転生したら遠坂家!? 二代目赤い悪魔の魔術師生活   作:狩宮 深紅

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42話目です。

皆さんお久しぶりです。狩宮深紅です。

皆さんはちゃんと投票に行きましたか?
有権者の皆さんはなるべく選挙に言った方がいいですよ!まぁ、無理強いはしませんが。
私?私はちゃんと行きました!


強襲

 

紅輝が士織に投降し、美紀恵は士織の力によって基地内の病院に送られた。

突然現れた美紀恵に病院内は騒然としたが、日下部隊長の機転によってスムーズに美紀恵の治療が行われた。

 

「ん、んぅ・・・?ここは・・・病院?」

 

「ようやく起きた ようね。」

 

美紀恵が寝ぼけ眼で声のした方を見ると、そこには日下部燎子がおり、少し呆れたような表情をうかべていた。起きた瞬間に上司がいたことから、寝ぼけていた目は一気に覚め、びくんと、肩を震わせた。

 

「た、隊長!?お、お疲れ様です!」

 

「ええ、お疲れ様。貴女達のおかげでアリーナにいた人達を含め一般市民のシェルターへ避難は完了したわ。」

 

美紀恵はその報告を聞くと、自分たちがやったことは意味があったんだと実感し、安堵の息をもらした。

 

「ほっ、良かったです・・・。あ、そう言えば、遠坂さんはどこにいらっしゃるのですか?姿が見えませんが・・・もしかして基地の方にいるのですか?」

 

美紀恵が燎子にそう尋ねると、彼女は不思議そうな顔をした。

 

「あれ?少尉の場所は貴女が知ってるんじゃないの?」

 

「い、いえ。私は新しく現れた精霊を遠坂さんに任せることしかできずに意識を失ってしまったので・・・。」

 

「新しい精霊・・・ね。以前現れた精霊と霊力の波長が似ていたから亜種みたいなものかしら・・・。困ったわね・・・、あ、そうだ。美紀恵、作戦中にプライベートチャンネルは繋げていた?一度通常回線で繋げてみたけど繋がらなかったのよ。そっちなら繋がるかも。」

 

「分かりました。やってみます。〈ベル〉?」

 

here(ここに)

 

CR-ユニットのタグが、音声と光りで存在を示す。さすがに展開していないため本状態であることは厳しかったのか。タグの状態で美紀恵の声に応答した。

 

「遠坂さんの〈デスティニー〉に戦闘時に使っていたチャンネルに繋げてくれる?」

 

『OK Colling』

 

〈ベルMkII〉がプライベートチャンネル経由で〈デスティニー〉へと繋げるが3コール経過してもでることはなく、少し待ち、10コール、15コールを過ぎてもでる様子はなかった。

 

「こっちでも出ないとすると少尉の身に何かあったかもしれないわね。」

 

「そうかもしれません・・・。」

 

そう答える美紀恵の頭に浮かんだのは遠坂紅輝の彼女を名乗っていた精霊。

あの場所で、美紀恵が気絶する前に戦闘を行っていなかったことを考えると、あの精霊が言っていたことは嘘ではなかったとも考えられる。

 

だが、本当にそうなのであればあの女が遠坂紅輝の情につけ込んで彼の身柄を捕らえた可能性がある。

 

「〈ベル〉もう大丈夫だよ。」

 

『OK』

 

プライベートチャンネルを切り、美紀恵は治ったばかりの身体の調子を確かめるために少し腕を回すなどをして確認する。

 

「隊長、私に心当たりがあります。だから、私に天宮市を含め近くの市町村の住民情報へのアクセス権を認めて頂けませんか?」

 

「・・・貴女、今とても危険な立場にいるということは分かっているかしら?私も責任は取らされるだろうけど、特に貴方達は"命令無視"に勝手に〈ホワイト・リコリス〉を持ち出しているの。これ以上勝手な行動をすれば、良くて記憶処理を施されてクビ、最悪死刑よ。」

 

「それは、承知の上です。ですが、私はそうなるだろうという覚悟はできているつもりです。それに、このまま何もせずに後悔するぐらいなら、私は行動を起こします!」

 

「・・・はぁ。私もとんでもない部下を持ったものね。いいわ、認めてあげる。だけど、貴女のIDを使うことは許可しない、使うのなら、私のIDを使いなさい。」

 

「そ、そんな!隊長をこれ以上巻き込む訳には・・・!」

 

「いいからいいから、部下がここまで覚悟を決めてるんだから、上司にも少しは良いかっこさせなさい。」

 

そう言って燎子は自分のIDカードを無理やり美紀恵に渡す。

 

「・・・ありがとうございます!」

 

