げて声を挙げた。
【エルバサちゃん!】
【ありがとう!】
そして貴方の声に反響するように返事はすぐ返ってくる。女性にも関わらず獣のごとく猛々しい叫声が。
「気を抜くな貴様ら!! 戦の場において真っ先に死ぬのは死に怯えたものからだ! 誇りのために死ぬ覚悟もないのに死にに来たのか!」
鎖の先にいた人物、エルドラドのバーサーカーは貴方たちに怒りをも込めた若干意味不明な叫び声を上げながら鉄球と鉤爪を駆使し周りのアマゾンたちを次々に駆逐していった。それはもはや悪鬼の如き殺戮ぶりである。
貴方は冷や汗を流しながら、感謝の言葉をエルドラドのバーサーカーへと小さく掛けて、再び視線をアマゾンオメガとマモルの方へと向ける。見るとアマゾンオメガは貴方が視線を外した一瞬のうちに周りを囲んでいたアマゾンたちを一掃したようで、現在はマモルと向かい合う形で挑んでいた。
「マモルくん...もうやめよう。こんなことをしても何も変わらない。意味はないんだ」
アマゾンオメガ...悠はマモルへと必死に説得の声を掛ける。彼らの関係を知らない貴方にとっては悠の話す内容は要領を得なかったが、しかしその様から彼らは以前仲間だったのではないかと予想を立てることはできた。
一方、マモルと呼ばれる青年は悠の説得の声をどこか上の空のように聞き流していた。目線はしっかりと悠の方へと向いているのに、まるで悠の背後にあるものを見つめているかのような表情であったのだ。
悠もマモルのその雰囲気に違和感を持ち、説得を中断して心配そうに彼の名前を小さく呼んだ。その時だった。
「ハハハ、ハハハハハ、アハハハハハハ!!!」
「!」
【!】
マモルは上の空だった表情を一変させ笑顔になり突如として奇声とも取りかねない笑い声を挙げ始めたのだ。
あまりにも不自然な挙動に貴方と悠、アマゾンの軍勢やエルドラドのバーサーカーすらも動きを止める。
そしてマモルはしばらく笑い続けた後、今度はしっかりと悠を視線に据えた上で言葉を放った。
「意味はね、あったよ、水澤くん。その証拠にここにいるアマゾンたちはこうして、
「っ! それ、は」
マモルの言葉に衝撃を受けた様子を見せる悠。貴方は彼らの問答の意味が分からず険しい顔つきでいると、端末から映像が映りだした。ダ・ヴィンチだ。
『なるほど、そういうことか...』
【ダ・ヴィンチちゃん?】
【彼の言いたいことが分かるの?】
ダ・ヴィンチの意味深なつぶやきに貴方が突っ込むと、ダ・ヴィンチは小さく頷き貴方に向けて解説した。
『彼はそう難しい事を言ったわけじゃない。前提として彼らアマゾンは本来の人類史では存在しない、あるいは存在しても人の記憶に残らず絶滅する...いや、人間によって絶滅させられる運命の生物だった。だがしかし、この特異点では彼らは絶滅を逃れ存在が立証された確立した生物となっている。そのことを彼は言っているんだろう』
ダ・ヴィンチの話に、貴方は以前に悠が言った言葉を思い出す。
[と、言ってもアマゾンという存在自体が確立が不安定で召喚されることなんてないはずだったんだけど、今回はとても安定した状態で現界している。多分この惨状が原因だと思うけど...]
