【完結】紳士的な異世界はスマートフォンとともに。   作:味音ショユ

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正直連続更新きつくなってきた


簪、そして引き寄せ。アポーツの使用方法がスリ以外思いつきません

 僕らも食事がしたかったので、八重を連れて4人で食事処に入った。僕ら3人は普通の量を頼んだが、八重はいつから食べてないのか、結構たくさん頼んでいた。まあ遠慮されてお腹鳴らされても気分が悪いし、後で返してもらうつもりだからいいけど。

 

「……へえ、八重さんは武者修行の旅をしているんですか」

「いかにも。我が家は代々武家の家柄でござる。実家は兄上が継ぎ、拙者は腕を磨くため、旅に出たのでござるよ」

「立派ねーあんた。どっかの冬夜にも見習わせたいわ」

 

 食事をしながら話す八重に、エルゼが感心している。というかどっかの冬夜って何? 望月冬夜はここにしか居ないよ?

 

「冬夜殿は立派な方だと思うでござるが……。拙者が危ない時には助けてくれたでござるし、食事を奢ってくれたし……」

「まあ悪い奴じゃないわよ。でもしばらく付き合えばあいつがどういう人間か分かるわ。どうせあんたお金返す為にしばらく一緒にいることになるでしょうし」

「それに異論はないでござるが……。冬夜殿たちはどこか目的地とかはあるでござるか?」

「僕たちはギルドの依頼で王都に手紙を届けに行くところだよ」

「それは奇遇でござるな、拙者も実は王都に昔父上が世話になった方が居るので、会いに行ってみようと思っていたでござる」

「へぇー」

 

 何と奇遇な! って感じだ。まさか偶然会った女の子と目的地を同じにするとは。はっ、これが運命!?

 

「冬夜さん、女の子に会ったら誰にでも運命って言ってません……?」

「いや言ってないよ、ミカさんにくらいしか言ってないよ。そんなワンパターンじゃないもん」

「もんって……」

 

 僕の言葉に呆れたような声を出すリンゼ。もんは確かに自分でもどうかと思った。

 そんなこんなで食事終了。1つ言えることは、八重はよく食べる子だった。

 

「じゃあ明日の朝、僕らは出発するから八重はこの宿の前に来てくれる?」

「了解したでござる」

「ちょっと待って下さい、八重さんはどこに泊まるんですか?」

 

 僕らが別れ、明日集まろうと話しているところでリンゼが聞く。そういえば無一文だったはずだけど、宿はどうしたんだろう? 僕はもう取っていて、それから路銀を落としたのかと思っていたけど。

 

「えっと、野宿でござる……」

 

 宿取ってなかったのかよ!

 

「野宿とか危ないわよ……。宿代はあたしとリンゼで出してあげるから一緒に泊まりましょ」

「1人で野宿は危険ですよ」

「いや、そこまで世話になっては申し訳これなく……」

 

 エルゼ達の発言に遠慮する八重。まあ空腹は我慢できなくても寝場所は我慢できてしまうのだろう。とはいえ確かに野宿は危ないし、どうしたものか……。

 

「そうだ、八重。私あんたの故郷の話とか聞きたいわ」

「故郷、でござるか?」

「そうですね、イーシェンってどんな所かよく知りませんし、1泊の宿代でそれが聞けるなら悪い取引じゃありません」

「そうでござるか……。そういうことなら……」

 

 どうやらエルゼ達が故郷の話を聞きたいからその対価に宿代を払う、ということに落ち着いたらしい。というか僕も聞きたいけど……。

 

「ま、ガールズトークに口出しするのは野暮かな」

 

 話がまとまったところで、僕らは宿屋に帰った。

 そして八重も旅の仲間に加わった。

 

 アマネスクの町を出て、さらに北へ。

 この国、ベルファスト王国とかいう軽巡洋艦みたいな名前の国はユーロパ大陸の西に位置し、西方でも2番目に大きい国らしい。その為か、一旦町から離れると急に人家がまばらになり、やがて山々や森ばかりになり、すれ違う馬車や人々も2時間に1人会うか会わないかぐらいになる。王都に近づけば増えるらしいが、それまでは暇だ。

というか八重も馬の扱いバッチリなんだよな……。何か3人で交代することになったみたいだし……。すっごい肩身狭い、4畳1間だよこんなの……。

 それを払拭するために、僕は魔法の書で勉強をしている。

 リンゼに魔法を教えてもらって分かったけど、僕は無属性魔法をいくつも使えることが分かった。

 きっかけはエルゼのブーストを試しに使おうとしたら、あっさり発動できたからだ。

 どうやら僕は、無属性魔法なら魔法名と詳しい効果さえ分かればほぼ確実に使えるということが判明した。これが分かった時、エルゼとリンゼは驚きを通り越し呆れていた。でもエルゼはともかくリンゼがなんか怯えていた気がする。気のせいだと思いたい。

 しかし無属性魔法はほぼ個人魔法、つまり世間に余り広まっていない。そこで、過去の無属性魔法を記した本を読んで、使える魔法を習得しようと考えた。

 だがまた問題が発生。個人魔法ということは人の数だけ魔法がある、つまり数が多いのだ。本にまとめるとちょっとした電話帳並に。

 

「しかも使い道あるか分からないのばっかりだし……。というか何さ、線香の煙を長持ちさせるとかささくれだった木材を滑らかにするとか……」

 

 限定的すぎるとかより線香あるのかよこの世界、という感想が先立つ。

 正直使いどころの無さそうなものばかりで、覚えてもいいがわざわざ欲しいかと言われると答えに詰まるものばかりだ。と思っていたら1ついいのを見つけた。

 

「遠くにある小物を手元に引き寄せる魔法……か。スリに使えそうだな」

「最初に思いつくことはそれなんですね……」

 

 リンゼの呆れた様な声を聞き流しながら、僕は早速試してみる。

 

「アポーツ」

 

 しかし、なにもおこらなかった! とド○クエ風ナレーションを脳内でしつつどうして何も起きないのか考える。

 

「何を引き寄せようとしたのよ?」

「八重の刀」

「冬夜殿、今聞き捨てならぬことが聞こえた気がするのでござるが」

 

 僕が八重の刀、と言った瞬間八重が殺気を篭めてこっちを見てきた。はっ、武士にとって刀は魂! 迂闊なことをしてしまった。

 

「恩義のある冬夜殿でござる、1度は見逃すが次は無いと思ってくだされ」

「ほんとゴメン」

 

 素直に頭を下げる僕。人間謝らなければならない時にはきちんと謝るのが大事だ。

 まあそれはそれとして、もう一度使ってみるか。

 

「アポーツ」

「ふわっ!?」

 

 今度は八重の簪をターゲットにしてみたが、見事成功し簪を引き寄せることに成功した。

 

「だから何で拙者を対象にするでござるか!?」

「なんとなく!!」

「何でそんなに力強く宣言するのよ!?」

 

 僕の力強い宣言にツッコミを入れるエルゼ。

 それを見て八重は唖然としている一方、リンゼは慣れたのか特に気にしていない。

 

「……エルゼ殿。冬夜殿って、よく分からない方でござるな」

「まだこんなもんじゃないわよ」

 

 ボソボソ話す八重とエルゼ。あの、聞こえてるんですけど。

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