亜種特異点:EX 人害怪因地区 アマゾン   作:16:25教

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デッカーに鷹山仁がゲスト出演したので初投稿です。


第6節 FOR LIFE 3/3

「やぁ、随分と手ひどくやられたようじゃないか」

 

明かりの無い建物の一部屋。

怪しげな薬や機器が部屋中に敷き詰められたそこで、一人の男が作業をしながら虚空に向けて言葉をかける。

そうすれば、何もなかった場所より突如空間の歪みが生じ、そこから一人の青年が姿を現した。

 

「黙れ。余計なことをしてなんのつもりなんだ」

 

「余計なこととは心外だな。あのままでは君は確実に殺されていただろうと思い、善意で手助けしてあげたというのに」

 

「よくそんな事が言えるね。お前にとって僕たちはただの研究材料にすぎないくせに」

 

歪みから現れた青年、先ほどまで悠と殺し合いをしていたマモルは、作業をする男に暴言を放ちつつ、部屋の隅に置かれている包装された何かに近づくと、その包装を破り捨てながら中のものを口の中に粗雑に放り込む。

それを横目で見ながら、男はマモルに声をかける。

 

「そんなものでいいのかい? 近くに牧場があるのだからそこで補給すればもっと効率がいいだろうに」

 

「黙れ。知ったような口でアマゾンを語るな」

 

男の言葉に苛立ちを隠さずにマモルは答えながらしかし何かを口に入れる動作は止めない。

そうして少しした後、マモルはようやく手と口を止めて男の方へと振り返った。

 

「…カルデアのマスターを殺す。力を貸して」

 

「それは構わないがね。我らがマスターに許可を取らないでいいのかい?」

 

「いらない。あの子からは全部託されている」

 

「ほう、信用されているのだね」

 

マモルの要望に男は作業をする手を止めて、今度は目を瞑りながら天を仰ぐ動作をとる。

そうして少し待てば、男は目を開けてマモルの方へと向いた。

 

「どうやら彼らは私の残した足跡を辿るようだ。どうする? また待ち伏せでもするかい?」

 

「…場所だけ教えろ…後は僕たちでなんとかする」

 

「はいはい」

 

マモルの言葉に仕方ないように頷いた男はマモルにカルデアが向かうであろう行き先を伝えると、それを機にマモルは部屋から出ていった。

マモルが出ていき男がまた一人となった部屋の中で、誰に対してでもなく言葉をこぼした。

 

「さてしかし、研究材料ときたか。それはまた…自惚れたものだねぇ」

 

男はそう呟くと、ひどく気味の悪い笑顔を作り出し再び作業を再開したのであった。

 

 

*****

 

 

カルデア、サーヴァントたちとミーティングを終え、世も更けてきた頃。

文明の光が近くになく、月あかりもない採石場で、貴方はひとり空を見上げながら考え事をしていた。

カルデアのマシュやダ・ヴィンチからは早く休むように言われているが、いくら目を閉じても貴方は脳裏から離れない懸念のせいで眠ることは叶わずこうして一人でいたのだった。

その懸念とは、鷹山が言ったあの言葉。

 

『アマゾンを全部殺し尽くした後、俺かコイツ、どっちか最後まで生き残ったら、お前たちが殺してくれ。それが力を貸す条件だ』

 

自分達が最後に残ったアマゾンを殺す。それが鷹山仁が示した条件だった。

鷹山の目は本気だった。彼の狂気、信念、執着は、まだ短い付き合いではあれど、苦しいほどに貴方には伝わっていた。

だがしかし、貴方はもし鷹山の言うとおりそんな最後になった時、鷹山か悠を殺せる自信が無かった。

それを行うにはあまりにも、貴方は彼らと関わり過ぎてしまっていたのだ。

だから、鷹山が条件を提案したあの時、貴方は答えを示さず、無理矢理ミーティングを終わらせたのだった。

そして今、その答えについて、貴方はずっと考えているのだが…

 

【殺せるわけ、ない】

 

