ダンボール戦機ウォーズ~夢を探しに~(リメイク版)   作:黒好きのシン

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逃れられない因縁

「マスター、何時ものお願い」

「はいよ、砂糖たっぷりのコーヒーだね」

「うん」

 

 

 今日、珍しくある人から話がしたいと連絡を貰ったので純喫茶スワローでくつろいでいる。

 いつ見ても落ち着いた雰囲気の店内に俺は心が癒される。

 

「お待たせ」

「ありがとう」

 

 マスターからコーヒーを受け取ると同時に、俺の横に誰かが座る。

 

「マスター、コーヒー一つ」

「はいよ、ブラックね」

 

 隣からクールな声が聞こえる。その声の主は。

 

「……ムラク」

「すまない、急に呼び出して」

「大丈夫、今日の任務はないから」

 

 今日は特に俺たち第六小隊に任務はなかった。まあブラックウィンドキャンプの制圧も終わってなかったしな。というよりムラクも今日は休みなのだろうか。

 

「それならよかった。マスターありがとう」

 

 ムラクはコーヒーを受け取るとマスターに軽く頭を下げる。

 

「……それで、話って」

「雅央イズヤについてだ」

 

 俺が転入してから、良くない噂を流し続けているアイツの名前が出る。

 ムラクはそのことについて話したいのだろうか。

 

「正直俺でも手が付けられる状態ではない」

「……まあ何となくそんな気はしていた」

 

 あいつは自分がこうだと決めたら滅多なことがない限り曲げることのない性格の持ち主だからな。そう簡単にやめさせることはできないだろう。

 

「学園長も少し気にしているみたいだがどうも手が出しづらそうだった」

「……プレイヤースキルがあるからか?」

「そうだな」

 

 そうなると学園側からの指導もあまりないわけだな。デスワルズブラザーズみたいな感じか。

 

「……あいつあれから上達してるのか」

「ああ、今では二つ名がついてる」

「……どんなの?」

「”白い彗星” イズヤの機体、リュウビから繰り広げられるテクニカルな戦い方が彗星に似ているからだそうだ。それをイズヤ本人から言い出すほどだから周りも渋々言っているみたいなものだが」

 

 自分自身で二つ名を付けたのか。そう思うと少し笑ってしまう。

 

「笑うな、面白いかもしれないが」

「……それもあるけど、なんかそこは変わっていないんだなと」

 

 今まで傷つけられたのになぜか懐かしむこともある。前はあんなにバトルしてたのに。

 

「その代わり変わらなくて良いところが変わってしまったがな」

 

 あいつのプライドが許さなかったんだろう。何時も競い合っていたのがいつの間にかすごい差が開いていたのだから。

 

「……ムラク」

「なんだ」

「……どうしたら良いと思う」

「それはイズヤとの関係の事か?」

「……うん」

 

 こればかりは俺だけでは解決できない問題だった。だってアイツ話聞いてくれないから。

 

「それは俺でも難しい問題かもしれない」

「……まさか」

「そのまさかだ。俺の話も聞いてもらえないからな」

「……詰んだ」

 

 俺は深いため息をはいて自分を慰めるようにコーヒーを飲む。

 

「すまないな」

「……謝らないでくれ、俺がムラクを巻き込んでいるんだから」

「わかった、コーヒー一杯で手を打とう」

「……意外と現金なんだな」

「金はあるけどな、今は貯めないといけないから」

「……そこまでする理由が?」

 

 俺はムラクが毎週シルバークレジット高額取得者に選ばれているのは知っている。機体の性能やプレイヤースキルで敵を倒し続け、バイオレットデビルという二つ名まで呼ばれるようになっていたのだから。

 

 でもそこまでして敵を倒し続けている理由が俺には分からない。だから今日ここで聞くことにする。

 

「ある。けど今は言えない」

「……そうか。まああまり深く聞かないでおくよ」

「頼む。この話をする前にいろんな問題を解決しないといけないからな。イズヤのこともだが暁家のことも」

「それはどういうことだ!」

 

 カウンターテーブルを勢いよく叩きつける。

 俺がこうなることを予想していたのか、ムラクは落ち着いたままだ。

 

「落ち着け」

「落ち着けるわけないだろ! なんでここで暁家話が出るんだ!」

「その暁家の二人がこの学園に入学しているからだ」

「……なんだよそれ」

 

