【完結】紳士的な異世界はスマートフォンとともに。   作:味音ショユ

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解毒、そして毒物検索。サーチ便利すぎて話進むの超早い

再び階段を駆け上がり、長い回廊を抜ける。やがてその回廊が終わると扉が現れ、その前には警備兵がいる。兵がアルフレッド様に気づくと、恭しく頭を下げながら、扉を開いた。

 

「兄上!」

 

 部屋の中にアルフレッド様が飛び込むと、窓から差し込む陽の光の中、豪奢な天蓋がついたベッドの周りに何人かの人が集まっていた。そして寝ているのが王様だろう。

 ベッドにすがりつき、王様の手を握りしめる想所。その傍らで涙をこらえて座る女性、佇む灰色ローブの老人、黄金の錫杖を持った翡翠色の髪をした女性、軍服をまとった髭の人。

 

「兄上の容態は!?」

「色々と手は尽くしましたが、このような症状の毒は見たこともなく……。このままでは陛下の命は……」

 

 老人は首を静かに横に振る。その声を聞いてアルフレッド様は叫ぶ。

 

「冬夜君、リカバリーを!」

「かしこまりました! ルゥイクゥアブァ――――」

「早くやりたまえ」

「はい、リカバリー!」

 

 僕はただ、国王陛下の回復を劇的にしたかっただけなのに……。というかふざけてないとやってらんないんだよ。

 とはいえ、僕がリカバリーを発動した以上柔らかな光が手のひらから王様の下へ流れる。やがてそれが収まると王様の顔色が見る間によくなっていた。

 王様の眼には生気が戻り、上半身を勢いよく起こした。

 

「お父様!」

「あなた!」

 

 王様は自身に縋り付く少女と女性に目を向けながら、自分の手を握り体調を確かめる。

 

「……何ともない、先ほどまでの苦しみが嘘のようだ」

「陛下!」

 

 ローブを着た老人が王様の手を取り、脈を測ったり色々している。この人はお医者さんかな?

 

「ご健康そのものです。まさか、こんな事が……」

 

 茫然とするお医者さん。それをよそに王様は僕の方を向く。

 

「アルフレッド、この者は?」

「彼は我が妻の眼を治してくれた望月冬夜君です。偶然我が屋敷に来たので、お連れしました。彼なら兄上を救ってくれると思いまして」

「初めまして、望月冬夜と申します」

 

 無難な挨拶をしようと思ったら端的すぎて逆に失礼になっている気がする。

 

「そうか、エレン殿の……! 助かったぞ、礼を言う!」

 

 失礼は無かったみたいだが、こんなにフランクに話されるとどう返せばいいのか分からない。と思っていたら軍服を着ている人がバンバン僕を叩いてきた。痛い!

 

「よくぞ陛下を救ってくれた! 冬夜殿と言ったか! 気に入ったぞ!」

 

 いや、気に入ったのはいいけど痛い! ちょ、やめて!!

 

「将軍、その辺りで。しかし、あれが無属性魔法ルゥイクゥアブァルゥイーですか、興味深いですわね」

「いえリカバリーです」

「あら?」

 

 黄金の錫杖を持った女性が、軍服の人を止めてくれて助かった。でも何で僕がやった巻き舌の方でリカバリーを言うのか。

 

「兄上、それでミスミド王国の大使についてですが……」

「大使がどうした?」

「兄上の暗殺首謀者としてバルサ伯爵に拘束されております」

「馬鹿な! ミスミドが私を殺して何になる!? これは別の者の犯行だ!!」

 

 王様が断言する。となると犯人はやっぱりあの伯爵だろう。

 

「しかし事実、大使から贈られたワインを飲んで陛下はお倒れになった。その事実を多くの者が目撃しております。その事実をどうにかしない限りは……」

「ううむ……」

 

 軍服の人、将軍だっけ? の言葉に考え込む王様。まあ状況はそう言ってるか……。

 

「とりあえず大使に会おう。呼んでくれ、レオン将軍」

「はっ!」

 

 将軍が足早に部屋を出ていく。あの人レオンって言うのか。

 おそらく大使の罪は濡れ衣だろう。となるとさっさと冤罪を晴らしてあげなきゃだけど……。

 

「あの……」

 

 考えていた僕に、おずおずと声を掛けられる。声のした方向を見ると、そこにはユミナ王女であってるよね? が僕の方を見て立っていた。

 年はスゥより上の、12~3だろうか。スゥと同じような金髪で、瞳の色が右が碧、左が翠のオッドアイだ。初めて見た。白いドレスを着て、頭には銀の髪飾りを付けた姿はまさしくお姫様だ。

 

「お父様を助けていただきありがとうございました」

 

 そう言いながら深々と頭を下げる王女様。異国の姫に頭を下げられるとは、これも異世界転生の運命だろうか?

