【完結】紳士的な異世界はスマートフォンとともに。   作:味音ショユ

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毎日更新とかむぅ~りぃ~、になりそう。
やれるだけやりますが、19時に更新されていなかったら駄目だったんだな、と思ってください


地下遺跡、そして水晶の魔物。なぜかやたらとダイマ

「光ちょっち来てよー、ちっさい照明でいいからー、ライト」

「呪文ウザっ!」

 

 僕が宙に作りだした明かりを頼りに、僕達は石の階段にを進み地下へと降りていく。

 階段は緩やかな角度で螺旋を描き、ひたすら続いている。これはどこまでも続いているような気さえしてくる。だがそれは錯覚だ、必ず終わりはある。その終わりが来た先に、広い石造りの通路が現れた。

 真っ直ぐ延びるその通路は、先は闇で覆われ何があるかまるで見えない。何とも不気味な雰囲気だ。

 

「な、何か気味悪いわね……。幽霊でも出そう……」

「な、何を言っているでござるかエルゼ殿!? ゆ、幽霊など出るわけないでござろう!」

「はいはい出ません出ません」

 

 エルゼがボソッと呟いた言葉に八重が過剰反応する、それをリンゼが適当に宥めていた。というかリンゼ以外は僕のコートを引っ張らないでほしい、歩きにくいんだけど。

 一方のリンゼは平然と石造りの通路をガンガン進んでいく、

 僕が明るくしてるとはいえあんまり行き過ぎるとライトが届かないんだけど……、そこまで自制心が無いわけないよね。

 そうこうしていると、通路の天井がどんどん高くなっていき、やがて大きな広間に出た。

 そこにあったのは正面の壁いっぱいに書かれた、これは文字だろうか? 高さは4メートル、長さ10メートルほどの壁に一面とびっしり書かれている。

 何と言うか、古代文字?

 

「リンゼ、この文字読める?」

「いえ、全く分かりません……。古代魔法言語とかでもなさそうです……」

 

 リンゼはこっちを向くことなく、壁に書かれた文字を茫然と眺めている。

 これは間違いなく歴史的遺物だろう。でもお金にはならなさそうだな。

 っと、そうだスマホで写真を撮っておこう。ひょっとしたら考古学者が高く買うかもしれない。印刷法は……、無属性魔法をあとで探せば多分ある、と思う。

 

「ウェイ!? なんでござる!?」

 

 僕のスマホのフラッシュに八重達が驚く、どうでもいいけど何でオンドゥル語? とにかく僕が安全だと言うと、彼女らは先に言って欲しいなど文句を言いながら何度目かのため息をついた、ごめんって。

 何枚かに分けて壁画を全て撮影。しかし何で地下深くにこんなものが……。

 

「ねえちょっと! 皆こっち来て!!」

 

 広間を探索していたエルゼが声を上げる。広間の右壁側、そこに居た彼女は壁の一部を指す。

 

「ここに、何か埋まってるわ」

 

 壁の一部、僕の目線の高さに茶色っぽい透明な菱形の石が1つ埋め込まれていた。大きさは2センチくらいだ。

 

「これは……、魔石ですね。土属性の魔石です。おそらく魔力を流すと起動する仕掛けでしょう」

「へぇ……」

「じゃあ冬夜、魔力流してよ」

「え、いいけど……」

 

 リンゼの説明を聞いたエルゼが魔力を流すよう僕に言う。よし、じゃあ流そうか……。っておい。

 

「何で皆離れるの?」

「いや、罠だったら困るでござるから」

 

 そう答えたのは八重。残り2人は何も言わないが八重の言葉に頷いている。いやエルゼは頷かないで!

 

「大丈夫ですよ冬夜さん、こんな所に罠を仕掛ける理由はありませんよ。多分」

「大丈夫よ冬夜、きっと」

「さっきはつい不安になるようなこと言ってしまったでござるが、冬夜殿なら大丈夫でござるよ。おそらく」

「励ます気があるなら後ろの部分は取ってくれない!?」

 

 いやよく聞いたら八重は励ましてない! 罠に掛かったら脱出しろって言ってる!

