【完結】紳士的な異世界はスマートフォンとともに。 作:味音ショユ
アイスの話から色々あった。ミカさんとデートしたり、アエラさんとも何とかデートにこぎつけたり、あとギルドの受付のお姉さんとも仲良くなった。
そしてギルドの依頼も色々受けた。魔獣討伐、採取、調査、変わり種としては子守なんてものもあった。それらを受けて僕らのギルドランクが上がり、カードが紫になった。初心者を卒業したのだ、艦○れでいうなら3-4突破したくらいだろうか。
「北、廃墟、メガ……、スライム……?」
新しく受けられる紫の依頼書のうち1枚を読んでみる。リンゼに教わったおかげで簡単な単語なら読めるようになったんだ。
「ねえ、2人ともこれ……」
「「ダメ」」
一緒に来ていたエルゼとリンゼに見せたら秒でハモって否定された。そんなに嫌なの?
2人ともブヨブヨしたものが生理的に嫌いらしい。
「それにあいつらって服とか溶かしてくるのよ、って――」
「え、何だって?」
と言いつつ僕はギルドから虫取り網を借り、メガスライムを取りに行く準備を整える。僕は、男性冒険者の希望になる!
「魔物を町に持ち込むような行為は禁止です」
しかしギルドの受付のお姉さんに首を絞められながら止められる。
「僕の首がぁ―――っ! 首そのものがぁ―――っ!!」
「すっかり冬夜の馬鹿な真似もここの風物詩になったわね」
「私達、時たま周りからどういう目で見られてるのか気になりますけど……」
「別にどうでもいいわ」
2人は首を絞められている僕を置いて、他の依頼を見に行ってしまった。え、置いてくの?
そしてしばらくすると依頼書をとって戻ってきた。その頃には僕も首絞めから解放されていた。
「冬夜さん、これはどうですか?」
リンゼが紫の依頼書を持ってきて僕に見せる。何々……。
「王都への手紙配送、交通費支給。報酬は銀貨7枚ね。いいじゃん」
「でもこれじゃ3人で割れないわね」
「残りは皆で何かに使いましょう」
よし、それでいこう。と、そういえば依頼主の名前を見てなかった。ザナック・ゼンフィールド? あのザナックさんか?
住所を確認すると、ファッションキングザナックとある。やっぱりだ、間違いない。
「王都ってここからどれくらい?」
「馬車で5日くらいかしら」
結構掛かるな、となると初めての長旅か。でも帰りはゲートで一瞬だし、知らない所に行くのは楽しみだ。
「じゃあこの依頼を受けようか。実は依頼主知り合いなんだ」
「そうなんですか?」
「じゃあ決まりね」
ということで受付に持って行き申請する。受付によると、細かい依頼内容は直接依頼人に聞くように、とのこと。
早速会いに行ってみるか。
「久しぶりだね、元気だったかい?」
「その節はどうも」
僕らが店に入るとザナックさんはすぐに僕に気付き、声をかけてきた。ギルドの依頼で来たことを告げると、ザナックさんは僕らを奥の部屋へと通した。
「仕事内容はこの手紙を王都に居るソードレック子爵に届けることだ。私の名前を出せば伝わるはずだ。それと子爵からの返事も貰って来てほしい」
「急ぎの手紙ですか?」
「急ぎではないが、あまりゆっくりされては困るな」
ザナックさんは笑いながら、短い筒に入った手紙をテーブルの上に置いた。
「それとこっちが交通費だ。少し多めに入れといたから、余った分は君達の王都見物にでも使ってくれ。返す必要はないぞ」
「ありがとうございます」
手紙と交通費を受け取った僕らは早速出発の準備に取り掛かる。僕は馬車の準備、リンゼは食糧の買い出し、エルゼは宿に戻って必要な道具の持ち出し。
1時間後、全ての準備が整った僕らは王都へ向かって出発した。
レンタルで借りた簡素な馬車に乗り、僕らは街道を進んでいく。僕は馬を扱うことが出来ないので、御者台にはエルゼとリンゼが交代で座ってもらっている。そのうち馬の扱いも教えてもらおう。
リフレットの町を出発して、次のノーランの町を素通りし、アマネスクの町に着いた時、ちょうど陽が暮れてきた。今日はここに泊まる事にしよう。
完全に陽が暮れる前に宿は決まった。銀月より上等な宿を取ったが、受付はおっさんだった。残念。ちなみに部屋割りは僕が1人部屋、エルゼとリンゼが2人部屋だ。僕は絶対に入るなと厳命された、酷くない?