【アマゾンの存在が確立してるから】
【悠さんも現界可能になってるのか】
貴方の考察にダ・ヴィンチはその通りと笑顔で頷いた。
『おそらく彼らの目的の一つはそれだったんだろう。アマゾンという存在の固定化。それによりアマゾンのサーヴァントを呼び出すことを可能とさせているのだろう。かくいうマモルとかいう青年、彼もまたアマゾンであり
【あの人が】
【サーヴァント!?】
ダ・ヴィンチの言葉に貴方は驚くが、その反応を他所にダ・ヴィンチは話を続ける。
『マモルと呼ばれる彼はアマゾンを更に群体化させて人類史を乗っ取るのが目的かもね。しかしそんな最中、彼の目の前に同朋である知り合いが現れてこう言った』
『その行為に、意味はない。同じアマゾンである、友人に...』
ダ・ヴィンチの言葉に被せるようにモニター越しでマシュが悲しそうに呟く。貴方はようやくマモルの言った言葉の意味を知り、衝撃を受けた。
そしてその会話が聞こえていたのだろう、マモルはまたも吹き出すように笑いだした。
「そうだよ水澤くん。意味はあるんだ。存在しない僕たちアマゾンがこうして世界に存在できている。これだけで、この行いには意義があったんだよ。それに、君がそうやって現界してアマゾンたちを殺せてるのは、今君たちが殺してるアマゾン達がいるからなんだよ。それをさ、偉そうに意味がないって、君のやってることこそ無駄なんじゃないの?」
マモルは煽るように悠に向けて言葉を放つ。それに対し悠は拳を力強く握りしめると、喉から絞り出すかのような声でマモルの言葉に答えた。
「僕も、来たくてここに来たわけじゃ、ない...っ!」
「そうなの? だったらさっさと死んじゃえばいいのにさ。というかアマゾンのくせになんで人間に肩入れしてるの? こんなの間違ってるって、それ完全に人間の価値観じゃん」
悠が一言出せば、マモルはそれを上回る言葉を悠へとぶつける。対話での解決はもはや不可能であった。しかし、悠はなおも諦めなかった。
「駆除班の人たちはこんなこと、マモル君に望んでいなかった! あの人達はマモル君のことをずっと忘れなかった! それでも、人間を食べることが―――」
「あぁ、あの人達。
「えっ―――――?」
マモルの口から発せられた衝撃的な言葉に、悠の動きが止まる。マモルはそんな悠を、まるで無垢な少年のようななんでもない顔で見つめていた。
『それって、そんな―――』
貴方と悠の代わりにモニターからマシュが口を開く。しかし、その言葉が全部出る前にマモルは割って入った。
「だから、食べたんだって。でもやっぱり好きな人のほうが美味しいんだね」
そう言い終えると、マモルは飛び切りの笑みをその顔に作った。人の血によって、赤く染め上げられたその顔に。
「うああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
叫声と共に悠...アマゾンオメガがマモルへと腕に付けられた凶刃を向け、殺意のこもった突進を繰り出した。しかしマモルはその突進を読み取っていたかのように、アマゾンオメガの体を片腕一本で止めたのだった。
「やっぱり! これで怒るんだね、水澤くん!!」
「君は! 取り返しの付かないことをしたんだぞ!!!」
「それでいいんだよ! だって僕らはアマゾンなんだから!!」
「それでも君は! 優しい心を持ってたはずだ!!」
「違う! 僕たちがいつも心に秘めてたもの! それは!!」
その瞬間、マモルの体から煙が吹き出し、アマゾンオメガと共に二人を包んだ。そしてそれが晴れたとき、その場にいたのはアマゾンオメガと、ドリルのような顔が印象的なモグラをモチーフにしたアマゾン、モグラアマゾンだった。
「食欲だ!!!!!」
怪物同士の戦いが今、始まった。
――――――――――――
