【完結】紳士的な異世界はスマートフォンとともに。 作:味音ショユ
構成もさることながら、カットできる点は極力カットしてるのがいい。
この作品もそうすればよかった気もしますが、カットは多分しません。
「君達には本当に世話になった。感謝してもしきれないほどだが……」
「ゼェゼェ……」
「ハァハァ……」
「その、大丈夫かね?」
応接間でアルフレッド様が深々と頭を下げる。その前では僕とエルゼが息を切らしている。
なぜ切らしているかと言えば、王族をいつものノリで口説くと思われていたことに僕が怒って、エルゼとお互い魔法なしで一戦交えていたのだ。
「大丈夫です、ちょっとトイレの場所が分からなくて探していただけなので」
「ええ、何の問題もありません」
「そ、そうか……」
とはいえそんなことを言えるわけがないので、とりあえずトイレの場所が分からなかったということにして誤魔化すことにした。まあ広いからそういうこともあるでしょ。
「まあそれはそれとして、君達には礼をしないといけないな。レイム、あれを持ってきてくれ」
「かしこまりました」
アルフレッド様が一声かけると、レイムさんが銀の盆に何か色んなものを乗せてやって来た。
「まずはこれを。娘を守ってもらった礼として受け取ってほしい」
と言って袋を差し出してくる。ジャラジャラと音がすることから、おそらくお金が入っているのが分かる。
「中に白金貨40枚が入っている」
「「「!?」」」
僕以外は分かったようだが、白金貨の価値を知らない僕はとりあえず高そうだなという事しかわからない。
横で唖然としているリンゼに聞いてみる。
「リンゼ、白金貨って何?」
「……金貨の上の貨幣です、1枚で金貨10枚分の価値があります……」
「マジで!?」
確か金貨1枚は日本で言うなら10万円くらい……。つまり白金貨1枚で100万円……。40枚なら合計4000万円!?
「アババババババ!!」
「冬夜さんが物凄い困惑してます!」
「誰が殺した、クックロビン」
「歌いながら踊りだした!?」
「完全に錯乱してるでござるな」
ちなみに元ネタはパタ○ロのEDである。でも歌ってるのは歌詞じゃないよ、マザーグースの詩だよ。だからジャ○ラックには引っ掛からないさ。
にしても4000万円か……。
「4000万……。4000万……!」
「受け取ってくれるかね?」
「はい!」
「錯乱してるかと思ったら物凄い勢いで即答した!?」
何を言っているんだエルゼは。これはアルフレッド様が僕らに用意したお礼、いわば心から誠意だ。受け取らないなんて無礼な真似は出来ないよ。
「金、金、金!!」
「多分本心と建前が入れ替わってるでござる!」
「ベタなギャグですね……」
「それとこれを君達に贈ろう」
諸々の大騒ぎをスルーして、アルフレッド様はそう言った後テーブルに4枚のメダルを並べる。メダルにはこの公爵家の紋章が刻まれていた。何、このメダルを2150枚集めてはぐれメ○ルヘルム107個と交換してもらえって?
「これは我が公爵家のメダルだ。これがあれば検問所を素通り出来るし、貴族しか利用できない施設も使える。つまり何かあったら公爵家が後ろ盾になるという証であると同時に、君達の身分証にもなってくれる」
つ、つまり僕は公爵家の権力を手に入れたって事か。富、名声、地位、この世の全てを手に入れた男、冒険者望月冬夜。僕の死に際の一言は、多くの男達を森へと駆り立てる!
そんなことを考えつつメダルを見ると、僕らの名前と単語が刻んである。どうやら紛失した場合悪用されるのを防ぐためらしい。
エルゼのメダルには『情熱』、リンゼのには『博愛』、八重のには『誠実』の文字が刻まれている。
そして僕のメダルに刻まれている文字は『好色』だった。
「僕のだけ文字おかしくありませんかね!?」
思わずアルフレッド様に食って掛かってしまった。でもこれはちょっと文句言っていいよね?
「いやスゥが冬夜君は女好きだと言っていたから……」
「そんな場面見せましたっけ!?」
「あ、それあたしがスゥに話したわ」
「何で!?」
何でわざわざ僕の印象を悪くするの!?
