ダンボール戦機ウォーズ~夢を探しに~(リメイク版) 作:黒好きのシン
バイオレットデビル編ですどうぞ。
『なんでだよ‼なんで俺たちの出場権が白紙になってんだよ‼』
『で、ですから。先ほど申し上げた通り、君たちの中に不正を行うものがいると情報が入りましたので――――』
先ほどからずっとこの調子である。
不正?そんなことした証拠もないのに?
今まで出てきた大会では急に出場権が白紙になったことはない。
なのになぜ。アルテミスには出場できないのだ。
『あの。不正したという事実は確認したんですか?』
『い、いえ。まだそのようなことは確認できておりませんが……』
『は?どーいうことだよ。確認できてねぇのに出場権を白紙にすんのか?』
ジンの言う通り。明らかにおかしい。
まず不正したという情報が入ったのなら、俺たちに必ず確認の連絡が来るはず。
そこから聴取や審議が行われ、判決が出るはず。
なのにそれをすっ飛ばして白紙にするなんてありえない。
まさか。
『金か』
『え?』
『金で買われたな‼』
『あ、いや、その』
明らかに動揺している。間違いない。
『そうか。また暁家か。帰るぞ』
『マナト……ジン……っ」
『クッソがぁ‼』
――――――――――
「――ナト――――おいマナト。起きろ」
「……ん?――なんだジンか」
俺はゆっくりと体を起こしていく。
「悪夢からおはよう。よく寝れたか?」
「……俺が良く寝れていたと思うか?」
「おう。眉間にしわを寄せるほど気持ちよさそうに寝とったぞ」
「……そうか。じゃあ今日から勉強頑張れよ」
「ふっざけんなぁ‼マナトが居なかったら俺勉強どうすんだよぉぉ‼」
ジンはベッドを思いっ切り叩く。
「あーもう。うるさい。騒ぐな。授業中寝るな。以上」
「おい最後‼わざとだよな?絶対わざとだよなぁぁ‼」
頭を押さえてもがくジン。それもそうだ。授業中に寝ることは悪いことだと本人もわかっている。分かってはいるのだが突如睡魔に襲われてノックアウトすると言っていた。
「……だけどよ。何の夢見てたんだ?」
「お前が本格的に覚悟を決めた時の夢」
「…………あーあ、なんでも聞くもんじゃねぇな」
「今更遅いだろ」
「だな」
ジンが自分のベッドに腰を掛ける。と同時に静かな空気が流れる。
「お、そうだった」
「なんだよ急に」
「トメさんからお前に渡すようにだってよ。ほれ」
「おっとと。……何これ」
ジンから投げ渡されたものは、ちょうどポケットに入るくらいの箱。その表面には
「……なんかの青い狸さんかなんかか?」
丁度脳内に『サトーボー』という声が映像と共に流れた。
いや、まあモザイクはかかってるよな。うん。
「何言ってんだ、トメさんがお菓子屋さんに無理言って頼んで即急に作ってもらったんだよ。ったくすげーよな。一日で30箱くらい作ったらしーしよ」
「あ、あはは……色々おかしいだろ」
「お前のツッコミたい気持ちは分かるがやめとけ。余計疲れるだけだ」
ごもっともです。
「はぁ……それで、このサトーボーの食べ方は」
「口に銜えるだけ。ただそんだけ」
……それだけ?
「おい。今説明放棄しただろ」
「はぁ?説明も何もたばこみたいにすればいいだけの話じゃねぇか。それ以外に何を説明しろと」
た ば こ み た い に。
それは警察沙汰になりかねない発言ではないですかね。
ほかに説明できるのなかったのかよ。
「……ほんとにそれだけか?」
「そーだよ。そんだけだ」
「「…………」」
静かな空気が流れる。
今日のジンはやけにおとなしい気がする。
いつもなら『今からLBXバトルしよーぜ』って言ってくるはずなんだが。
やっぱりあのことを気にしているのか?