 

「いえ、気にしないでください。元気になられて良かったです」

 

 大したことはしてな……、いやしてるけどそんなにかしこまられるとこっちが緊張する。ただでさえ王城という空間で緊張してちょっとトイレ行きたいのに。

 平常運転に戻りたい……。城のメイドかあの錫杖持った女性口説きたい……。でもこの状況でそんなこと出来ない……。

 

「じ―――っ……」

 

 現実逃避をしていると王女様はなぜかずっとこっちを見ている。見られている事実を知らない限りスルー出来ないだろう位じっと見られている。え、何? ズボンのチャック開いてる?

 

「あの……、なんでしょうか?」

 

 とりあえずチャックは開いていないことを確認してから王女様に問う。あれだけ見られているんだから、見られている理由を尋ねる権利くらいあるだろう。

 すると王女様は僅かに頬を染めながら、小さい声で尋ねた。

 

「……年下はお嫌いですか?」

「年上が趣味です」

 

 王女様の問いに正直に答えると、なぜか王女様は少し落ち込んだ様子を見せる。え、選択肢ミスった?

 すると扉が開き、レオン将軍が大使の人を連れてやって来た。ってあの人この前会った迷子の姉の人じゃん。

 

「オリガ・ストランド。参りましてございます」

 

 ベッドから上半身を起こした状態の王様の前で、片膝をつき頭を下げる獣人の大使。その頭には狐耳、腰からは狐の尻尾が生えている。正直獣耳は犬耳派だったが、狐耳に改宗しようかな。

 

「単刀直入に言う。そなたは余を殺すためにここに来たのか?」

「誓ってそのようなことはございません! 陛下を殺そうとするなど断じて!」

「だろうな。そなたはそのような事をする者ではないし、してもそなた達にメリットが無いからな。信じよう」

 

 その聞き方だとたとえ盛っていたとしても首を横に振りそうだけど……。まあ、実際オリガさんにメリットはないし。

 

「しかし、そなたから贈られたワインに毒が仕込まれたのは事実。これをどうなされますか?」

「それは……」

 

 錫杖を持ったお姉さんの言葉に、力なくオリガさんは項垂れる。身の潔白を示す証拠がない以上仕方ないかもしれない。

 よし、ここは僕が何とかしよう。どんなトリックが仕込まれていても、僕の無属性魔法が何とかする! 女性口説くのに神頼みとか、そんなしょうもない男にはなりたくなかった! でも冤罪を見過ごすのは人の道理に反するし、もう!!

 

「ちょっといいですか?」

「冬夜君?」

「貴方は……!」

 

 声をかけた僕を見て、驚くアルマさん。どうやら僕に気付いたらしい。あの時は一瞬だったし、今は大変な状況だから僕に気付かなくてもしょうがないけど。

 

「君は大使と知り合いだったのかね?」

「ええ、まあ」

 

 アルフレッド様の質問を適当に流し、さっきから気になっていた事をレオン将軍に尋ねる。

 

「王様が倒れた場所はどこでしょうか?」

「要人達と会食する為の大食堂だが、それがどうした?」

「現場保存……。いや現場って倒れた時のままですか?」

「ああ、ワインだけは持ち出して調べているが後はそのままだ」

 

 で、毒は検出されていない。もし僕が考えている通りなら何だかチャチなトリックだな。いやこれをトリックと呼んだら地獄の傀儡士ブチ切れ不可避。

 

「その部屋に連れて行ってください。オリガさんの潔白を証明します」

 

 皆顔を見合わせたが、王様の許可が下りたのでレオン将軍の案内で大食堂にやって来た。

 大きなホールになっていて、白いレンガの暖炉や紺色のカーテン、壁には高そうな絵、天井にはやっぱりシャンデリア。長テーブルに白いクロスが掛かっている。その上には銀の燭台と食器類。

 とりあえず、レオン将軍に頼んでワインを持ってきてもらった。ふむ……。

 

「サーチ:毒物」

 

 毒物があるかワインを調べる。その次にテーブルの上にある物を調べる。

 気合入れた僕が馬鹿みたいだ。トリックは大体想像通りだけど、何でこれに皆気付かないんだ?

 ま、今はいいか。

 

「大体分かりました。将軍、王様が使っていたワイングラスってどれですか?」

「ん、それだが?」

 

 レオン将軍が指差した落ちているグラスを手に取る僕。そして将軍に向かって言った。

 

「これ、ちょっとお借りしていいですか?」

「まあ、構わないが……」

「あといくつかお願いが……」

「お願い?」

 

 レオン将軍は不思議そうな顔をしていたが、素直に頼みを聞いてくれた。

 さあ、推理ショーの始まりだ。

 …………本当に茶番だな。

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