ダンボール戦機ウォーズ~夢を探しに~(リメイク版) 作:黒好きのシン
「夜って結構静かだな……」
みんなが寝静まったころ、俺は頭痛に襲われて眠れなく、気分転換をするために娯楽室へ向かっているところだ。
にしてもほんとにここは寮なのかね。何時も騒がしくて仕方なかったのに。特に瀬名君とか瀬名君とか瀬名君とか。
あ、いや、瀬名君の悪口を言ってるわけじゃないよ? だってほら、俺と同じ部屋にいるオラオラ系で騒がしい人もいるからね。いやほんと、誰に憧れてそういう口調になったんだろうか。今度聞いてみようかな。今はこんなこと考えてるほど余裕じゃないんで……あー痛い。頭割れそう。
「あれ? マナト?」
娯楽室へ繋がっている階段を登りきると、偶然のどが渇いてジュースを飲みに来ていた鹿島さんと目が合った。
……この状況不味くね? 何故って転入初日の放課後。下校するときにさ、色々あっただろ? その現場に丁度鹿島さんいたし、あの後すっごい気まずかったんだから。さらに多分だけど青い目も見られてるだろうし、俺は彼女にとって恐怖でしかないんだろうなぁ……これは俺の勝手な想像だけど。とりあえず声を掛けられたし、返事をしなければ。
「えっと……鹿島さん、でしたっけ?」
でしたっけ? じゃないよ。なんでこんな反応しかできないんだ。ジンならフレンドリーな反応できるだろうけど、俺にはできない。
「そうだよ? 覚えててくれたんだね!」
「まあ、はい」
死にたい。こんな反応しかできなくていっそのこと早くこの場から立ち去りたい。てかなんで鹿島さんは嬉しそうにしてるんだ。俺と話せてうれしかったか? そう思ってくれるなら俺としても嬉しい。嬉しいけど今はそっとしておいて下さい。あぁ、銜えてたサトーボーがそろそろ溶けてなくなる。新しく銜えるから気分的に飲み物はブラックコーヒーだな。
「マナトってブラックコーヒー飲めるんだ。すごいね!」
「ま、まぁ。飲めないことはないです」
ホントに飲めないことはない。けど常に糖分不足だからあまり飲んではだめってドクターに止められてるけど。でも美味しいから飲んじゃう。一口。うん、美味しい。
「「……」」
あれから数十分、一言も話さずこの静まり返った空気。
気まずい。
昨日あんなことがあったのに今回二人きり。鹿島さんはまだ入りたての俺といろいろな話やアドバイスをしたいはず。だけどなかなか切り出せないでいる。そう悟っている俺も俺で、持ち合わせている話題など皆無だ。
こうしているうちにも時間は進んでいく。このまま就寝まで持っていけたらよかったが、それは叶わなかった。
「そ、その、昨日のこと」
「……気にすることはない。逆に怖がらせてしまい申し訳ない」
「ううん、そんなことはないよ! ……少し怖かったけど」
最後に本音が聞こえたが、彼女は普通に優しい人だと思う。初めて会った時からあまり話してはいないが、噂を聞く限り良い印象しか持たれてはいないらしい。逆に俺は『気味が悪い』『何考えてるのか分からない』『化け物』などなど。最後はほんの一部の人からだ。
「あはは……ほんとうに申し訳ない」
「だ、大丈夫だよ! マナトにはそうなる理由があったみたいだし……」
鹿島さんの表情が少し暗くなる。それを見て俺は何か罪悪感というものが生まれる。
「……そう言ってくれると助かるよ」
「う、うん」
鹿島さんの表情が少し明るくなる。
あれ、そういえば他人と普通に話すの久しぶりなような気がする。この島に来る前も一日中家に籠っているか、ジンたち3人とLBXバトルをするかくらい。学校には行ってない。というより行けなかったのが正しいかな。
俺が化け物と呼ばれ始めてから、直ぐに噂は広がり、その話が学校にまで伝わってしまったのだ。
ある日学校から家に電話がかかってきて、内容は『お宅の息子さんを学校に登校させないでください』だったそうだ。それを聞いた親父が学校へ直接説得しに行ったが話すら聞いてもらえず一方的に拒否られたと言っていた。
あの時はなんでだろうと思っていたが今となってはあぁ、俺なんかと一緒に居たら気味が悪いよな。
悔しいけど納得してしまう自分がいた。
おっと、自分の世界に入りすぎていたようだ、隣からの視線を凄い感じる。
それと同時にサトーボーが無くなったようだ。俺はポケットから箱を取り出し、蓋を開ける。
「あ、あのね」
「何?」
「昨日から気になっていたんだけど……」
鹿島さんが何やらサトーボーの方を見ている。まさか。
「その食べ物何?」
はい来ました。気になるのは分かるけどこれ凄い甘いよ? 胸焼けするよ? あ、胸焼けするってのはジンが食べてみたいって言うからあげたら気分悪くしたのよ。 甘 す ぎ て 。
それは今日の出来事でした。あげた時がちょうど夕飯前だったし、その夕飯時は少ししか食べれなかったらしい。なんか悪いことした気分。
「サトーボー。その名の通り砂糖の棒だよ」
駄洒落じゃないからな? ……駄洒落じゃないからな?
