亜種特異点:EX 人害怪因地区 アマゾン   作:16:25教

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今回もグロテスクな描写があります。


第3節 CURSE OF BIRTH 3/3

血塗れの平屋、その一室にて貴方はアマゾンに襲われようとしていた。

 

「■■■■■ーーー!!」

 

言葉にもならない雄叫びをあげたゾウアマゾンは貴方に腕を伸ばし、その脳味噌を啜ろうと襲いかかる。しかしその手が貴方を掴むことはなかった。

貴方とゾウアマゾンの間にナイチンゲールが立ち塞がり、ゾウアマゾンの伸ばした腕を掴みとっていたからだ。

ナイチンゲールはそのまま腕を引くと、体を一回転させゾウアマゾンを壁へと叩きつける。壁にひびが入るほど強く打ち付けられたゾウアマゾンはたまらず低い呻き声を出した。

貴方は安堵しながらも、さすが筋力B、と心のなかでポツリと呟く。

しかし戦闘はまだ火蓋を切ったにすぎなかった。ゾウアマゾンの後ろに付いていたゾウムシアマゾンたちもまた貴方に迫ってきていたのだ。

狭い室内で多数の相手と乱戦すれば貴方を巻き込みかねないと考えたナイチンゲールは、貴方とともに一時撤退を決めた。

逃がさないと言うかのごとくゾウムシアマゾンたちは追い縋るが、その瞬間先頭にいた何体かの頭が吹き飛ぶ。

突然のことにアマゾンたちは驚くと、その背後から声が聞こえた。

 

「こっちだ」

 

声がした方にゾウムシアマゾンが振り向くと、またも何体かの首が吹き飛ぶ。

いったい何が起きたか分からぬまま頭が吹き飛んだアマゾンたちが最後に見たもの、それは白黒の双剣を持った赤い外套の褐色男であった。

 

部屋の外まで貴方を避難させるため、貴方とナイチンゲールはさっきまでドアがあった入口まで移動すると、ナイチンゲールがなにかに気づき貴方の襟元を掴み、貴方を後ろへと引っ張った。

急なことに貴方は潰れた蛙のような声を出す。いったい何事かと思ったその時、貴方が先程までいた場所にダンプカーのごとくゾウアマゾンが突進してきたのだった。

 

「せっかくキたんダ。ゆっくりしたまエ」

 

ゾウアマゾンは貴方に言葉を投げ、捕食者の目で貴方の体を舐め回すように見つめる。貴方は生理的嫌悪感から背筋に悪寒が走るが、その横では颯爽と行動を起こす赤い軍服の姿があった。ナイチンゲールだ。

ナイチンゲールはいまだに貴方を見つめるゾウアマゾンに向かうと、その頭に鋭い踵落としを差し込む。しかしゾウアマゾンは多少たたらを踏んだ程度でさしてのダメージを感じさせない上、ナイチンゲールの足を掴みとった。

 

「さっきのオカエしだヨ」

 

ゾウアマゾンは足を掴んだまま、先程ナイチンゲールがしたように彼女を壁に叩きつける。さらにそれにとどまらず、続いて地面へと打ち付けた。

 

【ナイチンゲール!!】

 

ナイチンゲールを襲う凶行に、貴方は堪えきれず彼女の名前を叫ぶ。ゾウアマゾンはその様子が愉快なようで声をあげて笑いだした。しかしその油断が彼女に付け入る隙を与えた。

 

「何を笑っているのですか」

 

自分の足元から聞こえる声にゾウアマゾンは驚き、そちらの方を見ると、頭から血を流したナイチンゲールがピストルを構えゾウアマゾンの方へ向けているのを見た。

そしてその瞬間、銃声とともに発射された2発の弾丸がゾウアマゾンの両目を貫く。

 

「■■■■■ーーー!!」

 

