亜種特異点:EX 人害怪因地区 アマゾン   作:16:25教

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第1節 ART IS CRUEL 1/3

レイシフト特有の白い光から徐々に解放されていく感覚を貴方は味わうと、次の瞬間に地上に足がつく感覚を貴方は覚えた。

どうやら今回は以前のように空中に飛ばされることなく地上に出てこられたことに貴方は安堵を覚えると次に視界から白い光が消えかかっていることを貴方は確認できた。

今回のレイシフト先はどのようなところか、貴方は真っ先に確認しようとしたその時、

 

「マスター! 目を開けるな!」

 

近くから共にレイシフトしたサーヴァント、エミヤのらしくない大きな声が聞こえた。

貴方はその忠告をしっかりと聴いていたが、時すでに遅く、視界が明瞭になったとき貴方はすでに目を見開いていた。そして眼前に広がるその光景を見てしまったのだ。

 

【っ!!!】

 

貴方の目にまず入ってきたのは、()であった。眼前に広がる赤。見るものを引き込むようなどす黒い赤。そうそれは血であった。芸術的観点から見ればそれは美しいと思われる色かもしれないそれは、現在の貴方の価値観からすれば、それは恐怖の対象でしかないものだ。そしてそれが今貴方の目の前に果てなく広がっていた。

 

「くっ! 遅かったか...!」

 

次に貴方が五感で感じたのは臭いであった。おそらく貴方の人生のなかで嗅いだこともない、おぞましいと表現できるような痛烈な悪臭が貴方の鼻を通り、嫌悪感を与えた。すぐさま貴方は鼻を摘まみ、臭いを防いだが、一度嗅いだ臭いは鼻の奥で記憶したかのように、貴方に継続的に悪臭を思い出させた。

 

「ナイチンゲール! マスターを診てくれ!」

 

「言われずともそのつもりです!」

 

あまりの臭いに目眩を起こした貴方は膝を折り、地面に手を付けてしまった。しかし手を置いた先には貴方が予想した固い地面の肌はなく、なにか柔らかい物体が存在した。ドロドロともヌルヌルともとれる不思議な感触の、しかし少し力をいれれば潰れてしまうようなか弱いその物体に疑問を持った貴方は、それを視界に入れた。しかしすぐにそれが悪手であったことを貴方は思い知ることになった。

 

貴方が手に取っていたそれは生き物の目であった。

 

【ーーーー!】

 

ついにパニックを起こした貴方は、手に持つ物体をすぐに放り投げ腰をつき手を暴れさせた。視覚、嗅覚、触覚を未知のモノに奪われた貴方はどうすることもなくただ現状からの逃避を求め体をばたつかせることしか出来なくなってしまったのだ。

そこに、貴方の手を掴むものがいた。

 

「大丈夫ですマスター。落ち着いてください。鼻と口をハンカチで覆いましょう。大分楽になります」

 

貴方が視線をあげ手をつかんだ人物をみると、そこにいたのは貴方のよく知る人物、ナイチンゲールだった。ナイチンゲールは貴方の手をつかむと、有無を言わせず貴方を抱き寄せ、その顔をハンカチで覆った。覆わせられたハンカチからはキツい消毒液の匂いが漂っていたが、さきほどの悪臭に比べると天国であるかのような匂いであると貴方は感じた。そして既知の人物の存在を認めた貴方は、すがるようにナイチンゲールの体に抱きつき、体温を感じるように体を任せた。貴方の手には大量の血が付いており、その手でナイチンゲールにしがみついたが、ナイチンゲールはそんなことを気にせず、ただ赤子をあやすように貴方の背中を一定のリズムで叩き続けた。

 

少し経ち、貴方が落ち着いた頃、ナイチンゲールが貴方に話しかけた。

 

「ーーーもうよろしいですか、マスター」

 

【ありがとう、ナイチンゲール】

 

【うん、もう大丈夫、だと思う】

 

ナイチンゲールの声に落ち着いた貴方は、正気を取り戻しナイチンゲールから離れた。

 

「無理はしないでください。正気を失ったあとに自我を取り戻すのは歴戦の兵士でも難しい所作です。少しでも気分が悪くなればすぐに報告してください」

 

【分かった。その時になったらすぐ言うね】

 

→【さすが看護婦だね】

 

「いえ、このような状況、慣れていない方が正常なのです。さて、Mr.エミヤ。周囲の状況はいかがでしょうか?」

 

貴方の賛辞を気にせず、ナイチンゲールはエミヤの方へ声をかけた。当然といったら当然だろう。このような場で気を抜くような彼女ではないことを貴方は知っていた。

 

