アフロサマー&ワンコモッピー   作:梵葉豪豪豪

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「あぁ、一夏、一夏ね。あのアフロね、剃っても二日で生えてくるのよ。昔担任の先生が朝バリカンでガ―――っと丸刈りにしてね、でも1時間目終わる頃には目に見えて黒々生えてきたワケよ。それはもうモッシャモシャと。先生も意地だったのね、毎日1週間剃り続けて。ま、先生結局折れちゃったけど」

「誰が奴のヘアスタイルの話を聞いたか」

 

 都都逸国が今経済面で絶賛disり中のチューカカカ国で代表候補性やってる2組の凰鈴音へ一夏に関する情報を問い質したラウラは、速攻で己の愚を悟った。駄目だコイツサカッってやがる。

 何かを思い出しグネっている鈴音を放っておいてラウラはさっさとこの場を去ることにした。

 

「あと一夏のきのこが」

「知るか」

 

 

「織斑一夏、私と勝負しろ」

 

 とラウラが高らかに宣言したその場所は、放課後バト以下略のアリーナ。自主練習している生徒でごった返している。当然皆がやることはISの練習である。かく言うラウラもISを装着して中空に浮かんでいるところだ。

 睨み付けて指差した先には一夏らクラスメイト御一行がたむろしていた。軍人が素人に喧嘩を売るという大人気ない構図には当のラウラ本人は気付いていない。大人ではないが。

 

 当然ながら一夏もISを着込んでいた。クッソ白いISはラウラと同じように国から貸し出された専用機である。そんな白さに黒々としたアフロヘッドが刺さってるのはぶっちゃけアンバランスとしか言いようがない。更にお前は千九百何十年代だってばかりの巨大なサングラスを掛けている。

 ついでにその隣には赤いISを着込んだ箒がしゃがんでわんこ座りしていた。ISってしゃがめるんだねビックリした。どうでもいいのでとりあえずラウラは彼女を無視した。

 

 ご指名の一夏は両手を拡げ満面の笑みを湛えながら寛大に迎えた。実に余裕である。

 

「ワーオ、ワタクシ愛する教官とにゅあんにゅぅあぁんシタいので邪魔な弟は排除しまーすってか? 素晴らしい蜜濡れの師弟愛だ! マンガかラノベかweb小説みたいだ! オッケーいいぜ受けようか」

「お前は殺されたいのか」

 

 あからさまに怒らせる気マンマンで挑発する彼の態度に怒りでつい乗ってしまうラウラである。肩に装備したどでかい砲「レールカノン」を一夏に向けた。ラウラの着ているISが軍用で当然軍用の装備なのでこういう場では些かオーバーキルとは言える。

 対する一夏は右手にIS用の拳銃一丁構えているだけだった。IS用といってもグリップがちょっと延長された程度の、本体は至って普通の9mm拳銃である。そんなものがISに効くのか? という疑問をラウラが抱いたのは当然であろう。

 

 周囲のクラスメイトは一夏のスタイルを見慣れているので特に動揺がなかった。寧ろラウラに対し可哀想に明日はさくらユッケのために解体される競走馬ね的な目線を向けている。そんな連中にイラッと来たがラウラは箒同様に無視した。

 

 スタイリッシュなポーズを決めつつラウラのいる高度まで登って来る一夏。同じ目線に至った瞬間、問答無用でラウラは「レールカノン」をぶっ放した。

 大味な武器だし当たるとは思っていなかったが、おどけてグネりつつもきっちり避ける一夏に、果たしてマグレなのかはラウラには判断が付かなかった。

 逃げる一夏を追って右方向へ横一直線に連射した。バレリーナの如きスタイルで高速にひょーいひょーいと銃弾を避けていく一夏。人をナメくさった態度でありつつきっちり避ける辺り流石に彼がキャリア数か月の素人だという評には疑問を抱かざるを得ない。

 

 一夏はデタラメな軌道を描き、ラウラが廻り込むよりも先に彼女の後方へと陣取った。

 

「ハイハイハイハイ耳の穴!」

 

 ラウラが振り返ること見越して、一夏は軽やかにというか軽薄に一発撃った。振り返る途中にあったラウラの左耳に絶妙なタイミングで銃弾を捻じ込んだ。

 生身の露出した部分も含めてバリアが守ってくれるIS様なので、異物が奥に通らないよう止めてくれる仕様ではある。しかし微妙に耳穴にジャストフィットする口径の弾だったのが実に嫌らしいところで、ラウラの耳穴に軽減された衝撃を伴いピッタリ納まってしまった。慌てて熱いコイツをISの指でほじくり返したラウラだった。結果的に怒りが余計増しただけである。

 

「ふざけてんのか貴様!」

 

 怒鳴ってはみたものの、この場は余計隙を生じさせただけだった。

 

「ハイハイハイハイ上の穴!」

「ぬぐっ!」

 

 今度はラウラの口の中である。同様に止まってくれたのでペッと吐き出す程度で済んだ。どうでもよろしいことだが飛行中のISが飛んできた鳥を咥えてしまう事例はたまにある。という本気でどうでもいいことをラウラは思い出した。もうここまで来たら奴の腕は認めざるを得ない。