「……早く学校に行け」
「おめぇが言うセリフじゃねぇだろ‼てか唐突になんだよ‼」
「あーもう。そんなに元気があるなら問題ないだろ」
あ、しまった。と思った時にはもう遅かった。
「へぇ。気にしてんだな」
ジンの顔がいたずら顔になってきた。だから言葉を慎重に選ばないといけないのに。
「うるさい。早く行け」
「答えになってねぇぞ」
「ん?そろそろ行かないと隊長の頭に角が生えるぞ?」
「は?まだそんな時間に……あ」
部屋に設置されている時計を見ると、長い針が8を指していた。
「やっべ、また
ジンは慌ただしく部屋を出て行き、その様子をいつもの光景のように眺める
「……こんな毎日が続けばいいのにな」
ふと脳内に浮かび上がってくる『罵倒』『暴言』の数々。
昨日も……
「思い出す暇あったら前向けって話だよな」
まあ無理な話ではあるが。とか小言を呟いていると、ふとある言葉を思い出す。
『後ろを見る暇あったら前を見ろ』
親父がいつも励ましてくれる時に言ってた言葉だ。
意味は後ろを向いてうじうじするより後ろなど気にせずどのどん前に進んでいけってことらしい。
勿論親父の持論だ。
だがそういわれても後ろを見てしまうことだってある。
今、前を見るか後ろを見るか、どちらがあてはまるだろうか。
「……考えるのはやめだ。勉強勉強っと」
ジンからもらった砂糖棒を銜え、ノートにペンを走らせる。
――――――――――――――――――――
「やったぁ、昼休みだぁ!」
校内では昼休みのチャイムが鳴り響き、それを聞いたアラタは喜びの声を上げる。
が、これからミーティングがあると知り、崩れるように机に突伏した。
「今日のミッションは6小隊すべての参加です。攻撃目標はロシウス連合が建設中の長城型要塞ギガントの壁。ギガントの壁は、5本の基礎支柱がかなめとなっているため、この支柱をすべて破壊して倒壊させます」
言葉だけを聞くと壮大なミッションなのだが、一つ疑問が生まれる。
「せんせー、そのギガントの壁って5本の支柱が建ってるんだよね?
「えぇ、そうよ」
美都先生の返答にを聞き、エリは続けて
「だったら6小隊全員出撃じゃなくても良いんじゃないー?」
その言葉に頷く生徒がちらほらいた。
だが、直ぐに6小隊の意味が分かったのだ。
「諜報班の情報によると、ギガントの壁の防衛には、あのガウンタ・イゼルファーがいるそうよ」
途端、クラス内がざわざわし始めた。
「あのバイオレットデビルが…!?」
バイオレットデビル。生徒達や先生方の間で呼ばれている二つ名の様だ。
だがその異名な名前にフミカたち3人は唾を飲み込む。
「作戦を説明をするわ。一戸小隊が囮にとして、バイオレットデビルをひきつけ、時間を稼ぐ。その間に残りの小隊が残りの支柱をすべて破壊、そして破壊後、すぐに囮の小隊の援護に入る」
この作戦の要は囮役だ。 バイオレットデビルをどれだけ引き付けるか重要になってくる。
その重要さを分かっているからこそそれぞれの小隊長たちは誰も手を上げることはなかった。
「では、放課後のウォータイムまでに各自で決めなさい―――――」
美都先生は無表情のままミーティングを切り上げた。
昼休み、小隊長たち6人とそれについてきたおまけの6人は、昼食フロアに集まっていた。
「私たちはごめんですよ。囮なんて、能力の低い人たちがすることですから」
「素直にビビってるって認めたらー?仲間殺しのリクヤくん」
「っ……」
いつも冷静な第3小隊隊長、東郷リクヤ。そして、小柄だが誰よりも強気でいる(自称)華の第4小隊隊長、キャサリン・ルース。
この二人の言い合いは今に始まったことではないようで、授業中も時々言い合いをしている様子が見受けられる。
「相変わらずキャサリンのおしゃべり攻撃は強烈だねぇ」
「口だけじゃないってこと教えてあげましょうか?」
第5小隊隊長、風陣カイト。 冷酷な対応をとるらしく、悪い印象の方が多いらしい。
「真面目に話そう。囮役は一番難しいってことは確かだ。攻撃を避けるってことは相手より技量が上でなければならない」