 

「がんばれ、がんばれ」

「流せばいいんでしょもう!」

 

 半分やけくそになりながら魔石に魔力を流す。

 すると地鳴りが鳴り響きだした、と思ったら目の前の壁が全て砂になって流れ落ち、ぽっかり穴が開いた。

 

「これは……何だ?」

 

 開いた穴を覗き込むと、砂と埃にまみれた物体が部屋の中央に置かれていた。埃のつもり具合から長い間放置されていたのがよく分かる。廃墟だから当たり前か。

 その物体は、あえて言うならコオロギに似ていた。頭部らしいアーモンド型の部分から、6つの細長い足の様な物が伸びている。何本か折れてはいたが。

 大きさは、軽自動車くらいか? しかしこのコオロギ(仮)は流線型のシンプルフォルムを見る限りどこか機械に見える。

 

「何なのこれ? 何かの像かしら?」

 

 エルゼが色んな角度からコオロギ(仮)を覗き込む。よく見ると頭部らしい部分の奥にうっすら野球ボールぐらいの大きさの赤い物体が透けて見えた。

 表面の埃や砂を払うと、このコオロギ(仮)はどうやら半透明の物質で出来ていることが分かった。ガラスかな、薄暗くてよく見えない……って、え?

 

「リンゼ、ライトの魔法ってこんなに持続時間短かったっけ?」

「え? 光属性が苦手な私でも2時間は持ちますし、冬夜さんならもっと持つはずですけど……」

 

 リンゼはそう言うが、宙に浮かぶ僕のライトを見ると光が弱くなってるように見えるんだけど……。

 

「あれ? 弱くなってますね……」

「一体どういう……」

「冬夜殿!」

 

 八重の叫びに視線を戻すと、コオロギ(仮)の頭部の奥にある赤いボールが輝き始めていた。コオロギ(仮)、もうコオロギでいいや……、の体が細かく振動している。

 

「冬夜さん! ライトの魔力があの、アレに吸収されています!」

「仮名決めておこうか後で!」

 

 とか言ってる場合じゃないんだけど! 赤いボールの輝きはどんどん増し、コオロギは体を少しづつ動かし始め、折れていた足がいつの間にか再生している。まさか、魔力を取り込んで活動を再開したのか。

 

 キィィィィィィィン!

 キィィィィィィィン!

 

「うぐっ、これは……っ!」

 

 耳鳴りをしているような、甲高い音が辺りに響く。

 

 キィィィィィィィン! 条例。

 

「ウォッ○メン!?」

 

 ウォッチ○ンはアメコミ最高傑作と呼ばれるほどの傑作で、コミックで唯一ヒューゴ賞を取るほどの作品だ。実際面白い。原作コミックと実写映画版があるけど個人的には原作を読んでほしい。大きい書店なら置いてあるはずだ、4000円近くするけどそれだけの価値はあるぞ!!

 

「ってダイマしてる場合じゃない!」

 

 この音のせいで壁に亀裂が入っている。拙い、このままじゃ生き埋めになる!

 

「ゲート!」

 

 僕は目の前に光の門を出現させ、皆を次々と地上へと送る。最後に僕が門を潜ろうとしたとき、コオロギが立ち上がり足の一本を物凄い速さで僕の方へ伸ばしてきたのだ。僕は転がるようにゲートを抜け地上に出た。

 

「何だったの、あれ?」

「あんな魔物、見たことないでござるよ……」

 

 エルゼと八重が地下への入口を眺めながら緊張した面持ちで話していると、またしても地鳴りが響き渡った。

 廃墟の奥で轟音と共に土煙が上がる。恐らくさっきまでいたあの広間は埋まったのだろう。これでコオロギも……、フラグじゃないこれ?

 キィィィィィィィン!

 

 はいフラグ回収、早すぎるよ!

 

 キィィィィィィィン!

 

 早く来いよもう……!