そういうと、美紀恵は治ったばかりの身体に鞭を打ち、ベッドから抜け出すと基地の中にある自分に与えられている個室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

〜フラクシナス内部 第1話隔離室。

 

「ふふ、紅輝君。こうして同じ部屋に二人きりでいることは久しぶりだね。」

 

「・・・そうだね。自分もその点に関しては嬉しいことではあるけど、これは一体どういうことだい?」

 

自分はそう言い、少し座り心地の良さそうな椅子に手足を手錠で縛られていることを示すが、士織はさも当然のことと言わんような顔をする。

 

「だって、紅輝君を自由にさせておいたら逃げちゃうかもしれないでしょ?だから私としても心苦しいけど我慢してね?」

 

「自分が士織から逃げるわけないじゃないか。それに賭けは君の勝ち、敗者は勝者に従うだけだよ。だからこれを外してくれないかい?」

 

「だーめ、それに紅輝君今言ったよね敗者は勝者に従うって。だから、紅輝くんはこれから数日間、トイレとお風呂以外はずっとこのまま。」

 

「おっと、これは1本取られたな、でもな士織、自分はこの腕で君のことを抱きしめられない。せめて腕だけでもこの手錠を解いてくれないか?」

 

そういうと士織は少し悩むようにするが、直ぐに返答が帰ってきた。

 

「それでもだめ。それに、抱きしめることなら私がいくらでも紅輝君にしてあげられるから大丈夫。」

 

・・・やはり、一筋縄では行かないな。だが、まあ逃げないことは本当なのだが。CR-ユニットが手元にない以上逃げようがない。転移魔術を使おうにもこの場所がどの場所にあるか分からない以上座標の固定ができない。一か八かこの拘束を抜け出したとしたも、ここが少なくとも普通の大きさの施設では無いことは今までの経験上わかる、そんな状態で抜け出そうとしたところでもう一度捕まるのがオチだ。

 

「ふふ、どうやら諦めてくれたみたいだね。そんな紅輝君にご褒美だよ。ちょっと待っててね。」

 

そう言うと士織はぱたぱたとこの部屋のキッチンにあたるスペースの方に行くと、何やらスパイスの良い匂いがしてくる。

 

少しすると、士織がお盆の上にカレーライスを載せて戻ってきた。

 

「もうこんな時間だしお腹すいてるでしょ?私が作ったカレーだよ。本当なら今日の夕飯だったんだけど、1番先に紅輝君に食べさせてあげる。はい、あーん♡」

 

自分はそれに抵抗することも無く、口を開けてそれを食べる。

その味は5年前に1度五河家にお邪魔した時に食べたカレーの味からアレンジが加えらているように感じた。

だが、今の自分にはせっかく士織が作ってくれたカレーを楽しむ余裕は無く、今どうすべきかさえ考えつかなかった。

 

「美味しい?」

 

「あぁ、5年前に食べた五河家のカレーを思い出したよ。これは君が1人で作ったものかい?」

 

「うん、そうだよ。お母さんのレシピを参考に作ってみたんだぁ。」

 

にっこりと笑う士織に、なるほど、と心の中で思う。

そうしている間にも士織が二口目を自分に向けていたときだった。

 

──コンコン。

 

外に繋がる扉からノック音が聞こえる。

 

「お姉ちゃん、少しいいかしら。」

 

「・・・もう、せっかく良いところだったのに。どうしたの?琴里ー?」

 

扉が開かれ、恐らくここの組織の制服を纏った五河琴里が現れる。

 

「ごめんね、お姉ちゃん。私から紅輝さんに少し話したいことがあってね。そう時間は取らないわ。」

 

自分は己の知っている五河琴里とは全く違う様子に少し驚くが、精霊であると考えれば精神が彼女の同年代に比べて成熟していてもおかしくはないと思う。

 

「んー、仕方ない。分かったよ琴里。だけど、紅輝君を傷つけるのはダメだよ。」

 

「そんなことしないわ。それにこれはお姉ちゃんにも利益がある事よ?」

 

そう言って五河琴里は士織に耳打ちをする。すると、士織の顔はなるほど、といった表情になり、「なるほど、それならOKだよ。」という。

 

「お姉ちゃんから許可も貰ったし、少しお話をしましょうか紅輝さん。」

 

「無駄な話はしないつもりだ。僕は士織との賭けに負けてここにいる。ただそれだけだ。」

 

「まぁ、そう言わずに、お姉ちゃんから聞いたわ。紅輝さんは約2ヶ月前にお姉ちゃんを守れなかったことを悔いているって。」

 

「・・・。」

 