「確かにそのとおりね。じゃないとただの的よ」
フミカは力強く頷くも、囮役にまでは切り出せないでいた。
それは無理もない。昨日転入してきたばかりで相手の実力も知るはずがない。
対策もなしに突っ込んでいくとなると確実に返り討ちにあう。
だがその気持ちはフミカだけではない。ほかの5人も同じだろう。
ここでも譲り合いは始まる。
「キャサリン立候補したら?レディーファーストって言うだろ?」
(なんのレディーファーストよ)
フミカは心の中で突っ込む。
それはそうだろう。
つまり男どもはか弱い女を盾にして自分たちはその隙に破壊しに行くってことになるのだから。
「……ふつう逆だろ」
会議の内容を聞いていたジンは小さい声で呟く。
「委員長。どうする」
第2小隊隊長、磯谷ゲンドウがハルキに話題を振る。
が、ハルキは黙って考え込んでいた。
「「俺(僕)がやります!」」
声がする方に注目が集まる。
フミカもその声につられて振り向いたのだが、視線の先にはアラタとヒカルが立っていた。
「バイオレットデビルと戦ってみたい!」
「僕もだ」
アラタの意見にヒカルも続く。
だが。
「だめだ。小隊長として許可できない!」
ハルキは権幕な表情をしている。その様子を見るに過去に何かあったということは明白である。
その後もアラタとヒカルはハルキに猛アピールしていた。
それを見て、サクヤがハルキを説得し、第1小隊が囮役となった。
――――――――――――――――――――――
「それでは今回の作戦を確認するわ――――」
作戦は第一小隊が囮となって敵をひきつけているうちに残りの小隊が支柱をすべて破壊、その後、援護に回るということだ。
もちろん俺も作戦に参加するのだが……。――視線が痛々しいです。
もうギンギンに睨まれてます。はい。
移動の時間になると痛々しい視線はそのままで俺が見えなくなるまで続いていた。
転入早々やらかした気分である。
でもまあ第1小隊じゃちょっと不安かなって思ってたり……その原因はほとんど俺にあるんだが。
その落とし前として援護に回ろう。そう司令官に伝えると案外素直に許可がもらえた。
許可も貰えたので俺はコントロールポッドに向かうため指令室を後にした。
『マナト、今回は二刀流でいいの?』
ポッドに乗り込んで早々エリが通信で聞いてくるので「問題ない」と答えると、ご機嫌になり「いつもより張り切っちゃうぞ~」と聞こえ――――――なかった、うん、聞こえなかったんだ。
今回のフォーメーションは俺が前衛であと二人は後衛だ。この配置はもちろん援護するときのためである。
もはや本来の作戦には参加しないと言い張っている形にはなるが、どう考えても嫌な予感しかしない。
そんな緊張感を全身で感じながらも違和感だらけの世界が視界に広がっていく。
作戦が入ってまだ数分しかたっていないのに美都先生から通信が入る。
「第六小隊、すぐに第一小隊の援護に入りなさい」
「「了解」」
意外と早かったので、すぐにエリに敵の映像を送ってもらう。
なるほど。機体の性能が違いすぎる。
俺から見たら動きが見え見えなのだが素早く動いてるのだろう、瀬名君達が反応しきれていないようだ。
こうなったら覚悟を決めるしかない。そう決めた俺はコントローラーを強く握りしめた。
「「エスケープスタンス!」」
瀬名君たちがエスケープを取った。だが無防備な彼らに刃が振り下ろされる。――――前に俺の刃が運良く届いた。
突然の事にバイオレットデビルは、反射的に退き、俺のほうを見る。
「やめろ!無謀だ!」
出雲君が通信で止めに入ってくるが、今撤退しようにも目の前の敵は逃がしてはくれなさそうだ。
「……無謀と言われてもな。敵さん逃がしてくれないですよ。ほら」
紫の機体は構えてはいないが、俺の動きをすべて警戒しているように見える。
「そうか、わかった。だが……。――無茶はするなよ」
低く落ち着いた声を聞いて、俺は今相当やばいやつを目の前にしてるんだなと改めて感じた。