 

 戦え……、戦え……。

 

「仮面ラ○ダー龍騎!?」

 

 平成仮面ラ○ダー3作目の龍騎は、仮面ライダー同士が願いを叶える権利を巡って殺し合いを繰り広げるいわゆるバトロワものだ。正真正銘の悪の仮面ラ○ダーが出る等して問題にもなったが、戦わなければ生き残れない! というキャッチコピー通りの殺し合いというシビアな現実、そして誰しもが願いの為に戦っていることを伝える名作だ。特に最終話の1個手前の展開は衝撃的だぞ、見た事の無い人は是非!!

 

 キィィィィィィィン!

 

「だからダイマしてる場合じゃないって!」

 

 轟音と共に地面を突き破り、コオロギは地上へと躍り出る。

 アーモンド型の頭部、そこから伸びた細長い6本の足。太陽の下では水晶のような体が光り輝く。

 コオロギはまたも足を伸ばし横に薙ぐ。僕が咄嗟に屈んで躱し、躱された攻撃は背後にあった廃墟の壁が受ける。その攻撃を受けた壁は、まるで豆腐みたいに簡単に切り裂かれた。

 

「炎よ来たれ、赤き連弾、ファイアアロー!」

 

 リンゼが炎の矢を連続でコオロギに向けて撃ちだすが、コオロギは避けることも無く平然と受け止めた。炎の矢がコオロギに次々と吸い込まれるように消えていく。

 

「魔法が吸収された!?」

「ならば!」

 

 八重が抜刀してコオロギに斬りかかり、一撃を与える。だが与えられたのは、かすり傷1つだった。

 

「なんて硬さでござる……!」

「だったら!」

 

 次いでエルゼがコオロギの側面から正拳突きを放つが、僅かにぐらつかせるだけでほとんどダメージを与えることは出来ない。

 次の瞬間、エルゼ目がけてコオロギの足が伸びた。それを彼女は串刺しになる寸前で身をかわした。

 

「どうしたらいいのよ……!」

 

 魔法は吸収、刃は通らない。でも間接的になら行けるんじゃね?

 

「スリップ!」

 

 僕がコオロギの足元の摩擦係数を0にした瞬間、奴は間抜けに転ぶ。

 

「リンゼ、魔法で直接攻撃せず間接的に使うんだ!」

「成程……、分かりました! 氷よ来たれ、大いなる氷塊、アイスロック!」

 

 リンゼが氷の魔法でコオロギの頭上に氷塊を作り出し、押しつぶして攻撃する。攻撃は出来る、だが……。

 

「ギィィ!」

 

 大して効いては無い、ダメージが無いわけじゃないと思うんだけど……。

 でも動きは止まった、その隙にエルゼが弾丸のようなスピードでコオロギに向かう。

 

「ブースト、全ッ開!」

 

 身体能力を高めるブーストを使い、コオロギの細長い足に全力の蹴りを放つ。

その刹那、ガラスが砕け散るような音と共に蹴られた足が1本砕けた。

 

「やった!」

 

 ダメージは確実に入る! これならいずれ倒せるはずだ!

 

「ギ……ギィィィィィィィ!!」

 

 突如、コオロギが唸り声をあげ、東部の赤いボールが輝く。それに反応したのか、砕けた足が再生されていく。

 

「再生した……」

「ピッ○ロさん……」

 

 茫然としたエルゼの呟きに僕も便乗。その隙をついて、コオロギが足を伸ばしエルゼの右肩に深々と突き刺す。

 

「ぐぅ……!」

 

 エルゼはなんとか後方に跳び、追撃をかわす。だが右肩から血が流れ、上半身の服を汚していく。彼女は脂汗を流し、膝を突く。

 

「八重、リンゼ! 足止めして!!」

 

 2人は声を聞いて即座に行動開始。八重は持ち前の素早さで攪乱、リンゼはもう1度氷塊を作り攻撃する。僕はエルゼに回復魔法を使い、傷をいやす。それにしても――

 

「僕達の魔力を奪って再生か。フッ……、まるで将棋だな」

「は?」

 

 僕の言葉にエルゼが凄く冷たい目で僕を見る。この状況で何言ってるの、と目が訴えている。

 いや待て、将棋……? それなら王を取れば……。試してみる価値はある!