両目からの激痛と視界を奪われ、ゾウアマゾンは堪らず絶叫をあげ、目のあったところに手を当てる。だがそれはナイチンゲールの反撃の始まりに過ぎなかった。彼女はゾウアマゾンの手が自分の足から離れると、すぐに体制を立て直しゾウアマゾンに肉薄する。

まずナイチンゲールはゾウアマゾンの大きい片耳へと手を突っ込んだ。ぐじゅぐじゅと音をたてナイチンゲールは耳のなかをかき混ぜるように腕で探っていると、何かを掴みそのまま引っ張り出す。彼女が持つそれは人間でいうところの三半規管に似ており、ゾウアマゾンはまたも悲鳴をあげる。

ナイチンゲールは三半規管らしきそれを投げ捨てると、次にゾウアマゾンの鼻と頭を片方ずつの手で掴みとる。その時点で貴方は何をするか分かり、手で目を覆うが、そんなことお構いなしにナイチンゲールは鼻と頭を掴んでいる手に力をいれて引っ張り、雄々しいその鼻を引きちぎった。

 

彼女、ナイチンゲールには保有スキルとして「人体理解」が備わっていた。そのスキルにより彼女は人型である敵に対して的確な急所を狙った攻撃が可能であったのだ。

 

かくして人体の急所である目、耳、鼻を奪われたゾウアマゾンはもはや叫びとも取れない声をあげ、見えない視界で自分を痛め付ける存在を探し、虚空へと殴りかかるしか残された手はなかった。

ナイチンゲールはそんなゾウアマゾンの背後に立ち、手刀の構えを取り、憐れな怪物に声をかける。

 

「これで終わりです」

 

ナイチンゲールは背中から手刀を差し込み、ゾウアマゾンの心臓を潰し、胸すら貫いた。それにより、ゾウアマゾンはその体を変色させ完全に活動を停止した。

ナイチンゲールはゾウアマゾンが死んだことを確認すると、屍体から腕を引き抜き、服についた体液を拭き取り始めた。

貴方はホッと一息つきエミヤの方を覗くと、そちらはだいぶ前に片がついていたようで、腕を組みながらこちらに近づいてきていた。

 

【ふたりともお疲れ様】

 

→【ナイチンゲール、頭の怪我大丈夫?】

 

「問題ありません。包帯は常に常備しておりますので」

 

ナイチンゲールはそう言うと、バッグから消毒液と包帯を取り出し自分で手当を行う。エミヤが手伝いを申しでるが、彼女は突慳貪に突き返す。エミヤの方もそう返答されることが予想していたため気にせず、貴方のそばへと寄ってきた。

 

「すまないマスター。建物の奥から奇妙な人間の気配を感じ、そちらにつられて敵の存在に失念していた」

 

【気にしなくていいよ】

 

【人間の気配...?】

 

貴方は謝罪を軽く流し、エミヤの感じた人間の気配について尋ねた。

 

「あぁ。確かにマシュが言っていたように、あれは人間の気配であった。だが普通のそれとは違う、今にも崩れ落ちそうな脆い気配であったが」

 

エミヤの言葉に、貴方はショーケースの方を視界に入れて嫌な想像をしてしまった。

と、その時立体映像からダ・ヴィンチの姿が映りだした。

 

『やぁ、マスターくん。突入したらすぐに連絡するように伝えていたがどうしたんだい? おかげでマシュが私の隣でソワソワソワソワして、私はもう抱きつくのを我慢するのに必死だったよ』

 

『ダ、ダ・ヴィンチちゃん! 余計は言わないでください!』

 

どうやら心配してくれたマシュに気を利かせてダ・ヴィンチが連絡をとってくれたようだ。貴方はマシュの姿にホッコリしながら、ダ・ヴィンチに状況を報告する。

 