俺は剣を構えると、紫の機体、ガウンタ・イゼルファーも同時に剣を構える。
お互いに様子を見ていたが、先に動いたのは――――ガウンタ・イゼルファーだ。
俺との距離をあっという間に詰め寄り、切りかかってくる。それを見切って流していくのだが辛い、機体が悲鳴を上げそうだ。
性能差は素早さだけではないようだ。どんなに見切れてもパワーで負けてしまっては意味がない。
これはじり貧で負ける未来しかないが、そう簡単には負けられない。せめて相打ちには持っていきたいところ。
「……チッ」
思わず舌打ちをしてしまう。
激しい攻防の中、俺はある程度反撃をしてダメージを与えているのは良いが、それよりもこちらのダメージの方が蓄積している。
と考えていたら右腕を肩ごと持っていかれ、数メートル飛ばされた。
これは油断していた俺が悪いのだが、覚悟が決まった。
「――――
そうつぶやき、ガウンタ・イゼルファーに突っ込んでいく。
だが、結果は惨敗。腕一本は持っていけたものの、こちらの機体の腕をもう一本持っていかれブレイクオーバーしたのだ。
それを見て撤退命令は出されたのだが、指令室の中はとても重い空気に包まれていた。
「ギガントの壁攻略作戦は失敗。最も、囮がすぐにやられてはどうにもなりませんね」
そう、今回の作戦は失敗したのだ、囮の小隊がすぐにやられてしまったため、俺たち第6小隊が援護に向かったが、見事に敗れ、作戦を続行することが極めて難しくなったからだ。
「…申し訳ない」
俺は深く頭を下げる。
が美都先生は「謝る必要はない」と伝えてきて、さらに続けて
「それでも、収穫はあったわ。バイオレットデビルたちが守っていた支柱は、ギガントの壁の動力装置だとわかったわ。それがギガントの壁の防御力を左右すると考えられる。あの動力装置さえ叩けば、完成後でもすぐにギガントの壁を壊せるわ」
その説明の後「怪我の功名」だとか、「やけっぱちの一撃が――――」とかヤジが飛ぶが、俺自身もそりゃそうだろなと思い罪悪感が襲ってくる。
そりゃあ、嫌な予感がして援護に行きますって言ってたのに機体を大破させられて戻ってきたんだ。けが人をさらに増やしたようなものだろう。
「おまえらなあ!」
「やめろアラタ」
瀬名君が何か言いそうになるが、冷静に出雲君が止めに入る。
未だに空気が重たくて、早く帰りたいと思っていたらだれかが声をかけてきた。
「何故助けに来た。僕は助けなんか頼んでない‼」
星原君は俺が助けに来たことを不満に思っていたらしく理由を聞きたかったようだ。
「頼んでいないなら助けなかった方がよかったのか?あのままだとロストになっていたかもしれないが」
あんな無防備で援護無しって戦場だったら『私何もしないので遠慮なく撃ってください』って言ってるようなものだろう。
そういうとまた俺を睨んでくる。そんなに俺のこと嫌いなの?俺が何したんだって言うんだ‼言い合いはしたが星原君に危害を加えるようなことは一切していない……はず。
ここで断言できないのが辛い。ええ辛いとも。
「それでも
結局そうなるのね。俺は化け物みんなから嫌われる化け物。
その言葉は正直聞き飽きたよ。
「その君の言う化け物に助けられた。この事実は変わらない」
と悪役が大抵言う捨て台詞を吐いて指令室を後にした。
寮へ帰宅するために学園の門を潜り抜けると懐かしい人物に会った。
「――――まさかほんとに入学してるとはな」
この声、聴いたことがある。
声がした方向へ向くと、一人の男子生徒が立っていた。
白い制服に、長い黒髪、そしてきりっとした目。間違いない。
「――――ムラクか?」
その問いを聞いて、爽やかにほほ笑んだ後、近づいてきて。
「久しぶりだな、マナト」
「こちらこそ、久しぶり、ムラク」
互いに握手した後、数分間その場で軽くお話をしたのであった。
はい、今回大幅に遅れてすみません。
やっと一話書き終えた。と思ったら6000字超えてるんです(笑)
前回より2話分を1話にぶっ込めた感があるので2で割ったら3000くらいで丁度良いかなと。
脱字を見つけたので修正しました。