ダンボール戦機ウォーズ~夢を探しに~(リメイク版) 作:黒好きのシン
昼休み。俺は出雲君に呼ばれ、食堂まで来ていた。
「……ここに呼ばれた理由が全く分からいのだが」
座っている席の順は俺、瀬名君、出雲君。机を挟んで細野君、星原君。そして近くに立っている鹿島さん。
後ろにはフミカたち三人が付いてきている。
というかなに、俺が行くところに何かと瀬名君やら鹿島さんやらいるんですけど。なんでかな。
「言うな。文句を言うなら俺ではなく後ろにいる隊長さんに言ったらどうだ」
言われた通り後ろを見るとフミカが超笑顔でウインクしている。殴りたいその笑顔。
実際に殴るなど暴力沙汰は控えさせていただきたい。そんなことしたら学園にはいれなくなるしな。
「……遠慮しとく」
「わかった」
「それでは――」と出雲君が説明に入る。どうやらブラックウィンドキャンプという拠点で昨日の昼に瀬名君に絡んでいたデスコンボブラザーズという最恐小隊が現れて態勢を崩されているそうだ。
名前が間違っている? デスワロタブラザーズかな。違う? ああ、そうそう。デスワルズブラザーズだ。
詳しく聞いているとブレイクオーバーした見方の機体を盾にしたとか、カメラを汚されたとか言っていたが、戦場なのだから卑怯とか関係ないのではと思うところでもある。
そもそもLBXプレイヤーの育成機関と聞いていたのに実際は戦争をしているのだ、ただLBXが好きで入ってきた人には分からないとは思う。
まあそう思うのも分からなくはないけどね。
「――説明は以上だが気になるところは?」
「……特にない。相手の行動も戦場だとしたら立派な作戦だとも思う」
「なんだよそれ! あんな戦い方でも良いのかよ!」
「アラタは落ち着きなさい!」
「でもよ!」
純粋に楽しみたいのは分かるが、そこまで正々堂々とこだわることもないとは思う。
俺も純粋な頃があったな……おっと、いけない。
「……俺から吹っ掛けたのもあれだが、終わった時の状況は?」
「ああ、わかった。サクヤ」
「うん」
細野君が返事をすると、机の上にマップが書かれた紙を広げ、マーカーを置き始める。
「終了時点での配置はこんな感じだね」
「この五つのマーカーが俺たちってことか」
「そう。敵のブルーグリフォンはこのあたりだ」
細野君がポケットから黒いマーカーを出して置き始める。
なるほど、これは瀬名君達が大勢を整えるために集まったところを敵も目の前で集まったってことか。
この予想でいいよな?
「すげーな、全部覚えているのか!」
「覚えていないのか、君は」
「……まあ瀬名君が覚えていないのはいつもの事でしょ」
「おいマナト! さらっと酷いこと言ったよな!?」
「まあ仕方ないよ」
「なんで!?」
瀬名君はいつもオーバーリアクションだな。
「アラタが覚えていなくても、そのために僕がいる。上空から戦況を俯瞰するのはクラフトキャリアのパイロットでもあるメカニックの仕事だから」
メカニックもただ修理するだけでもないんだな。
「戦隊の数はこちらが有利」
「……だが戦場だと数が有利でも負けることもある」
「そんなことは分かっている」
「ヒカル! そんな言い方はないだろう」
「けど!」
「マナトとヒカルの間にまだ何か解決していない問題があるだろう。だがそのいざこざをここで持ち出すのは筋違いだ」
出雲君の言っていることはもっともだ。実際俺は出雲君から頼まれてここにいるのであって、星原君と争いに来たわけではない。敵意がないわけではないよ? ただ今は争うときじゃないということ。
「……まあ、一番の問題はフォーメーションアタックをどうするかだ」
フォーメーションアタック。それは一小隊の3機が息を合わせて繰り出す必殺技のようなもの。
これの攻撃を崩そうとしてもそう簡単に崩せるわけでもない。
聞くにとても息が合った攻撃だそうで。実際に見てみないとわからないが。
「サクヤが作ってたやつ、レーザーランチャーって言ったっけ」
ん、そんなの作ってたのか。
「あれで突っ込んできたところをまとめて吹っ飛ばせばいい!」
「ダメ」