どれほど考えようと自分達が彼らを殺せることなど出来はしないことを、貴方は思い悩む。

きっとそれを鷹山に伝えれば、彼は呆れて貴方たちに協力することを拒むだろう。

それは困る。鷹山のアマゾンに対しての特効と呼んでもいいほどの力は、この特異点では二つとない見逃せない力だ。

その力をみすみす逃すなど出来はしなかった。

それに貴方自身、鷹山仁という男を見過ごす事ができなかった。

打算とは関係なく、貴方自身の思いとして、鷹山には近くにいて欲しかったのだ。

自身の思いと鷹山の要求に板挟みとなった貴方は夜空を見上げながらもその眉間に皺を寄せたのだった。

そうしていると、不意に背後から足音が聞こえて貴方は後ろを振り返った。

 

「やぁマスター、まだ起きていたのかい」

 

振り返ったその先にいたのは穏やかな表情の悠だった。

 

「仁さんに言われたことをまだ気にしているのかい?」

 

【うん】

 

【分かる?】

 

悠から尋ねられた言葉に貴方は困ったような顔を浮かべながら返答する。

 

「分かるさ。突然あんなことを言われれば誰だって困惑するもの。まぁ僕は相変わらずだなってぐらいにしか思わなかったけど」

 

どうやら悠は貴方の悩みに気づいて、気にかけてくれてこうして自分のところに訪ねてきたらしいことを貴方は気づいた。

要らぬ心配をかけさせてしまったと貴方は思い、一言謝罪を述べると、しかし悠は静かに首を振る。

 

「悩んで当たり前さ。命なんてものは人の手で抱えるには重すぎる。自分1人のものでも精一杯なのに、ましてや誰かから与えられたら誰だって困惑するものだよ」

 

悠はそう言って小さく笑い、貴方を励ましてくれた。しかしその笑顔には薄く、自らの実感を含んでいたことに貴方は気づいた。

しかしそれに気づきながらも貴方はそれ以上踏み込まず、今度はお礼を述べる。

すると悠はまた小さい笑みを浮かべて返し、先ほどの貴方のように夜空を見上げ、ポツリと呟くように声を出した。

 

「仁さんとは何度もぶつかり合ったって言ったよね。あの時に実は伝えていなかった事があるんだ」

 

【伝えていないこと?】

 

悠の急な話に貴方は疑問を浮かべながら言葉を復唱し、次を促す。

悠は一瞬顔に翳りを滲ませながら、しかし決心したように貴方に話をした。

 

「うん。実は、生前の仁さんを殺したのは僕なんだ」

 

【えっ…】

 

悠の告白に貴方は一瞬、その事実を受け入れられず、理解を拒む。

しかし先ほどの悠の表情と、彼らの言動を思い浮かべ、悠の言っていることが事実であるのだと、理解していった。

 

【そんな、なんで】

 

貴方は尋ねた。何でそんなことになってしまったのか。

そんな貴方の問いに悠は哀しげな表情を浮かばせながら、ポツリポツリと語っていく。

 

「生前の僕たちの世界には、アマゾンを養殖して人間用の食肉にする実験が行われていたんだ。そのために仁さんは利用され、多くのアマゾンたちが生み出されて、食われていった」

 

【そんな】

 

【酷すぎる………】

 

悠の打ち明けた事実に、貴方は悲嘆に顔を歪ませながら小さく言葉を呟く。

貴方のその表情を見た悠は貴方に見えないように小さく笑みを浮かべながら、しかしすぐに表情を戻し、話を続けた。

 

「そうだね。僕もそんな非道な行いが許せなくて、食べられるアマゾンの子たちを助けようと頑張った。でもそこで、仁さんと考えがぶつかったんだ」

 

悠は上げていた顔を下ろし今度は情念に耽るように自分の掌を見つめ始める。

まるでその時の記憶を思い出すように。

 

「僕はアマゾンの子たちを助けたかった。でも仁さんは、同じ悲劇を繰り返さないために、そのアマゾンたちも丸ごと全て殺そうとしたんだ」

 

【………】

 

「僕も仁さんもその時には信念を貫くために、別の信念を破り捨てて、もうボロボロだった。それでも僕たちは最後に残った捨てられないもののために、お互いの命を喰らい合い、殺し合った。そしてその末に、僕が仁さんを殺した」

 