『なるほど、ショーケースに並べられた赤ン坊の頭に、建物の奥から感じる人間の気配、そして喋るアマゾン...ふむ、仮にそのアマゾンに理知的な考えがあったとして。マスターくん。君は現場に向かうな。ただの人間である君に、これ以上のものは見せられない。あとはすべてサーヴァントに任せるんだ』

 

状況を組み立てたダ・ヴィンチはこの先に待ち構える光景を予測し、貴方に現場への同行を禁止させた。

貴方は息を呑んだ。この先に待つ地獄を貴方は既に想像していたからだ。しかし貴方はここで足を止めてすべてをエミヤとナイチンゲールに任せる気はなかった。貴方は、震える足を叩き、ダ・ヴィンチに返答する。

 

【進むよ】

 

【生きてる人がいるなら助けなきゃ】

 

『...そうかい。なら、君のやりたいようにするといい』

 

貴方の答えを聞いたダ・ヴィンチはそれだけ伝え、マシュにモニターを譲った。マシュも俯いた目をしながら貴方に言葉を渡す。

 

『先輩...先輩の人を助けたいという思いはとても素晴らしく、私はとても尊敬しています。でもこれだけはお願いします。決して無理はしないでください』

 

マシュの言葉に、貴方は胸が刺さるような痛みを感じるも、無理なんかしてないよ、と返した。

その顔は、マシュに心配掛けないように、貴方が無理に作った笑顔であった。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

ナイチンゲールが自らの手当を終えると、貴方たちは部屋から出てエミヤが気配を感じた方角へと、建物の中を進んでいった。

途中何体かのアマゾンに貴方たちは出くわしたが、仲間を呼ばれないように俊敏に片付けていったため、苦戦することなく進むことが出来た。

そして貴方たちは人間の気配が色濃く出ている場所、地下の倉庫へとたどり着く。

 

「覚悟はいいか。マスター」

 

エミヤから最終確認が示される。貴方は高鳴る心臓を手で抑え込み、力強く頷くことで返答した。

エミヤは貴方の答えをきくと、地下倉庫のドアを開けた。

 

ドアを開けた瞬間、貴方たちをまず襲ったのは悪臭だった。

 

【っ!】

 

貴方、そして貴方に限らず二人のサーヴァントもあまりの臭いに鼻と口を抑えて顔をしかめさせる。今まで多くの血と臓物が腐った臭いを感じていた貴方たちはしかし、その部屋に蔓延る臭いには耐性がなかったのだ。

 

 

その臭いは汚物の臭いであった。その臭いは体液の臭いであった。その臭いは排泄物の臭いであった。その臭いは人間の臭いであったのだ。

 

 

「やめてくれ...もうダメだ...もう動けない...」

 

 

「あぁ...子供が...私の子供たちが...」

 

 

「嫌だ...死にたくない...誰か助けてくれ...」

 

 

臭いが蔓延する倉庫の奥から人の声を貴方は聞いた。

貴方は助けに行くため倉庫の中へ踏み込む。貴方が倉庫の中を進むたび、貴方は足元で踏んではいけないものを感じたが、見てはいけないと心に決めて、前だけを見て奥へと進んだ。

そして倉庫の奥の光景を見た貴方は唖然とした。

 

そこには確かに人がいた。そう、生きて存在していただけだったのだ。

 

そこには貴方のように服で身を包んだ人間はどこにもいなかった。すべての人間が生まれたままの姿で存在していた。

そしてそこにいた人間たちは男女の数が同数であった。同数の男女が死人のような顔で()()()()()()()()

 

「...やはり、こうなっていたか」

 

貴方の後ろからエミヤが呟く。

さらにすぐ横からナイチンゲールがその人たちに駆け寄り声をかける。

 

「意識はありますね。では私の顔をご覧ください。声は出さなくてよろしいです。ゆっくり、ゆっくりと私の顔を見てください。大丈夫です。私たちは貴方たちに危害を加えません」

 