「あぁ、我々の周りに生物の気配はない。あるのはこのおぞましい惨状だけだ」

 

エミヤの言葉に貴方は意を決して周囲の景色を眺めた。その口元はさきほどナイチンゲールからもらったハンカチで覆われている。

 

【これは...】

 

【ひどい...】

 

貴方たちが現在いる場所はどうやらどこかの公園らしく、周りには()()()()()()()()たちが建ち並んでいた。そこから見える周囲の状況は、さきほどみた惨状と変わりなく血に汚れた建造物やなにかの内蔵が引っ掛かった樹木などひどい有り様だった。

 

「この状況...人為的なものではない。実に信じがたいが、自然的に起こった現象によるものだろう」

 

【これが自然現象?】

 

エミヤの信じられない言葉に貴方はつい聞き返してしまう。エミヤは周囲の警戒を緩めず、貴方の問いに答えた。

 

「あぁそうだ。意図ある殺しならばここまで汚れきった現場になるはずがない。気にする必要がない限り、必ず殺しの現場というものは清浄される。しかしここではそれが為された形跡が全くない。つまりこの特異点においてこの惨状が自然であるということだ」

 

【この景色が自然な世界って...】

 

「この屍体の在り方からして、おそらく捕食だろう。この世界では人はどこもかしこで何者かに食われている、ということになる」

 

捕食と言う言葉を聞き、貴方は眉をひそませた。

数多くの特異点で時には酷い現場を体験した貴方だが、感性はやはり現代人のそれであり、このような非日常的な状況には慣れることはなかった。

 

「Mr、いたずらにマスターに恐怖を与えるのは感心しません」

 

「恐怖を与えているわけではない。現状を正確に認知し、報告することもサーヴァントの仕事だ」

 

顔色が悪くなった貴方を気遣い、ナイチンゲールはエミヤを非難するが、どこ吹く風とエミヤはナイチンゲールの言葉をかわしてしまう。

 

【大丈夫だよ、ナイチンゲール】

 

さらにエミヤへと追求しようとするナイチンゲールだったが、貴方に抑えられそれ以上の言葉を紡ぐことはなかった。

そしてエミヤはまた言葉を続けた。

 

「しかし、マスター。このような現場に慣れる必要などない。君のように魔術に関係のない者、いや魔術師であろうとこんなものを見て平然としているものなど、それこそ人でなしの謗りを受けても仕方がないものだ。これを見て悲嘆の感情を持つ君だから、我々は君をマスターとして慕っているのだからな」

 

エミヤの言ったことに貴方は少し逡巡したあと、その意味を理解し、堪えきれず笑いをこぼした。

 

「なるほど。Mr.エミヤは彼なりにマスターを励ましているのですね」

 

【エミヤらしいね】

 

【さすが皮肉屋だけある】

 

エミヤなりの励ましに貴方とナイチンゲールは頬笑むと、今の状況を理解しているのか、とエミヤは嘆息をついた。

 

そうして束の間の安息を得ていると、貴方達の目の前に青白い立体映像が写りこんだ。

 

『先輩! 大丈夫ですかっ...これはっ...』

 

立体映像から顔をだしたのは貴方がもっとも信頼するパートナー、マシュであった。彼女は写りこんですぐに貴方の安否を確認するが、それと同時に貴方の周囲の惨状を見てしまい、思わず息を飲んでしまったようだ。

 

『やはり、その特異点はろくでもないことになっていたようだね。まったく、予想というものは何でも当たればうれしいというものではないね』

 

続いて映像に写ったのはさきほどまで管制室で一緒にいたダ・ヴィンチだった。彼女(彼?)はこちらの状況を観測すると同時にため息をつき貴方たちに言葉を綴った。

 

「さきほど振りだなダ・ヴィンチ。みての通りこちらの現状は悲惨なものだよ。これからどう動く?」

 

『とりあえずは霊脈探しからだが、まずはそちらの方の安全圏を見つけるのが先だろう。いつどこでその惨状を作り上げた犯人と出くわすか分からない。こちらでも君たちの周囲を観測し続けるつもりだがーーーっ!』

 

『半径1キロ圏内に生命反応を確認! とんでもない速度でそちらに向かっています!』

 

ダ・ヴィンチの言葉を遮るように放たれたマシュの警告を貴方たちは聞き及び、すぐに警戒体制をとる。

 

「マシュ、こちらでは視認できない。どこからだ!」

 

『先輩たちの直下...下からです!』

 

【二人とも戦闘体制!】

 

【迎え撃つぞ!】

 

「まったく、落ち着く暇もないな。マスター! 私かナイチンゲールの側から離れるなよ!」




次回、アマゾンが暴れます
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