暗転し、今度は映画館の一室となった。中央近辺のちょっと上辺りにて二人は隣り合って座っている。今度はちゃんと二人とも制服を着ているので安心して欲しい。
これがヤーパンサブカル大好き副官クラリッサ・ハルフォーフ大尉じゅうななさいならば、アニメお約束の心の描写! とばかり具体例を次々列挙してくれるのだが、ラウラに知る術はない。助けてもらったこともありともかく付き合うしかない状況にある。
スクリーンにはカウントが映され、いかにもとばかりに映画が上映されようとしていた。
「これは貴様の半生記とやらか」
「イエス、刺激的なモノが見れるぜ」
「この際だ見てやろう」
そう言いつつラウラはカップを抱えて中のポップコーンを齧りつつスクリーンに見入ることにした。当面この空間から出られそうにないから暇なのだ。
どこかの乱雑なラボに立つのは、二人の子供、一夏と箒である。この頃はまだ見た目はまともであった。
テーブルに置いてあった物をお菓子だと勘違いした二人はそれを飲み込んでしまった。直後全身から何かが溢れファイティングポーズを取る。10代の頃の篠ノ之束が泡を食って駆け寄って来るが手遅れの様子だ。
その後の彼らは、現在のような出で立ちに変化し、拳銃やドリルが生えたり、いじめっ子を吹き飛ばしたり、襲い掛かる政府のエージェントを屍の山(比喩表現)にしたり、遂には白騎士事件のとばっちりで離散させられたり、爆散して自己再生したり、エイリアンと握手したりの半生だった。
「つまり何だ、ISコアってのは元がエイリアンであって、お前はそのISコアと共生してIS人間になったと」
「ハイ正解」
映像から読み取れる情報だとそういうことになる。聞きたくなかったISと彼らの秘密だった。無事生還の暁にはこれらを本国へ報告しなければならないラウラである。実に気が滅入る。
そのひ、おりむらちふゆをおしたおした。
「ブ――――――!」
口内に含んだポップコーンを盛大に飛ばしたラウラは、狼狽して一夏の胸を捻り上げ突っ込む。
「お前何考えてる!? 実の姉だぞ!?」
「姉弟同士ってな、背徳感あると思わねぇか? いや俺当時はマジだったからな?」
「最低だ」
敬愛する教官の絶対知りたくなかった過去である。その後の千冬の満更でもない態度から、ラウラの中で燃えていた千冬熱に冷や水をぶっかけられた。あーこの人も一人の女だったんだな、と。
そのひ、ふぁんりんいんをおしたおした。
「あぁうん、教官相手よりはまぁマシだ」
「これは年相応というものさ」
「ジュニアハイスクール時代という点を除けばな」
山本直樹作品ばりなプレイ三昧を見せられてもラウラにそういう趣味はない。スカシ目を湛え機械的にポップコーンを齧る作業に入り、ついでにコーラで喉を潤した。
そのひ、ごたんだだんをおしたおした。
「オイオイ思わず俺たちの友情に感動しちまったのかい?」
「……そう見えるか?」
ラウラが思わず目頭を揉み解した。3度目は大体オチである。世の中に蔓延るクソ映画とはこういうものなのだろうとラウラは勉強になった。そうでも思わないとやってられない。
クライマックスにはISを動かし実技試験で無双し試験会場を吹き飛ばし、箒と再会して濡れ場に突入しエンドとなった。丁度ポップコーンが切れたのでカップを仰いで残った内容物を口に含み、コーラで喉を洗い流す。武○人間を観た方がまだマシだったとラウラは結論付けた。
「とりあえずはお前がろくでもない人間というかクソ野郎というのは判った」
「何て人聞きの悪い。俺、愛の戦士だよ? 銃使いを卑怯と言い放って弱くて守る守る詐欺でヒロインたちに嫌われるワンサマちゃんだよ」
「どこの時空の話だ心にもないこと言うな」
アニメ顔の描かれたお面を顔に貼り付けのたまう一夏をとりあえずラウラは一蹴する。
「ラウラちゃんよォ、俺のベッドにいつでも潜り込んでいいんだぜ? 全裸で」
「私にそんな人生の選択肢は今の所ないから安心しろ。あっても貴様にではない」
本気で嫌そうな顔をしてラウラは二度目の一蹴をシュートした。この映画館でのここまでに至る経緯はその殺し文句で締めるための振りだったのだが、好感度がマイナス振り切っていては実に無意味なものである。
その後黒い塊を突き破ってアリーナへと復帰した一夏とラウラは、黒々しい何か筋肉男的な残骸をボコボコに撃ったり斬ったりして徹底的に消した。
最後に千冬がいかにも恋人らしく軽く一夏の尻を叩く様を目撃し、以降ラウラは真面目に生きようと決心した。
尚一夏は直後箒に尻を噛み付かれた。
現在、ラウラは未だに一夏に狙われている。
・○器人間
登場人物が主人公含めてクソ野郎だらけという終始ゲラゲラ笑えるホラー映画。ラストのオチ映像が秀逸。