【完結】紳士的な異世界はスマートフォンとともに。 作:味音ショユ
翌日、依頼を完了させるべく僕らはザナックさんの下へ向かった。余りにも早い帰還にザナックさんは驚いていたが、僕がゲートを使ってみせるとザナックさんは驚きながら納得していた。
「これ、返事の手紙です……」
何となくVガン風に受け取った手紙を渡し、ザナックさんは手紙を開けて目を通す。
「確かに。よくやってくれた」
「それとこれを。使わなかった交通費の半分です」
僕は袋に入れたまま使わなかったお金を差し出す。
「律儀だね君は。ゲートのこととか黙っていればそのお金は君達の物だろうに」
それはちょっと思ったけどさ。
「……あれですよ。こういう仕事は信頼が大事ですからね」
「そうだね、信頼こそ大事なものだ。自らの行いは自らに返ってくる」
「ええ、身を以って知ってます」
「いや何が……。そういえば冬夜君は最近この町の女性に片っ端から声を」
「失礼します!」
あまり聞きたくない噂を無理矢理断ち切って、僕らはザナックさんの家を飛び出す。広まり過ぎじゃない僕の噂!? あ、お金はちゃんと返したよ。
そのままギルドに向かい、職員さんに依頼完了の報告をする。
「ギルドカードの提出をお願いします」
差し出した僕ら3人のカードに、職員さんがPONPONPONと魔力の判子を押していく。好きだけどきゃりーぱみゅ○みゅじゃないよ。
「それではこちらが報酬の銀貨7枚です。依頼完了お疲れ様でした」
カウンターに置かれた報酬を受け取りながら、僕は受付に違う用件を頼む。
「すいません、この子のギルド登録をお願いしたいんですけど」
「登録ですか? かしこまりもっこり」
「どういうことなの……」
八重が登録の説明を受けている間、僕らは報酬をそれぞれ2枚ずつに分けたが、残り1枚をどうしようか話し合っていた。
「どうする?」
「そうね、皆で何か買ってもいいけど……」
「買い物はこの前済ませましたからね……」
「「「うーん……」」」
そうして悩んだ挙句出した答えは、ポーカーで勝負して勝った人の総取りにすることにした。
「ぶっちゃけ、白金貨なんて持ってる時点で銀貨1枚くらいどうってこと無いわよね」
「それ、後々金銭感覚狂って破産したりしない?」
「多分しないわ」
「多分ってお姉ちゃん……」
リンゼの呆れる声をBGMに僕はトランプをシャッフルし、カードを配る。勿論イカサマなんかしない。
そしてそれぞれにカードを配り終えたところで、僕は自分の手札を見る。
ハートの5、ハートの6、スペードの7、ハートの8、ハートの2だった。
うわぁ……、微妙……。何でストレートフラッシュ揃いかけてるの……。
僕以外の2人の顔を見ると、エルゼは「あっちゃー」って顔をしている。ポーカーフェイスは苦手らしい。一方のリンゼは恐ろしい程無表情だった。怖いよ。
「あたし1枚チェンジ」
「僕は2枚チェンジ」
エルゼがチェンジしたのを見て僕も便乗、2枚換える。捨てたのはスペードの7とハートの2だ、他に選択肢なくない?
恐る恐るカードを引く。まず1枚目、ドロー! ハートの7! よしよし、これで次にハートのカードか9のカードが出れば役が揃う。さあ2、2枚目はなんだ。そして引いた2枚目のカードは、
ダイヤの3だった。
「ブタァ!!」
僕は揃っていないカードをテーブルに叩きつける。畜生め!
「あたしスリーカード」
続いてエルゼもカードを出す。エルゼの手札はクラブ、ハート、ダイヤの4とスペードの6、クラブのJだ。
「私はこれです」
最後にリンゼがカードを出す。手札はダイヤの10、J、Q、K、A、――え?
「「ロ、ロイヤルストレートフラッシュ!?」」
驚く僕とエルゼ。しかしリンゼはこんな凄い役を揃えたのになぜか悲しげだ。
「どうせなら、もっと大きい勝負の時に揃ってほしかったです……」
「「確かに!」」
一瞬で納得した、そりゃこんな勝っても負けても良いような勝負で出してもねえ……。
「登録したでござるよ~」
嬉しそうに八重がカードを振りながらやってくるが、僕らの表情を見て何かがあったらしいことを察して疑問を呈する。
「何かあったでござるか?」
「「リンゼの運が良すぎて僕(あたし)らの雑魚っぷりがマッハ」」
「何が起きたでござるか……」
微妙な顔をする八重をする尻目に、僕らは約束通りリンゼに余った銀貨1枚を差し出す。
「そんなことより、拙者何か依頼を受けたいでござる!」
「ん、いいよ」
「いいわよ」
「分かりました」
八重の頼みを聞いて、依頼が貼っているボードに向かう僕ら。
皆で貼られた依頼書を読んでいく。……あ。
「北の廃墟、討伐、メガ……スライム? まだこれあったんだ、ねえ」
「「「ダメ」」」
またユニゾンで拒否された。どうやら八重もヌルヌルが苦手らしい、成程……。
「じゃあもう一度夢を追いに」
「魔物を町に持ち込むような行為は禁止です」
虫取り網を手に取った瞬間、受付のお姉さんに今度はバックドロップで沈められる僕。
その間にタイガーベアとかいう虎なのか熊なのか分からない魔獣の討伐に決まった。ゲートで行ける距離なので、僕は諦めて向かった。
結論から言うと、タイガーベアは虎縞の大きな熊だった。後牙がサーベルタイガーみたいだった。
岩山に住んでいて、いきなり襲い掛かられたが八重がほとんど1人で倒した。僕に至ってはマジで送り迎えしかしてない。
倒した証拠に牙を折り、ゲートでギルドに戻り提出して依頼終了。依頼を受けてから2時間で銀貨12枚を手に入れた、RTAかな?
もう1つくらい何か受けてもいいかと思ったが、結局何も受けず食事することにした。
パレントで依頼完了&八重のギルド登録&初討伐を祝う。
それぞれ軽い食事と飲み物、あと全員アイスを頼んだ。初めて食べるアイスに八重は驚いていたが、すぐに美味しい美味しいと食べていた。
帰り際にアエルさんにまたメニューを考えてくれと頼まれた、別に考えた訳じゃないんだけど……。まあそれより次のメニューはどうするか考えるか。