「いやひょっとしたら公爵令嬢があんたに惚れるかもしれないからその対策の為に……」
「その可能性考える必要ある!? というかそれはいいじゃん別に!」
「命の恩人ですからひょっとしたらあるかもしれませんよ。いいか悪いかは別として……」
何で僕シルエスカ姉妹にいじめられてるの!?
「八重、僕なにかしたかな?」
「冬夜殿は人間的にはともかく、権力を持ってほしい性格ではないでござるからな」
「酷くない?」
「冬夜君」
僕が仲間からの扱いを嘆いていると、アルフレッド様が僕に声をかけてきた。
「何ですか」
「私はそのメダルを返せとは言わないよ。言わないよ!」
これ、暗に返せとは言えないけどメダルの力で好き勝手したら殺すって言ってません? いや周りの反応を見て言っているだけだろうけど。
「僕の人格面が一切信用されていない件について」
「そ、そんなことは無いぞ! わらわは冬夜を信頼しておるからな!」
いつの間にか近くに居たスゥが僕の頭を抱きしめて慰めてくれる。何この感じ、甘えたい。これがバブみって奴か。
その後、僕らは白金貨40枚を4等分してそれぞれ1枚を残し公爵経由でギルドに預けることにした。こうするとどこの町のギルドでもお金が下せるらしい。
そして僕らは公爵の家を後にし、依頼の手紙を届けるためにソードレック子爵の家に向かった。
「依頼の手紙を渡す相手とは、ソードレック子爵でござったか」
そう言えば八重には届け先の説明をしていなかった。というか
「知り合い?」
「知り合いというか、前に話した拙者の父上が世話になった方というのが子爵殿でござるよ」
世間って狭い。
馬車に揺られながら、僕らは豪勢な街並みを走り、公爵に教えてもらったソードレック子爵の屋敷に着いた。
「何か、公爵のお屋敷と比べるとちっちゃいね……」
「比べる対象が悪いだけよ」
僕の呟きにエルゼが軽くツッコミを入れる。それを尻目にリンゼが門番に取り次ぎをお願いしていた。
しばらくすると屋敷内に通され、執事らしき人が応接間に案内してくれた。部屋で待っていると、赤毛で壮年の偉丈夫が姿を現す。
「私がカルロッサ・ガルン・ソードレックだ。お前達がザナックの使いか?」
「はい。この手紙を渡し、子爵様から返事を受け取るよう依頼されました」
「ほう」
ザナックさんから渡された手紙を子爵に差し出す。それを子爵は受け取り、ナイフで封を切り、中身を取り出しさっと目を通す。
「少し待て、返事を書く」
そう言って子爵は部屋を出ていき、入れ替わりにメイドさんがやってきてお茶を僕たちに振る舞う。今度はそれほど緊張してないから味が分かる、美味い。
「待たせたな」
子爵が封をした手紙を手に戻ってきた。
「ではこれをザナックに渡してくれ。それと気になっていたのだが……」
子爵は手紙を僕に差し出しながら、視線を八重の方へ向けていた。
「そこのお前、どこかで……。名前は何という」
「拙者の名は九重八重。九重重兵衛の娘にござる」
「ああ……、お前重兵衛殿の娘か!」
そう言うと子爵は八重を嬉しそうにまじまじと見つめる。
「間違いない。若い頃の七重殿と瓜二つだ。母親似で何よりだ!!」
豪快に笑う子爵と、微妙な笑顔を見せる八重。
ここで僕は気になっていたことを聞いてみた。
「あの、八重とはどういう関係なんですか?」
「ん? ああ、この子の父親の重兵衛殿は、我がソードレック家の剣術指南役だったのだ。私がまだ若い頃にこっぴどくしごかれたもんだ。いやあれは厳しかった。もう20年も前になるか」
「父上は今まで育てた剣士の中で、子爵殿ほど才に満ち溢れ、腕が立つ者はいなかったと口にしていたでござる」
「ほほう、それは世辞でも嬉しいものだな」
まんざらでもなさそうに笑う子爵。その子爵に真剣なまなざしを向けながら八重は言う。
「もし会うことがあれば、是非一手指南してもらえと、父上は申していたでござる」
「ほう……?」
八重の言葉を聞いて子爵は面白そうに目を細める。まさかのバトル展開?
一体どうなる!? 待て、次回!(サイボーグク○ちゃん風に)