ダンボール戦機ウォーズ~夢を探しに~(リメイク版) 作:黒好きのシン
「このように、一定の気圧を――――」
理科の教師、ブラウン先生が授業をしている。その授業を俺は聞いて、書いて、また聞く。その繰り返しだ。
重要なところにペンなどで線を引くのだが、全く頭に入らない。
何故かというと、昨日から一睡もしていないのだ。新しい機体を託され、興奮していたのだろう。そう自分に言い聞かせて疲れた脳を無理やり働かせる。
その結果からだろうか。気が付くと書いた文字が原形を留めていないではないか。線もまっすぐに引けていない。
いや、まだ大丈夫だ。ここからはまだ巻き返せる。
自分の中で見えない敵との戦いをしている中、一つ珍しい光景が目に入ってくる。
あのLBXだけにしか興味がない瀬名君が真面目に授業を受けているのだ。明日は槍が降るぞ。
「――あれをこうして、これを付けて」
前言撤回。よく見ると何か武器のようなものを描いている。少し驚いた俺の感情を返して。
しかもなにあれ、無茶苦茶な設計じゃないか。基本どころか全部やり直しだな。
無茶苦茶といえば昨日託されたLBXだけどあれもやりすぎだとは思わないかな。
だってほら、量産機のような機体からいきなりの高性能機体に変わったのだ。
俺としては嬉しくて舞い上がりそうだけどさ、なんかこう、あまり乗り気になれない。
……考えるだけ無駄だ、授業に集中しよう。
それと同時に教室内にチャイムが鳴り響く。
「……あぁ、終わってしまった」
誰にも聞こえないように溜息混じりで呟く。
あれから2時間目、3時間目も全く内容が入ってこないまま、昼休みに突入する。
「……あー、だめだ。午後はさぼる」
「さぼりはだめだよ」
「……聞かなかったことにして」
「それは副委員長として無理な相談かな」
「そんな……」
机に突っ伏している俺に鹿島さんが小突いてくる。
全く。未だにクラスに馴染めていない俺に毎日構うもの好きもいるんだな。
いや、これは副委員長として馴染めていない人を放っておけないタイプか。
それだとすると嫌々構ってくれいているということだろうか。
もしそうだったらお構いなく。こういうのは嫌でもなれるものです。……実際慣れたかというと肯定できないが。
「マナトはご飯食べないの? フミカ達は食堂に向かったみたいだけど」
「……鹿島さん。俺はご飯は食べなくて良いんだよ。これがあるから」
胸ポケットから四角い箱を取り出す。そう、サトーボーだ。
「それはご飯じゃないでしょ」
「俺にとってはご飯だ。食べてみる?」
「遠慮します」
「……即答かよ」
きっぱりと断る鹿島さん。なるほど、甘いのは好きだけど甘すぎるのはだめと。
「そのお菓子は……うん。私には食べれない」
「やめて、そんな目で見ないで」
悲劇のヒロイン風を装った(棒読み)茶番劇。
回らない頭をフル回転にして行えるこの茶番は誰が見ても褒めてくれない。
「……マナトってそんなキャラだっけ」
「……いいえ、決してこんなキャラじゃないです」
流石の鹿島さんでもこれには引いただろう、細目で俺の方を見ているあたり呆れているのかな。
「……時間もあれだし屋上に行くか」
「行ってらっしゃい」
「あれ、鹿島さんは来ないのか」
「なにそれ、私がマナトの行くところにほいほいついていくとでも?」
「……じゃあまた後で」
鋭い鹿島さんへ俺からのプレゼントだ。話題強制遮断という名のな!
俺は速足で屋上へと向かう。
――――
「おまえら! 何すんだよ!」
ドアを開けようと手を掛けた時、ドアの奥から聞こえた声で動きを止める。
何やら瀬名君と誰かが言い合いをしている様だ。
「瀬名アラタ、バイオレットデビルに傷をつけたくらいでいい気になるなよ」
これは瀬名君を狙った悪質な絡み見たいなものか。俺は関わりたくない。
「ああ、それと最近目が光る破壊神もそちらのクラスに入ってきたそうじゃないか」
……それ俺のことだよな。
「誰のことを言っているんだ!」
「……黒山マナト」
「知っていたのか、なら話が早い」
「せいぜいそいつに破壊されて飛び降りでもしないように気を付けろよ?」
「なんでお前らが知っている」
ホントは横やりを入れたくなかった。その場から逃げ出したかった。けどそんなのあの子が許さない。
「黒山マナトか」
「んなことどうでもいい。何で知っているかだけ教えろ」
「おうおう、聞いていた性格とはずいぶん違うな」
「話を逸らすな、何故知っている」
「マナト、一旦落ち着いて」
「そうだぞマナト、こいつらは俺が相手してるんだ」
「アラタは黙ってて!」
「なんでだよ!」
いつもの俺と違うのが分かったのか、細野君が止めに入ってくる。その気持ちは嬉しいけど今は引いてほしい。
「なんでってそりゃ、俺たちには仲の良い後輩がいるもんだからなぁ?」
「あいつってまさか」
「そのまさかさ、なんでも話してくれたぜ? お前の事だけでなく一緒に来ていた仲間のこともなぁ!」
俺は我慢できずに図体のでかい生徒の襟を掴み上げる。
「――おいおい、上級生に向かって暴力か?」
俺の怒りのボルテージは上がりきっている。図体のでかいロシウスの生徒の襟を掴み上げる。
それを止めようと細野君が割って入ろうとするが生半可に拒否られて生きてきたわけじゃない。
俺を煽り、怒らせることが出来て満足したのか、三人とも不気味な笑みを浮かべている。
「まあいいさ、今回だけは見逃してやる。だがな――――」
「――次は逃さない。ウォータイムでは覚悟するんだな」
俺に睨みつけて去っていく三人を怒りを落ち着かせるためにその場で踏みとどまる。
その後、教室に戻ると、俺の様子に気づいたのかフミカやらジンやらにいろいろと聞かれたが、言っても困ることでもないのですべて話した。もちろん誰にも聞こえない場所で。
それですっきりしたと思っていた俺は、ただ気づいていなかっただけかもしれない。
『後少シデ準備ガ終ワル。楽シミダナ』
え、更新続いてるって? 気のせいですそれは。
(読んでくださりありがとうございます)