そう言うと、悠は見つめていた掌をぐっと握り目を閉じる。

果たしてその行為が何を表していたのか。もしかしたらその時の感触を思い起こしていたのかもしれない。

しかしその答えは結局貴方はわからず、尋ねることもついぞできなかった。

そうして貴方が悠を何も声をかけられず見つめているうちに、悠は目を開いてこちらに顔を向けてくれた。

その顔は誰かを殺したとは思えないほどに優しく、貴方を慮ってくれる暖かい表情をしていた。

 

「仁さんはそういう人なんだ。一度決めたことを途中で変えられず、止められず、でもそのせいで大切なものも巻き込んで、また重い荷物を背負い込んでいく。そういう、不器用な人なんだ。………死んでからもそれは変わらなくて、少しびっくりしたけど。まさか世界とまで契約するなんて」

 

あははと笑う悠の仕草はまるで、親戚のおじさんを語るような、そんな親しみがあった。ともすれば、殺し合った相手などと言うことは感じさせないほどに。

だからこそ、不意に見せる悠の翳りは、貴方の記憶に大いに残った。

 

「………だから、そんなあの人だから、僕もいろんなものを捨てざるをえなかった」

 

何気ないその言葉。一瞬貴方から目を逸らして呟いたその言葉は、悠の深い深い深淵をのぞかせる一言だった。

貴方は悠のその一言にたじろぐも、悠はすぐに先ほどの表情に戻る。そうして貴方に、本当に伝えたかったことについてようやく話したのだった。

 

「君が、深く背追い込む必要なんて全くないんだ。仁さんの言った条件は彼が勝手に君たちに重荷を背負わせようとしている行為だから。君たちはそれを受ける必要は全くない。だからあの人が言ったことは気にしないでほしい」

 

悠は柔和な態度を崩さずも、しかし芯のある声で貴方に想いを伝えた。

貴方はそんな悠の顔を真正面から見つめ返す。

悠はきっと、純粋な思いで貴方に進言を与えてくれているのだろう。

しかし話の端々で見せた悠の含みのある表情を、貴方見逃せなかった。

そうして貴方は考える。

悠は言葉では鷹山のことを気にかけずいようとしているが、その実、鷹山を見捨てられずいるではないだろうか、と。

それがあっているのがどうかなど、分からない。貴方は心を読める超能力者でもなければ、読心に長けたスペシャリストでもなかったから。

それでも、悠にそうした思いがあり、また貴方自身も鷹山を思う心があるのならば、貴方の進むべき道は既に決まっていた。

 

【大丈夫だよ】

 

「………えっ?」

 

貴方の返事に、悠は疑問の声をあげる。

それに貴方は笑みを浮かべながら答えた。

 

【背追い込む気もないけど】

 

それは鷹山仁のように気楽でもなく、

 

【気にしないでいるつもりもない】

 

水澤悠のように翳りを見せるものでもない、

 

【ちゃんと、向かい合ってみる】

 

貴方の決意を込めた笑みで悠にそう答えたのだった。

 

 

***

 

 

翌日。

悠との話を切り上げた貴方は、夜間の警戒をカルデアとサーヴァントに託して身を休めると、思いの外早くに就寝することができた。

思えば昨日は歩きっぱなしに加え、その後は即戦闘だったため緊張の連続が続いていた。否、この特異点に来てからずっとそんな状況が続いていたのだ。そんな中ようやくきちんとした食糧と物資にありつけた貴方は昨夜は安心して睡眠できるようになったのだろうと言う見解だ。マシュも通信でそう言っていた為間違いないだろうと貴方はうなづいた。

そうして撤収準備をしつつ貴方はひとりの人物の元へと向かう。

その相手は昨夜からずっと荒縄によって縛り付けられながらも、その状態のままいびきをしながら就寝していた人物、鷹山仁だった。

鷹山はというと先ほど起きたばかりなのだろうか、しきりにあくびをしながら大人しくしていたが、貴方が近づいてきたことに気づくとすぐに顔を向けてきた。

 

「よう、おはようさん。よく眠れたか?」

 

【はい、ばっちりと】

 

【鷹山さんは?】

 

「ああいいね、こんな状況でも寝られるんなら大したもんだ。俺もこんな縄さえなけりゃもっといい夢見ながら寝れたんだろうけどなぁ」

 