「えぇ」
「あれはまだ開発途中だから実践では使えないよ」
開発途中なら使えなくて当然だな。瀬名君が唸り声をあげている。
「フォーメーションアタックにはフォーメーションアタックだ。俺たちもやろうぜ」
その言葉を最後に、その場に静かな空気が流れる。
「……却下だな」
「そうだな」
「そんな簡単にできるわけがない」
「確かにね」
満場一致、星原君は俺と意見が合うのは納得いかないだろうけど普通に考えれば許可できないな。
「そんなのやってみなければわからないだろ」
「お前らには百年早いぜ、フォーメーションアタックは」
豪快な笑い声がすると思ったらデスカメラブラザーズですか、いや。
「……デスワルツブラザーズ」
「デスワルズブラザーズね」
直ぐに訂正する鹿島さん。いや、俺声に出てたか。
「全く哀れなやつらだぜ。負けるとわかってる戦いを今日もやらなきゃならないんだからなあ」
「なんだと!」
ここまで粘着質だとは。いや、アイツと仲が良いってことは類は友を呼ぶってか。全くどうしてそう俺の周りにはこういうのが集まるのか。
「ロストしたら退学、頑張ってエスケープスタンス取りなよ」
「その前にぶっ壊してやるからやっぱり退学だな!」
またもや豪快な笑い声をあげる。こいつら大丈夫だろうか。
「……まあ逆にあんたらがロストするかもしれないね」
「あ?」
「僕たちがロスト? ありえないね」
「……どうだか、そんなに慢心してると足元救われるよ」
「んだと?」
「まて、アイツの思うつぼだ」
少し頭の回るのがいるようだ。まああんなに自信満々なんだから今日も負ける気はないってことだな。
「……まあ敵国からの忠告ってことで受け取ってくれるか?」
「無理な話だ」
「……それもそうか」
まあ少しは受け取ってくれても良かったような気がするよ。
「行くぞ」
「せいぜい寮から出る準備でもしとけよー、ってする準備もできないか!」
そのままデスワルズブラザーズは食堂を後にした。
――――
午後の授業。俺はまたもや珍しいものを発見してしまった。
あの瀬名君が真面目にノートを取っているのだ。しかも凄いぐにゃぐにゃな線を描いている。
あれ、今は数学の時間だよな? あれ、瀬名君は勉強をしているじゃなくて……?
「こうきたらこう避けて――」
……だめだ、少しでも勉強している姿を見せてくれ……そしたら態度も変わるかもしれない。
「それだ!」
瀬名君の声に驚いた俺は、そのまま椅子から転げ落ちた。
「瀬名アラタ、何か質問かしら」
美都先生が瀬名君に訪ねる。
「いえ、すみません」
「黒山マナト、大丈夫ですか? 椅子から転げ落ちたようだけど」
「……大丈夫です」
何事もなかったかのように椅子に座る。そして笑うのを我慢しているジンとエリ。お前らは後でお話に付き合ってもうからな。
――――
放課後、今日のウォータイムを見学するかどうか悩んでいた。
いや、実際は見たくないけど、作戦会議に首突っ込んで最後はあのブラザーズ達に喧嘩吹っ掛けたからな。
……こういう時は見守るべきか。おや?
学園内にある森林もどきの場所で何やら声が聞こえてくる。
「ブルーグリフォン、発進!」
……これは例のフォーメーションアタックの練習だろうか。
いや、人目を気にしないのは良いけどね、意外とこういうのに興味ある人もいるんだな。
「ブルーグリフォン発進!」
徐々に精度が上がっている。ような気がする。気がする。
それでも何度も同じことを繰り返している。そろそろ時間になるけど大丈夫か?
「ブルーグリフォン発進!」
これで最後かな。……今の動き……
脳内で一連の流れが浮かんでくる。突っ込んできたところを正面から受け止め、吹き飛ばして叩き切る。
「……あいつら、多分負けたな」
それは誰のことを言っているのだろうか。周りが聞いたら誰もがそう言うだろう。
俺が言うのあいつらは、あいつらだよ。
そんな厨二みたいなことを脳内再生しながら俺は結局スワローへ向かうことにした。
一話ごとに文面が変わりますが中身は一人です(何の話)
(読んでくださりありがとうございます)