 知りたくなかった。いや、ここに通っているのならいずれ知ることになったはず。それが今に変わっただけで。

 でも何故暁家がこの学園に入学しているのだ。あの家系はLBXなど平民が遊ぶものだと言っていたはずだ。

 まあその家系の仕事がLBXに関わることだというのは棚に上げているがな。

 

「俺も直接会ったわけではないが、たまに暁の名前が聞こえるんだ」

「……理由は分かるか?」

「それが分からない。そもそもこの学園に入学することを許すはずがない」

「……そうだな」

 

 いくら考えても分からない。意図は? あの男のことだ、裏があるに違いない。

 

 でもどうしたものだ。これをフミカたちに話すべきか。

 

「これは俺とマナトだけの話だ。まだ確定したわけではないからな」

「……わかった。話をしても余計複雑にするだけだしな」

 

 この話は一旦終わり。閉廷。解散。いや、解散はしないな。

 

「そういえば体調はどうだ。まだ制御できていないのだろう?」

「……寝不足だけど大丈夫だよ」

「寝ろ」

「……寝たくても寝れないんだ」

「それだったらフミカに頼むと良いだろう? 前は歌ってもらっていたじゃないか」

「それは前の話だろ! 今はそんなことしてもらってないし寮だから男子の部屋に女子が来れるわけがない」

「では逆にしよう」

「それ社会的に終わるやつ。やめて、俺がそんなことすると思う?」

「喜んで行きそうだな。――――冗談だからその禍々しい箱を出さないでくれ」

 

 ムラクが真顔で俺の手を止める。真顔で止められるとなんかあれだな、少し傷ついちゃう。ただのサトーボーなのに。

 

「――少し心配したが、意外と大丈夫そうだな」

「これからのことで問題解決しないといけないのにそんなこと言わないで」

「分かった、何かあったら話くらいなら聞くから」

「……ありがたい」

 

 これはフミカたちにも話しずらいことをムラクに話すことができるってことだ。いや、そしたらムラクに迷惑がかかるのでは? え、そんなこと考え始めたら終わりでは。

 

「優しすぎるな」

「……え? 今そんなこと言う?」

「そうだな。今言うよな」

「なんでぇ……」

「今俺に迷惑がかかるとか思っていただろ? そこだよ」

「……なんでばれたし」

「顔に出てた」

「そんな……バカな……」

「真面目な話をしているのにふざけているのは許されざる行為ではあるよな」

「ごめんなさい」

 

 俺がムラクに勝てないのはこのことである。人間関係については本当にムラクには頭が上がらない。フミカたちもそうだが、ムラクも俺がこの学園に入学してからこうして話を聞いてもらったりしているし、ウォータイムに関係すること以外については結構話してはいる。あと最近では俺に恋バナをしろとしつこく迫っていることは内緒にしておく。

 

「こういうのは時間が解決してくれたら良いのだがな」

「……そればかりは仕方がないよ。人間関係はどす黒いってよく言うし」

「なんだそれは、初めて聞いたんだが」

「初めてもなにも俺が感じたことを言っただけだよ」

「そうか。まあ、そうだ」

「……納得するのか」

「納得するしかないだろう。マナトの周りには真っ黒の人しかいないからな」

「……そんな断言されるとなんか現実的過ぎて落ち込むよ」

「マナトから言い始めたじゃないか」

「……そうなんだよね、そうなんだけど」

 

 なんか、こう、最近から感じてきたんだけど、俺の中に黒があって、その黒が暴れ始めそうな。この黒いもやもやが寝るたびに近づいてきて。

 

 いや、これ以上思い出すのはやめよう。

 

「そうだ、ここ数日はあまり派手に動かないほうが良いかもしれない」

「……それはあいつが関係しているのか? それとも暁家の方か?」

「どっちともだ。今はそれしか言えない」

 

 そうだ、この件に関してどこで誰が聞いているのか分からない。それにウォータイムでも活動情報は漏らさないようにと決められている。だからいつどこで見られているのかわからない。だかしばらくは動きを制限しなければいけなくなるだろう。これからだるくなると思うと憂鬱感が……

 

「……気を付けるよ。ムラクもイズヤと接触するなら気を付けてね」

「ああ、気を付けるよ。ありがとう」

「……お礼を言うのは俺の方だと思うんだが」

「奇遇だな、俺もそう思っていた」

 

 そのあと俺とムラクは昔話に花を咲かせた。

 




ストックという意味わからんものなど存在しない(デデドン)

大変お待たせしてしまい申し訳ありません。

ユルシテオニイサン

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