『残念ながらサーヴァントは夢を見ないよ、鷹山くん』

 

ふと、貴方と鷹山の会話に入り込んできたのは、カルデアから通信したダ・ヴィンチだった。

鷹山は突如として立体映像で浮かぶダヴィンチの姿に驚くこともなく挨拶を交わすと、ダ・ヴィンチはそんな彼の姿に呆れつつ、話題を変えたのだった。

 

『それで、鷹山仁。昨夜話した通り、君はカルデアが行うこの特異点の調査、及び修復に協力してくれるとのことだが、二言はないだろうね?』

 

「あぁねぇよ。だが、俺の方からも一つ条件を出したはずだ。それについての回答をまだ、お前から聞いてないはずだが?」

 

そうして鷹山は視線をダ・ヴィンチから貴方へと移した。

その目は何かを試すような、探るような目であった。

人によっては不快感を催すその目線を受けながら、しかし貴方は気丈に振る舞うように努める。

 

「この戦いの最後、アマゾンを殺し尽くした後に俺かソイツ、どちらかが生き残ったその時、お前は殺せるか?」

 

鷹山は笑顔でそれを尋ねた。

あまりにも気楽に、その選択を貴方に課してきたのだった。

 

『どうして、そこまで………』

 

状況に耐えきれず、ダ・ヴィンチとともに立体映像に映っていたマシュが呟く。

カルデア職員の誰もが同じ感想を抱いた。

鷹山仁の経歴は既に聞いた。

アマゾンにこだわる理由も少なからず理解できる。

しかし、それでも自分や近しい者の命さえも厭わないその言動は、いまだに理解が及ばない。

だからこそ、彼らはもはや鷹山に対して、一種の恐怖すら抱いていたのだった。

英霊であるダ・ヴィンチこそ、鷹山の執着とも言える執念に恐れることはなかったが、しかしそれを解ろうとする気はさらさらなかった。彼(彼女)にとって人間とは、とどのつまりそういうものだと言う諦観があったからだった。

だからこそ、ダ・ヴィンチは立体映像の奥から貴方を薄く見つめた。

貴方が鷹山仁の言葉に何を答えるのかを託したのだった。

貴方はそんなダ・ヴィンチの視線に気づきながら、しかし臆することなく前に出る。

 

【答えは___】

 

既に答えは昨日、悠を前にして出している。

だからこそその言葉は簡単に貴方の口から飛び出てくれたのだった。

 

【わからないです】

 

「___は?」

 

貴方の答えに、高山が目を丸くする。

同じく立体映像に映るカルデアのマシュや職員たちも貴方の言葉に驚いた顔をしていた。

ただ数人、ダ・ヴィンチやエルドラドのバーサーカー、悠のみが表情を変えず、貴方の言葉を聞いていた。

そんな中、貴方は構わず、言葉を続ける。

 

【なんで鷹山さんがそこまでアマゾンにこだわるのかとか】

 

【何が鷹山さんにそこまでさせているのかとか】

 

貴方は結局分からないのだ。目の前にしている相手の根源や原理など。

 

【分からないのに、殺すだけするなんて】

 

【そんなの出来ない】

 

しかしだからこそ。

 

【だから___知っていきます。鷹山さんのこと。もっともっと】

 

貴方は知っていく努力を怠らなかった。

わかった気でいるつもりなんかできっこないから。

 

【知っていっていつか、貴方の言葉に納得できたその時に】

 

【ちゃんと、殺します】

 

そうして貴方は、鷹山に言い切った。

ただ殺すのではない。

鷹山という男の言葉に、それだけの意味が感じられた時、貴方はそれを実行するという、いわば監査のもとでの条件の受け入れ。

それが貴方の下した結論だった。

強引かつ貴方のわがままがふんだんに取り入れられたその提案に、鷹山は少しの間口を開いた状態で放心していると、ともなく口角を引き上げて呆れた目で貴方を見つめ始めたのだった。

 

「………なんというかなぁ。頑固というか健気というか。お前も大概苦労を背負い込むタイプだな」

 

『ハハハ、確かに私たちのマスターはそう言うタイプだが、世界で一番君には言われたくないと思うよ、鷹山仁くん』

 

