ダンボール戦機ウォーズ~夢を探しに~(リメイク版) 作:黒好きのシン
いつも朝から騒々しい室内は、特に今日は一段と声が大きい。
「鉄骨を落とすんだよ!」
何やら物騒なのが聞こえた気がする。そうだ、俺の頭が働いていないからだろう。気のせいだ。
「なー、アラタが鉄骨落とすって言ってるけどどう思うよ」
どうやら気のせいではなかったらしい。机に突っ伏している俺の横からジンが話しかけてくる。
「……どうも何も、鉄骨を落とすって誰に」
「は?」
「……え?」
何こいつ馬鹿かよ。とジンは言いたそうな表情をしている。呆れている声を出していて気になったからちょこっと顔をジンの方に向けたんだよ。そしたらあの顔よ。
「あのなぁ。昨日一緒に見ただろうが。ほら、要塞戦車の」
「……あ、あー。あのデカくて早いやつね。うん知ってる」
「お前なぁ……」
しょうがないだろ。こちとら眠気で頭が働かないんだ。昨日も半分寝かけてたし。もう嫌だ俺の体どうなってんの。
「話を戻すが、どうやらアラタは要塞戦車に鉄骨みたいな重くて大きいやつを落としたいだと」
「……んー。一応理に適ってはいるんだよなぁ。俺も考えてはいた」
「お? 考えていたのか。いや、考えてはいた?」
「……ああ、問題があってね」
重くて大きいのがあったとして、それをどうやって「落とす」のかで躓いた。何せあの堅物が潰れるくらいの重さだろう? LBXの腕では絶対動かせない。武器を使うにもハンマーみたいな丈夫なのが必要になる。それでも無理かもしれない。最悪武器が折れる可能性もあるから。そう考えるとそれで行こうとはならなかった。
「はえー、そこまで考えてんのか。ならその考えを彼方に伝えてやれば?」
「……断固拒否する」
「あのなぁ……」
面倒くさいことはお断りだ。たとえ言ったとしても「どうにかなるさ!」で片付いてしまう。この直感で動く人って結果がわかっていてもそれを覆してしまうものだ。大番狂わせにもほどがある。
「……まあ流石に今回は俺たちの出番はないよ」
「そーやってフラグを立てんなよ」
「……フラグなわけないだろ。ないよな?」
「んなもん俺に聞くな」
「……はい」
聞く相手を間違えていたようだ。俺はあくびをしながら虚無感に慕っていると、美都先生が入ってきた。
「席について。ホームルームを始めるわ」
その一声でクラスメイト達は自分の席へ急いで戻る。一部を覗いては。
「美都先生! 今日のミッション、もう一度第一小隊にやらせてください」
来ましたメインイベント。今日も騒がしくなるだろうな。……あれ、今の俺屑なのでは? 日を重ねるごとに心が黒く染まっているような。気のせいか。
「本日のミッション遂行は既に第二小隊から申請されているわ」
珍しいこともあるんだな。ただ見ているだけだと思っていたけどそういう手柄というか、そういうのを欲しい気持ちはあるということだな。
「でも第二小隊は納得のできる攻略プランを出せていない。現時点での第二小隊投入は保留よ。そこであなたたちに作戦を考えてもらいます」
なるほど。
「的確なプランニングをした小隊にこのミッションを託し、そして成功した際には、その小隊がエルダーシティのラボを優先的に使用できるものとします」
最後の言葉を聞いた途端、教室の中の空気が変わった。特にメカニックの人たちが。
「へぇ。奮ってご参加してくださいってことね」
風陣君が面白そうにしている。何時もなら彼は興味なさそうにしているのだが、反応したところを見ると大きなイベントの様だ。
「……ラボ、ねぇ」
今日も一日が始まった。
◇
時間は過ぎていき、現在理科の授業を受けている。どんなに眠かろうが理科の授業中だけは集中力を切らさないようにしなければ。気を抜くと危ない。
……何やら向こうで先生が一人の生徒を呼び掛けている。だが当の本人は気づいていない様子。どうなる。お、気づいた、ってあぶねぇよ! あぁ……割っちまったか。
「すみません! すぐに掃除しますから!」
瀬名君は上半身を腰から九十度に曲げて頭を下げる。頭を下げた後、割れたビーカーをずっと見ている、
「あった。あったぞ! でかくて重いものが!」
どうやら瀬名君の探し物が見つかったようだ。
◇
昼休み。俺は自分の席でサトーボーを咥えている、そして何時もなら食堂へ向かっているはずの三名が俺の周りを囲んでいる。
「それでどうするんだろうね?」
「さーな、俺にはわかんねー」
「マナト君ならわかりそうだよね?」
なんだよこいつら。思いっきり楽しんでいるじゃないか。それにフミカは俺たち第六小隊の隊長だろ!? そんな軽い感じで良いのかよ!
「……いいや、俺にもわからん」
「なーんだ、マナトでもわかんないか」
「……逆にわかると思うか?」
「思わん」
「……じゃあなんで聞いたんだ」
「気まぐれ?」
「……そうか、そうだったな」
忘れていたよ、俺たちは似た者同士だ。こんなこと日常茶判事だよ。
忘却された記憶と取り戻したところで、何やら周りが騒がしくなってきた。
「お願いだゲンドウ、力を貸してくれ。頼む」
「この作戦を成功させるためには第一小隊だけだはだめなんだ、俺からも頼む」
どうやら瀬名君たちは作戦を考え付いたらしい。だけど成功させるには彼らだけではだめと。
確かに自分たちだけで成功させることが一番だが、それが無理な場合助けを求めるしかない。だが今回の件で協力を求めるほどなのは相当危険を負うリスクがあるのでは?
「どうしますゲンドウさん」
白髪の高身長、名前は確か岸川セイリュウ君だったかな。岸川君で行こう。困った様子で磯谷君を見る。その磯谷君はじっと瀬名君を見続けている。
「手伝ってもいい。だがラボの使用権は第二小隊がもらう」
そらそうだ、リスクだけ背負ってはいおしまい。というわけにはいかないだろう。俺だってその条件を出すさ。
「いいよ、先に第二小隊が使って構わない。一番大事なのはエルダーシティの制圧なんだから。ハルキもそれで良いだろう」
「分かった」
話が纏まったようで良かった。これで……
「ちょっとまった! その作戦、私たち第六小隊も手伝います」
「……は?」
待て待て待て。俺の隊長さんが何か口走ってますけど。今良い感じに纏まっていただろう。
「い、いいのか?」
出雲君が若干引き気味になっている。俺の隊長さんがすみません。
「勿論。作戦内容的に人手はいるでしょう?」
「それはそうなんだが……」
俺も一応は作戦内容を聞いている。 エルダーシティの建物に、貯水タンクがあるビルがあって、その貯水タンクをあのでかくて素早い要塞戦車エルドバンドに落とすようで。そうなると囮役が最も危険な役割だ。あと一戸小隊だけで貯水タンクを落とせるとも思えない。というより俺たちが加わっても落とせるような感じではないような気がするが。そこは俺たちの隊長さんを信じよう。このお姉さん属性の気まぐれは誰も止められない。是非この隊長さんを止めることのできる人を募集しております。
「それに良いのか? ラボの使用権は第二小隊が持っていく。そちらには何もないぞ」
「問題ありません」
「そ、そうか。よ、よろしく頼む」
終始顔が引きつったままの出雲君をよそに。うちの隊長、フミカは満面の笑みだった。
怒られたらサブタイ変えます。