【完結】紳士的な異世界はスマートフォンとともに。   作:味音ショユ

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王都、そして公爵邸。王族はいつものノリで口説かないってば!!

「おお、見えてきたぞ! 王都じゃ!」

 

 窓から身を乗り出し、王都に向かって指差しながら叫ぶスゥ。僕も窓から身を乗り出してみようとしたら、たまたま飛んでいた鳥に衝突されて顔にダメージ、痛い。

 王都アレフィス、このベルファスト王国の首都であり、滝から流れ込むパレット湖のほとりに位置することから湖の都とも呼ばれる。

 ユーロパ大陸の西方に位置するこの国は、善政を敷く国王と過ごしやすい気候のおかげで比較的平和な国だ。

 主要な産業は縫製業で、キルア(ゾルディックではない)地方で作られる絹織物はこの世界での最高級品だと言われるそうな。貴族や他国の王室までご用達の、大事な収入源らしい。

 その国の王都を見て、僕は城壁の長さに驚く。進○の巨人ばりの長い壁で守られるその様は、鉄壁を思わせる。死亡フラグにならないといいが。

 門の所で数人の兵士が都に入る人々を検問していたが、僕らはその横をスゥの顔パスで通り抜けた。さすが公爵。略してさす公。

 そのまま馬車は城の方へ真っ直ぐ進み、大きな川が流れる石造りの長い橋を渡った。橋にも検問があったが、当然の如くスルー。

 

「この橋を渡った先が、貴族たちの住居なのでございます」

 

 レイムさんの解説を聞いて、随分簡素な分け方だなと思う僕。クーデターとか起きたらどうすんだろ? ま、起きないように政治をするのがスゥ達の役目だろうけど。

 綺麗な屋敷が立ち並ぶ通りを抜けて、やがて馬車は大きな邸宅の前に出た。敷地の長い壁の前をしばらく通り過ぎ、やっと門前に着く。そして5,6人の門番たちが、重そうな扉を左右に開く。ここが公爵の屋敷か。

 庭も家も大きい、これが権威の象徴なのか。それとも公共事業の一環で作ったのか。

 やがて玄関前に辿り着くと馬車が止まり、スゥが扉を開け勢いよく出ていく。

 

「お帰りなさいませ、お嬢様!」

「うむ!」

 

 ずらりと並んだメイドさんたちが一斉に頭を下げる光景は、なかなか壮観である。がそんなことよりメイド美人ばっかりじゃん!? 何これどうなってんの、出会う女性が皆美人か美少女なんですけど、イエーイ!!

 そんなことを考えながらメイドを見つつ玄関をくぐると、この家の階段から1人の男性が駆け下りてきた。

 

「スゥ!」

「父上!」

 

 スゥは男性の下に駆け寄り、勢いよく抱き着き、男性もまた抱きしめた。

 

「良かった、本当に良かった……」

「大丈夫、わらわはなんともありません。早馬に持たせた手紙にそう書いたではないですか」

「手紙が着いたときには生きた心地がしなかったぞ……」

 

 スゥの父親。つまりこの人がこの国の王様の弟、オルトリンデ公爵。明るい金髪に強そうな身体は壮健さを醸し出している。その公爵は、しばらく抱きしめていたがやがて放し、僕の方へ向く。

 

「……君たちが娘を助けてくれた冒険者か。礼を言おう、本当に感謝する」

 

 そう言って公爵はボクたち4人に頭を下げた。

 

「あ、頭を上げてください! 王様がそんな簡単に頭を下げてはいけませんって!」

「いや、これは公爵としてではなく子を持つ親として頭を下げたのだ。ありがとう」

 

 そう言って公爵は僕の手を取り、握手をしてくれた。

 というか大丈夫なんだろうか、出自不明の人間に頭下げて。

 

「自己紹介をさせてもらおう。アルフレッド・エルネス・オルトリンデだ」

「望月冬夜です。望月が家名で冬夜が名前です」

「イーシェンの生まれかね?」

 

 ……もうイーシェンの生まれってことにしようかな。

 

 

「成程、君たちはギルドの手紙を届ける依頼で王都に来たのか」

 

 庭に面した2階のテラスで僕らはアルフレッド様と共にお茶を楽しんでいた。

 いや正確に言うなら楽しんでいたのはアルフレッド様だけだろう。僕以外の3人は外から見て分かるくらいガチガチに緊張していた。ちなみに僕も緊張しているが、それは多分周りにはばれていない。緊張しすぎて飲んでいるお茶の味が分かんねえ……。

 