鷹山の漏れ出た感想に笑いながら素早く突っ込むダ・ヴィンチ。

そんなダ・ヴィンチの言葉に確かにな、と同じく鷹山が笑い声を上げた。

そうしてどれぐらいか、鷹山はダ・ヴィンチと一緒に笑っていれば、ようやく笑いを収めて貴方に声をかけたのだった。

 

「あーそうだな。求めていた答えとはちょっと違ってはいたが、まぁいいだろう。お前もそこの奴みたいに甘ちゃんらしいが、嫌いじゃない甘さだ」

 

『と、しますと?』

 

鷹山の言葉に真っ先にマシュが通信越しに反応する。

その声に鷹山は鼻を鳴らしながら答えたのだった。

 

「あぁ。一時的にだが、協力してやる。結局は俺1人じゃどうしようもなくなってたところだしな」

 

『それは、先輩………!』

 

【交渉成立だ!】

 

鷹山からの返事に貴方とマシュは喜び、立体映像越しで顔を向き合わせお互いに声を上げたのだった。

周りの者たちはそれに温かい視線を送りながら見守っていれば、その間に鷹山の近くに寄る者がいた。悠だ。

 

「仁さん、僕は………」

 

「あー、何も言わんでいい」

 

鷹山に何かを話そうとする悠だが、それを鷹山が無理やり割り込んで抑える。

 

「昨日のことで既に分かりきってる。お前と俺は死んだところで分かり合えないってことはな。今のところは、カルデアってやつのところで一緒に仕事している。それだけの関係で十分だ」

 

「………」

 

鷹山の言葉に悠は何も答えず、しかし目線はずっと鷹山に向けたままだった。

そんな悠の反応に、鷹山は愉快そうに笑みを浮かべながら、そこで話を終わらせたのだった。

 

『えー、おほん。マシュ、マスター。もうそろそろいいかな?』

 

アマゾンの2人のそんなやりとりをしている間もなお喜び続けていたマシュと貴方だったが、いい加減本題を進めるため、ダ・ヴィンチが横から割って入ってくる。

マシュと貴方はそれでようやく自分達の醜態を自覚し、落ち着きを取り戻していそいそと解散すれば、ダ・ヴィンチはよしよしと話を進めたのだった。

 

『それじゃあ新しい仲間として鷹山くんが加わったところで、次の行動の指針を決めよう。昨日も話した通り、相手の残した足取りは掴めている。これを辿るのが最も進展する行動だと思うが、意見のあるものはいるかい?』

 

「その足取り自体が罠という可能性は?」

 

ダ・ヴィンチの言葉に真っ先に声を上げたのは特異点現地にいる貴方のサーヴァント、エルドラドのバーサーカーだった。

彼女の意見にダ・ヴィンチは頷きつつ、すぐに返答する。

 

『無論その可能性は捨てきれない。いやむしろその可能性の方が高いと思った方がいいだろうね。これだけの大魔術を行う魔術師だ。痕跡を残さず行使できたかもしれないだろうが、あえて残したのかもしれない』

 

「それはつまり、こちらを誘い込もうとしているということですか?」

 

ダ・ヴィンチの懸念に悠が声を出せば、ダ・ヴィンチは静かに首を縦に振った。

 

『先輩、どうされますか?』

 

立体映像から、心配そうに貴方を見つめるマシュの姿が映る。

貴方はそんな後輩を見ながら、しかし心の内ではすでに答えは決まっていた。

貴方は周りを見る。

エルドラドのバーサーカーはこちらの指示を待つように腕を組み、悠はじっと貴方を見つめてくる。縛られている鷹山はというと、貴方の動きを伺うように視線を鋭くしたまま目を向けていた。

逃げる選択肢を期待している者は誰もいなかった。無論貴方自身も。だから貴方の答えは自ずと口から出ていた。

 

【行こう!】

 

【この特異点を修復するために!】

 

そうして貴方自身の意思を大きく宣言する。

その宣言を聞いたダ・ヴィンチは一言、了解、とだけ言えば、立体映像から別の画面をすぐに映し出したのだった。

 

『転移魔術でジャンプした場所の一箇所。それはここから北西の方角にあるダムだった。この時代では………野座間ダムと呼ばれているらしい』

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