 

「もういかん貴様は死ね!」

 

 両手からワイヤーに繋がれたナイフをせり出し、更に相手の動きを止める「停止結界」を発動させてきっちり刺し殺してやろうと構えた。が、相手が馬鹿正直に待ってくれる道理はなかった。

 

「ハイハイハイハイけつの穴!」

「オヒョーゥ!」

 

 ちょっと入っちゃいけないところへ銃弾がめり込んだ。しかも2発目の銃弾が正確に1発目を叩いて後押しし、ISスーツの生地もろとも微妙に深いところまでズカーンと行ってしまっている。ついでに述べるなら撃たれた銃弾はグネりつつ回転しているものである。「絶対防御」とのギリギリせめぎ合いだった。

 

 その時のラウラは、およそ井上○里奈らしからぬ声色を発し、詳細に描くのははばかられたい表情になっていた。敢えて述べるなら、ラノベの表紙や挿絵を飾るクール系美少女から白○由竹への変化である。合掌。

 

 硬直した敵をアフロ野郎が見逃す筈もなかった。

 

「ハイハイハイハイ下のあぬごぉ!?」

 

 取り返しがつかなくなる直前、一夏の眼前に束ねて捩った髪の毛2束が突然襲い、彼は物凄い力ではたき落とされた。そんなに高くない高度だったのでコンクリをちょっと損壊させた程度で済んだ。生身だと死ぬ。ついでにラウラも巻き添えを食らって墜落した。周囲の目も墜落を追い揃って視線を落としていく。

 

「ばばう!」

 

 伸びた髪の毛の元、腰に手を当てたポーズの箒が落ちた先の一夏に向かってギザ歯を剥き出しに咆えた。傍目に見ても怒ってらっしゃる。

 一連の騒動を腕組みして眺めていた同じ1組の谷本癒子、鷹月静寐、四十院神楽の3名は思い思いに感慨深く眺めていた。他人事である。

 

「うんまぁそー来るよね。下品だったし」

「あの髪ってISなのか生身であんななのか」

「いつからここは富沢ひとしワールドになられたのでしょう?」

 

 どちらかというと箒の話にシフトしてしまっていた。今に至るまで日本語を喋ってるところを見たことのない級友の方が関心度は高い。彼女らから見ればどうやって現代日本を生き抜いてきたのか謎の女子である。髪の毛ドリルとか、政府の陰謀で共生でもしたのかと勘ぐりたくもなる。

 

 凝りずにシャキンと立ち上がった一夏は拳銃をラウラに向けて構えた。スタイリッシュに拳銃は横向きで持つ。空いた手で手招きのゼスチャーを取って挑発してきた辺り本当に懲りていない。ラウラも立ち上がって各種武器を一夏に向け対峙する。小刻みに震えながらも尻を押さえ果敢に挑む姿に周囲は色んな意味で涙し畏敬の念を抱いた。

 

「ボーデ何とかさんよォ、それでは本番行ってみよーか! 今度は弾丸に『零落白夜』ってるよ! バリアズブズブだぜ!」

 

 本番の好きな一夏が更に煽る。

 「零落白夜」とは一夏のISに備わった能力であり、相手のエネルギーやバリアをガン消しして剣撃を叩き込むIS委員会よくそれOKしたなって代物である。現役時代の千冬が最初にこれを使っていたので、ある意味継承したようなものと言える。だがあくまで一夏のISに標準装備されている剣での話だ。

 それはそれとしてつまるところ一夏はバリアを突き抜けて本体や生身を撃ち抜けるとそう言っている。

 

「何て応用するんだ! 教官の必殺ブランドをそんなえげつないことに使うな!」

 

 本人にとって至極当然の言い分をラウラが放つが、ニヤケ面を隠さない一夏に効きはしない。

 

「そこの二人! そこまでだ!」

 

 たまたまアリーナを見回りに来ていた大千冬先生が見かねて止めに入った。周囲はとりあえず収まったと一斉にため息をつく。

 

「……私闘とまでは言わんが物には限度というものがある。トーナメントまではお前ら対決は自重しろ」

 

 ニヤつき顔のまま肩を竦めたグラサンアフロ野郎は掲げた拳銃を目の前から消した。「量子化」というIS特有の機能で武器が収納できるのだ。しかし一夏のISには専用の剣以外収納できない。整備畑の女生徒たちには色んな意味で納得し難い話である。

 

 張り詰めていたものが切れ、遂にラウラが倒れた。ISを装着している見物人らにより緊急搬送される。あなたはアイツ相手に痛みに耐えてよく頑張った感動した可愛い、と彼女が多くの生徒からちょっと見直された小事件であった。一方の一夏の評判は聞くまでもなかろう。

 




・鈴音
 手遅れ。

・富沢ひとし
 漫画「エイリアン9」は属性にロリリョナドリルドジ教師の四重苦揃った変態にとって御用達な一作。

・零落白夜
 次回のトーナメントへの振り。
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