【完結】紳士的な異世界はスマートフォンとともに。   作:味音ショユ

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早くボケ倒したい……


目覚め、そして異世界。今のところ異世界要素ほぼなし。

 穏やかな風が頬に触れ、僕は目を覚ます。

 その時に見えたのは綺麗な空、雲がゆっくりと流れ鳥のさえずりが聞こえてくる。とてものどかだ。

 起き上がり体の状態を確認、特に異常はない。周りを見渡せば遠くに山々、広大な草原、そして背中に大きな1本の木。

 どこか外国みたいなこの光景、とてもいい眺めだと思うが正直全然異世界感が無い。

 とりあえず道が見えるのでそれに沿って歩けば町に着くだろう。

 

「それにしても、マップも所持金もゼロスタートって、どこのレトロゲーだよ」

 

 しかもスタート地点は人気のない場所。町中にいきなり現れたら目立つだろうからそれはいいとして、せめて町の場所くらい知りたい。

 

「参ったなあ、こんな事ならスマホじゃなくてマップと資金を貰うべきだった」

 

 己の選択ミスを後悔しつつも、とりあえず道なりに歩きはじめる僕。

 やがてしばらく歩いていると、分かれ道に出くわした。

 

「どっちが町に近いんだろう……」

 

 右に行くか左に行くか僕は真剣に考える。人生は選択肢の連続だというがこういうのは御免だ、どうせなら美少女姉妹2人に迫られてどっちを選ぶの!? みたいなこと言われたい。

 とか考えているとといきなりスマホが鳴り出す。どうやら神からの電話らしい。登録名を自分で神様にするセンスはどうかと思うが。

 

「はいもしもし」

『おお、繋がった繋がった。どうやら無事着いた様じゃな』

 

 電話に出ると神の声。というか着かない可能性あるのか。

 

『言い忘れておったのじゃが、君のスマホのマップや方位をそっちの世界に対応させておいたぞ』

「そうなんですか? いや助かりました。町の場所分からないんで仕方ないから野生化しようと思ってましたから」

『厄介すぎるじゃろお前さんが野生化したら』

「試練を乗り越えてこその人生です」

『そんなに乗り越えてなさそうなお前さんに言われてもな……』

 

 神の言葉は間違いなく正論だった。

 

『まあそれはともかく、マップを確認すれば問題なく町に着くじゃろう』

「マップを見るときはRボタンでいいですか?」

『何でマ○ー3?』

「いえ何となく」

『まあよい、ともかく頑張ってな』

「はい、では」

 

 電話を切り、マップのアプリを起動する。すろと自分を中心にして地図が表示された。縮尺を変えると道の先、西に町がある。名前は……、リフレットか。

 

「じゃあ出発っと」

 

 とりあえず、町に着いたら仕事を探さないとね。現状所持金も食糧も無いんだから。

 

「何か悩みが現実的だなあ……」

 

 いや、今この場は間違いなく現実なんだから、当たり前なんだけどさ。

 

 

 しばらく道なりに歩く僕。モンスターがいると聞いていたが、遭遇することも無くのんびりした気分で歩いていた。いっそこのまま道が永遠に続いていれば、僕の悩みも消え去るのだろうか。

 と考えていると、後ろから音が聞こえてくる。振り返ると、遠くから何かがこちらに向かってくる。あれは、馬車だろうか。

 

「さすが異世界、日常で馬車を使う機会を見るとは」

 

 まあ農業の機械化が進展していない地域では現代でも日常で使われるらしいけど。

 それはともかく、僕は向かってくる馬車に道を譲り、端の方に寄る。頼めば乗せてくれるかもしれないが、この世界の事は未だ何もわからないのだ。うかつな事をいって無駄に荒事を引き起こす気は僕には無い、つもりだ。

 そして馬車は僕を追い越し、過ぎ去っていくかと思うといきなり馬車が停まった。

 

「そこの君!」

 

 馬車の扉を開けて出てきたのは白髪の男性だった。洒落たスカーフとマントを着こみ、胸には薔薇のブローチを付けていて、それらの調度品はとても高級そうに見える。かなりの金持ちであることは明白だった。

 

「何でしょうか?」

 

 とりあえず無難に応対する僕。しかし内心はビクビクだった。実はこの人が王族か何かで、僕が知らない間に無礼を働いたとかだったらどうしよう。もし手打ちにされそうになったら僕はこの人を殺して、山に籠るしか道が無くなる。あれ? マジで野生化ルート?

 そうこう考えてると、僕は男性に肩を掴まれ舐めまわすかのように見られている。コワイ!

 

「こ、この服はどこで手に入れたのかね!?」

「ウェイ?」

 

 思わず僕はオンドゥル語で返していた。え、何、服? これただの学生服だよ?

 

「見たことの無いデザインだ。そしてこの縫製、一体どんな技術で……。まさか無属性魔法か!?」

 

 成程、僕にとってはなんてことない服だけどこの世界からすれば未知の技術で作られた物なんだ。なら精々高値で売りつけてやろう。これで生活の心配はなくなるよ! やったねたえちゃん!

 

「……よろしければお売り致しますが?」

「本当かね!?」

 

 僕の提案に男性は物凄く食いつく。何だこの人、服飾マニアか。とはいえ金策を逃す理由は無い、この服の事は適当に誤魔化そう。

 

「僕は旅人で、この服は旅の商人から買った物ですが、旅の資金が無くなってきたのでそちらがよろしければお売り致しますよ。ただし、代わりの衣服は最低限用意して欲しいのですが」

「よかろう! 馬車に乗りたまえ、次の町まで共に行こう。そしてそこで代わりの服を用意させるから、その後その服を売ってくれればそれでいい」

「取引成立ですね」

 

 よっしゃ金づるゲットォ! と薄汚い内心を隠しながら僕は取引相手となった男性と握手をする。と、大事なことを聞くのを忘れていた。

 

「ところで、お名前を聞かせてもらえませんか。あ、僕は望月冬夜と言います。望月が家名で、冬夜が名前です」

「私はザナック、ファッションキングザナックという服飾店を経営している」

 

 服飾店なのにその名前は大丈夫なのか。そして僕の代わりの服のセンスは大丈夫なのか、たまらなく不安になった。

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