「その依頼を君達が受けなければ、スゥは誘拐されていたか殺されていたかもしれんな」

「襲撃者に心当たりのようなものはありませんか?」

「無い、と言いたいが王族だからな。思いつく心当たりがなくとも狙う理由ならいくらでもあるだろう」

 

 アルフレッド様は苦い顔で紅茶を口にする。あ、これ紅茶か! 緊張しすぎて飲んでるものすら分かってなかった。

 

「父上。お待たせしました」

 

 テラスにスゥがやって来た。フリルが付いたドレスに金髪を飾るカチューシャは、彼女によく似合っていた。

 

「エレンとは話せたかい?」

「はい。心配させてはいけないので、襲われた件は黙っていますが」

 

 スゥがアルフレッド様の隣に座ると、間を置かずレイムさんが紅茶を持ってきた。

 

「エレン?」

「私の妻だよ。すまないね、娘の恩人なのに姿も見せないのは……。だが妻は目が見えな

いのだよ」

「目が見えない、ですか?」

 

 アルフレッド様の言葉を聞いてリンゼが尋ねる。

 

「5年前に病気でね……。一命は取り留めたが視力を失ってしまった」

 

 辛そうにアルフレッド様が視線を下げる。それを見てリンゼも、悪いことを聞いてしまったと思ったのか頭を下げた。

 

「……魔法での治療は出来ないんですか?」

「国中の治癒魔法の使い手に声をかけたが、駄目だったよ。怪我は治せても病気は治せないそうだ」

 

 僕の質問に力なく答えるアルフレッド様。僕も悪いことを言わせてしまった、と頭を下げる。

 

「おじい様が生きておられたらのう……」

 

 スゥが呟く。どういうことだろう? と思っていたらアルフレッド様が答えてくれた。

 

「妻の父上は無属性魔法の使い手で、身体の異常を取り除く魔法が使えたんだ。今回スゥが旅に出たのも、養父の魔法を解明し、習得できないかと考えたからなのだよ」

「解明出来なくとも、使い手さえ見つかれば……」

 

 無属性魔法の使い手、ねえ……。

 ――僕いけるじゃん。

 

「あの、その体の異常を取り除く魔法について詳しく教えてもらえませんか?」

「……それはかまわないが、なぜだね?」

「僕が使えるかもしれません」

 

 僕の言葉に驚愕の表情を見せるアルフレッド様とスゥ。

 

「……それは、真かね?」

「本当か冬夜!?」

 

 ほんとにほんとにライオンだー、じゃなくて

 

「ひょっとしたら、ですが……」

 

 

「あら、お客様ですか?」

 

 ベッドに腰掛ける貴婦人はスゥが成長したらこうなるんだろうな、と思わせるほど似ていて、正直子持ちとは思えないほどの美人だった。町で見かけたら間違いなく口説き、僕は王族に無礼な口をきいたとして処刑されるだろう。

 

「初めまして、望月冬夜と申します」

「初めまして。あなた、この方は?」

「ああ、スゥが世話になった方で……、お前の目を治せるかもしれん方だ」

「目を……?」

 

 エレン様の目の前に手をかざし、意識を集中させる。そしてさっき習得した魔法を発動させた。

 

「リカバリー」

 

 柔らかい光が僕の手のひらからエレン様の目に流れていく。そして光が消えたのを見て、僕は手をどけた。

 さっきまで宙をさまよっていたエレン様の視線がだんだん落ち着いていき、やがて顔

をアルフレッド様とスゥの方へ向ける。

 

「見える……、見えます……。あなとと、スゥの姿が……」

 

 エレン様の目から涙が溢れる。良かった、ちゃんと効いたみたいだ。

 

「エレン……ッ!!」

「母上!!」

 

 3人は抱き合って泣き始めた。無理もない、5年ぶりに娘と夫の顔が見られるのだから。これで泣かない方が逆に変だ。

 傍で見守っていたレイムさんも、顔を上に向け涙が溢れないように泣いている。

 

「良かったです……」

「良かったでござる……」

「良かったわ……」

 

 リンゼ達も泣いていた。ただ、エルゼが僕の方にこっそり耳打ちしてくる。

 

「……冬夜」

「何?」

「一応言っておくけど、恩義があるからっていつものノリでエレン様口説かないでね」

「口説かないよ!?」

 

 僕の事なんだと思ってるの!?

 というかあの親子仲睦まじい状態見て妻NTRとか人間の所業じゃないよ!!

 そして僕泣きそうなのに涙引っ込んじゃったじゃん!

 

「……」

「……」

 

 ほらリンゼと八重がめっちゃ不審そうにこっち見てるし!!

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