 確かリンゼの魔法を吸収して、それから活動再開したんだ。その時あの赤いボールが輝いていたんだ。

 

「あの赤いボールが王だ!」

「は?」

 

 またエルゼが冷たい目で僕を見るが、僕はそれを無視して魔法を発動。直接の魔法攻撃に比べてライトは吸われるのが遅かったし、スリップは通じた。直接攻撃じゃないなら吸われにくいって事だ! だから――

 

「アポーツ!」

 

 無属性魔法で赤いボールをこっちに呼び寄せるのも、出来るって事だよ。

 

「エルゼ!」

「ブースト!」

 

 僕が放り投げた球目がけて、強化されたエルゼの拳が打ち下ろされる。拳と地面に挟まれ、その物体は粉々に砕け散った。

 

「これで、どうだ!?」

 

 ボールを抜かれたコオロギが動きを止める。やがて全身がヒビ割れていき、崩れ落ちた。やった、終わったんだ! ついにコオロギは僕のアポーツの下敗れ去った!

 

「ふぃ―――……」

 

 今まで張りつめていた緊張が解けて、僕は地面にへたり込む。エルゼと八重も同じだ。

 だがリンゼは砕けた魔物の破片を手に取り、何やら調べている。

 

「ひょっとしたら、これは魔石と似通った物質かもしれません」

「魔石と?」

「魔石の特徴は魔力の増幅、蓄積に放出。この魔物も似たように吸収し、再生や……、恐らく防御にも」

「それが魔石に似てるって?」

「はい」

 

 というか、王都が遷都した理由ってあの魔物のせいじゃないよね? 僕ら実はとんでもない封印の扉開いたとか無いよね?

 いや考えないようにしよう。

 

「それよりこれって、ギルドとかに報告したほうがいいの?」

「いえ、地下の遺跡とか場所的なことも考えると、国の機関に知らせたほうがいいかと。公爵様に話しましょう」

「成程、そういうことなら。ゲート」

 

 リンゼの話を聞いて僕はゲートを発動、いざ公爵家へ。

 これから僕のあだ名はモチえもんで、ドラえ○んも1話で餅食べてたしそれっぽいでしょ?

 

 

「そうか、あの場所にそんな遺跡が……」

 

 僕達の話を聞いてアルフレッド様が考え込むように腕を組む。

 

「分かった、これは王家に関わりのある事かもしれん。国の方で調べてみよう。無論、その魔物もな」

「いや、地下遺跡の方は崩壊してしまって……」

「そうか……、その壁画に何が書かれていたのか興味があったのだが……」

「それならこれを」

「どれ?」

 

 僕はスマホで撮っておいた壁画写真を公爵に見せる。

 

「こ、これは何だね!?」

「風景を保存できる僕の無属性魔法です」

「ほう……、相変わらず凄いな君は……。是非我が国に……」

 

 しれっと嘘をつく僕。まあ正しく説明すると長くなるしね……。

 というか僕を抱き込もうとしてません? アルフレッド様。

 

「時間さえ頂ければ書き写してお渡しします」

「頼む。ひょっとすれば1000年前の遷都の謎が分かるかもしれんのだ」

「記録とか、残ってないんですか?」

「ああ」

 

 意外だ。と思ったけど記録が残らないほどの大規模な被害が出たのかもしれない。

 でも言っちゃあ何だけど、あの魔物1匹でそこまでの被害が出るだろうか。確かに強いけど、対処自体は僕らじゃなくても出来る筈だ。まあ、あのコオロギが100や200も居れば話は変わるかも知れないけど。

 

「まさかね……」

 

 ふと思いついた可能性に僕は自ら蓋をして、公爵家を後にした。

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