ナイチンゲールは一人一人に声をかけ、恐怖心と不安感を取り除いていく。看護婦の手際にエミヤは感嘆の意を示すが、貴方にその余裕はなかった。

そして貴方はその人たちの奥に、さらにスペースがあることに気づいた。

貴方はそのスペースに足を進める。恐る恐ると、本当は進みたくないのに、しかし確認しなければならないと己に枷を付けて一歩を歩ませた。

そこはまるで病院の手術室のような場所。明らかに地下倉庫には馴染まない金属の作りの部屋であった。

部屋の隅には腰の深い椅子があり、そしてその中央のテーブルのうえには何かが置いてある。

貴方は近づき、確認すると、それは首のない人間の死体だった。

 

「赤子の遺体か。一人だけではないな」

 

隣ではエミヤが状況を把握している。貴方は目の前の光景が認められなかった。

 

「この血の量、かなりの数がやられている...なるほど、ではあの椅子は分娩用の...」

 

【どうして...】

 

その時、エミヤの言葉にあわせて、ついに貴方は地下に入って初めて言葉を漏らした。

 

【どうしてそんな顔でいられるの?】

 

貴方は、まさしく地獄を見ている目でエミヤに振り替える。なぜこんな残酷なことが為されているのか、生まれてまもない赤ン坊がこんな風に変わり果てているのか。貴方は頭で理解してても、この現状を受け入れきれなかった。

そう、ここは人間の産んだ赤子をアマゾンたちが食べる、人間牧場だったのだ。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

「気分は落ち着いたか」

 

地下倉庫から人を救出し、貴方たちは一旦平屋の外へと出た。

アマゾンたちが襲ってくる危険性はあったが、あの惨状の中よりはずっとマシであると考え、外に避難することになった。

地下にいた人たちはその疲弊と助かった脱力感から動けなくなったようで、ナイチンゲールとエミヤにより、一人ずつ外へと運び出され、現在は全員が毛布を被っていた。

しかしその顔は生き延びた幸福を噛みしめる表情などではなく、なおも死人のような顔つきであった。

そんな彼らの顔を貴方は遠巻きから見ながら、背後から声をかけてくる人物、エミヤに振り返った。

 

【大丈夫だよ】

 

【あの人たちのほうが心配だ】

 

「嘘だな」

 

貴方の言葉にエミヤはすぐに嘘と断定した。

貴方は言葉が詰まる。なぜならばそのとおりだったからだ。貴方はまったく大丈夫ではなかった。先ほどの惨状を今にもフラッシュバックし、吐き気を抑えることで手一杯だったのだ。

エミヤはそんな貴方を一瞥し、言葉を続ける。

 

「マスター、言ったはずだ。こんな状況、なんでもないほうがおかしいのだと。強がるな、とは言わない。マスターにとってその虚勢は力だろうからな。我々は君のそんな姿に惹かれ、君に手を貸し、そして君は世界を救ったのだ」

 

なおもエミヤは話し続ける。

 

「だが、自らの役目は見出しておけ。これは明らかに君の領分から外れすぎている。こんな光景は君には似合わない」

 

そう言うとエミヤは踵を返し、救出した人たちのもとへ歩き出す。

最後にエミヤは、貴方に一つ言い残した。

 

「どうしてそんな顔ができるか聞いたな? 簡単な話だとも。私が人でなしだからだ。こんな地獄を何度も眺め、何度も見捨て、何度も作り上げてきたからだ。マスター、君は私のようにはなるなよ」

 

エミヤはそれを最後に貴方のそばから離れた。

 

貴方はエミヤに言われたことを思い出しながら、頭を抱えて座り込む。

 

目に焼き付いた、命だったものが当たり一面に転がる光景を見ながら。




次回、暗躍者。
誤字報告ありがとうございます。たくさんの読者様にご覧になられていることを噛み締めながら、読者様を煩わせないように、校正を自分の手でできるようにこれから頑張る所存でございます。
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