「多分だけど、その時にお姉ちゃんが精霊になったのも紅輝さんは知ってるんでしょ?そして、貴方自身の力の無さとお姉ちゃんを1度殺した精霊を憎んでいる。だから精霊を倒すことを目的にしている。違うかしら?」

 

「違う。僕が精霊を倒すのはイギリスに居たときにアルテミシアと精霊の居ない世界を作ると約束したからだ。君が言ったことも合ってはいるが、それは理由の一つに過ぎない。」

 

「なるほどね。じゃあ、このことは知っているかしら、精霊を人間に戻す方法のこと。」

 

「っ、そういう方法があると士織から聞いてはいる、信じてはいないがな。」

 

「まぁ、私も何もなしに信じろだなんて言わないわ。だけど、ASTの観測機で精霊の霊力反応は感知できない。それに、空間震もここ半年で発生数が減少している。これは私たちが精霊を人間に戻す方法を知っているからよ。」

 

「信憑性が無いな、そう断言できる方法を僕は知らないからね。それに───そういう話をするために僕と話に来たんじゃないのだろう?、本題を言ったらどうなんだい?」

 

「話はここからなのに、意外とせっかちね。だけど、紅輝さんがそう言うなら仕方ないわ。単刀直入に言うわ、遠坂紅輝さん、ASTを裏切りわたし達の組織、〈ラタトスク〉に入って欲しいの。もちろん、タダでとは言わないわ。三食食事付きに給料もASTの頃よりも出すことは約束するわ。それだけじゃない、お姉ちゃんを人間に戻すことを約束するわ。」

 

そう言って琴里ちゃんが取り出したのは羊皮紙で書かれた1枚の契約書。それは魔術に精通しているものならば大抵のものが知っている契約書に酷似していた。

 

自己強制証明(セルフギアススクロール)・・・?いや、少し違うな。」

 

「ええ、私達は魔術師の家庭では無いわ、だから貴方達魔術師が用いる自己強制証明は意味をなさない。だから特別なものを用意させてもらったわ。それこそ魔術刻印を持たない私達でも通用するものをね。」

 

そんなことが可能なのか。いや、自己強制証明(セルフギアススクロール)自体は呪いの一種だ。呪い自体はどのような人物であったとしてもかけることができる。ただし、一般的な呪いの範囲は(詳しい内容が定められていない限り)広くなれば広くなるほどその呪いの効果は薄くなる。故に、今回の自己強制証明(セルフギアススクロール)もどきにどのようなことが書かれているのか。また、そもそもこの契約書が本物であるかを見極めなくてはならない。

 

「契約内容を見せてもらおうか。」

 

「ええ、もちろんよ。」

 

 

 

 

 

 

対象: 五河士織、五河士道、五河琴里及び、ラタトスク機関に関係する全ての人間

 

 

五河士織、五河士道、五河琴里及び、ラタトスク機関に関係する全ての人間の魂が命ず。 各条件の成就を前提とし、制約は戒律となりて、例外無く対象を縛るものなり。

 

 

制約:五河士織、五河士織、五河琴里及び、ラタトスク機関に関する全ての人間は、遠坂家7代目当主遠坂紅輝、またはその家系の人物を対象とした殺害・傷害の意図、及び行為を永久に禁則とする。また、上記の対象となる人物は遠坂紅輝からの五河士織を人間に戻す方法の使用を命じられた場合、いつ、如何なる時であっても必ず実行しなければならない。

 

 

条件:遠坂家7代目当主遠坂紅輝はラタトスク機関に属す。

 

 

 

 

 

 

「魂だと・・・。そんなことが可能なのか・・・!?いや、恐らく可能だが、この条件達成しようとするならば契約成立の時点で魂に干渉するためにも莫大な魔力と、かなりの技量をもった魔術師が必要なはずだ・・・。五河琴里、この契約書を書いたのは一体誰だ。」

 

「ふふ、驚いた?その質問には答えられないけど、内の上はその契約を成立させる程の魔術師を抱えているのよ。それに、貴方程の実力と血筋をもつ魔術師をこちら側に迎え入れることができるならこれくらい喜んでやると言っていたわ。さぁ、紅輝さん、貴方はどうする?」

 

「・・・文面は確認した。自分の手でその自己強制証明(セルフギアススクロール)が魔術的に本物か確認させてくれ。右・・・いや、聞き手じゃない左手でいい。この拘束を解いて欲しい。」

 

五河琴里は自分の提案に少し思考すると、分かったわ。と答える。琴里が指を鳴らすと、先程五河琴里が入ってきた扉からブロンドの髪をもつ1人の男性が現れる。驚くべきことに、この男無駄な動きが全くなく脚運びを見るに何らかの武道や戦闘技術を極めた人物であると理解できた。もし、僕が不振な動きを見せたりでもした場合、すぐに対応されてしまうだろう。

