桜雲学園の正体不明   作:美浜

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久しぶりの我が家

 表札には〈石崎(いしざき)〉の文字があり、ここが俺の家であることを示していた。

 

 

「ただいま」

 

 

 ドアを開けようとすると鍵は掛かっておらず、そのまま中へ入った。

 

 

「あら、久しぶりね。(けい)

 

「あっ、久しぶりです。直子(なおこ)さん」

 

 

 部屋に入ると、一番に出迎えてくれたのは直子さんだった。

 直子さんは5年前に母が亡くなった時から俺と、妹の美咲(みさき)の世話をしてくれていた人で、俺たちにとっては親のような人だ。 

 

 

「少し遅かったわね」 

 

「う、うん。まあ、ちょっと寄り道をしてね」

 

 

 さっきのことはわざわざ言うことではないだろう。

 俺はそのままリビングへ向かうと、テーブルの上には美味しそうな料理がたくさん並んでいるのに気づいた。

 直子さんは料理ができなかったはずだから、美咲が作ったのだろうか?

 

 

「いや、でもあいつも家事とか全然ダメだったはずだし......」

「どうかされましたか?」

「えっ? いや、なんでもな······」

 

 

 最後まで言葉にすることが出来なかった。

 

 声をかけられ振り向くと、そこには落ち着いた雰囲気の美少女が立っており、俺は息をするのも忘れてその少女に魅入っていた。

 

 

「お、お久しぶりです。景兄さん」

 

「あれ? あっ、もしかして美咲?」

 

「そうよ、景。この子は正真正銘あなたの妹よ」

 

 

 なぜかにやにやしながら答える直子さん。

 

 

「聞いてよ景、景たちが出ていってからね、〈景兄さんが帰ってきたとき困らないように私、がんばります!〉とか言ってね、急に家事とかをやり始めたのよね。失敗して焦げた魚を食べさせられたり......」

 

「な、直子さん? それは言わないでください、恥ずかしいです......」

 

「あっ、でも今は毎日美味しいご飯を食べさせてもらってるわ」

 

「今日は景兄さんが帰ってくると聞いたので腕によりをかけて作っちゃいました♪ 」

 

「あっ、それであんなに美味しそうな料理が並んでいたんだ」

 

「まっ、積もる話もあるだろうし、とりあえず席に座って食べましょ?」

 

「直子さんは早くご飯が食べたいだけですよね?」

 

「「「あはは」」」

 

 

 3人の笑い声が重なった。

 

 

 

 

「景兄さんの部屋は前と同じところです。荷物ももう運んであるので、少しずつ荷解きを済ませてくださいね」

 

 

 久しぶりに食べた家族3人での食事はとても美味しかった。確かに美咲の料理の腕はかなり上達しているらしい。

 

 

「うん、じゃあ部屋の整理でもしているよ」

 

「何か困ったことがあればなんでも言ってくださいね?」

 

「ありがとう」

 

 

 そう言って美咲はリビングの方へと去っていった。おそらくお酒を飲み過ぎて寝てしまった直子さんの世話をしにいったのだろう。

 俺も少し部屋の整理をしたら寝よう。明日から学校もあるわけだし早めに寝ておかないと。

 ......そういえば何時に行けばよかったんだっけ?

 

 

 そう思っていると、タイミングよく美咲が部屋に戻ってきた。

 

 

「すいません、景兄さん。伝えるのを忘れてしまいました。明日は学校に7時にきて欲しいそうです。なんでも、渡すものがあるとか」

 

「そうなの? 伝えてくれてありがとう」

 

「いえいえ。景兄さんは今日はどうしますか? もう寝ますか?」

 

「うん。少し整理をしたら今日は寝ようかなって」

 

「そうですか、ではお休みなさい」

 

「お休み」

 

 

 

 そう言うと今度こそ美咲は部屋を出ていった。

 

 渡すものってなんだろう? タレントだろうか?

 7時に学校に着かないといけないわけだから1時間くらい早めにセットしてと。

 

 

 そうして俺はベットに横になる。

 そこで考えたのはやはり、学園でのことだろう。

 

 

「あれが......タレントか」

 

 

 俺もタレントを手に入れれば、あんな風に氷を出したり、火の玉のシュートが打てたりするのだろうか? 結構楽しみである。

 

 

 そんなことを考えていた数分後、俺の部屋には静かな寝息だけが響いていた。

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