【完結】紳士的な異世界はスマートフォンとともに。 作:味音ショユ
亡くなった兵士たちの遺体を近くの森に埋葬した。放置するなんて出来ないが、連れて行くこともできない以上ここに埋める以外の選択肢は無い。
生き残った兵士の1人が黙々と墓を作っている。埋葬は僕らも手伝ったが墓を作るのは彼に任せよう。
一方で爺と呼ばれたご老人が頭を下げる。
「おかげで助かりました。何とお礼を言えばよいのやら……」
「気にしないで下さい。それより怪我は治っても血や体力が戻った訳じゃないのですから安静にして下さい」
頭を下げるご老人に慌てて声をかける僕。
「感謝するぞ、冬夜とやら! おぬしは爺の、いやわらわ達の恩人だ!」
偉そうな言葉遣いでお礼の言葉を発する金髪の女の子。ひょっとして結構お偉方の子なんだろうか? まあ爺なんて執事がいるくらいだしきっと貴族だな。
「ご挨拶が遅れました。私はオルトリンデ公爵家家令を務めております、レイムと申します。そしてこちらのお方が公爵家令嬢、スゥシィ・エルネア・オルトリンデ様にございます」
「スゥシィ・エルネア・オルトリンデだ! よろしく頼むぞ!」
公爵ね、やっぱり貴族のお嬢様だったのか。
と納得する僕の横で、エルゼとリンゼと八重が固まっていた。
「どうしたの?」
「どうしたって……、逆になんであんたそんな平然としてるのよ!?」
「……公爵は爵位の一番上。他の爵位と違って、与えられるのは基本的に王族のみですよ。冬夜さん」
……王族?
「マジで?」
僕が問いかけているその刹那、僕以外の3人は両膝をついて頭を下げていた。あ、これ時代劇で見た事ある! やらないと手打ちにされる奴だ。
慌てて僕も両膝をほぼ自由落下の速度で地面に付ける。
「いったあああ! 膝打ったあああああああ!!」
「あんた何やってんの!?」
痛さの余りゴロゴロ転がりながらうめく僕。それにツッコミを入れるエルゼ。
「冬夜は面白いのう。よいよい、面を上げよ。ここは公式の場ではないし、それに冬夜はわらわの恩人じゃ。本来なら頭を下げるのはこちらの方じゃ。ほれ、お前達も顔を上げてくれ」
オルトリンデ様がそう言うと僕以外の3人が顔を上げて立ち上がる。僕も痛みが引いていたので立ち上がる。
「それでえっと……、オルトリンデ様は何でこんな所に?」
「スゥでよいぞ冬夜。それで理由じゃが、お祖母様……、つまり母上の母上のところからの帰りじゃ。ちと調べものがあっての、ひと月ほど滞在しておって今は王都に戻る途中じゃった」
「そこを襲われたってことですか……。単なる盗賊じゃ、ないよね……」
召喚魔法を使ってまで盗賊するメリットは無いだろうし、そもそもリザードマンを除けばあの召喚士しかいないのだ。盗賊と言うより暗殺者と考えた方が妥当だろう。
「襲撃者が死んでしまったからの、何者だったか、あやつ以外に誰かの意思があったのか、今となっては闇の中じゃ」
「それは、かたじけない……」
落ち込む八重。首飛ばしたのは八重だしね。確かに生け捕りにすれば背後関係を吐かせるのはそう難しいことじゃなかったかも。
「気にするでない。あの場ではああするしかなかったじゃろ」
「ありがたきお言葉……」
八重は深々と頭を下げる。
「それで、スゥはこれからどうします?」
「呼び捨てなのに敬語は違和感があるの……、公式な場でない所なら敬語でなくてかまわんぞ」
「じゃ、これからは敬語は無しで」
といってもそんなに気安く話す気は無いけど。あんまり。
するとレイムさんが話しかけてきた。
「これからのことでございますが、冬夜さん達に護衛の依頼をしたいのです。勿論、報酬は王都に着き次第払わせて頂きますので、どうかお願いできないでしょうか?」
「僕らにですか?」
まあ理由は分かる。護衛の兵士大半が亡くなり、また同じようなことがあれば次は無く皆死ぬだろう。そうなりたくなければ別の護衛が必要で、実力が分かっている僕らが欲しいのは必然だ。
「僕は構いませんが……」
そう言ってエルゼ達を見る。
「いいんじゃない? ほっとけないし」
「私も構いません」
「そもそも拙者は冬夜殿に借りがある身、冬夜殿の意思にあわせるでござる」
どうやら反対意見は無いようだ。
「分かりました、お引き受けいたします」
「うむ! よろしく頼むぞ!」
そう言ってスゥは満面の笑みを浮かべていた。
馬車が2台進んでいく。1台は公爵家の、もう1台は僕らが乗っていた馬車だ。更に公爵家の馬車の前には馬に乗った兵士たちが先導してくれている。
僕は公爵家の馬車に乗り、スゥを直接護衛することになった。
上等なシートに座る僕の正面にはスゥ、その隣にはレイムさんが座っている。
「……とそこで悟○が幼いころからの親友を殺された怒りでついに超サ○ヤ人に覚醒、悪い宇宙の帝王との決着が遂に付くんだ」
「おお、頑張れ悟○!」
何か話をしてくれとスゥに言われたので、ドラ○ンボールのサ○ヤ人編とフ○ーザ編をこの世界でも伝わるように改変しながら話していた。ちなみに今は悟空がク○リン殺されて超サ○ヤ人に覚醒した所、長かった……。
「冬夜、続きはまだか!?」
「それで悟○はフ○ーザと……」
女の子相手に話す内容じゃなかった気もするけど、まあ楽しそうで何よりだ。
そんな僕らを乗せて、馬車は王都へ向けて進み続ける。