宿が決まったので馬車を預け、皆で食事に出かける。宿の親父さんが言うには、ここは麺類が美味いらしい。この世界の麺類って何、パスタとか?
とりあえず手ごろな店に入ろうと町中を散策している、道端に人が集まっていた。何だろうと思って近づくと、数人の男に囲まれた着物を着た少女が居た、彼女がイーシェン人か。
「変わった格好をしていますね……」
「侍、いやハイカラさんって奴かな……」
リンゼの言葉に僕は短く答える。
薄紅色の着物に紺の袴、白い足袋に黒鼻緒の草履。腰には大小の刀。流れる様な黒髪は後ろでポニーテールに結わえられていて、前は眉の上で切りそろえられていた。日本なら時代劇でしか見ることの無さそうな格好だ、
着物の子を取り囲むように、10人近い男達が剣呑な目を向けており、中には剣やナイフを抜いている者も居た。
「昼間は世話になったな、姉ちゃん。お礼に来てやったぜ」
「……はて? 拙者、お主らの世話などした覚えはないでござるが?」
やばい、拙者とかござるとか初めて聞いた! でもそれ以上に男の絡み方が三下過ぎて笑いそうになる。駄目だ、笑うな、こらえるんだ……!
「すっとぼけやがって……! 俺らの仲間をぶちのめしときながら、無事で帰れると思うなよ……!」
「……ああ、昼間警備兵に突きだした奴らの仲間でござるか。あれはあやつらが昼間から酒に酔い、乱暴狼藉を働くのが悪いでござる」
「やかましい! やっちまえ!」
笑いをこらえて肩を震わせる僕を尻目に、男達は着物の子に襲い掛かる。着物の子はひらりひらりと躱し、男の1人の腕を取って見事な一本背負い。柔術でもやってるのか?
続いて2、3人投げ飛ばしていったが、なぜか急に動きが悪くなった。その隙をついて背後から男が剣を構えて斬りかかる。
「危ない!」
僕は咄嗟にポーチから前に取った一角狼の角を取り出し、男の顔に向かって投げる。
「おっと」
しかし、男はそれを躱す。でもこれでこっちに気を引けた。と思った次の瞬間、投げた角が男の背後の壁に当たり跳ね返りそのまま
「アッ――――――――――――――――!!」
男の尻に突っ込んで行った。
「……え?」
何が起こったか理解できていなさそうな和服の子。一方、それを見たエルゼはこう言う。
「何、あんたは男の尻にモンスターの角を突っ込む趣味でもあるの?」
「無いよそんな趣味!」
「何だかよく分かんねえけど、こいつらもやっちまえ!」
和服の子に絡んでいた男達がこっちに襲い掛かってくる。
「砂よ来たれ。盲目の砂塵、ブラインドサンド!」
それに対し、僕は呪文を紡いで魔法を発動。男達の目を潰す。
「オラァ!」
そして僕は蹴りで目の前の男の急所を的確に攻撃し、1撃で沈める。
「ああもう、厄介ごとに首を突っ込んで!」
文句を言いながらも戦いの輪に飛び込み、心なしか楽しそうにガンガン男達を倒すエルゼ。やだ、物騒……!
少しすると、僕達は男達を全員倒していた。ちなみに内訳は男達10人中和服の子が3人、僕が2人、残りはエルゼだ。大半倒してるってどういうこと。
すると町の警備兵がやってきたので、面倒事にならないように僕らは逃げ出す。
「ほら君も、早く!」
「うぇ!?」
和服の子が逃げようとしなかったので、僕はその子の手を引いて一緒に逃げだした。
「ご助勢かたじけない。拙者、九重八重と申す。ヤエが名前でココノエが家名でござる」
そういうと和服の子、九重八重が頭を下げた。
「あんた、イーシェン生まれ?」
「いかにも、イーシェンのオエドから来たでござる」
エルゼの疑問に答える八重。オエドって、イーシェンは今江戸時代なのか……?
とりあえず僕らも自己紹介。
「僕は望月冬夜。冬夜が名前で望月が家名だよ」
「おお、冬夜殿もイーシェンの生まれでござるか!?」
「いや、似ているけど違うよ。それより聞きたいんだけど、さっきの戦いの最中急に動きが悪くなったけど、持病か何か?」
「体に問題は無いのでござるが……。その、実はここにくるまでに路銀を落としてしまいそれで……」
その時、八重からお腹が鳴る音が響く。彼女は顔を真っ赤にしている。思わず僕はこう言った。
「ご飯、奢るよ……」
「必ず返すでござる……!」