アマゾンオメガとモグラアマゾンの戦闘が始まり、一体どれぐらいの時間が立っただろうか。その間他のアマゾンたちは貴方を食すために貴方に迫り来ていたが、そのすべてが貴方に辿り着く前にアマゾンオメガとモールアマゾンの戦闘に巻き込まれるか、エルドラドのバーサーカーの蹂躙によって息を途絶えていった。
『凄い...でもこんなの、人間の戦いとは...』
『そりゃそうさ。彼らはアマゾンなんだから』
アマゾンオメガとモグラアマゾンの戦いは凄惨を極めていた。
モグラアマゾンがその鋭い爪でアマゾンオメガの胸を深く切り裂くが、アマゾンオメガは吹き出す胸の血に構わずアームカッターでモグラアマゾンの脇腹を抉る。しかしモグラアマゾンもまたその傷には目もくれず、姿勢の低くなったアマゾンオメガの肩へと噛み付き、そしてそれと同時に顔のドリルも回転させることでアマゾンオメガの首の肉を巻き込ませその首に噴水のような血しぶきを作り上げた。だがアマゾンオメガは痛みなど感じていないかのごとく、組み付いたモグラアマゾンの腹へとベルトから取り出したブレードを差し込み、抉りこんだ。
あまりにも無防備にすぎる戦いだった。もはや二体とも戦闘における守り方など忘れているのではないかと思わせるような、感情に身を任せた殺し合いとなっていたのだ。
二体の足元には赤い雨でも降ったのかと思わせるほどに大きな水たまりができていた。あれだけの血が流れれば人間ならばたとえ英霊であろうと死んでいる。だがしかし、彼らはなおも立ち続け、殺し合いを続けている。
貴方は怖かった。それはオメガが死ぬかもしれないからではない。人知を超えた存在が目の前にいるからでもない。ただ、信念もなく、誇りもなく、感情だけで生物と生物とが殺し合っている様子を見ること、それが貴方にとってあまりにも耐え難いことだったのだ。
エルドラドのバーサーカーは二体の殺し合いに介入する気はないようだった。彼女はただ貴方と彼女の周りに群がろうとするアマゾンたちを無慈悲に潰していくだけで、二体のアマゾンの殺し合いへは時折視線を投げるだけで、いつもの彼女らしくない行動に貴方は少し困惑も覚えた。
令呪を切り、オメガの傷を治すことも考えた。今使えば間違いなくオメガがモグラアマゾン...マモルを殺し切ることができることも見えていた。しかしそれをしてしまえば、取り返しの付かないことになる。貴方はそう思えて仕方なかったのだ。
故に、貴方は見守るしかなかったのだ。この殺し合いの末を。
「「■■■■■■ーーーーー!!!」」
二体のアマゾンが距離を取り、そして同時に雄叫びを上げる。
それを肌で感じながら貴方は感じ取った。次の一撃ですべてが決まると。
二体のアマゾンたちはその凶刃を互いの急所に向けて狙いを定め、そして走り出す。
もはや死は免れない。その殺し合いを覗く全ての者がそう思った瞬間だった。
「また面白そうなことしてんじゃねぇか」
[Alpha Blood and Wild! W-W-W-Wild!!]
突如起きた熱波が彼らを含め、貴方たちを吹き飛ばしたのだ。
【今の声!】
【もしかして!】
貴方はすぐさま起き上がり、先程聞こえた音に反応した。
端末からは突然のことに貴方を心配するマシュの声が聞こえる。しかし、申し訳ないことに貴方はその声に返事をすることができない。
なぜならば貴方の視線の先にはこの現状を色んな意味でぶち壊してくれる男が立っていたからだ。
「今のは、まさか本当にっ!」
「なんで、どうしてお前まで!!」
同じく熱波に巻き込まれ倒れ伏すアマゾンオメガとモグラアマゾンもまた、その男へと視線を向け、声を上げる。
その視線の先にいるその男とは―――。
「そうだよ。鷹山さんだ」
鮮血を浴びたかのように赤いフォルムが印象的な、貴方たちがこの特異点で一番最初にコミュニケーションを取ったアマゾン。
アマゾンアルファ。鷹山仁であった。
次回、合流
平ジェネFOREVER最高でした。皆さんも是非見に行きましょう。
活動報告にて感想あり(ネタバレ注意)