「へ、へぇ……」
鹿島さん、その微妙な反応やめて、ほんとにやめて。勘違いしないで、駄洒落じゃないからね? そのままの意味ってことだからね!?
「疑ってるなら食べてみるか? ……味は保証しないが」
味なんてもとから保証できないんだ。できたらわざわざこんなこと言ったりしない。
激辛店で食べた後のことは当店は一切責任を負いません。っていうなんか契約書みたいなのを差し出しても良いくらい。……流石に言いすぎだろうか。
「じ、じゃあ一本だけ……」
「どうぞ」
箱を開けて、取りやすいように鹿島さんの方へ向けると、サトーボーを一本だけ取る。
「い、いただきます」
砂糖棒の端を銜えるところを横目に、俺は鹿島さんの様子を見る。
お味はどうでしょう。てか震えてないか? 気のせいじゃないなら震えてる。うん。
「――――あまーい! 甘すぎるよ! 何これ甘い‼」
鹿島さんがばたばたしてる。やはりこうなったか。さっきから甘いしか言ってないし。
「あはは……だから言ったのに。ほら、飲め」
「ありがとう‼ …………苦い」
甘いって連呼してたからコーヒーで相殺するかと思ったら違ったのね。飲み終わった後の鹿島さんの一言が『苦い』だもん。
「それブラックコーヒーだからね。あとそれ捨てるのもったいないし俺が責任もって食べるから」
鹿島さんが持っていた砂糖棒を貰い、口に銜える。うん。何時もの味だ。
だがそれを見て鹿島さんはなぜか頬を赤く染めている。はて。俺なんかしたか?
「……どうした?」
「い、いや! 何でもない! そ、それより遅いしもう寝るね! おやすみ!」
「おやすみ」
鹿島さんは素早く階段を下りて行った。
「……あーあ。慣れないことはするもんじゃないな。頭いてぇ」
近くにあったソファーに座り込み、気づかぬうちに俺は眠りに入る。
――――――
「お、落ち着こう。うん、落ち着こう」
マナトと別れたユノは、1階の女子寮の入り口にある扉に寄りかかっていた。
「な、なんで、意識したのかな」
ユノは自分自身、頭から湯気が出そうなくらい顔が火照っているのが分かる。
そうなったのはマナトからサトーボーという食べ物を貰った後のこと。
彼女はサトーボーの端を銜え、少しかみ砕いたのだが、真っ先に口の中に広がってきたのは甘味だった。
それが普通に美味しく感じる甘さなら良いのだが、あの時感じたのは殴りこんでくるような甘さだ。
それに耐え切れず飲み物を欲したとき、マナトがコーヒーを渡してきたのでそれを一気に飲み干す。
これで助かったのは良かったのだが、冷静さを取り戻すとふと気づいてしまう。
――今飲んだコーヒーってマナトが先に飲んでた――
その瞬間体温が一気に跳ね上がりそうだったが、悟られてはいけないのでどうにかこらえることはできた。
だがその後が問題だった。 マナトはユノの食べかけのサトーボーを食べ始めたのだ。
この時ユノに好意があっての事かなと思ったが、彼は何も思っていない様子だった。
そう考えるとユノはなんでこんなにも動揺しているのか、それは彼女自身にも分からなかった。
「か、考えすぎは良くない良くない。部屋に戻ろうっと」
かれこれ数十分ほど自分の気持ちと格闘の末、ようやく落ち空いたユノは自分の部屋に戻っていく。
その日、ユノは夜中まで寝ることが出来なかったのはまた別のお話である。
投稿が大幅に遅れてしまい申し訳ないです。
誤字脱字報告ありがとうございます。