 

「神無月、彼の拘束を左手だけ解いていいわ。だけど、変な真似をしたら容赦なく再拘束していいわよ。」

 

「了解しました。それでは遠坂紅輝さん少し失礼します。」

 

そう言って神無月と呼ばれた男が僕の左手の拘束を解く、だが、手首はがっちりと掴まれており、逃げることは許さないといった風だった。

 

「それじゃあ実際に確かめてもらおうかしら。」

 

そう言って五河琴里は僕の左手に自己強制証明(セルフギアススクロール)を触れさせる、魔力を反応させ、この契約書が本物であり魔術的な仕組みがしっかりと組み立てられているかを確認する。

数秒もかからないうちにも文字が魔力に反応し淡い光を放つ、同時にこの契約書に文字を書き換える術式や、入れ変える術式が組み込まれていないかをも確認する。

 

「・・・確かに本物であることを確認した。それに不正もない、完璧だ。」

 

「それじゃあ答えを聞かせてもらおうかしら。おっと、その前に神無月。」

 

「はっ。」

 

さっきまで解放されていた左手がもう一度拘束され、内心舌打ちをする。

 

「───少し考えさせて欲しい。」

「・・・分かった。それじゃあ明日の朝また来るわ。それまでに決めておいてちょうだい。」

 

「配慮、感謝する。」

 

そう言うと五河琴里と神無月と呼ばれた男が扉から出ていこうとした。

 

 

 

その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───緊急事態発生、緊急事態発生。何者かによってこの艦の空中制御システムと迷彩システムにハッキングが仕掛けられています!

 

けたましいサイレンが鳴り響き、赤色のランプが点灯する。

 

機械音が鳴ったかと思うと、自分が入れられている部屋を含めた全てのドアが開かれた。

 

すると、五河琴里はスマートフォンの様な端末を取り出すと、どこかに連絡し始めた。

 

「対応急ぎなさい!令音、逆探知はできそう?────駄目よ、3分以内になさい!」

 

「琴里、侵入者ってこと?」

 

「ええ、恐らくね。だけどこの場所がどうやって・・・。いや、そのことを考えるのは後ね。お姉ちゃんは紅輝さんをお願い。多分だけど狙いは紅輝さんよ。」

 

「え、うん。分かった!」

 

士織のその言葉を聞くと、五河琴里はこの場所から離れていく。

この部屋に残ったのは僕と士織だけ。だが、僕は椅子に縛られ、士織は僕のすぐ隣に佇み、GNソードVを展開させていた。

 

そして、しばらくすると、サイレンが鳴り止み部屋の明かりも元に戻る。

 

侵入者が捕まったのかそれとも何かの事故だったのか。それも、分からないまま1分、2分と時間が過ぎていく。

 

その中で静寂を破るように士織が口を開く。

 

「捕まったのかな・・・。ねぇ、紅輝君。私は魔術のことはさっぱりだけど、どうしてあの契約を迷ったの?アルテミシアって言う人と約束したって言ってたけど・・・。その、こんな言い方をすると嫌な女って思われるかもしれないけど、私よりもその人との約束が大事なの・・・?」

 

「・・・そういう訳では無い、けど。いや、もう言っていいかもしれないな。僕は君のために精霊の居ない世界を作りたかったんだ。君が精霊によって命を脅かされない世界、そんな世界を作れればって・・・。だけど、それも僕の力不足のせいで目的と過程が矛盾するような状況になってしまったけどね。」

 

僕がそういうふうに自嘲気味に笑うと士織は悲しそうな顔をした。

 

「そう、だったんだ。」

 

士織は短くそう言うと黙り込んでしまう。

 

その時だった。

 

「なるほど、遠坂さんが戦う理由は士織さんのためだったんですね。」

 

突如、何も無いところから僕と士織、どちらも聞いたことのある声が聞こえる。

 

すると、先程までテリトリーによる光学迷彩を発動していたのか、その迷彩を解き、黒いCR-ユニットを纏った岡峰美紀恵が現れた。

 

 

 

 

 

「良い雰囲気のところすみません。ですが、迎えに来ました遠坂さん。」

 

 

 

 

 





おや?美紀恵ちゃんのヒロイン力が・・・?

お気に入りに追加してくださった。

U777さん、ラインズベルトさん、桑原広正さん、リューオさん、もんじさん。ありがとうございます!これからも見ていただけると嬉しいです!

それではまた次回!

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  • 投稿頻度を高くして短い感覚で継続性を重視

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